BEL「抗バイオフィルム」を研究

株式会社BEL(ベル)

BEL「抗バイオフィルム」を研究|技術領域=膜の付きにくい・表面を研究/強み=銀担持ゼオライトを・樹脂に分散/将来性=社会インフラの・信頼性を目指す

企業紹介|株式会社BELとは?

細菌が形成する膜状の汚れを、材料の表面で付きにくくする技術として、研究が進む「抗バイオフィルム」。株式会社BELは、その社会実装を目指す、素材系ディープテック企業(先端の科学技術を事業の中核に置く企業)です。材料の表面に抗菌や抗ウイルスなどの機能をもたせる技術の評価と設計を、研究開発の軸に置いています。

キーワード「抗バイオフィルム」

「抗バイオフィルム」は、細菌が表面に付着して形成するぬめり状の膜(バイオフィルム)を、付きにくくする性質です。シンクや浴室、排水ホースなどのぬめりを付きにくくする加工を指すといわれています。性能の評価には、プラスチック製品を対象とした国際標準化機構(ISO)の規格、ISO 4768の試験があります。

市場課題|バイオフィルムによる衛生課題と評価の壁

現状の水まわり衛生の課題|現状は、膜が衛生を損ない、評価法も整備途上|膜状の汚れが・衛生を損なう/評価の規格が・整い始めた段階

バイオフィルムが衛生を損なう

バイオフィルムは、医療や食品加工の現場で、衛生を損なう要因です。細菌が表面に付着して多糖類(糖が連なった高分子)を産生し、ぬめり状の膜を形成すると、感染症や食品の衛生問題の原因になります。対策が無ければ、清掃と衛生管理の負担は現場で続く状況です。

評価の規格は整備の途上

抗バイオフィルム性を測る国際規格の整備は、始まったばかりです。ISO 4768は2023年7月に制定され、抗菌製品技術協議会(SIAA)による抗バイオフィルム製品の認証は2024年7月に始まりました。運用が広がるまでは、開発した表面の性能を客観的に示す機会が限られやすい状況です。

他にも、配管に付着するスケール(水あか状の付着物)の発生、住宅の水まわりに残る汚れ、食品加工の現場での衛生管理の負担、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • バイオフィルム細菌が物の表面に付着し、多糖類を産生して形成する膜状の集合体である。水まわりのぬめりの正体であり、配管の汚れや医療・食品加工現場の衛生問題の原因になる。

BELの強み|「抗バイオフィルム」を研究

BELが「抗バイオフィルム」を研究|現在は、銀担持樹脂で膜の付着抑制を研究|樹脂の表面に・膜の付きにくさ/複数の試験法で・膜を多面的に評価

樹脂の表面に膜の付きにくさ

従来の抗菌処理は細菌の増殖を抑える作用が中心で、膜状の集合体を付きにくくする設計とは目的が異なります。

同社は、銀を担持(表面や孔に固定すること)したナノサイズのゼオライト(微細な孔をもつ結晶性の鉱物)を、シリコーン樹脂やアクリル樹脂に分散させ、その表面の抗バイオフィルム性を調べています。液状の樹脂を光で硬化させて積層するVAT光重合法(積層造形の一方式)で、銀を分散させた樹脂コーティングを作製します。銀はバイオフィルムの形成を抑えると期待されており、膜の付きにくさを樹脂の表面に組み込む設計です。ぬめりの付きにくい部材が使えるようになれば、清掃の手間の軽減につながる可能性があります。

複数の試験法で膜を評価

バイオフィルムは形成状態や構造が複雑で、単一の試験法だけでは適切に評価しにくい性質があります。

BELは、複数の試験法を組み合わせて膜を多面的に解析する評価を、研究の土台に置いています。国際規格ごとに、どの性質を測っているのか、その限界はどこかを整理したうえで、開発した表面に適した方法を選びます。インピーダンス(交流に対する電気の流れにくさ)の測定や画像解析も、評価の手段です。BELは評価と開発を同じ体制で進め、根拠のある試験で表面の性能を確かめます。評価の根拠が示されれば、導入する側は製品を比較できるようになります。

FrontJournalの解説
  • VAT光重合法液状の光硬化性樹脂を槽に満たし、光を当てた部分だけを硬化させて一層ずつ積み重ねる造形法である。複雑な形状を成形でき、積層造形の代表的な方式の一つである。

抗バイオフィルムの未来|表面から衛生と信頼性を支える

抗バイオフィルムが変える未来|表示で選べる製品から設備の信頼性へ|付着抑制の表示で・製品を選べる/ゼオライトの・コーティング開発/寿命予測で・点検を計画しやすく

付着抑制の表示で製品を選べる

抗バイオフィルム性能を確かめた製品は、付着抑制の表示を手がかりに選べるようになっています。SIAAは2024年7月に抗バイオフィルム製品の認証を始め、基準を満たした製品に「付着抑制」のマークを表示できます。基準は、抗バイオフィルム性能、安全性、表示の適正さです。利用者は、水まわりの製品を選ぶ際に、性能と安全性の両面を確認しやすくなります。

ゼオライトコーティングの開発

BELは、銀を担持したナノサイズゼオライトを用いる抗バイオフィルムコーティングの開発を進めています。2026年9月の表面技術協会第154回講演大会では、このコーティングについて3件の発表がありました。銀には、バイオフィルムと、これに関連する鋼の腐食を抑える効果が期待されています。実用化が進めば、水まわりの設備や配管の部材に、ぬめりと腐食の両方を抑える機能をもたせられる可能性があります。

社会インフラの信頼性を支える

BELは、腐食防食、抗バイオフィルム、機能性表面の技術を基盤とする研究開発型の企業です。事業は、表面の評価と設計、コーティングと積層造形による製品開発、研究支援、教育などです。デジタルツイン(実物を仮想空間に再現する技術)とAIによる寿命予測も取り組みに挙げており、産業と社会インフラの信頼性を支えることを目指しています。実現すれば、設備の表面の劣化を事前に見積もれるため、点検や更新の計画を立てやすくなることが期待されます。

会社概要|BELの事業内容・設立背景

表面の研究開発企業として設立

株式会社BELは、2024年6月に設立された、材料の表面を研究開発する企業です。社名のBELは、Bio Engineering Laboratoryの略で、大阪府堺市に本社を置いています。代表取締役の兼松秀行は、表面工学、腐食科学、バイオフィルム研究に携わってきた研究者で、40年以上の学術研究の経験を、産業界との連携を通じて技術として役立てることを目指しています。

ゼオライト研究と製品の取扱い

2026年2月に、Zeo Next株式会社(ゼオネクスト)との協業を始めました。同年4月には、兼松秀行が中村超硬株式会社の100%子会社であるZeo Nextの技術顧問に就任し、BELはナノサイズゼオライトの研究活動を始めています。事業には製品販売も含まれ、株式会社ディ・アンド・ディの「パーミエイト」と、中村超硬のナノサイズゼオライトを取り扱っています。

受賞と学会での発表

代表の兼松秀行は、2024年6月にSIAAの功績賞を、2026年2月には表面技術協会の功績賞を受賞しています。2026年7月には、技術情報協会の専門書に、バイオフィルムの評価法を解説する章を執筆しました。2026年8月には、英国Institute of Materials Finishingの学術誌『Transactions of the IMF』のオンライン版に、抗菌性などの国際規格を整理したレビュー論文が先行公開されています。

会社情報

会社名株式会社BEL(BEL Inc.)
所在地大阪府堺市堺区東雲西町2丁4番31号
設立2024年6月
代表代表取締役 兼松 秀行
資本金100万円
事業材料表面の機能の評価・設計。技術・製品開発、製品販売、研究・学術支援、教育・人材育成、情報発信
技術領域抗バイオフィルム。機能性表面、腐食防食、積層造形
連携Zeo Next株式会社(2026年2月)
URLhttps://bioenglab.org/

編集後記|FrontJournal編集部より

水まわりの表面に付くぬめりは、洗浄の手間と衛生の両面で、現場の負担です。株式会社BELは、膜の付きにくさを表面に組み込む設計と、その性能を確かめる評価の両方を、研究の中心に置いています。こうした現場では、性能の裏づけがある表面材が選ばれやすくなると考えられます。

特徴は、材料の開発に加えて、試験法の設計まで一貫して扱う点にあります。抗バイオフィルムの規格や認証が整い始めた今、性能を根拠をもって示せる研究開発の担い手は、素材選びを左右する存在になり得ます。今後の展開が注目点です。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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