アンジェス株式会社は血管の新生を促す遺伝子治療を開発する大阪大学発の企業

アンジェス株式会社

アンジェス「遺伝子治療」を研究|研究領域=細胞に遺伝子を・届ける医療/強み=筋肉への注射で・血管新生を促す/将来性=重症下肢虚血で・米国の承認を目指す

企業紹介|アンジェス株式会社とは?

足の血流が滞る病気に対し、血管の新生を促す医療として、注目を集める「遺伝子治療」。アンジェス株式会社は、その社会実装を目指す、大阪大学発のバイオ・ヘルスケア系ディープテック企業です。国内では市販後の調査で第3相試験の成績を再現できず2024年に販売を終えた「コラテジェン」を、潰瘍を伴う末梢動脈疾患の患者へ提供するため、米国で承認申請を進めています。

キーワード「遺伝子治療」

「遺伝子治療」は、体内の細胞へ遺伝子を届け、その細胞に治療用のタンパク質産生させる医療です。特徴は、タンパク質そのものを投与せず、遺伝子を筋肉などの局所へ入れて、その場で必要な物質を産生させる点にあります。同社の「コラテジェン」は、血管の新生に働く物質の遺伝子を足の筋肉へ注射し、重症下肢虚血の治療を目指します。

市場課題|重症下肢虚血では、血流を回復させる治療の選択肢が限られる

現状の重症下肢虚血の課題|現状は、足の血流不足に対し治療の選択肢が限られる|血流不足で足に・潰瘍や痛みが生じる/血行再建術が・難しい患者もいる

血流不足で足に潰瘍や痛み

下肢の動脈が詰まって血流が不足する慢性動脈閉塞症のうち、症状が重い重症下肢虚血では、安静時にも痛み、潰瘍(皮膚や組織の欠損)や壊疽(組織の壊死)が生じます。血流が不足すると、修復に必要な酸素や栄養が届きにくい点が問題です。潰瘍や壊疽が治りにくいと、歩行や生活に支障が出続けるのが実情です。

血行再建術が難しい患者もいる

重症下肢虚血の標準的な治療は、運動療法や薬物療法に加え、バイパス手術やカテーテル治療といった血行再建術です。ただし、血管の狭窄が広範囲に及ぶ場合や、動脈の石灰化が強い場合、全身状態が不良な場合は、血行再建術を実施しにくくなります。実施できない患者は、薬物療法だけでは効果を期待しにくく、潰瘍や痛みが続く恐れがあります。

他にも、カテーテル治療後の再治療の多さ、合併症による傷の治りにくさ、歩行が難しくなるなど生活の質の低下、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 血行再建術詰まった動脈を広げる、または迂回路を設けて血流を回復させる治療を指す。カテーテルによる血管内治療と、自家静脈や人工血管を用いるバイパス手術がある。血管の状態によっては適用が難しい。

アンジェスの強み|「遺伝子治療」を開発

アンジェスが「遺伝子治療」を開発|今後は、注射でHGFの産生が可能に|HGFの産生で・血管の新生を促す/血行再建術が難しい・患者を対象

HGFの産生で血管の新生を促す

従来の薬物療法は、血管を広げたり血小板の凝集を抑えたりする働きが中心で、血流の通り道そのものを増やす作用は限られます。

同社の「コラテジェン」は、ヒトのHGF(肝細胞増殖因子)の遺伝子を組み込んだプラスミドDNA(遺伝子の運び役となる環状のDNA)を有効成分とし、下肢の筋肉内へ注射する製品です。筋肉の細胞に取り込まれた遺伝子から、HGFが産生・分泌される仕組みです。HGFの作用の一つは、血管内皮細胞(血管の内側を覆う細胞)の増殖。そのため、側副血行路(詰まった血管を迂回する細い血管)が発達して血管の数と局所の血流量が増えると考えられています。その結果、虚血状態が改善し、足の潰瘍や痛みが和らぐと期待されています。

血行再建術が難しい患者を対象

血行再建術は、既存の血管を広げたり迂回したりする治療のため、血管そのものの状態に効果が左右されます。

「コラテジェン」は、国内では、標準的な薬物療法の効果が不十分で、血行再建術の適用が難しい慢性動脈閉塞症における潰瘍の改善を対象に承認されていました。特徴は、病変の付近にある下肢の筋肉内へ、遺伝子を含む液を注射する点です。産生されたHGFは、血管内皮細胞の増殖と、血管の壁を構成する平滑筋細胞の移動に働くため、成熟した血管を導く可能性が示唆されています。血行再建術を実施しにくい患者にとって、治療の選択肢が広がることが期待されます。

FrontJournalの解説
  • 側副血行路主幹動脈が詰まったときに、周囲の細い血管が発達して血流の迂回路となったものを指す。血管の新生が進むと発達し、末梢への血流を保つ役割を持つ。

遺伝子治療の未来|米国で潰瘍を伴う末梢動脈疾患の承認申請を進める

遺伝子治療が変える未来|試験から承認申請へ進み、提供を目指す|第2相試験で・治癒期間が短縮/米国で承認申請を・段階的に提出/承認を得て患者へ・提供を目指す

第2相試験で治癒期間が短縮

米国の第2相臨床試験(用量と有効性を探る段階の試験)では、「コラテジェン」の投与群で潰瘍が治るまでの期間が、プラセボ(有効成分を含まない偽薬)より短くなりました。対象は、潰瘍があり血流の低下が中等度の患者75人で、2用量とプラセボを比べる二重盲検(患者も医師も投与内容を知らない方法)で、投与は4回でした。治癒までの期間の中央値(並べたときの真ん中の値)は、2用量を合わせた投与群が84日、プラセボ群が280日で、有意差(偶然とは考えにくい差)がありました。治癒割合は、半年時点で投与群63.3%、プラセボ群38.5%と有意差はなく、12か月時点で77.6%と46.2%で有意差がありました。

米国で承認申請を段階的に提出

同社は、米国で「コラテジェン」の承認申請を、ローリングサブミッション(書類を段階的に提出する方式)で進めることを、2026年8月に決めました。FDA(食品医薬品局)は、2024年9月に、この製品をブレークスルーセラピー(重い病気の薬の開発を早める制度)に指定しています。米国での指定の対象は、血行再建術を必要としない虚血性潰瘍を伴う末梢動脈疾患です。申請の完了は2027年初頭が目標です。

承認取得と患者への提供を目指す

米国では同社が開発を続けています。「コラテジェン」の承認を取得し、潰瘍を伴う末梢動脈疾患の患者へ提供することが目標です。承認されれば、潰瘍の治癒を目指す患者に、注射という治療の選択肢が加わります。承認の可否は、今後の審査次第です。

会社概要|大阪大学の研究から生まれた、遺伝子医薬の研究開発企業

大阪大学の研究から事業化

アンジェス株式会社は、1999年12月17日に設立された、大阪大学発のバイオ企業です。創業者は、大阪大学の研究者だった森下 竜一氏です。「コラテジェン」の発明と基礎研究の立案は大阪大学で行われ、2001年5月には、大阪大学医学部附属病院で、初めてヒトに投与する臨床研究が実施されました。代表取締役社長は山田 英氏で、本社は大阪府茨木市の彩都バイオインキュベータにあります。

期限付承認から米国開発へ

「コラテジェン」は、2019年3月に国内で条件及び期限付きの製造販売承認(有効性が推定され安全性が確認された段階で、期限を付けて認める制度)を受け、同年9月に発売されました。市販後の調査で国内の第3相臨床試験の成績を再現できなかったため、2024年6月に正式承認の申請を取り下げ、製品の販売を終了しています。販売権を持っていた田辺三菱製薬(現・田辺ファーマ)との契約は、国内で2024年11月、米国で2025年2月に終了しました。

遺伝子検査と導入品も事業に

同社の事業は、遺伝子医薬品の研究開発に加え、希少遺伝性疾患の検査受託と、他社から導入した医薬品の販売です。検査は、2021年4月に開設した衛生検査所(臨床検査を受託する施設)が担い、新生児スクリーニング(生まれた赤ちゃんの病気を早期に調べる検査)などを扱っています。早期老化症候群の治療薬「ゾキンヴィ」は、2024年1月に国内で製造販売承認を取得し、同年5月に販売を開始しました。

会社情報

会社名アンジェス株式会社(AnGes, Inc.)
所在地大阪府茨木市彩都あさぎ七丁目7番15号 彩都バイオインキュベータ
設立1999年12月17日
代表代表取締役社長 山田 英。創業者 森下 竜一
資本金40,499百万円(約405億円・2026年6月末現在)
上場東京証券取引所グロース市場(証券コード 4563)。2002年9月に東京証券取引所マザーズへ上場
従業員57名(連結・2026年6月末現在)
事業遺伝子医薬品の研究開発。希少遺伝性疾患の検査受託。導入医薬品「ゾキンヴィ」の販売
技術領域遺伝子治療(HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン」)。核酸医薬(NF-κBデコイオリゴDNA)。ゲノム編集
連携大阪大学(創業者の所属先・「コラテジェン」の発明と基礎研究の立案)。塩野義製薬(NF-κBデコイオリゴDNAの国内第2相臨床試験)
採択米国FDA ブレークスルーセラピー指定(2024年9月・「コラテジェン」)
URLhttps://www.anges.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

遺伝子治療は、必要なタンパク質を外から投与する医療から、体の細胞に必要な物質を産生させる医療への転換として語られてきました。アンジェスの「コラテジェン」は、その考え方を血管の新生に当てはめた製品です。投与した部位で必要な物質を産生させる点が、この治療の特徴です。

注目したいのは、同社が国内での承認取り下げを経て、米国で対象と評価項目を定めた臨床試験を行い、承認申請へ進んだ点です。潰瘍の治癒に、注射という別の選択肢を示せるかどうかは、今後の審査で決まります。承認申請の完了は2027年初頭が目標です。血流が滞った足の治療に、新しい選択肢が加わることを期待しています。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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