BlueWX株式会社|AIで乱気流の発生リスクを予測する慶應義塾大学発ディープテック

BlueWX株式会社(ブルーウェザー)

BlueWX「AI乱気流予測」を研究|研究領域=AIで乱気流の発生リスクを予測/強み=気象と乱気流の報告を学習/将来性=ANAに続きZIPAIRも利用

企業紹介|BlueWXとは?

航空機が遭遇する乱気流の発生リスクを、深層学習で予測する「AI乱気流予測」。BlueWXは、その予測サービスを航空会社へ提供する、慶應義塾大学発の気象AI系ディープテック企業です。ANA(全日本空輸)が2025年7月に正式導入し、2026年10月からは航空会社のZIPAIRも運航で使い始めました。

キーワード「AI乱気流予測」

乱気流は、風速や風向きの変化で生じる大気の乱れです。AI乱気流予測は、気象データや航空機から集めた乱気流のデータを深層学習(多層のニューラルネットワークで大量のデータから規則性を学ぶ手法)で解析し、発生リスクを予測するサービスです。BlueWXが開発し、航空会社へ提供しています。

市場課題|乱気流は事前に予測しにくい

現状の乱気流予測の課題|現状は、乱気流を事前に予測しにくい/温暖化で乱気流のリスクが高まる/予測は定型的な指標が中心

温暖化で乱気流のリスクが高まる

地球温暖化の進行に伴い、航空機が乱気流に遭遇するリスクが高まっています。乱気流による事故報告件数も、世界的に増加傾向です。乱気流に遭遇すると、乗客・乗員のケガ、貨物や機材への損害、運航の遅延やキャンセルといった影響が生じます。

従来の予測は定型的な指標が中心

従来の乱気流予測は、あらかじめ定められた乱気流指標(決まった計算式で求める指標)をもとに実施されています。乱気流は、気象条件や地形など様々な要素が影響するため、予測が難しいとされてきました。乗客と乗務員の安全にとって、乱気流予測は重要です。

他にも、乱気流の強さの悪化傾向、経路設計に使う風予測データの精度、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 乱気流風速や風向きの変化で生じる大気の乱れ。気象条件や地形など様々な要素が影響するため、発生する場所や強さを事前に正確に予測することが難しいとされる。

BlueWXの強み|「AI乱気流予測」を研究

BlueWXが「AI乱気流予測」を研究|現在は、AI乱気流予測を提供/気象と乱気流の報告を学習/日本上空で正答率86%

気象と乱気流の報告を学習

従来の予測は定型的な指標に依存しており、予測が難しい現象がありました。

BlueWXのAI乱気流予測は、数値気象予報(大気を計算して行う予測)や気象観測データ、航空機から収集した乱気流のデータなどを深層学習で解析し、発生リスクを予測します。複雑な気象情報とパイロットからの揺れの報告をAIが学習することで、乱気流が発生する特徴を捉えられます。さらに、世界の航空会社から追加で取得した乱気流の情報を使い、世界市場向けのシステムを構築しました。乱気流リスクを踏まえた運航判断を支える情報を、航空会社へ届けられます。

日本上空で正答率86%

従来の予測では、乱気流の報告と予測の位置が一致しない事例があります。

日本上空の予測モデルでは、正答率は86%です。2023年7月13日の事例では、BlueWXの予測が乱気流の報告と一致した比較が示されています。モデルの学習には、過去10年以上にわたる数万件の報告情報が使われています。また、Yes/Noの二択の予測モデルの精度を表すAUC値(予測の当たり具合を表す指標)は、BlueWXによると0.9です。ANAは、この予測を運航の安全性と快適性の向上に生かすとしています。

FrontJournalの解説
  • AUC値Yes/Noの二択の予測の精度を表す指標。Yes予測とNo予測を完全に見分けられるモデルで1.0、コイントスのように半々でしか見分けられないモデルで0.5となる。

未来・導入事例|ANAに続きZIPAIRも運航で利用

AI乱気流予測が変える未来|ANAに続きZIPAIRも運航で利用/ANAが正式導入/ZIPAIRも運航で利用開始/風予測への展開を目指す

ANAが2025年に正式導入

ANAは、BlueWXが開発したAI乱気流予測を2025年7月28日から正式に導入しました。このシステムは、2019年にANAホールディングスと慶應義塾大学の共同研究として始まりました。開発の過程で、ANAグループのパイロット2,500人以上を対象に、4年間の評価を行っています。BlueWXは、ANAの正式導入を皮切りに、国内外の航空会社への販売を始めています。

ZIPAIRも運航で利用開始

ZIPAIR(航空会社)は、2026年10月8日から運航でAI乱気流予測の利用を始めました。エムティーアイの航空気象サービス「3DARVI」(気象情報とフライトプランを一画面で確認できるシステム)に搭載され、パイロットは飛行中のコックピットで、飛行高度や予測時刻ごとの予測を確認できます。BlueWXは、予測モデルの開発に注力し、地図への表示にはパートナー各社のサービスを使う事業モデルです。導入を検討する企業向けに、トライアル用のWebシステムも2025年10月から提供しています。

風予測への展開を目指す

BlueWXは、風予測にも取り組んでいます。2026年6月の発表では、風力発電向けの風況予測モデルを開発したとしています。東北電力のデータと計算設備をもとに、発電量の予測が対象です。商用で使えるシステムの開発は、今後の開発目標です。

会社概要|BlueWX株式会社

共同研究から発足した企業

BlueWXは、ANAホールディングスと慶應義塾大学の共同研究の成果をもとに、2023年7月に発足した企業です。経済産業省の大学発ベンチャー調査の一覧では、慶應義塾大学発に区分されています。本社は東京都文京区に置いています。

2名の代表が率いる体制

代表取締役社長の渡辺和成氏は、東京大学で航空工学を学び、丸紅やボストン コンサルティング グループを経て、2025年2月に就任しました。共同代表取締役CTOの宮本佳明氏は、慶應義塾大学環境情報学部の准教授です。2名の共同代表が、会社を率いています。

資金調達と公的な支援

2025年1月に、東京大学協創プラットフォーム開発をリード投資家(出資の取りまとめ役)として、シリーズA(創業初期の資金調達)で1.2億円を調達しました。同年8月には、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のディープテック・スタートアップ支援事業の助成先に決定しています。NEDOの掲載では、助成金として交付が決まった額は1億7,500万円です。2025年11月には、令和7年度の東京都ベンチャー技術大賞で特別賞を受賞しました(対象は乱気流予測システム「AITurbulence」)。2026年9月には、フィデアキャピタルを引受先とする第三者割当増資(特定の投資家に新株を発行して資金を得る方法)としてシリーズAの追加調達を発表しました。

会社情報

会社名BlueWX株式会社(ブルーウェザー)
所在地東京都文京区向丘
設立2023年7月
代表渡辺 和成(代表取締役社長)/宮本 佳明(共同代表取締役CTO)
資本金6,400万円
調達シリーズA 1.2億円(2025年1月)/シリーズAエクステンション(2026年9月)
事業気象解析・予報およびその提供、解析・予報を活用した対応策のコンテンツ企画、制作、販売。AI乱気流予測の開発・提供
技術領域乱気流予測、深層学習、気象予測、風予測
連携ANA(正式導入)/ZIPAIR Tokyo・エムティーアイ(航空気象サービス3DARVIへ搭載)
採択NEDO ディープテック・スタートアップ支援事業 助成先決定(2025年8月)/東京都ベンチャー技術大賞 令和7年度 特別賞(2025年11月)/ICCサミット FUKUOKA 2026 リアルテック・カタパルト 準優勝(風予測・2026年3月)/SusHi Tech Global Startups 選出(風予測・2026年4月)
URLhttps://www.bluewx.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

機内で突然の揺れに遭った経験がある方もいるでしょう。乱気流は、いつどこで起きるかを事前に見通しにくい現象で、予測の難しさが課題とされてきました。その予測に、気象の知見と深層学習の両方から向き合う企業がBlueWXです。

BlueWXが磨いてきたのは、気象データとパイロットの報告を学習させる予測の仕組みです。ANAの正式導入に続いて、ZIPAIRのコックピットで使われ始めた点は印象的です。実際の運航の場で使われることが、予測の価値を試す機会になります。

航空会社の運航現場での利用が増えるほど、乱気流の報告と予測を照らし合わせる機会も増えます。同社の研究領域である乱気流予測は、導入先の広がりに将来性がうかがえる分野です。同社のこれからの歩みが注目されます。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら

この企業について、
もっと深く知りたい方へ

パートナーシップ・お問い合わせはこちらから。