エアロゲルファクトリ|千葉大学発の「シリカエアロゲル」を研究するディープテック企業

株式会社エアロゲルファクトリ

エアロゲルファクトリ「シリカエアロゲル」を研究|研究領域=網の目に空気を含む透明な固体/強み=屈折率と密度を作り分けて製作/将来性=素粒子と宇宙の研究を支える

企業紹介|エアロゲルファクトリとは?

網の目のすき間を空気が満たした、透明で非常に軽い固体の「シリカエアロゲル」。株式会社エアロゲルファクトリは、その社会実装を目指す、千葉大学発の素材系ディープテック企業です。素粒子の実験で粒子を見分ける光学材料や、宇宙で高速の微粒子を捕まえる材料として、透明な板状のシリカエアロゲルを受注製作しています。

キーワード「シリカエアロゲル」

シリカエアロゲルは、シリカ(ガラスの主成分である二酸化ケイ素)の微粒子が連なった網の目に、空気を含んだ物質です。ゾル-ゲル法(液体の原料を反応させてゲル状に固める方法)で得た湿ったゲルから、網の目を保ったまま液体を抜いて製造します。透明で軽く、製造条件で屈折率(光が物質中で曲がる度合い)を変えられる点が特徴です。

市場課題|素粒子実験と宇宙の微粒子捕集に合う材料が不足

現状の素粒子の検出と宇宙塵の捕集の課題|現状は、材料が限られ粒子の識別や捕集が難しい/粒子識別に合う物質が少ない/宇宙塵は捕集時に壊れやすい

粒子識別に合う物質が少ない

素粒子の実験では、電気を帯びた粒子が透明な物質を通るときに出るチェレンコフ光を使って粒子の種類を見分けますが、目的に合った屈折率の物質の選択肢は限られています。この光が出る条件は物質の屈折率で決まり、検出器に使われる気体の屈折率は1.001程度、液体の水は1.333で、その間の値を持つ透明な物質はほとんどありません。屈折率を実験に合わせて選べないと、見分けたい粒子の速さの範囲に検出器を合わせにくくなります。

宇宙塵は捕集時に壊れやすい

宇宙塵(宇宙空間を漂う微粒子)は非常に高速でぶつかるため、硬い材料で受け止めると壊れやすくなります。衝突の衝撃と熱で、粒子が砕けたり変質したりするためです。粒子を元に近い形で持ち帰れなければ、その成分や起源を地上で調べにくくなります。

他にも、大きな一枚ものを割らずに製造する難しさ、透明度を高める難しさ、タイルごとに屈折率をそろえる難しさ、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • チェレンコフ光電気を帯びた粒子が、物質の中での光の速さより速く進むときに出る光。光が出るかどうかと出る角度は粒子の速さと物質の屈折率で決まるため、粒子の種類を見分ける検出器に使われる。

エアロゲルファクトリの強み|「シリカエアロゲル」を研究

エアロゲルファクトリが「シリカエアロゲル」を研究|現在は、実験に合わせた設計で材料を提供/屈折率を選べる透明な光学材料/超低密度で宇宙塵を捕集

屈折率を選べる透明な光学材料

気体や水を輻射体(チェレンコフ光を出させる物質)に使う方法では、気体と水の間の屈折率を選べません。

同社は、シリカの網の目と空気の割合を変え、屈折率を調整したシリカエアロゲルを製作しています。屈折率はシリカの量(密度)で決まり、この量は原料となる液体の配合で調整できます。超臨界乾燥で網の目を保ったまま液体を抜けば、固体でありながら気体と液体の間の屈折率が得られる仕組みです。輻射体向けには屈折率1.02から1.05までの5種類の納入実績があり、より高い値や低い値の製作にも対応します。見分けたい粒子に合わせて屈折率を選べるため、研究者は検出器を実験の目的どおりに設計できるようになります。

超低密度で宇宙塵を捕集

硬い材料で高速の微粒子を受け止める方法では、衝突の衝撃で粒子が砕けたり熱で変質したりします。

同社は、超高速で飛ぶ微粒子を捕まえる材料として、密度を極めて低くしたシリカエアロゲルも製作しています。すき間の多いこの材料は、飛び込んだ粒子を壊したり熱したりしにくい素材です。同社の技術の基になった研究として、田端誠代表らは設立前の千葉大学で、国際宇宙ステーションでの捕集実験向けに二層構造のタイル(密度0.01g/cm³の軟らかい層を0.03g/cm³の層で支える構造)を開発しています。硬い材料より破損や変質を抑えて粒子を回収できるため、宇宙塵の成分や起源を地上で詳しく分析できるようになります。

FrontJournalの解説
  • 超臨界乾燥液体を高い温度と圧力で気体と液体の区別がない状態にしてから抜き取る乾燥方法。液体の表面張力が働かないため、湿ったゲルの細かな網の目を壊さずに乾かせる。

未来|シリカエアロゲルが素粒子と宇宙の研究を支える

シリカエアロゲルが変える未来|素粒子と宇宙の研究を材料の面から支える/千葉大学の材料が加速器で採用/実験ごとに特性を設計/ほかの用途の相談にも対応

千葉大学の材料が加速器で採用

千葉大学が開発に関わったシリカエアロゲルは、高エネルギー加速器研究機構(KEK)のBelle II実験(加速器で粒子をぶつける素粒子実験)で、粒子を見分ける検出器の輻射体として使われています。使われているのは屈折率1.045と1.055の大面積タイル(18cm角・厚さ2cm)で、同社設立前の2013年9月から2014年5月にかけてファインセラミックスセンターなどが約450枚を量産したものです。この検出器の試作機を用いたビーム試験では、パイ中間子とK中間子(素粒子実験で生じる粒子)を見分けられることが確かめられています。粒子の種類を正確に見分けられることは、物質の成り立ちを調べる素粒子研究の土台になります。

実験ごとに特性を設計

大学や研究機関からの注文に合わせ、同社は実験ごとに、目的に合う特性のシリカエアロゲルを設計しています。千葉大学ではこれまで、屈折率1.003から1.18までのエアロゲルが科学実験で実際に使われてきました。同社は、この範囲で培った製造の経験を注文ごとの設計に生かします。研究者は、製造設備を持たなくても実験に合った材料を入手しやすくなります。

ほかの用途の相談にも対応

同社は、検出器の輻射体と微粒子の捕獲材という現在の用途に加え、それ以外の用途を検討する利用者の相談も受け付けています。同社は断熱用途をサポートの対象外とし断熱性能の値も示していませんが、利用者が自らの環境で試験したい場合の問い合わせには応じる方針です。注文や相談の窓口は電子メールです。相談の窓口があることで、研究者は新しい実験に使う材料を検討しやすくなります。

会社概要|株式会社エアロゲルファクトリ

千葉大学の技術を受け継ぎ設立

同社は、千葉大学理学部の旧・粒子線物理学研究室で25年にわたり培われた技術を受け継ぎ、2021年6月に設立されました。代表取締役は、千葉大学でシリカエアロゲルの開発に取り組んできた研究者の田端誠氏です。事業は、素粒子・原子核実験物理学の学術コミュニティの支援のもとで行われています。

大学構内に本社を置く

本社は、千葉大学西千葉キャンパスの構内にある知識集約型共同研究拠点です。千葉大学は同社を、大学に関連するスタートアップとして紹介しています。FrontJournalでは、千葉大学のスタートアップを千葉大学発スタートアップ10選でも取り上げています。

受注製作で研究を支援

シリカエアロゲルの提供は、学術研究向けの受注製作が中心です。屈折率や密度を実験の目的に合わせて設計し、透明な板状のエアロゲルとして納めます。チェレンコフ輻射体向けには、屈折率1.02、1.03、1.04、1.045、1.05のエアロゲルの納入実績があります。

会社情報

会社名株式会社エアロゲルファクトリ(Aerogel Factory Co., Ltd.)
所在地千葉県千葉市稲毛区弥生町1-33 千葉大学知識集約型共同研究拠点2棟401号室
設立2021年6月2日
代表代表取締役 田端誠
資本金500万円
事業多孔性機能材料の研究開発、および製造販売
技術領域透明な板状シリカエアロゲル(チェレンコフ輻射体、高速微粒子の捕獲材)
連携千葉大学(千葉大学関連スタートアップ一覧に掲載)
URLhttps://aerogel-factory.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

エアロゲルファクトリは、大学の研究室で長く磨かれてきたシリカエアロゲルの製造技術を、研究者が注文できる形にした企業です。断熱材としての応用が注目されやすいシリカエアロゲルですが、同社は屈折率と透明度を作り分け、素粒子の実験や宇宙の微粒子捕集という、基礎科学の現場に必要な材料に的を絞っています。研究室の技術を会社として引き継いだことで、研究者が外部から材料を頼める窓口ができました。

実験ごとに特性を設計して届ける仕組みは、大型の研究を裏側から支える存在です。加速器や宇宙の実験には、目的に合った材料が欠かせません。蓄積した製造技術が今後どの分野へ広がっていくのか、注目していきます。

FrontJournal編集部

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月29日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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