浜松カーボニクス株式会社|長さ最大3mmの長繊維カーボンナノチューブを開発する静岡大学発ディープテック

浜松カーボニクス株式会社

浜松カーボニクス「長繊維CNT」を研究|研究領域=長さ最大3mmのCNT/強み=紡績糸やシートに加工/将来性=電池や放熱部材に応用

企業紹介|浜松カーボニクスとは?

電池や放熱部材の性能を左右する素材として、注目を集める「長繊維CNT」。浜松カーボニクス株式会社は、その社会実装を目指す、静岡大学発の素材系ディープテック企業です。結合剤を使わずに紡績糸やシートへ加工できるカーボンナノチューブを、電池電極や放熱部材の開発現場へ提供しています。

キーワード「長繊維CNT」(長繊維カーボンナノチューブ)

「長繊維CNT」は、直径数十ナノメートルのまま長さを最大3mmまで伸ばした多層カーボンナノチューブです。特徴は、結合剤不要で紡績糸や自立シートへ加工できる点にあります。電池の電極や放熱部材の試作現場で、導電性や熱伝導性を高める素材として活用できます。

市場課題|高出力化する電子機器の熱と電気

現状のCNTの課題|現状は、粉末で配向がそろわず性能が伝わらない/高出力化で放熱・導電が重荷/粉末状CNTは配向がそろわない

高出力化で放熱・導電が課題に

EV(電気自動車)の普及や電子機器の高出力化により、電池電極や放熱部材に求められる導電性・熱伝導性の水準は高まっています。こうした部材の多くは、金属や樹脂に粉末状のカーボンナノチューブ(CNT)を混ぜ込む方法で作られています。確立された手法である一方、粉末を均一に分散させること自体が難しく、CNT本来の性能を引き出しにくいことが大きな課題です。

粉末状CNTは向きが不ぞろい

粉末状のCNTは、長さが数マイクロメートルと短く向きもそろわないため、性能を発揮しきれないまま使われているケースが少なくありません。樹脂や金属に混ざる向きがそろわないと、本来の導電性・熱伝導性を伝えきれないからです。一方で、軽量化と高出力化への対応から、素材そのものの性能を底上げすることも求められています。

他にも、粉末を均一に分散させる工程の手間、糸やシートへの加工しやすさ、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 放熱部材電子機器の内部で発生する熱を外部へ逃がすために使う部品や材料を指す。高出力化が進むほど重要性が増す。

浜松カーボニクスの強み|「長繊維CNT」を研究

浜松カーボニクスが「長繊維CNT」を研究|今後は、結合剤なしで紡績糸に加工が可能に/配向そろうCNTを紡績し長繊維に/結合剤なしで糸やシートに

長く合成し引き出し紡績

従来の粉末状カーボンナノチューブは、長さが数マイクロメートルにとどまり、向きもそろわないという課題がありました。

浜松カーボニクスの「長繊維CNT」は、基板上に垂直に、直径数十ナノメートルのまま長さ最大3mmまで合成したカーボンナノチューブの集合体(アレイ)です。隣り合うカーボンナノチューブどうしが引き合うファンデルワールス力を使ってアレイの端から連続して引き出せるため、そのまま紡績して一方向にそろえられます。伸ばしたアスペクト比(長さと太さの比率)は約75000対1に達し、向きがそろうことで電気や熱の伝わる経路が途切れにくくなり、本来の導電性・熱伝導性を発揮できるようになります。

結合剤不要の紡績加工

従来の粉末状カーボンナノチューブでは、糸やシートに加工する際に結合剤(バインダー)が欠かせず、それが導電性や熱伝導性を妨げる課題でした。

長繊維CNTは、引き出したカーボンナノチューブどうしがファンデルワールス力で結び付くため、結合剤を必要としません。静岡大学工学部の井上翼教授の研究グループは、この技術をもとに紡績糸やシート、分散液など多彩な加工手法を確立してきました。浜松カーボニクスは、ニーズに応じたカスタム開発にも対応しています。結合剤の分だけ性能を薄めていた従来の弱点が解消され、電池電極や放熱部材の開発現場でカーボンナノチューブ本来の導電性・熱伝導性をそのまま活用できるようになります。

FrontJournalの解説
  • ファンデルワールス力分子どうしがごく近い距離で引き合う弱い力を指す。長繊維CNTでは、この力が繊維どうしを結び付け、結合剤を不要にする。

長繊維CNTの未来|素材産業への応用

軽量な長繊維CNTが変える未来|電池や放熱部材への応用が進む/軽量高強度素材やセンサーに展開/構造材料としての実用化を目指す

電池や放熱部材への応用が進む

長繊維CNTは、電池電極や放熱部材といった電子機器を構成する部材に応用できる素材です。紡績糸や分散液、シートなど、用途に合わせた形状で提供できる点が強みです。たとえば、電池の電極では導電性を高める材料として、放熱部材では熱伝導性を高める添加材として使えます。いずれも、電子機器の高出力化と軽量化に関わる部材です。

軽量高強度素材やセンサーへ展開

長繊維CNTは、長さと配向性を生かして軽くて強い素材やセンサー素子への応用が研究されています。浜松カーボニクスは、アレイ・シート・分散液・糸と幅広い製品ラインアップを持ち、用途に応じたカスタム開発にも対応します。次世代ケーブルをはじめ、軽量高強度素材、微小な変化を検知するセンサー素子といった領域が対象です。長さと配向性を両立したカーボンナノチューブならではの用途が広がりつつあります。

構造材料としての実用化を目指す

自動車や航空機の軽量化を求める動きは、輸送機器の業界で広がっています。その現場で期待されているのが、軽量化につながる素材「長繊維CNT」です。静岡大学発の浜松カーボニクスは、長さと配向性を両立したカーボンナノチューブで、国内の素材産業を支える役割を目指しています。

会社概要|浜松カーボニクス株式会社

静岡大学の研究から事業化

浜松カーボニクス株式会社は、2010年11月に静岡県浜松市で設立されました。創業の中心となったのは、静岡大学工学部の井上翼教授です。長年にわたり大学で進めてきた長繊維カーボンナノチューブの研究成果を、産業へ応用することを目的としています。代表取締役には2013年10月より井上翼氏が就任し、研究と経営の両方を担っています。

展示会と通販サイトで発信

浜松カーボニクスは、製品の認知拡大に向けた発信を続けています。ナノテクノロジー展示会「nano tech」に出展し、カーボンナノチューブ製品を来場者へ紹介してきました。あわせて、製品を産業向け通販サイトや技術情報サイトの企業カタログにも掲載し、電池・放熱部材の開発現場から直接問い合わせを受けられるようにしています。

製品販売を軸とした事業運営

浜松カーボニクスは、資本金995万円で運営される独立系のディープテック企業です。収益の柱は、アレイ・シート・分散液・糸といったカーボンナノチューブ製品の販売と、顧客のニーズに合わせたカスタム開発です。あわせて、カーボンナノチューブの活用に関するコンサルティングや受託開発も手がけています。

会社情報

会社名浜松カーボニクス株式会社
所在地静岡県浜松市中央区和地山3丁目1番7号 浜松イノベーションキューブ319号室
設立2010年11月12日
代表井上 翼(代表取締役・静岡大学工学部教授)
資本金995万円
事業カーボンナノチューブおよび複合材の開発・製造・販売。製造装置・周辺機器の開発・製造・販売。生産技術・評価技術・関連ソフトウェアの開発・販売。カーボンナノチューブ利用のコンサルティングおよび受託開発
技術領域長繊維カーボンナノチューブ、CNTウェブ引き出し法、紡績技術、導電性材料、熱伝導性材料
連携静岡大学工学部 井上翼研究室
URLhttps://www.hamanics.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

カーボンナノチューブは、軽さと強さ、電気や熱の伝わりやすさを併せ持つ素材として長く期待されてきました。しかし粉末のまま使うだけでは、その性能を十分に引き出せていませんでした。向きをそろえて長く伸ばすという発想が、素材の可能性をもう一段引き上げようとしています。

浜松カーボニクスが目指すのは、研究室で生まれた技術を、単なる実験室の成果で終わらせず電池や放熱部材の開発現場で使える製品として届けることです。結合剤なしで糸やシートへ加工できる点は、これらを製造する現場にとって扱いやすい素材のかたちだといえます。静岡大学発のベンチャーが、素材産業の足元を支える存在になりつつあります。

静岡大学発の浜松カーボニクスが磨く一本の繊維が、次世代の電池や電子機器を陰で支える日は、そう遠くないかもしれません。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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