ReeNT「鼻腔粘膜細胞シート」を開発

株式会社ReeNT(リエント)

ReeNT「鼻腔粘膜細胞シート」を開発|課題=手術で粘膜が失われ再発の懸念がある/強み=本人の細胞で粘膜の再生を図る/未来=承認取得と適応症の拡大を目指す

企業紹介|ReeNTとは?

患者本人の鼻の粘膜から作ったシートで、傷んだ中耳の粘膜を再生させる医療の研究が進む「鼻腔粘膜細胞シート」。株式会社ReeNTは、その社会実装を目指す、東京慈恵会医科大学発の再生医療系ディープテック企業です。中耳真珠腫という難治性の病気を対象にした細胞シートを開発し、国内での承認取得を目指しています。

キーワード「鼻腔粘膜細胞シート」

鼻腔粘膜細胞シートは、鼻腔(鼻の内側の空間)の粘膜から採った細胞を加工し、薄いシート状にした再生医療の製品として開発されているものです。患者本人の細胞を使い、移植して傷んだ中耳の粘膜の再生を図ります。開発は、東京慈恵会医科大学の研究を基に、ReeNTが進めています。

市場課題|中耳真珠腫は手術で粘膜が失われ再発の懸念がある

現状の中耳真珠腫の課題|皮膚組織が中耳に入り込む/再発を防ぐ手段が定まらない

皮膚組織が中耳に入り込む

中耳真珠腫は、皮膚の組織が鼓膜の奥の中耳に入り込む病気です。病変は周囲の組織や骨を少しずつ壊しながら進行し、難聴などを引き起こします。耳漏(耳だれ)、めまい、顔面神経麻痺も起こし、進行すると髄膜炎(脳を包む膜の炎症)などの重い合併症に至ることもあります。

再発を防ぐ手段が定まらない

根治が見込める治療は手術のみですが、手術でも再発を確実に防ぐ方法は確立されていません。病変を取り除く際には正常な中耳粘膜も失われ、骨が露出します。すると肉芽(傷を埋める組織)ができて、中耳の空間がふさがり、気圧の調整ができなくなります。再発のリスクが懸念される状況です。

他にも、術後に聴力が低下するおそれがあること、手術の方法が統一されていないこと、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 中耳真珠腫鼓膜の奥の中耳に皮膚組織が入り込み、周囲の組織を壊す病気を指す。難聴やめまいなどを起こし、根治には手術を要する。

ReeNTの強み|「鼻腔粘膜細胞シート」を開発

ReeNTが「鼻腔粘膜細胞シート」を開発|本人の鼻粘膜でシートを作製/移植して中耳の空間維持を図る

本人の鼻粘膜でシートを作製

従来の手術は病変を取り除くことが中心で、失われた中耳の粘膜を元に戻すところまでは担えません。

ReeNTが開発する鼻腔粘膜細胞シートは、患者本人の鼻腔の粘膜から採った細胞を加工して作ります。製品としての呼称は「自家鼻腔粘膜上皮細胞シート」です。「自家」は患者本人に由来することを意味し、他人の細胞を使う場合と区別されます。実用化されれば、粘膜を失った患者に、本人の細胞を使って中耳の粘膜の再生を図る治療を届けられるようになります。ReeNTの開発の基になったのは、東京慈恵会医科大学の研究です。

移植して中耳の空間維持を図る

手術のあとの中耳は、失われた粘膜が戻らないまま空間がふさがるおそれがあります。再発や聴力低下の懸念も残されており、粘膜をどう補うかが課題です。

ReeNTのシートは、手術のあとの中耳に移植して使う製品として開発されています。移植したシートで粘膜が再生すれば、中耳の空間がふさがるのを防ぎ、空気が通りやすい(換気される)状態への改善も目指せます。2014年から2019年にかけて行われた臨床研究では、有害事象(治療に伴う好ましくない出来事)や合併症は認められませんでした。手術後の再発や聴力低下に悩む患者にとっては、承認を得ることで治療の選択肢が増えます。

FrontJournalの解説
  • 自家鼻腔粘膜上皮細胞シート患者本人の鼻腔粘膜の上皮細胞(粘膜の表面をおおう細胞)を材料に作るシートを指す。「自家」は本人由来を意味し、他人の細胞を使う「他家」と区別される。

鼻腔粘膜細胞シートの未来|耳鼻咽喉科の再生医療への応用

中耳の再生医療が変える未来|臨床研究から治験へ進む/製造支援を受け承認取得を目指す/適応症の拡大を目指す

臨床研究から治験へ進む

鼻腔粘膜細胞シートは、人での検証が進められてきました。東京慈恵会医科大学では、2014年に臨床研究が始まっています。2021年11月には、聖マリアンナ医科大学との2施設共同で、医師主導治験(医師が主体となって行う、承認申請のための試験)が始まりました。

製造支援を受け承認取得を目指す

実用化に向けては、製造と流通の面で提携先の支援を受ける計画です。2026年5月、ReeNTはアルフレッサ ホールディングスとの資本業務提携(出資を伴う業務上の協力関係)を深め、追加出資を受け入れる契約を結びました。支援を受ける領域は、臨床開発、製造、流通です。ReeNTは、鼻腔粘膜細胞シートの有効性と安全性が確認できた場合に、耳鼻咽喉科領域で日本初の再生医療製品としての製造販売承認(国内で製品を販売するための国の承認)の取得を目指しています。

適応症の拡大を目指す

ReeNTが目指すのは、最初の適応症(治療の対象とする病気)である中耳真珠腫から、対象を広げることです。2022年のシリーズA(創業後の最初の本格的な資金調達)の発表では、癒着性中耳炎(中耳の組織が癒着する病気)や副鼻腔炎(鼻の周りの空洞の炎症)などへの適応拡大と、海外展開を掲げました。最初の適応症での承認取得が、その出発点になります。実現すれば、耳や鼻の粘膜の病気に悩む人が、粘膜を再生させる新しい治療を選べるようになる可能性があります。

会社概要|ReeNTの事業内容・設立背景

慈恵大の研究を事業化

ReeNTは、2021年8月27日に設立された東京慈恵会医科大学発のスタートアップで、代表取締役は森野常太郎氏です。同大学の耳鼻咽喉科学教室では、中耳粘膜の再生に着目した研究が約20年続けられてきました。同社は、この研究成果の社会実装を担います。

事業は、耳鼻咽喉科領域における再生医療製品の研究・開発です。本社は東京都港区にあります。主な製品候補は、患者本人の鼻腔粘膜から作る自家鼻腔粘膜上皮細胞シートです。

公的プログラムへの採択

ReeNTは、川崎市などが主催する「Kawasaki Deep Tech Accelerator」の2022年度の支援対象に採択され、2023年3月の最終ピッチにも登壇しました。2023年には、特許庁の「知財アクセラレーションプログラム(IPAS2023)」にも採択されています。IPAS2023は、特許庁が主催するスタートアップ向けの知財戦略構築支援プログラムです。

シリーズAと6億円の追加出資

資金面では、2022年9月にシリーズAの資金調達を実施しました。この発表では、第一に目指す適応症を中耳真珠腫としています。出資した投資家は、ニッセイ・キャピタル12号投資事業有限責任組合と三菱UFJライフサイエンス3号投資事業有限責任組合です。

2026年5月の6億円の追加出資により、2024年に提携したアルフレッサ ホールディングスの持株比率は、出資後は16.1%になります。ReeNTは、この資金を鼻腔粘膜細胞シートとその後継品の研究、開発、製造、承認取得に充てます。

会社情報

会社名株式会社ReeNT(リエント)
所在地東京都港区西新橋3-25-47 愛宕マークビル9階
設立2021年8月27日
代表森野 常太郎(代表取締役)
調達シリーズA(2022年9月)。アルフレッサ ホールディングスから6億円の追加出資(2026年5月に契約締結)
事業耳鼻咽喉科領域における再生医療製品の研究・開発。自家鼻腔粘膜上皮細胞シート(患者本人の鼻腔粘膜から作る細胞シート。中耳粘膜の再生を目指す)を開発中
技術領域再生医療、細胞シート、耳鼻咽喉科、中耳疾患
連携アルフレッサ ホールディングスと資本業務提携(2024年締結、2026年に深化)
採択Kawasaki Deep Tech Accelerator 採択(2022年度)/知財アクセラレーションプログラム IPAS2023 採択(2023年)
URLhttps://reent.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

耳の奥の病気の治療は、手術で病変を取り除くことが中心で、取り除いたあとに粘膜が失われる難しさを抱えてきました。ReeNTは、その失われた粘膜を患者本人の鼻の粘膜から補うという発想で、治療の次の段階に取り組んでいます。同社は、2026年5月にアルフレッサ ホールディングスから6億円の追加出資を受け入れる契約を結びました。

同社の取り組みは、研究室の成果を医療の現場へ届ける試みです。大学での約20年の研究が基礎にあり、承認取得に向けた製造や流通の支援を提携先から受ける計画もあります。再生医療が耳鼻咽喉科の領域でどこまで広がるかを考える手がかりになります。

患者本人の細胞で中耳の粘膜を取り戻す治療が、承認を経て広く届くかどうかが、今後の焦点です。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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