里山エンジニアリング「ウッドバッテリー」を開発

株式会社里山エンジニアリング

里山エンジニアリング「ウッドバッテリー」を開発

企業紹介|株式会社里山エンジニアリングとは?

木質バイオマス由来の活性炭を電極に使い、金属を含まない蓄電池「ウッドバッテリー」。株式会社里山エンジニアリングは、その社会実装を目指す、東北大学発の環境・エネルギー系ディープテック企業です。同社は、宮城県柴田郡川崎町に拠点を置き、定置型蓄電池としての市場投入を目標にしています。

キーワード「ウッドバッテリー」

「ウッドバッテリー」は、同社が開発する、金属を含まない蓄電池の製品名です。電極に有機物を埋め込んだ活性炭を使い、その活性炭の原料に木質バイオマスを用います。金属を含まず、軽元素のみで構成する点が、鉱物資源を使う従来のリチウムイオン電池との違いです。

市場課題|蓄電池が鉱物資源に依存している

現状の蓄電池の課題

鉱物資源に依存する蓄電池

リチウムイオン電池は、鉱物資源に依存する蓄電池です。ウッドバッテリーのプロジェクト紹介ページは、現在世界中で、レアメタル(希少な金属)を使うリチウムイオン電池が使われていると述べています。同社は、この資源依存を解く手段として、金属を含まない蓄電池を開発しています。

荒廃する里山と林業

里山の荒廃と林業の再興も、同社が掲げる課題です。ウッドバッテリーのプロジェクト紹介ページによると、倉田慎氏は2019年の台風19号の豪雨で身近な里山が被害を受けて危機感を抱き、2020年に宮城県川崎町へ移住しました。同氏は、リチウムイオン電池が国産木材の電池に置き換われば、蓄電池の自給率が上がり、林業の再興につながるという仮説を掲げています。

他にも、里山の荒廃、林業の再興、地域経済の活性化、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 里山人里に近く、人の手が入ることで維持されてきた森林と、その周辺の自然である。田畑や集落とともに成り立ってきた。

里山エンジニアリングの強み|「ウッドバッテリー」を開発

里山エンジニアリングが「ウッドバッテリー」を開発

金属を含まない電極

一般的なリチウムイオン電池は、電極に鉱物資源から得る金属を使います。金属は、採掘によって得られる資源です。

ウッドバッテリーは、有機物を埋め込んだ活性炭(多数の細孔をもつ炭素材料)を電極に使う、金属を含まない蓄電池です。構成するのは軽元素(軽い元素)のみで、電極にも金属を含みません。同社は、この構造により、鉛蓄電池(鉛を電極に使う、古くからある蓄電池)より耐久性が高く、リチウムイオン電池より急速に充放電できる性能を備えるとしています。電極に金属を含まないため、鉱物資源の採掘に左右されない電池の材料調達が可能になります。

木質由来の活性炭

有機レドックスキャパシタ(有機分子の酸化還元反応を利用する蓄電技術)の研究では、石油由来の活性炭を使うと、性能面に課題がありました。

ウッドバッテリーの活性炭は、木質バイオマス(木材など、生物由来の資源)がその原料です。石油を原料としない点が、従来の石油由来の活性炭との違いです。電極は、この活性炭に有機物を埋め込んで、金属を含まない構造で製造します。木材は国内の森林で得られる資源で、地域ごとの調達に向いた原料です。木質を原料とするこの設計は、電池の材料を地域の森林から集めることが可能になり、鉱物資源への依存を下げる狙いがあります。

FrontJournalの解説
  • 有機レドックスキャパシタ有機分子の酸化還元反応を利用して電気をためる蓄電デバイスである。炭素材料に有機分子を載せた電極を使う。

ウッドバッテリーの未来|定置型蓄電池と地産地消へ

里山エンジニアリングのウッドバッテリーが変える未来

定置型蓄電池として市場投入

同社は、ウッドバッテリーを最終的に定置型蓄電池(建物や設備に据え置いて使う蓄電池)として市場に投入したいとしています。東北大学スタートアップ事業化センターのインタビューによると、目標は鉛蓄電池より高い耐久性と、リチウムイオン電池より速い充放電です。製品の生産開始の時期や現在の開発段階は、公開情報から確認できませんでした。今後の発表が待たれる段階です。

充放電3000回の研究成果

植物由来のバイオマス炭素を使った水系全有機電池(電解液に水を使い、電極の材料に有機物を使う電池)で、パウチ電池(薄い袋状の外装の電池)が3000回の充放電(電気を出し入れする動作)後も、容量(ためられる電気の量)の99.75%を保ちました。2026年4月に発表したのは東北大学の中安祐太准教授らの研究グループで、分子のサイズに合うミクロ孔(直径2ナノメートル以下の細孔)を設計する手法を使いました。中安氏は同社のインタビューにCTOとして登場しますが、同リリースは里山エンジニアリングに触れていません。この成果と製品の関係は、公開情報から確認できませんでした。

地産地消の生産拠点を目指す

同社の長期目標は、ウッドバッテリーの地産地消です。インタビューで示された構想は、各地への生産拠点の設置。公式サイトは、荒廃した里山の再生と地域経済の活性化を掲げています。木材を電池の原料にして、林業の再興につなげることを目指す。

会社概要|里山エンジニアリングの事業内容・設立背景

2022年に東北大学発で設立

株式会社里山エンジニアリングは、2022年5月に設立された、東北大学発のスタートアップです。経済産業省の大学発ベンチャーデータベースは、2024年度の調査で、関連大学を東北大学として掲載しています。本社の所在地は宮城県柴田郡川崎町です。法人番号は2370001048537で、経済産業省のGビズインフォにも登録されています。

川崎町への移住と創業

ウッドバッテリーのプロジェクト紹介ページでは、倉田慎氏が2020年に川崎町へ移住し、メタルフリー(金属を含まない)蓄電池のウッドバッテリーを手がけると紹介されています。東北大学スタートアップ事業化センターのインタビューには、倉田氏がCEOとして、中安祐太氏がCTOとして登場します。代表者名の記載は資料により異なるため、本記事では代表者を示していません。

事業と開発の方向性

事業は、木質バイオマス由来の活性炭を使うウッドバッテリーの開発です。公式サイトは、同社を、循環型社会の実現のために日本の森林資源を活用した電池技術を開発する企業と紹介しています。東北大学で以前から研究されてきた有機レドックスキャパシタの技術が、背景にあります。

会社情報

会社名株式会社里山エンジニアリング
所在地宮城県柴田郡川崎町大字前川字松葉森山25番地8
設立2022年5月
事業蓄電池「ウッドバッテリー」の開発
技術領域木質バイオマス由来の活性炭を使う、金属を含まない蓄電池
URLhttps://satoyama-engineering.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

蓄電池の材料を鉱物から森林へ広げる発想は、電池の資源問題を地域の産業とつなげる試みといえます。当面の市場投入先として定置型蓄電池を挙げている点も、特徴です。里山の再生という社会課題と、蓄電池という産業を、一つの製品でつなげようとする点に、同社の特徴があります。

とくに注目したのは、金属を含まない構造と、木質バイオマスという原料の組み合わせです。電池の分野では、東京大学発のORLIB株式会社のような電池系の企業も、研究を進めています。製品の性能と生産開始の時期はこれから確かめられる段階であり、技術の評価に加えて、地域での実装の進み方にも注目し、今後の発表を見守りたいと考えます。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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