ゼネシス「海洋温度差発電」を研究|海の表層水と深層水の温度差で発電する装置を描いたイラスト

株式会社ゼネシス

ゼネシス「海洋温度差発電」を研究|研究領域=海水の温度差で・発電する装置/強み=天候に左右されず・安定して供給/将来性=久米島から・海外の島々へ

企業紹介|株式会社ゼネシスとは?

海の表層と深層の水温の差を使って電気を得る技術として、取り組みが続く「海洋温度差発電」。株式会社ゼネシスは、その装置と部品を手がける、佐賀県伊万里市の環境・エネルギー系ディープテック企業です。全溶接型のプレート式熱交換器(熱を伝える装置)も手がけ、発電設備や鉄鋼・化学などの工場向けに製造・販売しています。

キーワード「海洋温度差発電」

「海洋温度差発電」は、太陽に温められた表層の海水と、深くにある冷たい深層水の温度差で発電する方式です。沸点の低い作動流体(熱を受けて蒸発し、その蒸気でタービンを回す液体)を表層の海水で蒸発させ、タービンを回して発電します。同社は天候に左右されない安定した再生可能エネルギーとして、この方式の実用化に取り組んでいます。

市場課題|天候に左右されない電源と、深層水の活用が求められている

現状の発電の課題|現状は、出力が天候に左右され深層水の取水量も限られる|天候で出力が・変わる再エネ/深層水の取水量に・限りがある

天候で出力が変わる再エネ

風力発電や太陽光発電は、天候に左右され、日照や風の強さで出力が変わる電源です。電力の供給を安定させるには、別の電源が必要になります。そのため、年間を通じて安定して電気を出せる再生可能エネルギーが求められます。

深層水の取水量に限りがある

沖縄県久米島町の「久米島海洋深層水複合利用基本調査」では、町内で多くの企業が海洋深層水を使い、特に水産分野では水温調節のため、夏場の使用量が取水量の限度近くに達しているとされています。そのため、大量の深層水を使う事業の拡大や、新たな養殖事業への参入が難しい状況です。久米島町は、深層水の取水量の増加と、再生可能エネルギーとして海洋温度差発電の導入を計画しています。

他にも、これまで利用されずに捨てられてきた200℃以下の低温排熱、海水や温泉水を扱う熱交換器の腐食や汚れへの対応、離島の脱炭素、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 深層水太陽光が届きにくい深い海にある、冷たい海水を指す。表層の海水より温度が低く、海洋温度差発電では、表層の海水との温度差を使い、深層水は作動流体を冷やす低温側として働く。

ゼネシスの強み|「海洋温度差発電」の装置と熱交換器を開発

ゼネシスが「海洋温度差発電」を研究|現在は、温度差発電の装置と熱交換器を提供|海水の温度差で・安定して発電/ガスケット不使用の・熱交換器

海水の温度差で安定して発電

太陽光や風力は、天候に合わせて発電量が上下し、出力の安定が課題です。

同社は、海洋温度差発電(OTEC)の装置を開発しています。OTECでは、蒸発器で25〜30℃の表層水で作動流体を加熱して蒸発させ、タービンを回します。凝縮器では、深さ800〜1,000mから汲み上げた5〜7℃の深層水で冷やし、液体に戻してポンプで蒸発器へ送る仕組みです。汲み上げた深層水は、発電に使ったあとも、養殖や農業、地域冷房に活用できます。この方式は、天候に左右されず年間を通じて安定した電力を供給できるといわれています。

ガスケット不使用の熱交換器

従来のチューブ式の熱交換器は、設備が大きくなり、設置場所を多く取ります。

同社の「XPプレート」(製品名)は、ガスケット(すき間を密封する部品)を使わない、全溶接のプレート式熱交換器です。小型の金型を連続して多段にプレスし、大型の伝熱プレートを製造して、2000トンのプレスと1種類の金型で5〜450㎡の熱交換器に対応します。流路がまっすぐなワンパス構造のため、汚れにくく、圧力損失(流体が流れる際に失う圧力)も抑えられます。BTX(ベンゼン・トルエン・キシレン)の凝縮器では、同社の事例として、チューブ式4基を1基に置き換え、4階建ての建屋が不要になりました。

FrontJournalの解説
  • ワンパス構造熱交換器の中で、流体が入口から出口へ一方向に流れる構造を指す。流路が単純なため汚れが付きにくく、流れに伴う圧力の損失も小さくなり、ポンプの動力を減らせる。

海洋温度差発電の未来|久米島の実証から、海外の島々へ

海水の温度差が変える未来|久米島から島々へ、電気と産業を広げる|発電後の海水を・養殖に利用/大型の熱交換器の・性能を検証/海外の島々への・展開を目指す

発電後の海水を養殖に利用

同社は2016年7月、共同事業体として、沖縄県の委託事業「海洋温度差発電における発電後海水の高度複合利用実証事業」を受託しました。担当は、発電後の海水を複合利用するための配管システムの設計と、エネルギー収支の解析などです。2019年3月までは、実証設備周辺の海ぶどう養殖場とカキ養殖場で、発電後の海水を使う実証試験が行われました。深層水を発電や水産分野などで複合的に使うことは、「久米島モデル」とも呼ばれます。

大型の熱交換器の性能を検証

同社は、久米島で大型・並列式チタン熱交換器の製造と性能検証を行う実証事業に参加しました。この事業は、商船三井が代表事業者を務め、佐賀大学と共同で進めるもので、環境省の令和4年度の事業に採択されました。期間は2022年度から2024年度、規模は200kW発電相当分で、目的は海水からの大規模熱回収技術の確立です。実証設備の運営には、2022年4月から商船三井・佐賀大学・久米島町が参画しています。

海外の島々への展開を目指す

海外の島々への展開に向け、同社は調査を進めてきました。2023年9月から2026年2月まで、JICA(国際協力機構)の調査を代表社として受託し、久米島モデルの展開先として、パラオ・東ティモール・ソロモン諸島・モルディブを調べました。同社にとって初のJICA事業です。2025年5月からは、パラオの海洋深層水利用産業の民間投資促進に関する調査も、JICAから受託して実施しています。

会社概要|株式会社ゼネシスの事業内容・設立背景

酒造設備から温度差発電へ

株式会社ゼネシスは、1989年3月に里見産業株式会社として創立され、酒造システムを手がけてきました。1997年9月にエネルギー事業部を設け、海洋温度差発電に取り組み始め、2001年10月に現在の社名へ変更しています。2000年2月には、佐賀大学と海洋温度差発電装置などに関する国有特許の実施契約(専用実施権)を結びました。本店と温度差発電研究・開発センターは伊万里市にあり、社員数は役員を含めて11名(2026年5月1日現在)です。

久米島の実証設備と販売実績

同社は2012年7月、沖縄県の委託事業をIHIプラント建設・横河電機と受託し、久米島町の実証設備の発電ユニットと熱交換ユニットの設計・製造を担当しました。実証設備は、2013年3月に初めて発電し、2014年4月に沖縄電力と系統連系(送電網へつなぐこと)しました。2019年4月からは、沖縄県から維持管理業務を受託しています。熱交換器のXPプレートは、2011年6月から産業用に単体販売を始め、累計140基以上(2023年現在)です。

各地の研究事業に参画

同社は、2018年から2025年3月まで、マレーシア工科大学向けのハイブリッドOTEC実験設備を受託しました。2020年6月には、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の熱交換システムの実現可能性調査に、東京海洋大学・産業技術総合研究所と共同で採択されました。2021年3月には、佐賀県嬉野温泉に温泉水バイナリー発電装置(温泉水の熱で別の液体を蒸発させて発電する装置)を設置しています。200℃以下の排熱で発電する排熱温度差発電(DTEC)も手がけています。

会社情報

会社名株式会社ゼネシス(Xenesys Inc.)
所在地〒848-0121 佐賀県伊万里市黒川町塩屋字七ツ島5番91(本店・温度差発電研究・開発センター)
設立1989年3月(里見産業株式会社として創立。2001年10月に現社名へ変更)
資本金2億1,000万円
事業海洋温度差発電・排熱温度差発電(DTEC)の装置の設計・製造、全溶接型プレート式熱交換器「XPプレート」の製造・販売
技術領域温度差発電のプロセスエンジニアリング、熱交換器の設計・製造
連携佐賀大学(国有特許の専用実施権)。商船三井・佐賀大学(環境省事業)。IHIプラント建設・横河電機(沖縄県委託事業)
採択環境省 地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業(令和4〜6年度)。NEDO「耐腐食性を有しかつスケール成長を低減した熱交換システムに関する実現可能性調査」(2020年6月)
URLhttp://www.xenesys.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

海の表層と深層の温度差という、温度差を電気に変える発想に引きつけられました。風力や太陽光とは違い、天候に左右されない点が、この方式の大きな特徴です。実用化に向けて、装置の開発と実証が続いています。

印象に残ったのは、発電の装置だけでなく、熱交換器という部品の開発を軸に事業を続けている点です。久米島での実証から、発電後の海水の養殖利用、海外の島々での調査へと、取り組みが広がっています。装置と部品の両方を手がける点が、同社の持ち味だと感じました。

深層水を地域の資源として生かす「久米島モデル」が、国内外の島々でどこまで根づくのか、これからの展開に注目しています。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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