イムノメディスン「好中球標的のがん免疫治療薬」を開発

イムノメディスン株式会社

イムノメディスン「好中球標的のがん免疫治療薬」を開発

企業紹介|イムノメディスン株式会社とは?

T細胞だけでなく好中球にも働きかけ、がんの免疫治療に挑む、注目を集める「好中球標的のがん免疫治療薬」。イムノメディスン株式会社は、その社会実装を目指す、大阪大学発の創薬企業です。HVJ-Eを用いた、RNA医薬とプラスミドDNA医薬の研究開発を進めています。

キーワード「好中球標的のがん免疫治療薬」

「好中球標的のがん免疫治療薬」は、白血球の一種である好中球(細菌などを攻撃する免疫細胞)を、がんを抑える型(N1型)に導く薬です。同社は、T細胞やNK細胞(いずれもがん細胞を攻撃する免疫細胞)に加え、好中球も含めてがんを攻撃することを目指しています。中核技術は、大阪大学が発明したHVJ-Eです。

市場課題|免疫療法が効かない患者がいる

現状のがん免疫療法の課題

半数以上で効果が届かない

免疫チェックポイント阻害薬を受けた患者の半数以上は、併用療法でも効果が認められないと、国立がん研究センターが2025年2月に発表しました。この発表は、がんモデルマウスで、免疫チェックポイント阻害薬と自然免疫応答(生まれつき備わる免疫の初期反応)を活性化する薬剤を併用した研究に基づくものです。免疫を抑える細胞の活性化を防ぐことで、治療抵抗性を克服できる可能性が示されました。そのため、既存の治療では、恩恵を受けられない患者が残っています。

T細胞が少ないがんに効きにくい

T細胞が少ないがんは非炎症性がんと呼ばれ、免疫チェックポイント阻害薬が効きにくいとされています。同センターのマウスの研究では、免疫を抑える働きをもつ顆粒球系の細胞(PMN-MDSC)が、CD8陽性T細胞(がん細胞を攻撃する免疫細胞)の増殖を抑えることが示されました。T細胞以外の免疫細胞にも働きかける治療が、新たな選択肢になります。

他にも、既存の免疫療法に耐性をもつがん、化学療法に耐性をもつがん、薬剤耐性感染症、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 免疫チェックポイント阻害薬がん細胞が免疫にかけるブレーキを外し、T細胞の攻撃力を回復させる薬である。現在のがん免疫療法の中心的な薬の一つである。

イムノメディスンの強み|「好中球標的のがん免疫治療薬」を開発

イムノメディスンが「好中球標的のがん免疫治療薬」を開発

RIG-Iで免疫応答を高める

従来のがん免疫療法の多くは、T細胞の働きを高めることを中心に設計されています。

同社のRNA医薬は、HVJ-E(遺伝子や核酸を細胞に届ける運び手)の粒子の中に、断片化した単鎖RNAを入れたものです。細胞内の核酸受容体RIG-I(ウイルス由来のRNAを感知するセンサー)を活性化し、免疫応答を高める点が特徴です。このRNA断片とFタンパク質が樹状細胞(免疫細胞に攻撃の目印を伝える細胞)を活性化し、がん特異的なキラーT細胞とNK細胞を誘導するとされています。T細胞が少ないがんでも、攻撃の担い手を増やせる可能性が広がります。

好中球をN1型へ切り替え

がんの周囲では、免疫を抑える顆粒球系の細胞がT細胞の増殖を妨げ、攻撃の力を弱めることがあります。

同社のRNA医薬は、腫瘍組織の中のマクロファージ(貪食する免疫細胞)と好中球を、腫瘍を抑える型(M1型、N1型)へ切り替えるとされています。プラスミドDNA医薬は、好中球を集める働きをもつヒトCXCL2の遺伝子と、結核菌由来のHSP65遺伝子、ヒトIL-12の遺伝子を主成分とする薬です。HVJ-E由来のRNA断片とFタンパク質は、N1型好中球やキラーT細胞を誘導する補助成分として働きます。好中球も含めて攻撃の担い手が広がり、T細胞に限らない治療を目指しています。

FrontJournalの解説
  • RIG-I細胞の中にあり、ウイルス由来のRNAを感知する受容体である。同社の技術では、これを活性化して免疫応答を高める。

好中球標的のがん免疫治療薬の未来|治療が効きにくいがんへの応用

好中球標的のがん免疫治療薬が変える未来

効きにくいがんへの期待

同社は、既存の免疫療法や化学療法に耐性をもつがんの克服を目指しています。大阪大学の研究グループは2020年、CXCL2のプラスミドとHVJ-Eの併用で、マウスの乳がんの増殖と肺転移が抑えられたと報告しました。抗体で好中球を取り除くとこの効果が消えたため、好中球の関与が示されています。ただしマウスでの結果で、人での効果は確認されていません。

抗PD-1抗体との併用

同じ報告では、抗PD-1抗体(免疫チェックポイント阻害薬の一種)の併用が調べられています。マウスの乳がんでは、抗PD-1抗体だけでは腫瘍の増殖は抑えられませんでした。一方で、CXCL2のプラスミドとHVJ-Eの併用に抗PD-1抗体を加えると、統計的に意味のある差で抑制されました。人での併用の効果は確認されておらず、今後の研究課題です。

がん免疫治療薬の実用化を目指す

同社は、国内外でHVJ-Eを利用したがん免疫治療薬の開発と実用化を目指しています。中核技術のHVJ-Eは、大阪大学が発明した技術です。経済産業省の大学発ベンチャーデータベースでは、主力製品「IM-0102」の事業ステージは製品・サービス提供開始前(PoC前)とされています。実用化には、人での安全性と有効性を調べる臨床試験が必要です。HVJ-Eによる薬剤耐性感染症の克服も目指しています。

会社概要|イムノメディスンの事業内容・設立背景

2020年に設立

イムノメディスン株式会社は、2020年12月1日に設立された企業です。事業は医薬品の研究、開発、販売で、本社は大阪市中央区備後町にあります。2021年7月には、本店を大阪府茨木市から大阪市中央区へ移転しました。経済産業省の大学発ベンチャーデータベースには、大阪大学の研究成果をもとにした企業(研究成果ベンチャー)として、研究者に金田安史氏が記載されています。

連携

同社は、大阪大学と共同研究契約を結んでいます。2021年6月には、アンジェスと共同研究契約を結びました。2022年12月には、中国のYouJia (HangZhou) Bio-medical Technologyとも共同研究契約を結んでいます。HVJ-Eは大阪大学の研究成果に由来する技術です。

資金調達

2024年8月に、J-KISSによる資金調達を行いました。J-KISSは、スタートアップが投資家から資金を受けるときに使われる、新株予約権を用いた方式です。資本金は1,850万1円です。2024年4月には、スタートアップの発表会「The JSSA KANSAI Pitch Award」で最優秀賞とスポンサー賞を受賞しました。2025年4月にも、「The JSSA Tokyo Pitch Award & Power Matching Booth」で最優秀賞を受賞しています。

会社情報

会社名イムノメディスン株式会社
所在地大阪市中央区備後町四丁目1番3号 御堂筋三井ビルディング4階 ライフサイエンスハブウエスト
設立2020年12月1日
事業医薬品の研究、開発、販売
技術領域HVJ-Eを用いたRNA医薬・プラスミドDNA医薬(好中球を標的としたがん免疫治療薬)
連携大阪大学、アンジェス
URLhttps://im2medicine.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

T細胞だけでなく、好中球にも働きかけてがんを攻撃するという発想は、免疫治療の選択肢を広げる取り組みです。イムノメディスンは、HVJ-Eを用いたRNA医薬とプラスミドDNA医薬を軸に、国内外での実用化を目指している点が印象的です。研究室の成果を、薬として届ける段階へ進めようとする姿勢が伝わってきます。

とくに注目したのは、効きにくいがんに向けて、好中球の働きを切り替える仕組みを研究している点です。実用化はこれからの段階ですが、免疫療法の恩恵を受けられる患者を増やす可能性を持つ取り組みとして、今後の展開を見守りたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら

この企業について、
もっと深く知りたい方へ

パートナーシップ・お問い合わせはこちらから。