Future Materialz「窒化鉄磁石」を研究

株式会社Future Materialz(フューチャーマテリアルズ)

株式会社Future Materialz「窒化鉄磁石」を研究

企業紹介|株式会社Future Materialzとは?

鉄と窒素の化合物「窒化鉄」を成分にした、モーター用の永久磁石「窒化鉄磁石」。株式会社Future Materialzは、その社会実装を目指す、磁性材料系のディープテック企業です。同社は、窒化鉄の粉末を高純度で大量に合成する技術を、強みとしています。

キーワード「窒化鉄磁石」

「窒化鉄磁石」は、強磁性窒化鉄(鉄と窒素だけでできた、磁力の強い化合物)の粉末を原料にした磁石です。強磁性窒化鉄はレアアースを含まず、1972年に東北大学の高橋實教授がその存在を提唱しました。同社は、この窒化鉄の粉末を高純度で大量に合成する技術を持ち、磁石の共同開発に参画しています。

市場課題|モーター用磁石はレアアースへの依存に課題がある

現状のモーター用磁石の課題

ネオジム磁石の需要が急増

モーター用のネオジム磁石(強力な永久磁石の一種)は、省エネ家電や電動車の需要増を背景に、使用が急増している状況です。高効率なモーターが求められるため、小型で強力な磁石として選ばれています。ネオジムなどのレアアース(希土類元素)は特定の国への依存度が高く、供給リスクがあるといわれています。

重希土類の添加で高コスト

ネオジム磁石は、保磁力(磁力の失われにくさ)と温度特性(高温での性能の保ちやすさ)を高めるため、テルビウムやジスプロシウムなどの重希土類元素(重い希土類)の添加が必要とされています。これらの重希土類元素も産出国への依存が高いとされています。その結果、ネオジム磁石のコストと供給リスクは、一層高くなる状況です。

他にも、レアアースの価格の安定、モーターの高効率化、ネオジムに偏らない資源の利用、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • レアアース17種類の希土類元素の総称である。ネオジムやサマリウムもその一種で、磁石のほか、光学材料や触媒、研磨剤などにも使われる。

Future Materialzの強み|窒化鉄の粉末で磁石を開発

株式会社Future Materialzが「窒化鉄磁石」を研究

高純度の窒化鉄粉末を大量合成

窒化鉄の粉末は、不純物が混ざらない単一の相の状態で、近年になって大量に作製できるようになった材料です。

同社は鉄系の磁性材料に強みを持ち、高純度の強磁性窒化鉄の粉末を大量に合成しています。この粉末は、磁気特性、分散特性(樹脂の中で均一に混ざる性質)、耐蝕性(さびにくさ)に優れるとされています。強磁性窒化鉄は、鉄と窒素だけでできており、レアアースを含みません。粉末が樹脂の中で均一に混ざるため、練り合わせて成形する磁石に加工しやすくなります。レアアースを含まないため、レアアースの入手に左右されにくい磁石の原料として使えるようになる可能性があります。

二つの磁石成分を一体化

異なる磁石成分を混ぜると、磁石としての特性が損なわれがちとされています。

窒化鉄系磁石は、強磁性窒化鉄(Fe16N2)とサマリウム鉄窒素(Sm2Fe17N3)の二つの成分でできた、ナノコンポジット磁石(数十ナノメートルの粒子を複合化した磁石)です。共同開発の技術で、二つの成分が単一の材料のように機能します。成分の組み合わせで磁気特性を調整できるため、用途に応じた磁石を製造できる点が強みです。サマリウム鉄窒素の一部を窒化鉄に置き換えると、レアアースの使用量が減ります。テルビウムやジスプロシウムも含まれないため、価格や供給の変動を受けにくい磁石になる可能性があります。

FrontJournalの解説
  • ナノコンポジット磁石数十ナノメートルの粒子の、磁化しやすい材料と磁力を保ちやすい材料を複合した磁石である。高い磁気特性が特徴である。

モーター用磁石の未来|車載モーターへの搭載へ

窒化鉄磁石が変える未来

2024年にモーターで実証

2024年9月18日、同社は三恵技研工業、東北大学と、強磁性窒化鉄系のボンド磁石を開発したと発表しました。ボンド磁石(磁石の粉末と樹脂を混ぜて固めた磁石)を使ったモーターは、ネオジムボンド磁石のモーターと同等の特性を示しました。同社が窒化鉄の粉末を合成し、三恵技研工業が磁石に加工し、東北大学の中村健二教授がモーターを評価しています。磁石は、ネオジム採掘時の副産物であるサマリウムも活用しています。

車載モーターで性能を確認

2025年11月7日、同社は三恵技研工業、ミツバと、強磁性窒化鉄系磁石が車載電装モーターに使える性能を持つと発表しました。ミツバが車載電装モーター(発表ではワイパーモーターの例)として設計・評価したところ、試験片の磁気特性から求めた計算値と実測値がほぼ一致しました。磁石は、圧粉成形(粉末を金型で圧縮して固める方法)と射出成形のどちらの製法でも作製できます。強磁性窒化鉄の部分は鉄と窒素でできているため、価格と供給リスクの面でネオジム磁石より優位性が高いとされています。

車載モーターへの搭載を目指す

同社は、レアアースの使用量を減らした磁石の、モーターへの搭載を目指します。三恵技研工業、ミツバとともに、磁性粉末と磁石の特性を高める基礎研究を続ける予定です。車載電装モーターへの搭載も、引き続き検討する計画です。2024年の発表では、磁石の大量生産に向けた技術開発や、新しいモーター製品の開発も、計画に含まれています。

会社概要|Future Materialzの事業内容・設立背景

2015年4月に設立

株式会社Future Materialzは、2015年4月27日に設立された、磁性材料を中心とする企業です。現在の代表取締役社長は京藤倫久氏です。本社は東京都杉並区善福寺4丁目27番5号にあります。

事業内容

事業は、磁性材料を中心としたナノ材料の研究開発、販売、技術提供、コンサルティング、受託・共同研究、分析・評価です。取り扱う材料には、窒化鉄やε酸化鉄などの鉄系ナノ磁性材料のほか、無機顔料、蓄光顔料、医療用のナノ磁性材料、触媒があります。公式サイトには、製品名として「EpoMag」「PACMaN」「MAGesty」「KF-YM」が掲載されています。

拠点と学会発表

2016年3月に仙台事務所、同年4月に京都研究所を開設しています。成果の発表では、2024年に日本磁気学会学術講演会(秋田大学)とFINETECH JAPAN、2025年に磁気・磁性材料の国際会議MMM(Magnetism and Magnetic Materials、米国パームビーチ)とFINETECH JAPANが、プレスリリースで案内されています。いずれも、窒化鉄系の磁石に関する成果です。

会社情報

会社名株式会社Future Materialz
所在地東京都杉並区善福寺4丁目27番5号
設立2015年4月27日
代表代表取締役社長 京藤倫久
事業磁性材料を中心としたナノ材料の研究開発・販売・技術提供
技術領域強磁性窒化鉄の粉末の大量合成
連携三恵技研工業株式会社、株式会社ミツバ、東北大学
URLhttps://www.fmc.future-materialz.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

レアアースの供給リスクが指摘されるなか、窒化鉄を成分に取り入れ、レアアースの使用量を減らす道を選んだ点が印象的です。粉末を高純度で大量に合成する技術は、磁石の材料を見直す取り組みの出発点といえます。モーターから車載モーターへと、評価の場を広げている姿勢も心に残ります。

とくに注目したのは、粉末の合成、磁石への加工、モーターでの評価を、それぞれの得意な組織が分担している点です。実用化や量産はこれからの段階ですが、レアアースの使用量を減らす磁石の選択肢として、今後の展開を見守りたい取り組みといえます。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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