ノイルイミューン・バイオテック|山口大学発の「固形がん向けCAR-T」を開発するディープテック企業

ノイルイミューン・バイオテック株式会社

ノイルイミューン・バイオテック「固形がん向けCAR-T」を開発|研究領域=血液がん以外へ細胞治療を広げる/強み=免疫細胞をがんに集める/将来性=固形がんの治療の選択肢へ

企業紹介|ノイルイミューン・バイオテックとは?

臓器にできるがんを対象に、世界で開発が進む「固形がん向けCAR-T」。ノイルイミューン・バイオテック株式会社は、その社会実装を目指す、山口大学発のライフサイエンス系ディープテック企業です。CAR-T細胞に2種類の免疫調整物質を作らせ、体内の免疫細胞もがんへ呼び寄せる狙いの「PRIME技術」(T細胞の増殖と集積を促す技術)を基盤に、がん免疫療法を開発中です。

キーワード「固形がん向けCAR-T」

固形がん向けCAR-Tは、血液がんで実用化した細胞治療のCAR-T細胞療法を、血液がん以外の、臓器にできるがんへ広げる治療法です。患者のT細胞(がん細胞などを攻撃する白血球の一種)に、がんの目印を見分ける受容体の遺伝子を入れ、体外で増やして戻します。固形がんには細胞が届きにくく、その壁を越える技術の開発が続いています。

市場課題|固形がんへの効果と細胞の製造に課題

現状のCAR-T細胞療法の課題|現状は、固形がんへの効果が限定的で製造に時間がかかる/固形がんへの効果が限定的/長い培養で製造に時間

固形がんへの効果が限定的

CAR-T細胞療法は血液がんで承認が進んだ一方、固形がんでは十分な治療効果を示せていません。最初のCAR-T細胞療法は、2017年に米国で、2019年3月に日本で血液がんを対象に承認されました。固形がんを対象とするCAR-T細胞療法の承認は、2026年に中国で初めて出た1剤に限られ、このままでは多くの固形がんの患者がこの治療法を選びにくい状態が続きます。

長い培養で製造に時間

CAR-T細胞の製造には長い培養期間が必要で、投与までに日数がかかります。T細胞に遺伝子を入れた後、8〜14日ほど体外で増やすためです。多くの細胞は培養士の手作業で製造されており、品質の均一化と製造費の削減も難しい課題です。

他にも、がんの周りで免疫の働きを抑える腫瘍微小環境、その環境で攻撃を続けるうちに力が落ちるT細胞の疲弊、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 固形がん肺・胃・乳房・肝臓などの臓器や組織に塊(腫瘍)を形成するがんの総称である。白血病やリンパ腫のように血液や骨髄で増える血液がんと区別して呼ばれ、がんの多くを占める。

ノイルイミューン・バイオテックの強み|「固形がん向けCAR-T」を開発

ノイルイミューン・バイオテックが「固形がん向けCAR-T」を開発|今後は、免疫細胞の集結と製造短縮が可能に/2種の物質で免疫細胞を集結/製造期間を数日に短縮

2種の物質で免疫細胞を集結

従来のCAR-T細胞は固形がんの組織まで十分に届きにくく、がんの目印を持たないがん細胞には攻撃が及びにくい状態です。

同社の「PRIME技術」は、CAR-T細胞に遺伝子を加え、IL-7(T細胞の増殖と生存を助ける物質)とCCL19(T細胞や樹状細胞を呼び寄せる物質)を作らせる技術です。本来リンパ節で免疫細胞を集めるこの2つの物質をCAR-T細胞が作ると、がんの周りにも免疫細胞が集まりやすくなります。マウスの実験では、従来より多くの細胞ががん組織に集まり、マウス自身の免疫細胞も加わって、目印を持たないがん細胞の再発も抑えました。人でも同じ仕組みが働けば、治療できるがんの種類が広がると期待されています。

製造期間を数日に短縮

従来の製法では培養に8〜14日ほどかかり、その間は投与を始められません。

同社は、PRIME CAR-T細胞を短い期間で製造する「Swift PRIME」を開発しました。製造を始めてから3〜4日で、投与する細胞がそろいます。短期間で製造した細胞は、従来の製法による細胞と比べて、がん細胞への殺傷能力も高いことが示されています。培養期間の短縮は、細胞の製造費の削減にもつながる利点です。患者が治療を受けるまでの待ち時間も短くなり、固形がんの患者を含むより多くの人に、CAR-T細胞療法を届けやすくなります。

FrontJournalの解説
  • 樹状細胞体内に入った異物やがん細胞の断片を取り込み、その目印をT細胞に示して攻撃を始めさせる免疫細胞である。枝のような突起を伸ばした形から、この名で呼ばれる。

未来|固形がん向けCAR-Tががん治療の選択肢を広げる

固形がん向けCAR-Tが変える未来|乳がんや脳のがんへの応用を目指す/乳がんや卵巣がんで臨床試験/脳のがん膠芽腫へ応用/体内でT細胞の改変を目指す

乳がんや卵巣がんで臨床試験

PRIME技術を使った「NIB103」は、第I相臨床試験(少数の患者で安全性を確かめる試験)の段階にあります。NIB103は、トリプルネガティブ乳がんや卵巣がんなどに現れるメソテリン(がん細胞表面のたんぱく質)を目印にするCAR-T細胞です。2026年3月に患者への投与が始まり、同社はタカラバイオと国内での開発を進めています。固形がんへCAR-T細胞療法を広げる試みが、人への投与の段階に入りました。

脳のがん膠芽腫へ応用

同社は、Swift PRIMEを使う「NIB104」で、脳のがんの一種の膠芽腫への応用を進めています。NIB104が目印にするのは、膠芽腫の細胞に現れることがあるEGFRvIII(EGFRというたんぱく質の変異型)です。AMED(日本医療研究開発機構)の資金で、医師主導の臨床試験を準備しています。2028年に第I相臨床試験を始める予定で、脳のがんの治療選択肢を増やす狙いです。

体内でT細胞改変を目指す

次に目指すのは、患者の体内でT細胞をCAR-T細胞に改変する「in vivo CAR-T」の実用化です。T細胞に体内で直接CAR遺伝子を届けるため、体外での加工が要りません。同社は、東京大学と研究するナノポリマー(遺伝子を運ぶ微小な高分子)や、約1時間の感染でT細胞に遺伝子を入れる独自のウイルスベクター(遺伝子を運ぶ、病原性をなくしたウイルス)を使い、開発候補の選定を進めています。実用化すれば、体外での製造を待たずに治療を始められると期待されています。

会社概要|ノイルイミューン・バイオテック株式会社

山口大学の研究をもとに設立

ノイルイミューン・バイオテックは、国立がん研究センターと山口大学発のベンチャー企業として、2015年4月に設立されました。同年10月には、山口大学から次世代型CAR-T細胞の基盤技術について、独占実施許諾を得ています。代表取締役社長の玉田耕治氏は、山口大学大学院医学系研究科の免疫学講座の教授を兼ねています。事業は、自社が主導して新薬を生み出す「自社創薬」と、PRIME技術を他社にライセンスして開発を進める「共同パイプライン」(提携先と進める開発品群)の2本立てです。

製薬企業と組み開発を推進

同社は2017年8月に武田薬品工業と共同研究開発で提携し、2022年8月には中外製薬とライセンス契約を結びました。2024年9月にはタカラバイオと共同開発の業務提携を結び、NIB103の国内での開発を共に進めています。同社は武田薬品工業との共同研究で、PRIME CAR-T細胞が患者側の免疫細胞を活性化する仕組みを解析し、2026年8月に論文誌「PLOS One」で発表しました。

東証グロース市場に上場

同社は2023年6月、東京証券取引所グロース市場に上場しました。資本金は約40億円(2025年12月末時点)です。2026年9月には、岡三証券を割当先とする新株予約権の発行を決め、当初の行使価額で約13億円と見込む資金調達を予定しています。資金は、in vivo CAR-Tの研究開発、NIB103の臨床開発、NIB104の研究開発、次世代の製法の研究開発に充てる計画です。

会社情報

会社名ノイルイミューン・バイオテック株式会社(Noile-Immune Biotech Inc.)
所在地東京都港区芝大門2丁目12番10号
設立2015年4月
代表代表取締役社長 玉田耕治
事業CAR-T細胞療法を主とした新規がん免疫療法の開発。自社創薬と、PRIME技術のライセンスによる共同パイプラインの2本立て
技術領域PRIME技術(IL-7とCCL19を産生するCAR-T細胞)、Swift PRIME(短期間の製造)、in vivo CAR-T
連携山口大学(技術の独占実施許諾)、武田薬品工業(2017年に共同研究開発で提携)、中外製薬(2022年にライセンス契約)、タカラバイオ(2024年に共同開発の業務提携)、東京大学(ナノポリマーの共同研究)
URLhttps://www.noile-immune.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

CAR-T細胞療法は、血液がんで治療の風景を変えた一方、固形がんでは十分な治療効果が得られていない治療法でもあります。壁になっているのは、細胞ががんの塊まで届きにくいことです。ノイルイミューン・バイオテックの発想は、CAR-T細胞単独ではなく、患者の体にもともといる免疫細胞もがんの周りへ呼び寄せる点にあります。

固形がん向けCAR-Tには、ティーセルヌーヴォーのように、別の方法で開発を進める国内企業もあります。NIB103の臨床試験で、マウスで示された効果が人でどこまで再現されるのか。同社の今後の歩みに注目していきます。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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