株式会社e6s|洗浄水を循環して使う水洗トイレを開発する日本大学発ディープテック

株式会社e6s(エシックス)

e6s「トイレ洗浄水循環」を開発|研究領域=洗浄水をろ過し繰り返し使う/強み=水道が止まっても水洗を使える/将来性=災害時の衛生を支え情報拠点を目指す

企業紹介|e6sとは?

断水や下水道の停止時にも使える水洗トイレの技術として、開発が進む「トイレ洗浄水循環」。e6sは、その社会実装を進める、日本大学発のディープテック企業です。洗浄水をろ過して繰り返し使う水循環型トイレを、公共施設や家庭、屋外の施設へ提供しています。

キーワード「トイレ洗浄水循環」

トイレ洗浄水循環は、使った洗浄水をろ過して浄化し、再び洗浄水として使う仕組みです。e6sのトイレでは、汚水を2段階のフィルターに通し、色度(水の色の濃さを表す指標)30度以下の水に戻して水タンクへ返します。キャンプ場や避難所など、水道と下水道を使えない場面で役立つ仕組みです。

市場課題|断水や停電で水洗トイレが使えなくなる

現状のトイレの課題|現状は、断水や停電で水洗が止まり使える設備が限られる/断水や停電で水洗が止まる/仮設トイレは確保に時間を要する

断水や停電で水洗が止まる

水洗トイレは、電気、水道、下水道のどれか1つが止まると使えなくなることが多い設備です。内閣府の指針は、災害の直後は下水処理場の被害が確認されるまで、水が出る場合でも水洗トイレの使用を禁止し、災害用トイレを使うよう示しています。その間は、使えるのは災害用トイレに限られます。

仮設トイレの確保に時間を要する

仮設トイレは、災害の発生から設置までに時間を要することがあります。阪神・淡路大震災では、災害用トイレの設置が早いところでも3日目以降で、11日目の事例もありました。新潟県中越地震では、トイレの不安から水分を控えた人が小千谷市で33.3%、川口町で13.8%にのぼりました。内閣府のガイドラインは、トイレを我慢したことも関連死(避難生活の負担などによる死亡)の一因としています。

他にも、トイレの数の不足、水の確保、排泄物の処理、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 水洗トイレ水で汚物を流す方式のトイレ。水道による給水と、下水道などで汚水を受け入れる排水の仕組みが前提となるため、断水や停電の影響を受けやすい。

株式会社e6sの強み|「トイレ洗浄水循環」を開発

e6sが「トイレ洗浄水循環」を開発|現在は、洗浄水の循環で水洗トイレを提供/ろ過した水を洗浄に再利用/固形物を脱水し約12分の1に

ろ過した水を洗浄に再利用

従来の水洗トイレは、使った水を下水道へ流すため、水道と下水道がそろう場所が前提です。

e6sのトイレは、汚水と紙を固形物と液体に分け、第1と第2の2段階のフィルターに通します。ろ過後の水は色度30度以下で、アンモニアなどのにおいの元が取り除かれ、大腸菌も検出されていません。浄化した水は水タンクへ戻り、次の洗浄水として繰り返し使われる仕組みです。公共施設向けの機種は、1日に約250回の利用に対応します。水を使い回せるため、キャンプ場や観光地のように、水道も下水道もない屋外でも、水洗トイレを使えるようになります。

固形物を約12分の1に減容

下水道に流す従来の水洗トイレは、下水道が使えない場所では汚物の行き場がありません。

同社のトイレは、フィルターで集めた固形物を脱水し、約12分の1の体積に減らします。減らした廃棄物は、自治体への確認を前提に、一般ごみとして処分できるとされています。微生物に頼らず、ろ過や吸着で処理するため、加温や曝気(水に空気を送る処理)が要りません。循環の動力は小型の太陽光発電装置でまかなえるとされ、停電時にも動かせる点が特徴です。体積が小さくなる分、廃棄物の運搬や処分にかかる負担を軽くできます。

FrontJournalの解説
  • 減容廃棄物の体積を小さくする処理を指す。脱水や圧縮によって容積を減らし、運搬や処分にかかる負担を軽くする考え方である。

e6sの未来|災害時の衛生と情報を支えるトイレへ

水循環型トイレが変える未来|災害時の衛生と情報の拠点を目指す/福島県と調布市に設置済み/トラックで被災地へ運ぶ/災害情報の拠点を目指す

福島県と調布市に設置済み

同社の「フェーズフリー型」は、福島県の多目的コンベンション施設と、東京都調布市の公共トイレに設置されています。フェーズフリーとは、平常時と非常時を分けず、日常の設備を災害時にもそのまま使う考え方です。平常時は既存の水道と下水道で使い、それらが止まったときはバルブを回して同社のシステムに切り替えます。この切り替えで、普段とほぼ同じ衛生環境を保てるとされています。

トラックで被災地へ運ぶ

e6sは、フェーズフリー型のほかに、車に載せる車載型も開発しています。トイレを備えた設備をトラックで運び、水洗トイレのない場所へ届ける使い方です。トラック1台分の設備は、数千回の利用に対応するとされています。日本政府の広報誌KIZUNA(日本と世界の絆を深めるための公式ウェブマガジン)は、日本では仮設トイレが被災地へ届くまでに少なくとも3日かかると伝えています。

災害情報の拠点を目指す

同社には、トイレを災害時の情報拠点にする構想があります。設備を防災アプリと結び、使えるトイレの場所を被災した人へ知らせる使い方です。携帯電話の充電や、物資の配布の知らせといった機能の追加も、案として挙げています。同社は、誰もが使う場所に情報が集まれば、被災した人への支援を広げる拠点になり得ると考えています。

会社概要|株式会社e6sの事業内容・設立背景

東日本大震災が出発点

e6sは、東日本大震災での経験を出発点に、2021年4月に設立された日本大学発の企業で、代表取締役は高波正充氏です。高波氏は、2011年の東日本大震災の後に、断水でトイレが使えず、不衛生な状況に耐える人々を目にしました。日本大学工学部の中野和典教授は、仙台で地震を経験し、水洗トイレの問題に直面した経験を持ちます。高波氏と中野教授それぞれの経験が、インフラに頼らない水洗トイレを共同で開発する出発点になりました。

社名のe6sは、倫理を意味する英語「ethics」に由来し、「エシックス」と読みます。名前には、持続可能な開発目標(SDGs)の6番目の目標「世界に安全な水とトイレを」への貢献も込められています。ロゴの六角形は、水の循環を表現したものです。

日本大学発ベンチャーに認定

同社は、2025年7月9日に、日本大学発ベンチャーに認定されたことを公表しました。共同研究先は日本大学工学部で、土木工学科の中野和典教授による「ロハス工学を使ったトイレの研究開発」が土台です。拠点は、横浜市西区のみなとみらいに置いています。

技術開発賞などを受賞

同社は、土木学会東北支部の技術開発賞(令和3年度)を受けました。2024年2月には、かながわビジネスオーディションで特別賞と神奈川産業振興センター賞を受賞しています。福島県では、2023年1月の最終選考会を経てふくしまベンチャーアワード2022の優秀賞、同年7月に令和5年度Fukushima Tech Createアクセラレーションプログラムの採択を受けました。

会社情報

会社名株式会社e6s(エシックス)
所在地神奈川県横浜市西区みなとみらい3-7-1 オーシャンゲートみなとみらい8F
設立2021年4月5日
代表高波 正充(代表取締役)
事業トイレ洗浄水循環システムの研究開発。公共施設向けは1日約250回、家庭向けは1日約25回の利用に対応。車載型も展開
技術領域トイレ洗浄水循環、水処理、ろ過、災害対策、フェーズフリー
連携日本大学工学部と共同研究。仙台BOSAI-TECHのメンバー(2022年4月)
採択福島イノベーションコースト構想の採択事業者(2022年度)/ふくしまベンチャーアワード2022 優秀賞(2023年1月)/土木学会東北支部 技術開発賞(令和3年度)/令和5年度 Fukushima Tech Create アクセラレーションプログラム採択(2023年7月)/かながわビジネスオーディション 特別賞・神奈川産業振興センター賞(2024年2月)/日本大学発ベンチャー認定(2025年7月)
URLhttps://e6s.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

水洗トイレは、インフラに支えられた設備です。災害は、そのインフラを止める原因です。その課題に、洗浄水を繰り返し使う仕組みで向き合う姿勢が印象に残ります。

e6sのトイレは、平常時は通常の配管につないで使い、非常時にバルブを切り替えるだけで循環に移れます。日常の設備がそのまま備えになる点は、災害への準備を特別なものにしない発想といえます。公共施設から家庭まで、規模の異なる機種がそろう点も特徴です。

トイレを情報拠点にする構想も含めて、同社の今後の展開に注目したいところです。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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