フォトニックサイエンステクノロジ「ダブルマルチコア光ファイバ」を開発|1本に複数のコアを持つ光ファイバの断面のイラスト

フォトニックサイエンステクノロジ株式会社

フォトニックサイエンステクノロジ「ダブルマルチコア光ファイバ」を開発|研究領域=1本に複数の・コアを収める/強み=二重コアで回路に・低損失で接続/将来性=光配線の小型化と・省電力化を目指す

企業紹介|フォトニックサイエンステクノロジとは?

データセンタの光配線を小さくする技術として、開発が進む「ダブルマルチコア光ファイバ」。フォトニックサイエンステクノロジ株式会社は、その社会実装を目指す、公立千歳科学技術大学発の光技術系ディープテック企業です。シリコン光回路(シリコン基板上に形成する光の回路)に接続でき、1本に複数のコアを持つ光ファイバを開発し、光ファイバの関連部品や製造装置も提供しています。

キーワード「ダブルマルチコア光ファイバ」

「ダブルマルチコア光ファイバ」は、1本のファイバの中に、光の通り道であるコアを複数持つマルチコア光ファイバの一種です。標準的な光ファイバ(コアが1つ)では、配線を増やすにはファイバの本数を増やす必要がありました。同社は、二重構造のコアで、標準的なファイバとシリコン光回路の両方につなげる光ファイバを開発しています。

市場課題|光配線の小型化が求められる一方、ファイバの太さが制約になる

現状の光配線の課題|現状は、ファイバの太さで回路の小型化に限界|光配線の小型化が・求められる/ファイバ外径が・回路を大型化

光配線の小型化が求められる

データセンタでは、情報処理量の増大に伴い、高速化と省電力化が求められています。その対応として、サーバ内に光回路を実装する取り組みが進行中です。光配線(光信号を伝える配線)の小型化と高密度化が進まなければ、サーバ内に載せられる光回路の規模が限られる恐れがあります。

ファイバ外径が回路を大型化

標準的な光ファイバは、外径が125μmです。光回路どうしをファイバでつなぐ場合、回路の最小ピッチ(配線の間隔)もファイバの外径と同じ125μmになります。そのため、光配線を密にできる限界がファイバの太さで決まり、回路が大型化しやすくなります。

他にも、回路どうしをつなぐファイバの本数が多く費用がかさむこと、回路の面積が広く温度調整が必要な範囲も大きくなること、その結果として消費電力が高くなること、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 光回路光信号を、光のまま伝えたり処理したりする回路を指す。データセンタでは、高速化と省電力化の要求を背景に、サーバ内へ実装する取り組みが進められている。

フォトニックサイエンステクノロジの強み|「ダブルマルチコア光ファイバ」を開発

フォトニックサイエンステクノロジが「ダブルマルチコア光ファイバ」を開発|今後は、二重構造で光回路との接続が可能に|複数のコアを・1本に収める/二重コアで・シリコン光回路へ接続

複数のコアを1本に収める

標準的な光ファイバは、外径125μmの中にコアが1つだけなので、配線を増やすにはファイバの本数を増やす必要があります。

同社は、標準的なファイバと同じ外径125μmの1本の中に複数のコアを並べた「ダブルマルチコア光ファイバ」(DMCF)を開発しました。コアどうしの間隔が狭く、光回路の配線間隔も小さくできます。回路の最小ピッチが外径で決まっていた従来の構造から、コアの間隔で決まる構造へ変わります。各コアが別々の光信号を運べるため、回路どうしをつなぐファイバの本数も減らせるのが特徴です。その結果、サーバ内の光配線を小さくまとめやすくなり、配線にかかる費用も抑えやすくなります。

二重コアでシリコン光回路へ接続

標準的なファイバとシリコン光回路ではコアの大きさが異なり、両者をつなぐ際の光の損失を抑える技術が求められます。

DMCFは、コアが第1コアと第2コアの二重構造で、入口側は標準的な光ファイバと同じ形の第1コアを持つ構造です。出口側では第1コアが消えて第2コアだけが残り、コア径が数μmのシリコン光回路と同じ大きさになります。コアの間隔は、入口側が多心のMTフェルール(複数本のファイバを並べて束ねるコネクタ部品)に、出口側がシリコン光回路に合う設計です。そのため、MTフェルール側にもシリコン光回路側にも、光の損失を抑えて接続できます。

FrontJournalの解説
  • MTフェルール複数本の光ファイバを並べて固定し、コネクタ内で位置合わせをする部品を指す。多心の光コネクタに使われ、並べた各ファイバの光を相手側へ同時につなぐ。

ダブルマルチコア光ファイバの未来|光通信と医療から、データセンタの光配線へ

光ファイバが変える光配線の未来|光通信と医療から、データセンタの光配線へ|光通信と医療向けに・販売/光配線の小型化と・省電力化/光技術の国際的・拠点を目指す

光通信と医療向けに販売

同社は、光通信と医療の分野に向けた光ファイバと関連部材を扱っています。2021年10月に、株式会社理経が同社の光ファイバと光ファイバ関連部材の販売開始を発表しました。同社は、光ファイバを複数並べる技術や高温に耐える加工に対応し、開発から加工、評価まで支援できます。医療機器やレーザーの分野でも光ファイバの用途が増え、特性の異なる特殊なファイバの需要も増えているといわれています。

光配線の小型化と省電力化

DMCFは、データセンタ内の光配線を小型化し、高密度化する部品として開発が進んでいます。経済産業省の戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)で、2020年度から公立千歳科学技術大学などと研究開発に取り組んできました。研究計画は、回路の小型化、接続ファイバの削減による低コスト化、温度調整の容易化による省電力化を見込んでいます。実現すれば、サーバ内の光配線が小さくなり、配線に使うファイバの本数も減る見込みです。

光技術の国際的拠点を目指す

同社が目指す姿は、新千歳空港周辺地域に光技術の国際的拠点「フォトニクスバレー」を築くことです。公立千歳科学技術大学の光技術の研究成果を、製品開発と製造に生かす先導役を担うことが、創業の理念です。経営の方針にも、社会的ニーズへの対応が遅れている製品の開発を積極的に進めることを掲げています。実現すれば、千歳から光技術の製品が生まれ、地域経済の発展につながる見込みです。

会社概要|公立千歳科学技術大学発の、2000年創立の光ファイバメーカー

大学発として2000年に創立

フォトニックサイエンステクノロジは、2000年1月に創立された、公立千歳科学技術大学(創立当時は千歳科学技術大学)発のベンチャー企業です。千歳科学技術大学で教鞭をとりながら起業した小林壮一氏が、創立時に代表取締役へ就きました。代表取締役は、2012年5月に坂本捷男氏、2019年5月に小林氏が就任しています。本社は2013年4月に、現在の千歳市北信濃へ移転しました。

採択と大学との連携

同社は、サポイン事業の2020年度の採択テーマ「データセンタボード内光配線用異径ダブルマルチコア光ファイバの製造技術の研究開発」で、研究実施機関を務めています。事業管理機関はNPO法人ホトニクスワールドコンソーシアムで、公立千歳科学技術大学も研究実施機関です。2022年度にも継続事業として交付が決定しています。2023年度から2025年度には、成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-tech事業)で、高出力レーザ光を長距離伝送するデリバリファイバケーブルの研究開発に取り組みました。

光ファイバから装置まで提供

同社は、石英系の光ファイバの母材の設計と製造から、ファイバの設計、製造、評価までを一貫して手がけています。加工技術を応用した、コリメータ(光を平行にそろえる部品)やバンドルファイバ(複数本のファイバを束ねた部品)などの光デバイスも、同社の製品です。光ファイバを製造する線引き装置も販売しており、高温用のFDM-100と低温用のFDM-200を、試作機から量産機まで用意しています。2022年10月には、ドローイングタワー棟が完成しました。

会社情報

会社名フォトニックサイエンステクノロジ株式会社(Photonic Science Technology Inc.)
所在地北海道千歳市北信濃776-16
設立2000年1月
代表代表取締役 小林壮一
資本金2,230万円
事業光ファイバと光デバイスの開発・製造・販売。光ファイバ線引き装置の販売
技術領域光ファイバの設計・製造・評価。ガラスの融着・延伸・研磨加工
連携株式会社理経(光ファイバと関連部材の販売。2021年10月に開始)。公立千歳科学技術大学(サポイン事業・Go-tech事業の研究実施機関)。NPO法人ホトニクスワールドコンソーシアム(サポイン事業の事業管理機関)
採択戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)(2020年度に採択、2022年度に継続)。成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-tech事業)(2023年度から2025年度に実施)
URLhttp://www.psti7.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

光ファイバは、1本に1つのコアという形が標準でした。同社は、1本の中に複数のコアを収めたうえで、出口側ではコアの径をシリコン光回路に合わせ、データセンタの光配線を小さくすることに取り組んでいます。公立千歳科学技術大学の研究成果をもとに2000年に創立した、北海道千歳市の企業が、データセンタという現場に向けた部品を開発している点にも注目しています。

光の通り道が1本のファイバの中で複数になり、サーバ内の配線が小さくなる日。千歳から生まれた光ファイバが、データセンタの省電力化を支える未来を、楽しみに待ちたいと思います。創業の理念に掲げる光技術の国際的拠点も、こうした製品の積み重ねの先にあるのではないでしょうか。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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