2026.10.14 │ 名古屋大学・東北大学・海洋研究開発機構 │ 元発表:2026.10.07

名古屋大学ら、2色の光で人工細胞内のmRNA量を増減する分子システム

ニュース紹介

「2色の光で人工細胞を制御 ―「必要な時に、必要な分だけ」働く分子ロボットで、未来のピンポイント治療へ―」

東北大学大学院工学研究科の野村M.慎一郎准教授、名古屋大学大学院工学研究科の浅沼浩之教授、海洋研究開発機構らの研究グループは、光を照射するだけで、人工細胞(GUV)の中のmRNA量を増やしたり減らしたりできる分子システムを開発したと発表した。アゾベンゼンを修飾したDNAとRNA切断酵素のRNase Hを組み合わせ、紫外線と青色光の2色の光を使い分けて、mRNAの合成と切断を制御する。脂質二重膜を再現した人工細胞の中でも機能することを確認した。

出典:名古屋大学 2026年10月7日 プレスリリース(掲載誌:ChemSystemsChem/DOI: 10.1002/syst.70057)
https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/2026/10/2-8.html

FrontJournalの解説

人工細胞と分子ロボット

人工細胞(GUV)は、脂質二重膜でできた、細胞と同程度の大きさのカプセルです。内部にDNAや酵素を閉じ込め、細胞のふるまいを人工的に再現する研究に使われます。この分野では、必要な時に、必要な場所で、必要な量だけ薬効成分などを合成する分子ロボットの創出が目指されています。

mRNA(メッセンジャーRNA)は、DNAの遺伝情報を写し取った分子で、タンパク質を作る際の設計図になります。mRNAの量を制御できれば、作られるタンパク質の量を調節できます。

①合成だけでなく「切断」も光で操作

従来は、mRNAの合成を制御する研究が中心で、不要になったmRNAを積極的に分解する仕組みがありませんでした。そのため、いったん作られたmRNAからタンパク質が作られ続けるという課題がありました。今回のシステムは、2種類の光を使い分けて、mRNAの合成(アクセル)と切断(ブレーキ)の両方を制御します。

②アゾベンゼンとRNase Hの組み合わせ

仕組みの中心は、光で形が変わる有機化合物のアゾベンゼンです。DNAに組み込んだアゾベンゼンは、紫外線を当てると折れ曲がった形(cis体)になり、青色光を当てると平面構造(trans体)に戻ります。この形の変化によって、DNAの二重鎖が作られるかどうかを光で切り替えます。これに、DNAと結合したRNAだけを選んで切断する酵素RNase Hを組み合わせ、mRNAの合成と切断を制御しています。

編集部からひとこと

今回の成果は、人工細胞の中でmRNAの量を光で増減させる基礎的な仕組みを示した段階です。発表では、副作用を抑えたピンポイント治療など、未来の基礎医学への応用が期待されるとされていますが、具体的な実用化の時期や計画は示されていません。光という外部からの合図で細胞内の分子の量を調節できるかどうかが、今後の発展の鍵になります。

FrontJournal編集部

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