プロメシアン株式会社は金属3Dプリントで部品の欠損部を補修・再生する東京科学大学発の企業

プロメシアン株式会社

プロメシアン「金属3Dプリント補修」を研究|研究領域=設備の金属部品を積み重ねて補修/強み=丸ごと交換せずに欠損部だけ直せる/将来性=産業機械やプラントへ対象を広げる

企業紹介|プロメシアン株式会社とは?

廃番になった設備部品を現場で再生する技術として、注目を集める「金属3Dプリント補修」。プロメシアン株式会社は、その社会実装を目指す、東京科学大学発の製造系ディープテック企業です。金属部品の補修・再生と、保守部品をデータに置き換える在庫のデジタル化を、産業機械やインフラ設備の保全現場へ提供しています。

キーワード「金属3Dプリント補修」

「金属3Dプリント補修」は、金属のワイヤーを溶かして積み重ね、欠けた部分だけを埋め戻す補修方法です。特徴は、部品を作り直さず、傷んだ箇所へ必要な分だけ金属を盛り足せる点です。廃番部品を抱える工場の保全現場で、交換品の到着を待たずに設備を動かし続けられます。

市場課題|手に入らない設備部品

現状の部品調達の課題|部品の生産終了で調達が長期化/軽微な損傷でも部品を丸ごと交換

生産終了で調達が長期化

産業機械やインフラ設備では、部品の生産終了により、調達が長期化しています。アフターサポートが終了した設備や、図面が残っていない設備では、代わりの部品を作る手掛かりを探すところから始まります。設備の停止による損失は部品の価格を上回ることがあり、復旧の遅れが生産の機会損失へ広がりかねません。

軽微な損傷でも丸ごと交換

損傷が一部にとどまる部品でも、規定上そのまま使えず、丸ごと交換されます。摩耗した面や欠けた縁を戻す作業は熟練の技能に頼る部分が大きく、仕上がりの品質を数値で示すことが困難です。補修品を使ってよいと社内で説明する根拠が乏しいため、高価な部品ほど交換が選ばれます。

他にも、発注の最低数量型費(金型の製作費)の制約、倉庫に積み上がる保守部品の在庫コスト、図面が残らないまま引退する設備の設計情報の散逸、補修を担ってきた技能者の高齢化、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 機会損失設備が停止している間に得られなくなる利益を指す。部品そのものの価格とは別に、停止時間と復旧までの日数に応じて増えるため、調達の総コストを大きく左右する。

プロメシアンの強み|「金属3Dプリント補修」を開発

プロメシアンが「金属3Dプリント補修」を開発|欠けた箇所だけを積層して復元/補修の品質を記録で示す

欠損部だけを積層して復元

金属の粉末を敷き詰めて焼き固める方式は、部品をゼロから造形する用途を前提としており、既存の部品へ後から金属を足す使い方には向きにくいのが実情です。

同社が用いるのは、金属のワイヤーを熱源で溶かしながら積み重ねるDED方式(Directed Energy Deposition、指向性エネルギー堆積法)です。損傷した部品を三次元スキャンで計測し、ロボットアームが動かすノズルで欠けた箇所へ金属を盛り足します。熱源はアークレーザーで、造形の空間を装置に閉じ込めないため、1メートルを超える大型部品にも対応します。材料には汎用の溶接ワイヤーを使えるため、金属粉末を用いる方式より材料を調達しやすい点も利点です。寸法精度は、造形後の切削で仕上げます。

補修の品質を記録で示す

補修の可否は現場ごとの判断に委ねられ、どの材料をどの条件で盛ったかが記録として残りにくい状況でした。

同社は、金属の積層造形(AM)を「測れる・説明できる・再現できる製造プロセス」へ組み上げ、「ReFunction」と呼びます。補修のあとは、同じ条件で造形した試験体(同社の呼び方は「デジタルツイン」)を切断し、断面観察と高負荷試験で確かめます。この検査の確からしさを支えるのが、同社の特許第7911461号の技術です。造形条件を変え、気孔(金属内部に残る空洞)や融合不良(溶け合わずに残る隙間)を狙った位置に持つ試験体を製造します。この試験体は、部品を壊さず内部を調べる非破壊検査の基準になります。

FrontJournalの解説
  • ReFunction損傷した部品や再調達が難しい部品を、品質を確認・説明できる状態で再び使用可能にすることを指すプロメシアンの用語である。加工技術に加え、材料管理・工程管理・検査・記録を一体で運用する。

金属3Dプリント補修の未来|産業設備へ

金属3Dプリント補修が変える未来|実車の走行試験を共同で実施/藤沢の工場で製造体制を検証/必要な場所で作る体制を目指す

実車の走行試験を共同で実施

DED方式で補修した金属部品の検証は、実際の車両に搭載した走行試験まで進んでいます。この実証は、自動車の電装部品やカーエアコンの部品の再生を手がけるアライ技研株式会社、三次元スキャンと設計を担う桑原冷熱株式会社との共同で行われました。同じ条件で造形したデジタルツインの断面観察と高負荷試験を経て、補修した部品を実車へ取り付けています。本実証の条件下では実用上の問題が確認されておらず、追加の検証も予定されています。

藤沢工場で製造体制を検証

同社は、製造体制を検証する拠点として、2026年6月に神奈川県藤沢市へ「プロメシアン藤沢工場」を開設しました。ここでは設備の稼働テストや試験体の製造、材料試験を進め、造形条件と結果を記録として蓄積しています。同年には、DNV(船舶や産業設備の認証を行う第三者機関)によるAM製造体制の現地監査を受け、設備や材料管理、製造プロセス、記録の管理状況について確認を受けました。修正と材料試験を残しており、正式な認証は取得手続きを進めている段階です。

分散型の製造基盤を目指す

同社が目指すのは、「資源の近くで、必要なものを、必要な時に作る製造基盤を築くこと」です。補修と再製作の対象は自動車にとどまらず、産業機械やプラントへ段階的に広げる計画です。装置メーカーや研究機関、地域の製造企業と連携し、必要な場所で部品を供給できる分散型の体制を整えます。地上で成熟させたAM技術を、宇宙空間での製造へつなげることも視野に入れています。

会社概要|プロメシアンの事業と設立背景

東京科学大学の拠点で創業

プロメシアン株式会社は、2025年8月に東京都港区の東京科学大学キャンパス・イノベーションセンターで設立されました。代表取締役社長は古賀洋一郎氏で、東京工業大学(現・東京科学大学)で炭素繊維強化プラスチック(炭素繊維で補強した軽くて丈夫な樹脂)の3Dプリント材の評価手法を研究し、博士(工学)を取得しています。代表が品質保証で積み重ねてきた研究と実務の知見を補修の現場へ持ち込むことが、同社の出発点です。

大学認定と公的支援で拡大

同社の技術は、大学と自治体の双方から評価を受けています。2025年12月には東京科学大学認定ベンチャー第22号に認定され、2026年3月の「TOKYO SUTEAM DEMO DAY 2026」(東京都の起業支援事業の成果発表会)では、創業部門で協定事業者賞3件を受けました。同年には、TECH HUB YOKOHAMA(横浜市の産業支援拠点)の「成長加速化伴走支援プログラム」第3期に採択されています。企業や大学との連携も進み、桑原冷熱株式会社と技術顧問契約を結んだほか、東北大学および一般財団法人発電設備技術検査協会との3者共同研究の成果を学会で発表しています。

創業融資で補修工場を整備

同社は、2026年4月に日本政策金融公庫から創業融資3,000万円を受けています。資金は、補修工場の開設や品質保証体制の構築、設備導入などに充てられます。収益源は、補修・再生や在庫のデジタル化といった受託と、AM品質保証に関する講義・コンサルティングです。

会社情報

会社名プロメシアン株式会社(Promethean Co., Ltd.)
所在地本店:東京都港区芝浦三丁目3番6号 東京科学大学キャンパス・イノベーションセンターINDEST306号室。工場:神奈川県藤沢市弥勒寺80 2階
設立2025年8月5日
代表代表取締役社長:古賀 洋一郎(博士(工学))
資本金600万円(法人番号 2010401192375)
調達日本政策金融公庫による創業融資3,000万円(2026年4月)
事業AM補修・再生サービス。在庫デジタル化サービス。AM品質保証の講義・コンサルティング。CAE解析サービス。オンライン受託製造サービス
技術領域ワイヤーDED方式による金属積層造形。三次元スキャンによるリバースエンジニアリング。非破壊検査用試験体の製造技術(特許第7911461号)
連携桑原冷熱株式会社 技術顧問契約。アライ技研株式会社 実車走行試験の共同実証(2026年2月)。東北大学・一般財団法人発電設備技術検査協会 3者共同研究
採択東京科学大学認定ベンチャー第22号(2025年12月)。TOKYO SUTEAM DEMO DAY 2026 協定事業者賞3件(2026年3月)。TECH HUB YOKOHAMA 成長加速化伴走支援プログラム第3期
URLhttps://promethean.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

設備が止まる理由が、たった一つの小さな部品であることは珍しくありません。プロメシアンが選んだのは、部品を作り直すのではなく、欠けた箇所だけを埋め戻すという道筋です。汎用の溶接ワイヤーを材料に選んでいる点に、現場で使われることを前提にした設計思想を感じます。

注目したいのは、単なる造形技術の導入ではなく、品質を説明できる状態まで含めて事業に据えている点です。欠陥を意図してつくり、検査そのものの確からしさを確かめる特許は、補修を「熟練の技能に頼る作業」から「記録に残る工程」へ移す試みといえます。分散型の製造基盤という構想も、災害や供給の途絶に備える現実的な備えとして受け止められます。

直せるものは直して使い続ける選択が、産業の現場で当たり前になることを期待しています。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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