2026.10.16 │ 理化学研究所ら │ 元発表:2026.10.15

理研ら、5個のシリコン量子ビットの同時操作で約99.9%の忠実度を実証

ニュース紹介

「シリコン量子ビットの同時高精度操作を実現 ―5量子ビットの並列操作において99.9%超の忠実度を維持―」

理化学研究所創発物性科学研究センターのレオン・カメンジンド研究員、樽茶清悟グループディレクターらの国際共同研究チームは、5個のシリコン量子ビットを用い、複数の量子ビットを同時に操作しても高い制御精度を維持できる手法を実証した。忠実度が低下する主因が高周波制御信号によるACシュタルク効果であることを突き止め、位相ずれの補正と制御パルスの工夫を組み合わせて、1本の共有の高周波電極から複数量子ビットを駆動した。

出典:理化学研究所 2026年10月15日 プレスリリース(掲載誌:Nature Physics/2026年10月15日付)
https://www.riken.jp/press/2026/20261015_2/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

量子コンピュータの実用化には、量子情報を誤りから守る量子誤り訂正が不可欠で、最終的に数百万個の量子ビットが必要になると考えられています。そのため、個々の量子ビットを高い忠実度で制御することが求められます。

半導体の量子ドット中の電子スピンを使うシリコン量子ビットは、半導体の製造技術との親和性が高く、大規模集積に適した候補として世界的に研究が進んでいます。一方で、複数の量子ビットを同時に操作すると互いに影響し合って性能が低下する問題があり、その物理的な要因は未解明でした。

①忠実度低下の主因は、高周波信号が生むACシュタルク効果

研究チームは、同位体制御したシリコン/シリコンゲルマニウム基板上に作製した、5個の量子ビットを備える試料を使いました。5個すべてを共通の高周波電極で制御できる設計です。個別に操作した場合は、すべての量子ビットで99.99%を超える忠実度を達成しました。

続いて同時操作時の挙動を調べたところ、高周波信号によるACシュタルク効果で各量子ビットの動作周波数がずれ、位相誤差が生じることが忠実度低下の主な原因だと突き止めました。

②ペアごとの位相補正で、5量子ビットでも約99.9%を維持

研究チームは、量子ビットのペアごとに意図しない位相変化を測定し、それを打ち消す補正を制御信号に加える手法を提案しました。3つ以上の量子ビットの補正値も、各ペアの位相変化を足し合わせて求められるため、量子ビット数が増えても手順が過度に複雑になりません。

この補正と、不要な周波数成分を抑えた制御パルスを組み合わせた結果、3量子ビットの同時操作では各量子ビットで99.99%超、5量子ビットすべてを同時に操作した場合でも約99.9%の忠実度を実現しました。

編集部からひとこと

今回の成果は、制御配線を共有したまま複数のシリコン量子ビットを高精度で動かせることを示した点に意味があります。配線本数が減らせれば、量子ビットを増やす際の物理的な負担を抑えられるためです。一方、実際に誤り耐性量子コンピュータへ進むには、さらに多くの量子ビットでの検証や2量子ビットゲートの精度なども必要で、発表では今後の課題として、より低いマイクロ波電力で高速操作できるデバイス技術との組み合わせが挙げられています。量子ビット数を増やしたときに、この補正手順がどこまで通用するかが焦点になりそうです。

FrontJournal編集部

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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