ブレインビジョン|理化学研究所発の「膜電位イメージング装置」を開発するライフサイエンス系ディープテック企業

ブレインビジョン株式会社

ブレインビジョン「膜電位イメージング装置」を開発

企業紹介|ブレインビジョンとは?

脳や心臓の細胞で起きる電気の変化を、光に変えて動画で捉える技術として、神経科学や心臓の研究で使われる「膜電位イメージング」。ブレインビジョン株式会社は、その計測装置を開発・製造する、理化学研究所発のライフサイエンス系ディープテック企業です。高速イメージングシステム「MiCAM」シリーズなどの研究用の装置を、大学や研究機関、企業へ提供しています。

キーワード「膜電位イメージング」

「膜電位イメージング」は、膜電位(細胞膜の内外の電位差)に応じて明るさが変わる色素で試料を染め、その変化を高速カメラで撮って細胞の電気活動を画像にする手法です。特徴は、電極では難しい、多数の細胞の同時観察ができる点です。神経の興奮の伝わり方や、心臓の電気の流れを調べる研究に使われています。

市場課題|細胞の電気活動は広範囲で高速に捉えにくい

現状の電気活動の計測の課題

多数の細胞を同時に測りにくい

電極で細胞の電気活動を直接測る方法では、多数の細胞から同時に記録するのが困難です。脳や心臓の働きを調べるには、細胞の間で電気の変化がどう広がるかを捉える必要があります。このままでは、神経の興奮が回路の中をどう伝わるかといった、組織の広い範囲の動きを把握しにくい状態が続きます。

光の信号は微弱で一瞬

電気活動を光に変えて撮る方法にも、信号が弱く速いという難しさがあります。捉える明るさの変化は0.5〜1%程度で、活動電位(神経や心筋が興奮したときの電位の変化)は、ミリ秒単位で起こる現象です。速さと感度を両立できなければ、わずかな変化が雑音に埋もれる恐れがあります。

他にも、光源や電気刺激装置といった周辺機器の選定、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 活動電位神経細胞や心筋細胞が興奮したときに、膜電位が短い時間だけ大きく変わる現象である。神経ではこの変化が細胞から細胞へ伝わって情報を運び、心臓では拍動のきっかけになる。

ブレインビジョンの強み|「膜電位イメージング装置」を開発

ブレインビジョンが「膜電位イメージング装置」を開発

広い視野を一度に高速撮影

細胞に電極を当てて測る方法では、記録できるのは電極を置いた位置に限られ、一度に測れる細胞の数には上限がありました。

ブレインビジョンが開発した高速イメージングシステム「MiCAM」は、膜電位感受性色素(膜電位で蛍光の明るさが変わる色素)で染めた脳や心臓の組織を、多数の画素を持つセンサーで面として撮影する装置です。電極による計測に近い時間の精度で、広い範囲の電気信号を一度に記録できます。「MiCAM05」は最大4台のカメラの同期撮影に対応した機種です。研究者は、神経の興奮や心臓の電気の流れが組織の中をどの方向へ広がるかを動画で確かめられ、脳や心臓の働きの解明に役立てられます。

大きな画素で微弱な光を捕捉

イメージセンサー(光を電気信号に変える半導体の撮像素子)で高速撮影をすると1コマの露光時間が短くなり、画素が小さいほど1画素に届く光が減って、わずかな明るさの変化が雑音に埋もれやすくなります。

「MiCAM05」などのカメラヘッドには、高速の蛍光イメージング専用に自社設計したイメージセンサーを載せています。そのセンサーは受光面が17.6ミリ角、1画素が69マイクロメートル角と大きく、1画素に集まる光を増やして、0.5〜1%程度の明るさの変化を捉えやすくした設計です。撮影する範囲を32×32画素に絞れば、1秒間に20,000枚の撮影も可能です。研究者は、ミリ秒単位の速い電気活動を、少ない雑音で記録できるようになります。

FrontJournalの解説
  • 膜電位感受性色素細胞膜に入り込み、膜電位が変わると蛍光の明るさが変わる色素である。電位の変化を光の変化に置き換えるため、カメラで撮影すれば多数の細胞の電気活動を同時に画像にできる。

膜電位イメージングの未来|脳と心臓の研究を支える

膜電位イメージングが変える未来

多くの研究室で脳と心臓を観察

MiCAMシリーズなどの装置は、230を超える大学や研究機関、企業で使われています。これまでの納品は430台、同社製品を使った学術論文は952報です。対象は、脳の切片や生きた動物の脳、心臓、培養した心筋細胞などです。オプティカルマッピング(心臓の電気の流れを地図のように描く計測)向けの一式「BV-XB2」もあり、研究者は低予算で計測から解析まで進められます。

新薬の心臓への影響を簡便に確認

「CIOS8」は、培養した心筋細胞の拍動を染色せずに測る装置で、新薬の候補が心臓に与える影響を調べる心毒性試験にも使えます。発光ダイオードで細胞を斜めから照らし、拍動に伴う光の散乱の変化をフォトダイオード(光を電流に変える素子)で捉えて、拍動の周期と収縮時間を自動で測る仕組みです。96ウェル(96個の小さなくぼみ)のプレートに対応し、膜電位感受性色素で染めれば、内蔵の蛍光フィルターで簡易的な膜電位の測定もできます。製薬の研究者は、培養プレートを載せるだけで心筋細胞の反応を確かめられるようになります。

未知の生命現象の画像化を目指す

同社が目指すのは、これまで見えなかった生命現象を画像にすることです。2021年には、35ミリのフルサイズのセンサーを載せた超高感度のカメラヘッド「C35IR」を開発しました。このカメラヘッドにより、暗い試料の微弱な光も広い視野のまま捉えられます。市販の蛍光フィルターを内部に取り付ければ、蛍光顕微鏡を使わずにカメラレンズを直接つないで蛍光を観察することもできます。

会社概要|ブレインビジョン株式会社

理研の脳科学研究から誕生

ブレインビジョンは、1998年5月に、理化学研究所 脳科学総合研究センター(理研BSI)発の第1号ベンチャーとして設立されました。代表取締役の市川道教氏が理研で進めていた脳科学研究で、脳神経の興奮が伝わる様子を捉える超高速のリアルタイムイメージングシステムを開発したことが、設立のきっかけです。設立と同時に理研の公式ベンチャーに認定され、同年に最初の製品「MiCAM01」を発売しました。

国の研究開発事業に参画

同社は、国の研究開発事業に複数回参画してきました。2005年には、スタンレー電気株式会社と共同で提案したイメージングセンサーの開発テーマが、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託研究に採択されています。2014年には、NEDOの「国際基準化に向けた心毒性評価法確立のための細胞製造・計測技術の開発」の委託先に選ばれました。心筋細胞の計測装置「CIOS8」は、日本薬理評価機構との共同研究で開発されています。

研究用の計測機器を一貫開発

計測機器と周辺機器、ソフトウェアについて、同社は研究開発から製造、販売、サポートまでを一貫して手がけています。主な製品は、MiCAMシリーズのほか、マクロ蛍光顕微鏡「THT Mesoscope」、LED光源、電気刺激装置、解析ソフトウェア「BV Workbench」です。先端技術の受託研究や、小動物用の超音波画像診断装置などの海外製品の輸入・販売も行っています。本社は東京都板橋区にあり、研究室を東京都千代田区に置いています。

会社情報

会社名ブレインビジョン株式会社(Brainvision Inc.)
所在地本社:東京都板橋区成増3丁目46番8号
研究室:東京都千代田区神田小川町2-2 UIビル7階
設立1998年5月
代表市川 道教(代表取締役)
事業計測機器・周辺機器・ソフトウェアの研究・開発・製造・販売・サポート。高速イメージングシステム「MiCAM05-N256」(256×256画素・最大4カメラ同期)・「MiCAM03-N256」・「MiCAM03-C35IR」。マクロ蛍光顕微鏡「THT Mesoscope」。LED光源「LEX5」「LEX9」。電気刺激装置「ESTM10A」。心筋細胞活動無染色計測装置「CIOS8」。解析ソフトウェア「BV Workbench」。先端技術の受託研究。海外製品(小動物用超音波画像診断装置ほか)の輸入・販売
技術領域膜電位イメージング、カルシウムイメージング、内因性信号イメージング、高速蛍光イメージング用CMOSイメージセンサー
連携理化学研究所(研究成果の事業化・理研BSI発第1号ベンチャー)。スタンレー電気株式会社(イメージングセンサー開発テーマの共同提案・2005年)。日本薬理評価機構(「CIOS8」の共同研究開発)
採択NEDO 委託研究(イメージングセンサー開発・2005年)。NEDO「国際基準化に向けた心毒性評価法確立のための細胞製造・計測技術の開発」委託先(2014年)
URLhttps://www.brainvision.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

細胞の電気活動はミリ秒単位で変化するうえ、光に変えても明るさの変化はわずかです。ブレインビジョンは、その速くて弱い信号を画像にするために、主力のMiCAMシリーズの一部の機種では、イメージセンサーを自社で設計しています。興味深いのは、研究者自身が必要とした装置を製品にし、光源や解析ソフトウェアまで含めて研究室へ届けてきた点です。

脳の信号を別の方法で測る企業として、脳の表面に置いた電極で脳波を記録するJiMEDのような企業も国内で生まれています。理化学研究所の研究から生まれた装置が、脳と心臓の理解をどこまで深めるのか、引き続き注目していきたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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