テクノライジング「関節可動域計」を研究|関節の角度を測る器具を描いたイラスト

株式会社テクノライジング

テクノライジング「関節可動域計」を研究|研究領域=関節の動く範囲を・角度で記録する/強み=5度ごとの溝で・角度が止まる/将来性=片手で扱えて・測り直しが減る

企業紹介|株式会社テクノライジングとは?

けがや手術のあとの回復を、数値で記録するために使われる「関節可動域計」。株式会社テクノライジングは、その計測を片手の操作で行える器具を開発した、大阪公立大学発の医療機器ディープテック企業です。片手で測れる計測器具「カチカチゴニオ」を、リハビリテーションの現場や理学療法士の養成校へ提供しています。

キーワード「関節可動域計」

「関節可動域計」は、関節が動く範囲を角度で測る器具です。特徴は、2本の腕を体に沿わせるだけで、分度器の目盛りから角度をそのまま読み取れる点にあります。リハビリテーションの現場では、担当する人が替わっても同じ物差しで回復の度合いを記録できます。

市場課題|関節の角度を測る精度は、測る人の手作業に左右される

現状の関節可動域の測定の課題|現状は、支える手と角度計を当てる手が同時に要る|測定の精度は・手作業に依存/患者を支えると・両手がふさがる

精度は手作業に依存する

関節が動く範囲を測る作業で精度を左右するのは、検者(関節可動域を測定する人)が手で合わせる器具の位置です。日本整形外科学会と日本リハビリテーション医学会が定める「関節可動域表示ならびに測定法」は、角度計で通常は5度刻みに測ると定めています。この測定法は正常値を定めず、けがのない側(健側)との比較や標準的な角度と照らして判定するよう求めており、測り方をそろえることが前提です。

測定中は両手がふさがる

この測定では、検者の両手がふさがります。同じ測定法が、他動運動(検者が患者の手足を動かして測る方法)の値を原則として表記すると定めているからです。支える手と角度計を当てる手が同時に要り、器具がずれれば測り直しとなって患者の負担も増えます。

他にも、角度計の中心を基本軸と移動軸の交点に合わせる手間、足の指など面が狭い部位の測定、カルテへ写す作業、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 関節可動域関節を動かせる範囲を角度で表したものを指す。日本整形外科学会と日本リハビリテーション医学会が測定法を定めており、基本の姿勢を0度として、通常は5度刻みで記録する。回復の度合いを測る基本の指標である。

テクノライジングの強み|「関節可動域計」を開発

テクノライジングが「関節可動域計」を開発|今後は、溝と傾斜で片手での測定が可能に|5度ごとの溝に・腕がはまり止まる/開閉部分の傾斜で・片手で開閉できる

5度ごとの溝で角度が止まる

従来のゴニオメーター(関節可動域計の一般的な呼び名)は、2本の腕を任意の位置で保持する機構を備えないものが多く、目盛りを読む前に角度が動くことがありました。

同社の「カチカチゴニオ」は、腕の開閉に5度ごとの溝を設け、角度が溝にはまるとその位置で止まる構造です。測定法が定める5度刻みの記録と溝の間隔が一致するため、読み取った値をそのまま書き写せます。目盛りの面も5度ごとに整理し、細かい線を数えずに値を確かめられるようにしました。手を添え直しても角度が保たれるため、目盛りを読む瞬間に器具がずれません。測り直しが減り、患者を同じ姿勢で待たせる時間を短縮できます。

片手で開閉できる開閉部の傾斜

角度を読む場面だけでなく、器具の開閉そのものにも、従来はどちらかの手を一度離す動作が要りました。

同社が変えたのは、本体の開閉部分に傾斜をつけ、指をかけられるようにした点です。この斜面に指がかかるため親指と人差し指だけで開閉でき、もう一方の手は患者を支えたままにできます。本体の材料にはアルミを採用し、持ち運びやすいように軽量化を図りました。腕の長さは200ミリメートルと350ミリメートルの2種類があり、測る部位の大きさに合わせて選べます。器具を持ち替える動作が減り、測定から記録までの流れが途切れません。

FrontJournalの解説
  • ゴニオメーター関節の角度を測る器具の呼び名を指す。2本の腕と分度器の目盛りからなり、一方の腕を動かない側の骨に、もう一方を動く側の骨に沿わせて角度を読み取る。日本語では角度計や関節可動域計と呼ぶ。

関節可動域計の未来|リハビリテーションの現場と養成校への広がり

関節可動域計が変える未来|医療機器としての販売から、養成校の実習へ|医療機器として・すでに販売/療法士を目指す・学生の養成校へ/機構設計の経験を・医療の他の場面へ

医療機器としてすでに販売

カチカチゴニオは、医療機器としての手続きを終え、すでに販売されています。同社は2017年3月に、医療機器製造業者の登録と、第三種医療機器製造販売業の許可を取得しました。カチカチゴニオは品目番号を取得しており、試作品ではなく医療機器として、そのまま診療の現場で使えます。医療従事者へは、医療機器の販売会社を通じて製品が届けられています。

養成校へ届く経路を整える

テクノライジングは、理学療法士や作業療法士を目指す学生にも製品が届く経路を整えています。学生と教職員に向けた通信販売の窓口を設け、養成校で学ぶ段階から同じ器具に触れられるようにしました。2019年には、第7回日本運動器理学療法学会の学術大会と、リハビリテーション医学の国際学会に参加しました。理学療法士が集まる場に器具を持ち込めば、養成校と現場の双方に知られる経路ができます。

使う人本位の機構設計を目指す

同社が目指すのは、使う人の手の動きから設計をやり直した器具を、医療のほかの場面へも広げることです。土台にあるのは、オイルダンパー(油の抵抗で動きの速さを抑える部品)や制振装置で積み重ねてきた機構設計の経験です。同社はこの経験を、医療機器と油圧機器の両方に生かしています。測る作業の負担が軽くなれば、検者は患者の体に向き合う時間を増やせます。

会社概要|大阪公立大学発ベンチャーとして堺市に生まれたテクノライジング

大阪府堺市で2015年に創業

株式会社テクノライジングは、2015年4月に大阪府堺市で設立されました。代表取締役は水野敏雄氏です。設立から2か月後の2015年6月には、大阪府立大学(現在の大阪公立大学)の大学発ベンチャー企業第99号として認定を受けました。大阪公立大学が公開する大学発ベンチャーの一覧では、木造住宅用の制振ダンパーや人体用のゴニオメーターを製造販売する企業として紹介されています。

大学の研究者と共同で開発

カチカチゴニオは、大学の研究者との共同開発から生まれた製品です。開発に加わったのは、現在は大阪公立大学大学院リハビリテーション学研究科で教授を務める岩田晃氏です。製品の公式ページには、共同開発商品であることが、開発当時の所属である大阪府立大学の名前とともに記されています。製品そのものにも「大阪府立大学式ゴニオメーター」という呼び名が添えられています。

設立直後に資金調達を実施

同社は、設立から間もない時期に資金調達を実施しています。2015年6月に、だいしんファンドからの投資受入れを公表しました。事業は医療機器にとどまらず、オイルダンパーや油圧機器の開発・設計・製造・販売も手がけています。

会社情報

会社名株式会社テクノライジング
所在地大阪府堺市北区野遠町61-5
設立2015年4月
代表代表取締役:水野 敏雄
資本金1,000万円
調達だいしんファンドからの投資受入れ(2015年6月)
事業医療機器の設計・製造・販売。オイルダンパー、その他油圧機器の開発・設計・製造・販売。医療機器製造業登録 27BZ200452。第三種医療機器製造販売業許可 27B3X00293(2017年3月取得)
技術領域関節可動域計の機構設計。オイルダンパーによる減衰制御
連携大阪公立大学(大学発ベンチャー企業として認定)。岩田 晃 教授(カチカチゴニオの共同開発)
URLhttps://techno-rising.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

この記事を書く前に、関節可動域の測定法を定めた原文を読みました。そこには「通常は5度刻みで測定する」と書かれています。カチカチゴニオの溝が5度ごとである理由は、この一文に尽きていました。

面白いのは、分度器と2本の腕という形を変えていない点です。加えたのは、溝と傾斜、そして材料の置き換えです。それでも「片手が空く」という一点が変われば、患者を支えたまま測れます。使う人の手の側から設計をやり直すという発想は、油圧機器の機構設計を重ねてきた同社だからこそ出てきたのだと感じます。

測る道具が変われば、記録が変わり、回復の見え方も変わります。小さな器具の改良が積み重なる先を、楽しみに見ていきたいと思います。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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