ファーメランタ「植物成分の発酵生産」を研究

ファーメランタ株式会社

ファーメランタ「植物成分の発酵生産」を研究

企業紹介|ファーメランタ株式会社とは?

植物から取り出してきた希少な成分を、微生物に生産させて安定供給する技術として、注目を集める「植物成分の発酵生産」。ファーメランタ株式会社は、その社会実装を目指す、石川県立大学発のバイオ系ディープテック企業です。植物由来の希少な成分を作る菌株(遺伝子を組み込んだ微生物の系統)の構築サービスを事業会社へ提供するほか、希少成分の製造販売も事業内容に掲げています。

キーワード「植物成分の発酵生産」

「植物成分の発酵生産」は、植物が作る成分を、遺伝子を組み込んだ微生物に発酵で作らせる方法です。特徴は、植物の栽培を待たず、短い期間での生産を目指せる点にあります。医薬品や化粧品、サプリメントの原料を、栽培期間や天候の影響を受けにくく安定して調達する手段として期待されています。

市場課題|植物由来の希少成分は、安定した供給が難しい

現状の植物成分の生産の課題

栽培に時間がかかり供給が不安定

植物二次代謝産物(植物が外敵への防御などのために作る成分)には希少で有用なものが多く、医薬品や化粧品の原料として抽出されて使われてきました。植物の栽培には多大な時間がかかり、条件や環境も限られるため、工業的な量産は難しい状況です。このままでは、供給が不安定でコストも高い状態が続く恐れがあります。

複雑な成分の微生物生産は難しい

植物や培養細胞を使った大量生産には成功例がありますが、汎用的な方法は確立されていません。微生物で作る方法も、植物由来の希少成分には多数の外来遺伝子(その生物が本来持たない遺伝子)の導入が必要で、従来の技術では難しいとされてきました。多数の遺伝子の働きの強さをそろえる調整が難しく、希少成分を安価に量産できる手段は限られています。

他にも、植物の抽出後に出る大量の廃棄物、土地と水の確保、天候による収穫量の変動、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 植物二次代謝産物植物が、糖やアミノ酸などの一次代謝産物をもとに作り出す、多様な成分の総称である。外敵への防御やストレスへの耐性などに働く。アルカロイドやフラボノイドを含み、医薬品や化粧品の原料にもなる。

ファーメランタの強み|「植物成分の発酵生産」を研究

ファーメランタが「植物成分の発酵生産」を研究

発酵で数日単位の生産を目指す

植物から成分を取り出す方法は、収穫まで年単位の時間がかかるうえ、抽出できる量もわずかです。

同社の方法では、植物の成分を作る遺伝子を組み込んだ大腸菌が、糖(グルコース)を材料に、発酵で目的の成分を組み上げます。原料は化石資源でなく、バイオマス(生物由来の資源)です。目標は、植物の栽培で年単位かかる生産を、数日で行うことです。一部の成分では、実用的な生産に必要な収量を、ラボスケール(実験室規模)で達成しています。栽培を待たずに必要な成分を作れるようになれば、天候による供給の変動を抑えられ、原料の調達を計画的に進められます。

20種以上の遺伝子を大腸菌へ

植物の希少成分を微生物に作らせるには、10〜30種類の外来遺伝子を1つの微生物に導入し、すべての働きの強さをそろえる必要があります。従来の技術ではこの調整が難しく、作らせにくい状態でした。

同社は、20種類以上の外来遺伝子を1つの大腸菌で働かせる「多段階遺伝子導入技術」を事業の基盤としています。同社はこれに、遺伝子の働きの強さを調整する「発現バランスの最適化」と、タンパク質を過剰に作っても生育できる菌株を組み合わせ、20段階以上の生合成経路(成分を作る反応の道筋)を構築します。すべての段階の働きがそろわないと目的の成分が十分に得られないため、この調整が欠かせません。成分ごとに微生物を探さず遺伝子の組み合わせを変えるため、同じ技術で多様な植物成分に対応できます。

FrontJournalの解説
  • 生合成経路生物の細胞内で、原料から目的の成分が出来上がるまでに、酵素が順に働く反応の連なりを指す。この経路を別の生物の細胞内に組み直すと、その生物に別の生物の成分を作らせることができる。

植物成分の発酵生産の未来|実証プラントから量産実証へ

植物成分の発酵生産が変える未来

実証プラントが大学内に完成

石川県立大学の敷地内に、3,000リットル規模の培養槽を備えた実証プラント(パイロットプラントとも呼ぶ量産前の試験設備)が完成し、2026年6月24日に竣工式が行われました。国内の大学内施設としては最大級の培養槽といわれています。ここで、規模拡大に伴う課題を検証し、安定して生産するための条件を整えます。量産実証は次の課題で、製造受託企業との連携で進める計画です。

製造受託企業と連携し量産実証へ

同社は、外部の製造受託企業(CDMO)と連携し、複数の開発中の成分で量産の実証を進める計画です。ラボ規模では、1回の製造で目的の成分を数十グラム取得でき、研究用の試薬やサンプル品を提供できます。サンプル品があれば、成分を使う企業は自社製品への配合や評価を早く始められます。量産実証の目標は、1回の製造で数十〜数百キログラムの生産物を得られる体制を整えることです。

幅広い用途への展開を目指す

医薬品や化粧品、機能性食品、香料、農薬、飼料添加物など、幅広い用途の成分の生産を目指しています。開発対象は、医薬品や農薬の原料になるアルカロイド類(窒素を含む天然の有機化合物)、ポリフェノールの一種であるフラボノイド類、香料や色素になるカロテノイド類、多糖類など、多岐にわたる分野です。開発のテーマは、当初の医薬品原料1つから、10以上に広がっています。微生物で作る成分が広がれば、成分の抽出元となる植物の栽培に、広い農地や大量の水を使う必要が減り、供給の安定が期待されます。

会社概要|石川県立大学の研究から生まれたファーメランタ

石川県立大学の研究から事業化

同社は、石川県立大学の研究成果をもとに、2022年10月に設立されました。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の事業として、石川県立大学が神戸大学や産業技術総合研究所などと共同で2018年度に開発した技術が、事業の土台です。石川県立大学で微生物発酵技術を研究する南博道氏(教授)と中川明氏、柊崎庄吾氏が共同で設立しました。社名は、発酵を意味する英語の「ファーメンテイション」と、植物を意味するラテン語の「プランタ」を組み合わせた造語です。

公的支援と受賞を重ねる

2023年10月と11月に石川県産業創出支援機構の事業に、同年12月に農林水産省とNEDOの事業に採択されました。2025年8月には、NEDOの事業の実用化研究開発(後期)にも採択が決まりました。受賞・選出には、「技術経営・イノベーション大賞」の選考委員特別賞(第12回)や、週刊東洋経済の「すごいベンチャー100(2023年版)」があります。

助成金を含め20億円を調達

2025年8月29日に、同社はシリーズAで20億円(NEDOの助成金を含む)を調達し、助成金を含む累計資金調達額は48億円になりました。シリーズAは、ラボでの開発をパイロット規模へ進める資金調達にあたり、2023年5月のシード(創業初期の資金調達)に続く2回目です。新たに参加したユニバーサル マテリアルズ インキュベーターと、既存株主のBeyond Next Ventures、Angel Bridgeなどが引受先となりました。資金は、研究開発費、スケールアップ(生産規模の拡大)体制、商業化を前提とした事業開発体制の強化に充てる予定です。

会社情報

会社名ファーメランタ株式会社
所在地石川県野々市市末松3丁目570番地(いしかわ大学連携インキュベータ)
設立2022年10月19日
代表代表取締役CEO 柊崎庄吾。共同創業者に石川県立大学の南博道氏(教授)と中川明氏
調達2023年5月のシード(Beyond Next Ventures、Angel Bridge、Plug and Play Japan)。2025年8月のシリーズAで20億円(NEDOの助成金を含む)、助成金採択実績を含む累計資金調達額は48億円(2025年8月時点)
事業合成生物学による天然由来希少成分の製造販売、並びに物質生産菌株の構築サービス
技術領域大腸菌への多段階遺伝子導入による、植物二次代謝産物の発酵生産
連携石川県立大学(実証プラントを同大学の敷地内に設置)。外部のCDMOとの連携による量産化の実証を予定
採択NEDOのディープテック・スタートアップ支援事業。農林水産省の中小企業イノベーション創出推進事業。石川県産業創出支援機構の成長戦略ファンドの事業。「技術経営・イノベーション大賞」選考委員特別賞(第12回)。週刊東洋経済「すごいベンチャー100(2023年版)」
URLhttps://fermelanta.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

植物が時間をかけて作ってきた成分を、微生物の発酵で作る。ファーメランタの取り組みは、希少な植物成分の調達を、その植物の栽培期間や天候から切り離す試みです。大学の研究から生まれた技術が、3,000リットル規模の培養槽まで進んだ点に、大学発の技術が産業の規模へ向かう過程を感じました。

20種類以上の遺伝子を1つの大腸菌で働かせる技術は、単なる植物の代用でなく、目的の成分に合わせて菌を設計できる土台だと考えます。遺伝子の組み合わせを変えれば、医薬品から化粧品、食品まで多様な成分に対応する余地があります。1つの技術基盤から多くの成分を生み出せる点が、事業の広がりを支える強みです。

実験室から実証プラント、そして商業生産へ。栽培の期間や天候に左右されにくい原料調達が広がる日を楽しみにしています。海外のバイオものづくりの事例は、米国のSolugenを紹介したコラムで読めます。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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