Pestalozzi Technology株式会社は体力テストの記録を集めて解析する早稲田大学発の企業

Pestalozzi Technology株式会社(ペスタロッチテクノロジー)

Pestalozzi Technology「運動データ解析」を研究|研究領域=体力の記録を・その場で集計/強み=発育の差をふまえ・本人の伸びを見る/将来性=子どもの記録を・大人まで引き継ぐ

企業紹介|Pestalozzi Technology株式会社とは?

一人ひとりに合う運動を選べる技術として、注目を集める「運動データ解析」。Pestalozzi Technology株式会社は、その社会実装を目指す、早稲田大学発の、健康・スポーツ分野のディープテック企業です。体力テストのデジタル集計システム「ALPHA」と、企業向けの体力チェック「ALPHA for Biz」を、学校や自治体、企業へ提供しています。

キーワード「運動データ解析」

「運動データ解析」は、体力テストや生活習慣の記録を集めて、体力の状態を数値で読み解く手法です。特徴は、同じ形式でそろえた大量の記録を突き合わせ、一人ひとりの弱点を見つけられる点にあります。この手法を使えば、学校の体育や企業の健康づくりの現場で、次に取り組むべき運動を示せます。

市場課題|活用しきれない体力の記録

現状の体力テストの課題|現状は、記録が使える形にならず指導が遅れる|紙の記録を・手で入力し直す/生まれ月の差で・評価がぶれる

集計に時間がかかり指導が遅れる

全国の学校で毎年行われる体力テストは、多くの現場で記録用紙を集めて手で入力し直すため、集計に時間がかかります。学級ごとに紙で測った値を担任が転記し、教育委員会へ提出する流れが続いてきました。結果が手元に戻るころには季節が変わり、その年の指導に生かしにくくなります。

学年単位の比較は評価がぶれる

体力テストの評価は学年ごとの基準で行われるため、同じ学年の中にある発育の差が結果に紛れ込みます。同じ学年でも4月生まれと3月生まれには約1年の月齢差があり、この差がそのまま評価に表れる現象を相対年齢効果(生まれ月による評価の偏り)と呼びます。実力なのか発育の途中なのかを見分けにくく、個人に合う運動を選ぶ手がかりが乏しい状態です。

他にも、学校ごとに異なる記録用紙の様式測定の待ち時間、年度をまたいで記録を追えない管理の分断、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 相対年齢効果同じ学年の中で、生まれた月が早い子どもほど発育が進み、体力テストの評価が高く出やすい現象を指す。実力の差ではなく、測った時点の月齢の差が結果に表れたものである。

Pestalozzi Technologyの強み|「運動データ解析」を開発

Pestalozzi Technologyが「運動データ解析」を開発|今後は、伸びに応じた運動の指導が可能に|入力と同時に・集計まで終わる/平均と比べず・本人の伸びを追う

入力と同時に集計まで終わる

紙での記録では、測定とデータ化が別の作業に分かれるため、値が使える形になるまで人手が必要です。

ALPHA」は、測定した値をその場で入力し、集計まで一度に終える体力テストのアプリです。児童生徒が端末に入力した値は、先生の画面にすぐ反映される仕組みです。端末やブラウザを選ばず、GIGAスクール構想(一人1台の端末を配る国の施策)で配られた端末をそのまま使え、通信が届きにくい体育館でもオフラインで入力できます。教育委員会へ提出する集計表も、入力された値からそのまま作られる形式です。紙で集計していたときと比べ、集計にかかる作業は大きく減り、測り終えたその日から結果を指導に使えます。

一人ひとりの伸びを追える

学年ごとの平均と比べるだけでは、発育の途中にある子どもの課題を読み取りにくくなります。

同社は約300万人分の運動データを持ち、生まれ月や身長の伸びといった条件をそろえて解析しています。小学生の記録およそ1万4000件を調べた研究では、総合評価がAまたはBだった割合が4月から6月生まれで50%、1月から3月生まれで33%でした。同じ子どもを複数年追う縦断データにより、平均との比較ではなく本人の伸びを基準に見られます。測定の結果と本人が選んだ目標に合わせて、取り組む運動を動画で示す仕組みも同社の特徴です。自分に合う運動が分かり、次に何をすればよいかを本人と先生が共有できます。

FrontJournalの解説
  • 縦断データ同じ人を何年にもわたって繰り返し測り、時間の流れに沿って並べた記録を指す。ある時点の平均と比べる調査と違い、本人がどれだけ伸びたかを直接読み取れる点に価値がある。

運動データ解析の未来|学校から職場と社会へ

運動データ解析が変える未来|今後は、学校の体力テストが社会へ|働く大人にも・測定を広げる/全国調査を担い・海外にも広げる/健康寿命の延伸を・目指す

働く人の体力を測る仕組み

「ALPHA for Biz」は、企業で働く人の体力を測り、結果をスマートフォンへ返すサービスです。このサービスは、社内で行う測定の支援、本人が課題とやるべき運動を確かめるアプリ、会社単位で課題をまとめる分析で成り立っています。体力の低下は加齢だけが原因ではないため、若い年代から続けて確かめることが望ましいといわれています。2026年8月には、ウェルネスデザイン(健康づくりの企画と設計)を手がけるALIGNEと業務提携し、改善の施策まで届ける体制を整えました。

国の調査と海外へ広がる

同社は、2026年度のスポーツ庁「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」の実施業務を受託しました。対象は全国の小学5年生と中学2年生で、企画から報告までを一貫して担う役割です。海外では、フィリピンで児童生徒と教員が運動を学ぶ機会づくりと、体力と生活習慣の調査に取り組んでいます。同社はこの取り組みを、文部科学省の「EDU-Port」(日本型教育の海外展開事業)でも報告しています。

健康寿命の延伸を目指す

同社が目指すのは、「運動データを健康寿命の延伸につなげること」です。2025年3月には社内に日本健康・運動データ総合研究所を設け、大学の研究者とともに発育や運動習慣の分析を進めています。子どものころの記録が大人になっても引き継がれれば、生活習慣の見直しに使える手がかりが増える見通しです。学校から職場まで運動データがつながれば、一人ひとりが自分の体力の変化を追えるようになります。

会社概要|Pestalozzi Technologyの事業内容と設立背景

早稲田のスポーツ研究から創業

Pestalozzi Technology株式会社は、2019年7月に設立されました。創業したのは、早稲田大学スポーツ科学部で学び、アメリカンフットボールに打ち込んだ井上友綱氏です。同社は2020年から、学校向けに体力テストのデジタル集計システム「ALPHA」を提供してきました。本社は早稲田大学発スタートアップが集まる東京都新宿区西早稲田にあり、代表取締役社長CEOは井上氏が務めます。

大学と国の調査で連携

運動データを使った共同研究は、大学とともに進められています。早稲田大学の金岡恒治教授、順天堂大学の鈴木宏哉先任准教授らと、体力と発育の関係を調べてきました。2026年度は、スポーツ庁の全国調査の実施業務を受託しています。企業向けでは、2026年8月にALIGNEと業務提携しています。

2025年に約3億円を調達

直近の調達は、2025年3月に受け入れた約3億円です。資金を引き受けたのは、早稲田大学ベンチャーズ(大学の研究成果に投資する大学系ベンチャーキャピタル)が運営するファンドです。2023年5月にも、STATION Ai Central Japan 1号ファンドやメディパル、学研から1.4億円を調達しています。同社は資金を、製品の強化や採用、研究活動などに充てるとしています。

会社情報

会社名Pestalozzi Technology株式会社(ペスタロッチテクノロジー)
所在地東京都新宿区西早稲田1-21-1 早稲田大学19号館311室
設立2019年7月1日
代表代表取締役社長CEO:井上 友綱
調達2023年5月:1.4億円。2025年3月:約3億円(早稲田大学ベンチャーズ)
事業体力テストデジタル集計システム「ALPHA」の提供。企業向け体力チェック「ALPHA for Biz」。運動・生活習慣データの利活用サービス
技術領域体力テストの入力と集計のデジタル化。約300万人分の運動データの解析。相対年齢効果や身長発育と体力の関係の研究
連携早稲田大学 金岡恒治教授。順天堂大学 鈴木宏哉先任准教授。ALIGNE(2026年8月)。スポーツ庁 2026年度(令和8年度)全国体力・運動能力、運動習慣等調査の実施業務を受託
URLhttps://pestalozzi-tech.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

体力テストは、ほとんどの人が学校で受けた経験を持ちながら、その結果がどう使われたかを覚えている人は多くありません。Pestalozzi Technologyが取り組んだのは、測る方法を変えることではなく、測った値をその場で使える形に変えることでした。学校に眠っていた記録が、解析できる一つのデータへと姿を変えつつあります。

注目したいのは、単なる集計の効率化ではなく、生まれ月や発育の差を織り込んで読み解くという視点です。平均と比べて高いか低いかではなく、その子がどれだけ伸びたかを見られるようになれば、運動の得意不得意という言葉の意味も変わっていきます。学校で積み上がった記録が職場の健康づくりへつながる道筋も、すでに見え始めています。

子どものころの記録が生涯の健康を支える手がかりになる日を期待しています。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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