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株式会社ライブセルダイアグノシス

ライブセルダイアグノシス「分泌のリアルタイム可視化」を開発

企業紹介|株式会社ライブセルダイアグノシスとは?

生きた細胞が出す物質を、出たときから連続して捉える「分泌のリアルタイム可視化」。株式会社ライブセルダイアグノシスは、その社会実装を目指す、東京大学発のバイオ・ヘルスケア系ディープテック企業です。同社は、倒立顕微鏡に取り付けて分泌を観察するモジュール「Live Fluorospot」を提供しています。

キーワード「分泌のリアルタイム可視化」

細胞は、サイトカイン(免疫細胞が出す情報伝達物質)や抗体を分泌(細胞が物質を外へ出すこと)して、互いに情報をやり取りしています。「分泌のリアルタイム可視化」は、この分泌が起きる瞬間と量を、生きた細胞のまま時間を追って観察する方法です。同社は、この観察を「LCI-S」と呼ぶ技術で実現しています。

市場課題|細胞の分泌は一度の測定では経過が見えない

現状の終点測定の課題

分泌のタイミングが見えにくい

細胞の分泌は、始まる時刻や量が細胞ごとに異なるため、一度の測定ではタイミングが見えにくくなります。従来の測定は、一定時間後に量を測る終点測定(エンドポイントアッセイ)が中心で、一過性の反応は見逃されやすいといわれています。ELISPOT(酵素免疫スポット法)でも、「いつ・どれくらい」の分泌かを時系列で解析するのは困難です。

細胞ごとの違いが平均に埋もれる

細胞集団をまとめて測る方法では、個々の細胞の反応が平均に混ざります。同じ集団の中に、反応の速い細胞と遅い細胞、分泌の多い細胞と少ない細胞が含まれていても、違いは読み取りにくくなります。細胞ごとの機能の違いを手がかりにする研究では、判断材料が不足しがちです。

他にも、分泌と細胞の動きとの対応づけ、分泌した細胞だけを選んで取り出す難しさ、長時間の観察で細胞にかかる負担、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 終点測定一定時間の培養のあとで、分泌された物質の量を1回だけ測る方法である。反応の途中経過は記録されず、分泌が始まった時刻や最も多く出た時刻は分からない。

ライブセルダイアグノシスの強み|「分泌のリアルタイム可視化」を開発

ライブセルダイアグノシスが「分泌のリアルタイム可視化」を開発

分泌の経過を連続して記録

終点測定では、一定時間後の量しか分からず、分泌の途中経過が記録されません。

同社の「LCI-S」は、全反射蛍光顕微鏡(ガラス面の近くだけを照らす顕微鏡)と蛍光サンドイッチイムノアッセイ(2つの抗体で物質を挟んで光らせる検出法)を組み合わせた技術です。ガラス表面に生じるエバネッセント光はガラス面の近くにしか届きません。そのため、抗体に捕捉された分泌物だけが光り、培養液中の背景光が抑えられます。この仕組みにより、洗浄操作なしでも微量の分泌物を検出し、分泌の開始時刻やピークを動画で記録できる点が特徴です。研究者は、分泌の速さや量の経過を、実験の途中で確認できるようになります。

細胞ごとの反応量を定量

集団全体の平均値だけでは、細胞ごとの反応の違いまでは読み取れません。

「Live Fluorospot」は、倒立顕微鏡に取り付けるモジュールで、細胞ごとの反応量とタイミングを定量する製品です。光学ガラスと樹脂でできた専用チップの内部に光学設計を施し、不要な光を除いて、広い視野を均一に照らします。エバネッセント光は細胞への光の負担が小さく、細胞の良好な状態を保ったまま長時間観察できるのが利点です。細胞ごとの動きと分泌を同時に記録できるため、研究者は、平均値に隠れていた細胞ごとの違いを、1つの視野で比べられるようになります。

FrontJournalの解説
  • エバネッセント光光が屈折率の異なる境界面で全反射するときに、境界の向こう側へ染み出す光である。届く深さは波長程度に限られ、ガラス表面の近くだけを照らす。

分泌の可視化の未来|免疫・創薬研究から個別化医療へ

分泌のリアルタイム可視化が変える未来

免疫研究の論文で活用

同社の技術を使った研究が、2025年11月に国際学術誌のNature Immunologyで公開されました。同誌の解説記事では、少数の機能的な細胞に着目する方法論が紹介されています。2026年4月には、「Live Fluorospot」が第38回中小企業優秀新技術・新製品賞の優秀賞を受けました。

抗体産生細胞の選抜に挑戦

2026年7月、同社の研究開発が、埼玉県の新技術・新製品開発支援補助金事業に採択されました。課題名は「分泌機能に基づく抗体産生細胞の非破壊選抜プラットフォームの開発」で、期間は2027年2月までです。九州大学との共同研究では、LCI-Sで抗体の分泌を可視化し、分泌状態で選んだ1細胞を回収して、遺伝子発現の解析につなげました。選抜の基準に、分泌という機能そのものを置く試みです。

個別化医療への応用を目指す

同社の技術は、個別化医療への応用が期待されています。応用先の1つが、細胞製剤(細胞を使った治療用の製品)の開発で、実際に機能する細胞を選び出す用途です。現在は顕微鏡搭載のモジュールとして提供しており、より小型で操作しやすい版や、量産に向けたLCI-S用の光学チップの改良に取り組んでいます。分泌の違いを患者ごとに把握できれば、治療の選び方を見直すための手がかりになり得ます。

会社概要|ライブセルダイアグノシスの事業内容・設立背景

理研と東大の技術を社会実装

株式会社ライブセルダイアグノシスは、2019年6月に設立された企業です。理化学研究所と東京大学で開発された「生きた細胞の機能を観察する技術」を、社会に届けることを目的に設立されました。LCI-Sは、東京大学の白崎善隆准教授の主導で開発された技術です。LCI-Sの技術は、東京大学との共同研究に基づき特許化され、同社が独占的実施許諾を得ています。代表取締役は山岸舞氏です。

採択・連携

技術顧問には、九州大学大学院工学府の佐久間臣耶准教授が就いています。同賞では、白崎准教授が産学官連携特別賞を受賞しました。同年7月には、埼玉県の補助金事業と、社会課題の解決に資する試作品実証補助金事業の、2件に採択されています。同年9月には、九州大学との共同研究の成果が、学術誌のSensors and Actuators B: Chemicalに掲載されました。

製品とサービス

事業は、細胞の声を聴き活用するための装置や部品の開発、製造、販売です。製品は、分泌を可視化する「Live Fluorospot」、反応した細胞を見つける「Live Cell Scouter」、狙った1細胞を回収する「Live Cell Collector」の3種です。細胞の声を聴き活用するためのコンサルティング業務も手がけています。

会社情報

会社名株式会社ライブセルダイアグノシス(Live Cell Diagnosis, Ltd.)
所在地埼玉県朝霞市東弁財3丁目15-3(川口ラボ:埼玉県川口市並木4丁目)
設立2019年6月26日
代表代表取締役 山岸舞
資本金500万円
事業細胞の声を聴き活用するための装置、部品の開発、製造および販売。コンサルティング業務
技術領域生きた細胞の分泌をリアルタイムに可視化する技術(LCI-S)
連携東京大学、九州大学
採択第38回中小企業優秀新技術・新製品賞 優秀賞(2026年4月)。埼玉県新技術・新製品開発支援補助金(2026年度)。社会課題の解決に資する試作品実証補助金(2026年度)
URLhttps://lcd.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

細胞が何を、いつ、どれだけ出すかを、生きたまま連続して追える点が、この技術の特徴です。同社が掲げる「細胞の声を聴く」は、分泌という時間の経過を伴う現象を、動画として読み取ることだといえます。分泌の経過が見えれば、細胞の機能を捉える手がかりが増えます。

とくに注目したのは、反応した細胞を見つける「Live Cell Scouter」と、狙った1細胞を回収する「Live Cell Collector」が、観察用の「Live Fluorospot」と並んで製品化されている点です。九州大学との共同研究では、分泌状態で選んだ1細胞を回収して遺伝子発現の解析につなげており、観察から解析までの流れが示されています。各製品の仕様は、今後の公開を待ちたいところです。

分泌の違いを患者ごとの治療に生かす日が来るのかを、今後の研究成果とともに見守りたい取り組みです。製品の小型化や量産に向けた改良が進めば、利用できる研究現場も広がる可能性があります。まずは、公開される成果を丁寧に追っていきます。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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