キノテック「亜鉛リサイクル」を開発

株式会社キノテック

キノテック「亜鉛リサイクル」を開発|研究領域=電炉ダストの・亜鉛を回収/強み=電気分解で・高純度に回収/将来性=電炉工場内で・資源を循環

企業紹介|株式会社キノテックとは?

鉄スクラップを溶かす電気炉から出る粉じんに含まれる亜鉛を、再び高純度の金属として取り出す「亜鉛リサイクル」。株式会社キノテックは、その社会実装を目指す、環境・素材系のディープテック企業です。同社は「新キノテック法」を開発し、パイロットプラント(実用化に向けた試験設備)で純度99.995%の亜鉛を製造しました。

キーワード「亜鉛リサイクル」

亜鉛リサイクルは、電炉ダスト(鉄スクラップを電気炉で溶かすときに出る粉じん)の亜鉛を、高純度の金属として再び使えるようにする取り組みです。同社の「新キノテック法」は、ダストの亜鉛をアルカリ性の液に溶かし、電気分解で取り出します。従来の方法より、コークスによる還元を1回に減らせると、同社は説明しています。

市場課題|電炉ダストの亜鉛が埋め立てに回る

現状の電炉ダスト処理の課題|現状は、炎を使う処理で負担が大きい|ウェルツ法は・炎とコークスに依存/採算が合わず・埋立処分に

ウェルツ法は炎とコークスに依存

電炉ダストから亜鉛を取り出す方法は、ウェルツ法(コークスで還元して亜鉛を回収する、炎を使う方法)が主流です。ウェルツ法は、コークスによる還元を2回行い、炎で加熱するため、エネルギーを多く使います。エネルギーの負担が重いままでは、回収にかかる費用が下がらず、リサイクルが広がりにくくなります。

採算が合わず埋立処分に

電炉ダストは、採算が合わないために、世界各地で埋め立てられています。特別管理産業廃棄物(処理に厳格な管理が求められる廃棄物)にあたり、亜鉛精錬所へ運ぶ負担も重い状況です。このまま埋め立てが続くと、資源としての亜鉛が失われ続けます。

他にも、世界で進む亜鉛資源の枯渇への懸念、従来の方法では得にくい高純度の亜鉛、ダストに含まれる鉄資源の再利用が進みにくいこと、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 電炉ダスト鉄スクラップを電気炉で溶かす際に出る粉じんを指す。亜鉛を含み、現在は特別管理産業廃棄物として扱われる。

キノテックの強み|「亜鉛リサイクル」を開発

キノテックが「亜鉛リサイクル」を開発|これまでに、電気で高純度亜鉛の製造を実現|電気で取り出し・還元は1回に/電炉工場内で・亜鉛と鉄を回収

電気で還元を1回に減らす

従来のウェルツ法は、コークスと重油を燃やして加熱するため、燃料に由来する二酸化炭素が出ます。

同社の「新キノテック法」は、直接アルカリ浸出電解法(アルカリ性の液でダストの亜鉛を溶かし出し、電気分解で取り出す方法)です。コークスによる還元は1回で済み、炎も使いません。加熱に使うコークスと重油を電気に置き換えるため、燃料の燃焼による直接の二酸化炭素排出(スコープ1)はゼロと、同社は説明しています。高純度の亜鉛を得られるため、これまで埋め立てられていたダストから、品質の高い亜鉛を再び使えるようになります。

電炉工場内で亜鉛と鉄を回収

従来の方法では、電炉ダストを亜鉛精錬所へ運んで処理するため、運搬の負担がかかります。

同社の設備はコンパクトで、電炉工場の敷地内に設置できる設計です。そのため、ダストを亜鉛精錬所へ運ぶ手間を、設置した工場内で省けます。処理後に残る残渣は主に鉄で、再利用でき、亜鉛とあわせて鉄の原料も回収できる点が特徴です。この仕組みは、埋め立てと亜鉛資源の枯渇という課題の緩和につながると、同社は説明しています。鉄鋼メーカーにとっては、ダストの運搬や埋立処分に頼らず、自社の敷地内で亜鉛と鉄の資源を回収する道が開けます。

FrontJournalの解説
  • 電気分解液に電気を流し、溶けている金属を電極の表面に取り出す方法。亜鉛などの金属を、高い純度で得られる性質がある。

亜鉛リサイクルの未来|電炉の現場で資源を循環

亜鉛リサイクルが変える未来|電炉工場の敷地内で資源を回収|純度99.995%の・亜鉛を製造/商用化に向け・データを整理/電炉工場での・導入を目指す

純度99.995%の亜鉛を製造

同社は、パイロットプラントで、LME特級(Special High Grade)の基準を満たす純度99.995%の亜鉛を製造し、2026年6月4日に発表しました。LME(ロンドン金属取引所)は非鉄金属の国際的な取引所で、亜鉛にも品質の基準を設けています。電炉ダストを原料とする方法で、この基準に届く純度が得られました。電炉ダストから、この基準の純度の亜鉛を得られることが、試験設備で確かめられた段階です。

商用化に向けてデータを整理

商用化に向けて、同社はパイロットプラントで得たデータの整理を進める方針です。そのデータをもとに、設備の設計、費用の評価、規模を拡大する場合の検討を行います。費用の評価は、リサイクルが採算に合うかを確かめる作業です。これらの結果は、電炉工場が処理方法を比較して選ぶ際の判断材料になります。

電炉工場での導入を目指す

電炉工場の敷地内に設置できる設備として、同社は事業化を目指す方針です。亜鉛と鉄の原料を同時に回収できれば、埋め立てに回る電炉ダストを減らせると、同社は説明しています。回収した亜鉛は、亜鉛資源の枯渇への対応にもつながるとされています。実現すれば、電炉の現場でダストを資源として回収し、循環させる選択肢が加わるという変化です。

会社概要|キノテックの事業内容・沿革

設立と経営体制

株式会社キノテックは、2002年4月4日に設立されました。事業は、鉄鋼の電気炉で出る電炉ダストに含まれる亜鉛から、純度99.995%の電気亜鉛を製造する技術の研究開発です。同社は、電炉ダストの亜鉛を電気で取り出す「新キノテック法」の開発を軸に、事業を進めています。代表取締役は拝生憲治で、2026年6月10日に就任しました。

NEDO採択と出資・連携

2021年度の公募で、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム」に、「アルカリ浸出法による電炉ダストからの亜鉛リサイクルプロセスの開発」が採択されました。2023年3月27日にはNEDOのステージゲート審査(次の段階へ進む可否の審査)を通過し、事業費が約9億円とされるパイロットプラントの計画に進んでいます。2024年9月には、トピー工業が同社へ出資し、共同研究を始めました。

東京・日本橋に本社を置く

同社の本社は、東京都中央区日本橋にあります。事業内容は、電炉ダストの亜鉛を電気で高純度の金属として取り出す技術の研究開発です。所在地は、第二東洋ビル5階です。

会社情報

会社名株式会社キノテック
所在地〒103-0027 東京都中央区日本橋2-1-21 第二東洋ビル5F
設立2002年4月4日
代表代表取締役 拝生 憲治
事業電炉ダストに含まれる亜鉛から、純度99.995%の電気亜鉛を製造する技術の研究開発
技術領域新キノテック法(直接アルカリ浸出電解法)。亜鉛リサイクル。電炉ダスト処理
連携トピー工業(出資・共同研究、2024年9月〜)
採択NEDO「脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム」採択(2021年度公募)/NEDOステージゲート審査通過(2023年3月27日)
URLhttps://www.kinotech.jp

編集後記|FrontJournal編集部より

電炉ダストは、鉄を再生する電気炉の工場で出る粉じんで、ふだん目にする機会はほとんどありません。それでも、そこに含まれる亜鉛を資源として取り戻せるかどうかは、製鋼の現場にとって重い課題です。電気で亜鉛を取り出す発想が目を引きます。

株式会社キノテックは、「新キノテック法」を、パイロットプラントで純度99.995%の亜鉛を製造する段階まで進めた企業です。コークスによる還元を1回に減らし、電炉工場の敷地内に設置できるコンパクトな設備を掲げています。パイロットプラントでの成果が、導入の土台になり得ます。

商用化に向けたデータの整理や設備の設計はこれからですが、廃棄物として埋め立てられてきたダストが資源に変わる可能性があります。同社のこれからの歩みは、注目したい取り組みです。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら

この企業について、
もっと深く知りたい方へ

パートナーシップ・お問い合わせはこちらから。