つばめBHB「オンサイトアンモニア製造」を開発

つばめBHB株式会社(ツバメビーエイチビー)

つばめBHB「オンサイトアンモニア製造」を開発

企業紹介|つばめBHBとは?

アンモニアを必要な場所で必要な量だけ確保できる技術として、注目を集める「オンサイトアンモニア製造」。つばめBHB株式会社は、その社会実装を目指す、東京科学大学発のエネルギー系ディープテック企業です。小型のアンモニア製造プラントを、エネルギー事業者等へ提供しています。

キーワード「オンサイトアンモニア製造」

「オンサイトアンモニア製造」は、アンモニアを使う場所の近くで製造する方式です。特徴は、大型プラントから運ぶ場合に比べて、輸送と保管の手間を減らせる点にあります。肥料や発電の燃料に使うアンモニアを、工場や発電所のそばで必要な量だけ確保できます。

市場課題|アンモニアの製造と輸送に大きな設備が要る

現状のアンモニア製造の課題

高温高圧で設備が大型化

アンモニアの製造では、高温高圧の条件を保つため、設備が大型になりやすい状況です。主流のハーバー・ボッシュ法(窒素と水素を反応させてアンモニアを合成する製法)は、400〜500℃、10MPa以上の条件で運転します。このままでは、設備投資に見合う大きな規模でなければ採算を取りにくく、小規模な製造拠点は広がりにくいおそれがあります。

輸送と保管に特別な設備が必要

アンモニアは特定悪臭物質かつ劇物であり、輸送と保管に特別な設備が要ります。大型プラントで製造したものは、使う拠点まで運ぶ必要があります。この状況が続くと、需要が小さい地域や遠い地域ほど、調達の手間と費用が重くなりかねません。

他にも、天然ガスから水素を製造する際に出る二酸化炭素の排出、水素の調達先を確保する手間、小規模な需要に合わせた装置の設計の難しさ、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • ハーバー・ボッシュ法窒素と水素を高温高圧のもとで鉄系の触媒に通し、アンモニアを合成する工業的な製法である。100年以上前に開発され、現在もアンモニアの製造に使われている。

つばめBHBの強み|「オンサイトアンモニア製造」を開発

つばめBHBが「オンサイトアンモニア製造」を開発

低温低圧で反応を進める

従来の鉄系触媒は、反応に高温高圧の条件が要り、設備が大型になります。

同社は、セメント成分の電子化物(エレクトライド)を、アンモニア合成の触媒に使います。電子化物とは、電子が陰イオンのように結晶のすき間に入り込んだ物質で、電子を放出しやすい性質を持つ点が特徴です。この電子が窒素分子の強い結合を切る反応を助けます。反応の条件は300〜400℃、3〜5MPaで、従来より低温・低圧です。そのため、高圧に耐える大がかりな設備が要らなくなり、装置を小型にできるようになります。

現地に置ける小型プラント

従来の製造設備は、年産数十万トンの規模で効率が出る設計が中心で、小さな需要に合わせにくい面があります。

同社は、水素と窒素を原料に、エネルギー事業者や工場などの使う場所の近くへ置く小型のアンモニア製造プラントを設計しています。年産500トンの小型機に加え、年産5,000トンの機種の展開を予定しており、需要の大きさに合わせて機種を選べる構成です。同社は、水・空気・電力があれば、山間部や島しょ部などでもアンモニアを製造できるとしています。小型機は設置場所を選びにくく、水素の供給があれば、輸送の手配や大規模な貯蔵設備がない拠点でも、必要な量を現地で確保できるようになります。

FrontJournalの解説
  • 電子化物電子が陰イオンのように結晶のすき間に入り込んだ物質である。電子を放出しやすく、窒素分子の強い結合を切る反応を助けるため、アンモニア合成の触媒に使われる。

オンサイトアンモニア製造の未来|分散型の実証と海外展開

オンサイト製造が変える未来

商用1号機が試験生産を確認

同社の商用設備第1号機が、2025年12月に、INPEX(石油・天然ガスの開発事業者)の実証施設「柏崎水素パーク」(新潟県柏崎市)でアンモニアの試験生産を確認しました。この設備は、第一実業株式会社を通じて受注した年産500トンの小型設備です。同社は年産5,000トンの機種の展開も予定し、国内では2機の受注が決まっています。この確認により、導入を検討する事業者は、実機で生産が確認された事実を判断材料にできます。

都内の水素で肥料原料を製造

短期では、東京都産のグリーン水素(再生可能エネルギーで製造した水素)を使い、肥料原料のアンモニアを合成する事業が進みます。同社は、大田区京浜島の都の水素製造所から水素を受け、パイロットプラントで合成します。このアンモニアを原料に、関連企業と窒素系肥料を試験製造する計画で、期間は2026年4月から2027年3月です。グリーン水素への置き換えは、肥料産業の脱炭素化につながるとされています。

海外での地産地消を目指す

同社が目指すのは、資源を持たない国や地域でも、必要な場所で必要な量のアンモニアを製造できる地産地消です。インドでは副生水素(他の工程で副産物として出る水素)を使い、太陽電池セル生産向けの高純度アンモニアを年産2,000トン規模で製造する実証に取り組みます。この規模は、太陽電池セルの年間生産20GW分に相当する量です。同社はこの実証を通じて、現地でのアンモニア製造によるエネルギーの自給と脱炭素の両立を目指します。

会社概要|つばめBHBの事業内容・設立背景

2017年に設立

つばめBHB株式会社は、2017年4月に設立され、神奈川県横浜市港北区の新横浜に本社を置いています。設立したのは、ユニバーサル マテリアルズ インキュベーター(UMI)と味の素株式会社で、東京工業大学(現・東京科学大学)の細野秀雄教授らが開発する触媒を事業化しました。代表取締役CEOは、2023年6月に就任した中村公治氏です。研究開発センターは東京科学大学のすずかけ台キャンパスにあります。

採択・連携

同社は、2025年1月に、Cleantech Groupの「2025 Global Cleantech 100」に選出されました。2026年5月に東京都の窒素系肥料製造事業に採択され、同年10月には経済産業省の「令和7年度補正グローバルサウス未来志向型共創等事業補助金」にも採択されています。また、2024年6月に東京工業大学と「つばめBHBグリーンアンモニア協働研究拠点」を設置し、2020年11月には三菱ケミカルと共同評価契約を結びました。

累計約76億円の調達

同社の累計の資金調達額は、約76億円(2024年2月時点)です。2024年2月には、シリーズCで総額約53億円の調達を公表しました。同社はシリーズCを2022年7月と2024年2月の2回に分けて実施し、2回目の引受先はドイツのヘレウス、横河電機株式会社、株式会社環境エネルギー投資です。

会社情報

会社名つばめBHB株式会社
所在地神奈川県横浜市港北区新横浜2-3-12 新横浜スクエアビル6階
設立2017年4月5日
代表代表取締役CEO 中村公治
調達シリーズC(2024年2月に公表・総額約53億円)。累計約76億円(2024年2月時点)。ヘレウス、横河電機、環境エネルギー投資など
事業オンサイトアンモニア供給システムの研究開発・販売・保守、アンモニア合成触媒の研究開発・製造・販売
技術領域電子化物(エレクトライド)を使うアンモニア合成触媒
連携東京科学大学(2024年6月に協働研究拠点を設置)。三菱ケミカル(2020年11月に共同評価契約)。第一実業(INPEX向け商用1号機を2025年12月に納入)
採択東京都産グリーン水素を使った窒素系肥料製造事業(2026年5月)。経済産業省 令和7年度補正グローバルサウス未来志向型共創等事業補助金(2026年10月)。Cleantech Group「2025 Global Cleantech 100」(2025年1月に選出)
URLhttps://tsubame-bhb.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

アンモニアは、肥料やエネルギーの原料として欠かせない一方で、大型プラントでの製造と輸送を前提にしてきました。つばめBHBは、触媒の反応条件を低温・低圧側へ寄せることで、大型プラントで作って運ぶ前提を改め、使う場所の近くで製造できるようにしようとしています。研究室の技術が、現場で動く装置として実績を重ね始めた点に、この取り組みの意義があります。資源に恵まれない地域のエネルギーと食料を支える技術として、今後の展開を見守りたい企業です。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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