HOIST「膀胱がん治療薬」を開発

株式会社HOIST(ホイスト)

HOIST「膀胱がん治療薬」を開発

企業紹介|株式会社HOISTとは?

膀胱がんの再発を、膀胱内に注入する薬で抑えることを目指す「膀胱がん治療薬」。株式会社HOISTは、その社会実装を目指す、大阪大学発の創薬系ディープテック企業です。同社は、筋層非浸潤性膀胱がんの再発抑制を目的とした亜塩素酸ナトリウム(HM-001)の膀胱内注入薬を、医師主導治験で使う治験薬として開発しています。

キーワード「膀胱がん治療薬」

「膀胱がん治療薬」は、手術後の膀胱がんの再発を抑えることを目指して、膀胱内に直接注入する薬です。筋層非浸潤性膀胱がんは、手術で切除できても再発が多く、術後にBCG(弱毒化した結核菌の製剤)や抗がん剤を注入します。同社は、無機化合物の亜塩素酸ナトリウムを有効成分に、既存の注入薬とは別の成分で開発を進めています。

市場課題|膀胱がんは手術後の再発が多い

現状の膀胱がん治療の課題

手術後の再発率が高い

筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC)は、内視鏡手術(TURBT。尿道から器具を入れて腫瘍を削る手術)で切除できても、再発率が高いことが知られています。膀胱がんは男性に多く、新たに診断される膀胱がんの約70%がNMIBCです。大阪大学の発表では、手術後の既存治療でも再発しない割合は50〜80%程度にとどまり、約20〜50%の患者で再発が起こるとされます。

既存の注入薬は刺激が強い

既存の注入薬は、膀胱内への刺激が強く、治療を続けにくいのが課題です。再発の抑制には、BCGや抗がん剤を膀胱内に注入する治療が行われます。大阪大学の発表では、既存の薬で排尿困難、頻尿、発熱などが高頻度に起こるとされています。

他にも、既存の注入薬では、排尿困難、頻尿、発熱、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 筋層非浸潤性膀胱がん膀胱の壁の筋層まで達していない膀胱がんである。内視鏡で切除できるが再発しやすく、手術後に膀胱内へ薬を注入する治療が行われる。

HOISTの強み|「膀胱がん治療薬」を開発

HOISTが「膀胱がん治療薬」を開発

無機化合物で再発抑制を目指す

従来の膀胱内注入薬は、BCGや抗がん剤が中心です。

HOISTの薬剤候補は、無機化合物の亜塩素酸ナトリウムを有効成分とする膀胱内注入薬(HM-001)です。大阪大学の辻川和丈教授らは、細胞と動物を使った試験で、亜塩素酸ナトリウムが膀胱がん細胞の増殖を抑えることを示しました。その開発を引き継ぎ、動物試験で有効性をさらに確認し、薬としての実用化を進めています。無機化合物という、既存の注入薬とは異なる成分の薬として、再発を抑える手段の選択肢が広がるかどうかが、開発の焦点です。

治験薬をGMP基準で製造

治験を進めるには、品質の保たれた治験薬を、安定して用意する必要があります。

HOISTは、治験薬をGMP基準(医薬品の製造と品質管理の基準)に準拠して製造しています。あわせて、安全性の確認も実施しています。医師主導治験で使う薬の製造と安全性の確認を、開発する会社が担う形です。品質の基準を守った薬を、決まった手順で、継続して用意でき、大阪大学の治験へ治験薬を提供しやすくなるため、治験の準備を進めやすくなります。結果として、患者が安全に治験へ参加しやすくなる可能性が出てきます。

FrontJournalの解説
  • GMP基準医薬品の製造と品質管理について、守るべき内容を定めた基準である。治験薬も、この基準に準拠して製造することが求められる。

膀胱がん治療薬の未来|医師主導治験での検証

治験中の膀胱がん治療薬が変える未来

医師主導の治験を実施

2023年7月に、大阪大学が亜塩素酸ナトリウム(HM-001)の第I/IIa相医師主導治験(安全性と量を調べる段階)を発表し、治験は大阪大学医学部附属病院で行われています。対象は手術で腫瘍を切除した患者で、パート1は最大18名を対象に、安全性と推奨用量を調べる計画です。パート2は30名を対象に、手術から57週後の非再発率を調べる計画です。HM-001は治験中の薬で、臨床試験の登録情報(jRCT)には、2025年10月8日の更新時点で「募集中」とあります。

阪大の第II相が公的資金に採択

2025年度には、AMED(日本医療研究開発機構)の橋渡し研究プログラム(大学の研究成果を実用化につなぐ公的支援)で、大阪大学の研究として、第II相の計画が採択されました。課題名は、亜塩素酸ナトリウム(HM-001)を用いた膀胱内注入療法の、医師主導多施設共同の第II相研究(効果を確かめる段階)で、研究代表者は大阪大学の河嶋厚成准教授です。採択されたのは大阪大学の課題であり、HOISTは治験薬の開発側にあたります。第I/IIa相から、複数の施設で行う第II相へと、検証の段階が進む計画です。

結果はこれから確認

HM-001は治験中の薬で、有効性の結果はこれから確認される段階です。承認も、これからです。第I/IIa相のパート2では、手術から57週後の非再発率を調べます。第II相では、複数の施設で、再発を抑える効果を確かめます。

会社概要|HOISTの事業内容・設立背景

2019年に大阪大学発で設立

株式会社HOISTは、2019年5月に設立された大阪大学発のスタートアップです。大阪大学の辻川和丈教授の研究成果の事業化を目的に設立されました。代表は柿沼千早氏、本社は大阪市淀川区です。2019年11月に、大阪大学ベンチャーキャピタル(OUVC)のファンドから出資を受けました。2023年4月には、同ファンドから3億円の出資を受けており、これは4回目の出資にあたります。

大学と連携

HM-001の治験は、大阪大学医学部附属病院で行われており、HOISTは治験薬を提供する立場です。治験の対象は、手術で腫瘍を切除した患者です。和歌山県立医科大学の2023年11月作成の臨床研究の案内には、「次世代がん創薬共同研究講座」が、HOISTと共同で臨床研究を行い、バイオバンクの腫瘍組織から作った細胞を使うと記載されています。

事業と開発中の薬

事業は、がん創薬の研究開発と、創薬支援です。創薬支援では、PDX(患者の腫瘍組織を移植したマウス)やPDC(患者の腫瘍から直接作製した培養細胞)を使います。開発中の薬には、筋層非浸潤性膀胱がんを対象とする亜塩素酸ナトリウム(HM-001)があります。

会社情報

会社名株式会社HOIST
所在地大阪府大阪市淀川区宮原5丁目1番3号
設立2019年5月
代表柿沼千早
調達大阪大学ベンチャーキャピタルのファンドから出資(2019年11月から。2023年4月に3億円)
事業がん創薬の研究開発、創薬支援
技術領域亜塩素酸ナトリウムの膀胱内注入薬
連携大阪大学医学部附属病院(治験薬の提供)、和歌山県立医科大学(2023年11月時点の臨床研究案内に講座の記載)
URLhttps://hoist-jp.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

膀胱がんは、手術で切除できても再発しやすい病気です。そのため、手術後に使える薬の選択肢が増えることには、意義があるといえます。無機化合物という、既存の注入薬とは異なる成分の薬が、その選択肢になりうるかが、HOISTの注目点です。

とくに注目したのは、大阪大学で進む医師主導治験の行方です。計画は2023年に公表され、第II相研究は公的資金に採択されました。結果はこれから確かめられる段階であり、承認もこれからです。今後の結果を見守りたいと考えます。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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