株式会社ブレイゾン・セラピューティクス|血液脳関門を越えて脳へ薬を届ける東京大学発のバイオベンチャー

株式会社ブレイゾン・セラピューティクス

ブレイゾン・セラピューティクス「血液脳関門」を研究|研究領域=ミセルに包んで関門を通す/強み=注射で脳へ薬を届ける/将来性=脳の病気の治療選択肢が広がる

企業紹介|ブレイゾン・セラピューティクスとは?

脳の病気の薬を脳へ届ける壁として、創薬で注目を集める「血液脳関門」。ブレイゾン・セラピューティクスは、その突破を目指す東京大学発のバイオベンチャーです。薬を高分子ミセルに包んで運ぶ送達技術「Brain Access®」を、製薬企業などとの共同研究に提供する事業を柱にしています。

キーワード「血液脳関門」

血液脳関門は、血液から脳へ入る物質を選別する、脳の毛細血管の仕組みです。脳を有害な物質から守る一方で、多くの薬も通さないため、脳の病気の薬を届ける際の障壁になります。ブレイゾンは、薬を包む微小なカプセルである高分子ミセル(ナノ粒子)を、この関門の向こうへ運ぶ技術に取り組んでいます。

市場課題|脳の薬は血液脳関門に阻まれる

現状の脳の薬の課題|現状は、脳へ薬が届きにくい/血液脳関門が薬の脳到達を阻む/核酸医薬は投与の負担が重い

血液脳関門が薬の脳到達を阻む

血液脳関門に阻まれ、脳の病気の薬は患部へ届きにくいことが創薬の課題です。関門は、血液中の物質が脳へ入る量を調整する仕組みで、多くの薬も通しにくくなっています。静脈注射した薬は脳へ届く量が少ないままでは、薬の効き目を十分に引き出せません。

核酸医薬は投与の負担が重い

アンチセンス核酸医薬(遺伝子の働きを調整する薬)を脳の病気に使う場合、投与経路は髄腔内注射に限られています。髄腔内注射は脊髄を包む空間へ直接注射する方法で、患者と医療者にとって負担の大きい手技です。投与の負担が重いままでは、核酸医薬を脳の病気へ広げる際の制約が残ります。

他にも、第1世代の送達方式では薬とリガンドを1対1で結合させるため薬価が高くなること、治療中の患者や医療関係者の負担が治療の拡大を妨げること、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 血液脳関門血液から脳へ入る物質を選別する、脳の毛細血管の仕組みを指す。有害な物質の侵入を防ぐ一方で、多くの薬の通過も妨げる。

ブレイゾン・セラピューティクスの強み|「血液脳関門」を研究

ブレイゾン・セラピューティクスが「血液脳関門」を研究|今後は、注射での脳への送達が可能に/ミセルに包んで関門を通す/注射で脳へ薬を届ける

ミセルに包んで関門を通す

従来は、薬そのものが血液脳関門を通りにくく、脳へ届く量が限られていました。

同社の送達技術は、薬を高分子ミセルに包み、表面に目印となる分子(リガンド)を取り付ける方式です。リガンドが血液脳関門にある運搬の仕組みに結合すると、ミセルは血管の細胞を通り抜け、脳の側へ運ばれます。この通り抜けの作用が、トランスサイトーシスです。ミセルは30〜50ナノメートルほどの大きさで、ナノメートルは10億分の1メートルです。薬を包んだまま関門を通すため、脳の病気の薬を、届けにくかった患部へ届けられるようになります。

注射で脳へ薬を届ける

従来は、核酸医薬を脳へ届けるために髄腔内注射が必要で、患者と医療者の負担が重くなっていました。

同社の「Brain Access®」は、トランスフェリン受容体(TfR)に結合するリガンドをミセルへ取り付ける、第2世代の送達システムです。TfRは血液脳関門の血管にある受容体で、この経路を使ってミセルを脳へ運びます。TfRリガンドを付けたモデルミセルの試験では、静脈内投与から24時間で脳内濃度が最大に達し、注射用量の約3%が脳1グラムあたりに集まりました。薬ではなくミセルの側にリガンドを付けるため、投与は注射で足り、髄腔内注射に頼らず脳へ薬を運べるようになります。

FrontJournalの解説
  • トランスサイトーシス血管の細胞が、片側から取り込んだ物質を反対側へ運んで放出する仕組みを指す。血液脳関門では、この仕組みを介して物質が脳の側へ運ばれる。

脳への薬物送達の未来|中枢神経系疾患への応用

脳への薬物送達が変える未来|脳の病気の治療が広がる/脳の病気の治療選択肢が広がる/製薬企業の脳向け開発を支える/脳への薬物送達の実用化を目指す

脳の病気の治療選択が広がる

注射で脳へ薬を届けられるようになれば、治療の選択肢が広がります。同社は、神経変性疾患、慢性疼痛、希少疾患を対象に、治療薬を脳へ届けることを目指しています。JST(科学技術振興機構)の成果集が挙げる関連社会課題は、認知症とがん。送達技術は低分子から生物製剤まで幅広い治療用分子に対応するとされ、疾患ごとに薬を替えて使える余地があります。

製薬企業の脳向け開発を支える

同社の技術は、共同研究の形で使われる想定です。製薬企業が持つ高分子製剤・核酸製剤・低分子製剤を内包して送達性を高める構想で、2017年時点で数件の共同研究が始まっていたといわれています。当時の計画では、当面は脳梗塞や髄膜炎などを対象に臨床応用を目指し、将来は認知症の治療薬開発にも挑むとされていました。核酸医薬では、まずアンチセンス核酸(ASO)の基盤の確立に注力しています。

脳への薬物送達の実用化を目指す

同社が目指すのは、送達技術を実際の治療薬の開発へつなげることです。2021年の取材では、他社とミセル技術の共同研究を行う「プラットフォーム事業」と、自社の「パイプライン」が事業の2本柱と紹介されました。米国では、2019年4月からボストンに子会社を置いています。

会社概要|ブレイゾン・セラピューティクスの事業内容・設立背景

東大と医科歯科大の成果を事業化

ブレイゾン・セラピューティクスは、2015年10月に設立された東京都文京区のバイオベンチャーです。東京大学名誉教授の片岡一則氏と、東京医科歯科大学(現・東京科学大学)の横田隆徳氏による共同研究の成果が、事業の出発点です。JSTの成果集では、両氏が技術アドバイザーとして記載されています。本店は、2025年8月に本郷7丁目から本郷4丁目へ移っています。事業は、血液脳関門を越えて薬を脳へ運ぶ送達技術の研究開発です。

COIプログラムの成果集に掲載

同社は、JSTのセンター・オブ・イノベーション(COI)プログラムの成果集に掲載されています。中核機関は川崎市産業振興財団で、成果集の発売時期欄は、2017年11月と記載。技術面では、片岡氏と横田氏のナノマシン技術が貢献したと記されています。

VC2社から約3億円を調達

2021年7月、既存株主であるベンチャーキャピタル2社が、第三者割当増資により計約3億円のファイナンスを実施しました。引受けには、株式会社ファストトラックイニシアティブが運営する組合と、東京大学協創プラットフォーム開発株式会社の組合が加わっています。

会社情報

会社名株式会社ブレイゾン・セラピューティクス
所在地東京都文京区本郷4丁目1番4号
設立2015年10月
代表鰐渕 文一(代表取締役社長兼CEO、2021年時点)
事業血液脳関門を越えて薬を脳へ運ぶ高分子ミセル送達技術「Brain Access®」の研究開発。製薬企業などとの共同研究。米国ボストンに子会社(2019年4月〜)
技術領域ドラッグデリバリー、血液脳関門、高分子ミセル、核酸医薬、中枢神経系疾患
連携東京大学、東京医科歯科大学、川崎市産業振興財団(COIプログラムの中核機関)
URLhttps://braizon.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

脳の病気の薬は、有効な成分が見つかっても、脳へ届かなければ治療になりません。その最後の関門を、薬を包むミセルの工夫で越えようとする発想が目を引きます。薬の側の設計で届ける点が、この分野の面白さです。

同社の送達技術は、ミセルの表面で行き先を決める点が特徴です。低分子から核酸まで運べるとされるため、製薬企業の開発資産を脳へ広げる基盤になり得ます。創薬の成否が、薬そのものの性能だけで決まらないことを、この分野は示しています。

脳へ薬が届く日常が、認知症や神経変性疾患の治療の選択肢を広げる土台になり得ます。薬を運ぶ技術は、個々の薬の成否を超えて、複数の薬の可能性を開く役割を担う存在です。同社の今後の事業の展開が注目されます。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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