スパインテック|東京慈恵会医科大学発、炭素繊維強化樹脂で背骨の固定器具を作る医療機器系ディープテック企業

株式会社スパインテック

スパインテック「CFRP製脊椎固定器具」を開発|研究領域=炭素繊維で作る背骨の固定器具/強み=緩みにくく画像を乱しにくい/将来性=日本発の医療機器を世界へ広める

企業紹介|スパインテックとは?

炭素繊維強化樹脂で作り、CT・MRI(体の内部を断面で写す検査装置)の画像を乱しにくくした背骨の固定器具「CFRP製脊椎固定器具」。株式会社スパインテックは、その社会実装を目指す、東京慈恵会医科大学発の医療機器系ディープテック企業です。背骨を固定する手術と、脳神経外科の手術で使う器具を、ネジの加工会社や釣り竿のメーカーと組んで開発しています。

キーワード「CFRP製脊椎固定器具」

CFRP製脊椎固定器具は、背骨に打ち込むスクリューと、スクリュー同士をつなぐロッドを、炭素繊維を樹脂で固めた材料で作る医療機器です。金属製の器具に比べて、CT・MRIの画像に写り込む乱れを抑えられます。チタン合金製の器具で起きてきた緩みや、金属疲労による破損も減らすことを狙っています。

市場課題|金属製の固定器具に緩みと画像の乱れの課題

現状の脊椎固定術の課題|現状は、金属製の器具で緩みや画像の乱れが起きやすい/スクリューの緩みやロッドの破損/金属が術後の画像を乱しやすい

固定器具の緩みや破損が課題

脊柱管狭窄症(背骨の中にある神経の通り道が狭くなる病気)の治療で背骨(脊椎)を固定する金属製の器具には、スクリューの緩みやロッドの破損という課題があります。この病気の患者は国内で約300万〜400万人と推定される、身近な病気です。多くは高齢化に伴って脊椎や椎間板に変性が生じ、神経を圧迫することで発症します。

金属が術後の画像を乱す

金属製の器具は、手術後の経過を確かめるCTやMRIの画像を乱しやすい性質を持ちます。器具の周りに筋や影のような乱れが写り込むため、周辺の骨や神経の状態を読み取るのが難しくなります。脳神経外科などでは手術中に画像で確かめる場面も増えており、画像の乱れは術中の判断の精度も下げかねません。

他にも、海外で設計された器具が日本人の体格には大きすぎる、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 脊柱管狭窄症背骨の中にある神経の通り道(脊柱管)が、加齢による骨や靱帯の変化で狭くなる病気。神経が圧迫されて、腰や脚の痛み、しびれ、歩きにくさが起きる。

スパインテックの強み|「CFRP製脊椎固定器具」を開発

スパインテックが「CFRP製脊椎固定器具」を開発|今後は、炭素繊維で緩みにくい固定が可能に/炭素繊維で緩みと破損を抑制/金属を減らし画像を鮮明に

炭素繊維で緩みと破損を抑制

チタン合金製のスクリューは骨の中で緩むことがあり、ロッドは体の動きで繰り返し力を受けるうちに金属疲労で折れることがあります。

スパインテックが開発するのは、スクリューとロッドを炭素繊維強化樹脂(CFRP)で作る脊椎固定器具です。CFRPは細い炭素の繊維を樹脂で固めた材料で、ネジのような小さな部品への成形は難しいとされてきましたが、精密なネジ加工釣り竿のカーボン成形を組み合わせることで開発を進めています。チタン合金製に比べて緩みにくく、ロッドは金属疲労による破損にも強いとされる設計です。強度を保ったまま小型化も可能です。

金属を減らし画像を鮮明に

金属はCTのX線を強くさえぎり、MRIでは磁場を乱すため、器具の周りの画像に乱れが生じやすくなります。

スパインテックは、器具の材料を金属からCFRPに置き換えることで、この乱れを小さくしています。CFRP製の脊椎固定器具で確かめられているのは、CT・MRIの画像への干渉が金属製より小さいことです。器具の周りの骨や神経を画像で確認しやすくなり、医師が手術後の経過を判断しやすくなることが期待できます。同じ考え方で作った頭部固定ピン(手術中に頭を固定する器具)は、炭素繊維強化PEEK(熱や薬品に強い樹脂を炭素繊維で補強した材料)を芯に使い、先端だけにアルミニウムを組み合わせた構造です。

FrontJournalの解説
  • 炭素繊維強化樹脂(CFRP)細い炭素の繊維を樹脂で固めた複合材料。軽くて強く、金属よりX線を通しやすい。釣り竿や航空機の部材に使われ、医療用インプラントへの応用も進んでいる。

未来|日本発の医療機器を世界の手術室へ

CFRP製の医療機器が変える未来|頭の手術で先に使い、背骨の手術へ広げる/頭部固定ピンを臨床で初使用/脊椎固定器具の実用化へ/日本発の器具で世界を目指す

頭部固定ピンを臨床で初使用

CFRPの技術は、脳神経外科の手術で先に医療現場へ届いています。頭部固定ピン「STIヘッドピン」を使った最初の臨床症例が、2026年5月7日に東京慈恵会医科大学附属病院で実施されました。ヘッドピンは、手術中に患者の頭蓋骨を3点で支えて固定する器具です。金属製のピンより術中CTの画像の乱れが小さいため、腫瘍の評価や頭蓋の精密な手術での活用が見込まれています。

脊椎固定器具の実用化へ

次の段階は、脊椎固定器具を医療現場に届けることです。2024年12月に発表された医工連携(医療現場と工学・製造業が組む開発)のプロジェクトでは、スパインテックがリーダーを務め、特殊ネジをタカイコーポレーションが、脊椎固定用のロッドをグローブライドが開発・製造します。グローブライドは、釣具ブランド「DAIWA」の釣り竿でカーボン成形の技術を磨いてきたメーカーです。実用化すれば、背骨の固定術で日本人の体格に合う国産の器具を選べるようになることが期待されます。

日本発の器具で世界を目指す

スパインテックが目指すのは、CFRPを使った日本製の医療機器を世界に広めることです。脊椎固定術の器具では、日本の医療機器会社が開発して広く使われるまでに至ったものはまだ無いといわれています。その第一歩が、脊椎と脳神経外科の手術に国産の新しい選択肢を加えることです。画像を乱しにくく長く背骨を支える器具が広がれば、手術を受ける患者の負担が軽くなり、健康寿命を延ばすことにもつながります。

会社概要|株式会社スパインテック

慈恵医大の研究から創業

スパインテックは、東京慈恵会医科大学の研究成果をもとに、2020年9月に設立されました。本社は東京都港区西新橋の慈恵大学F棟にあり、代表取締役は谷諭氏が務めています。炭素繊維強化樹脂を主体とするインプラントや医療機器の開発・製造・販売を事業の柱に据えています。

採択と医工連携で開発

CFRP製の脊椎固定器具の開発は、2019年度に日本医療研究開発機構(AMED)の「医工連携イノベーション推進事業」に採択されています。2024年12月には、ネジを製造するタカイコーポレーションと、釣具メーカーのグローブライドが参画する医工連携プロジェクトが発表されました。スパインテックは、このプロジェクトのリーダーを務めています。2026年5月には、グローブライドが「STIヘッドピン」の開発に参画したことを発表しました。

製造販売業の許可を取得

同社は、第一種医療機器製造販売業医療機器製造業の許可を取得しています。医療機器を自社で製造し、市場に出す責任を負える体制です。「STIヘッドピン」は一般的名称「単回使用骨手術用器械」として医療機器の認証を受けています。品質方針では、医療機関からの意見や苦情に最優先で対応すると定めています。

会社情報

会社名株式会社スパインテック(Spine-tech Inc.)
所在地東京都港区西新橋3丁目25番8号 慈恵大学F棟
設立2020年9月
代表谷 諭(代表取締役)
資本金1,000万円
事業医療機器の製造販売(第一種医療機器製造販売業 13B1X10428/医療機器製造業 13BZ201837)。製品=STIヘッドピン(CFRP製頭部固定ピン・医療機器認証番号 308ADBZX00016000)
技術領域炭素繊維強化樹脂(CFRP)製の脊椎後方内固定器具、脳神経外科用頭部固定ピン、医療機器
連携株式会社タカイコーポレーション(特殊ネジの製造)/グローブライド株式会社(脊椎固定用ロッドの開発・製造)
採択日本医療研究開発機構(AMED)「医工連携イノベーション推進事業」(2019年度)
URLhttps://spine-tech.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

背骨の固定術は、高齢化とともに患者が増えている病気の治療に使われる手術です。脊柱管狭窄症の患者は多く、手術を受ける人の術後の生活は器具の性能に左右されます。その一方で、体の中に残る器具の材料は長く金属が中心でした。

スパインテックの取り組みで興味深いのは、釣り竿のカーボン成形やネジの精密加工といった、医療とは別の分野で磨かれた日本の技術を、背骨と頭の手術に持ち込んでいる点です。頭部固定ピンが臨床に届いたことは、その組み合わせが医療現場で通用することを示す一歩といえます。大学の臨床の課題と、ものづくり企業の技術が結びついた医工連携の好例でもあります。

主力の脊椎固定器具が手術室に届く日を、引き続き追っていきたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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