株式会社Mediestは医師とAI技術者で医療AIを開発する神戸大学発の企業

株式会社Mediest(メディエスト)

Mediest「医療AI」を研究|研究領域=心電図や画像から病気の兆候を読む/強み=課題設定から検証まで担う/将来性=記録の支援と疾患の早期発見

企業紹介|株式会社Mediestとは?

心電図や医療画像から病気の手がかりを読み取る技術として、注目を集める「医療AI」。株式会社Mediestは、その社会実装を目指す、神戸大学発のAI系ディープテック企業です。医療データの受託解析(依頼を受けて行うデータ解析)や医療画像AI用アノテーション(医療画像に医師が正解の印を付け、AIの学習用データを作ること)、ソフトウェア開発を提供しています。

キーワード「医療AI」

「医療AI」は、心電図や医療画像などの医療データを学習し、病気の兆候や特徴を読み取る人工知能です。特徴は、患者のデータと医師が示した答えの組を繰り返し学ぶことで、判定の精度を高められる点にあります。病院や研究室で、心電図の判定や画像の確認を支える道具として研究が進んでいます。

市場課題|医療AI開発を支える担い手が足りない

現状の医療AI開発の課題|画像の正解付けに専門医の手間/医療とAIに通じる人材が不足

画像の正解付けに専門医の手間

医療AIの教師データ(AIに正解を教える学習用データ)の作成では、専門医による正解付けに大きな手間がかかります。医療画像の正解付けは、読影(画像を見て診断すること)を担う専門医が行う必要があり、2020年時点でAI開発のボトルネック(全体を遅らせる工程)の一つと指摘されていました。正解付けの負担を減らす道具の開発も課題とされていました。

医療とAIに通じる人材が不足

医療と情報技術の両方に通じる人材は、確保が難しいといわれています。AI人材は2017年時点で医療分野に限らず不足しているとされ、創薬の分野でも確保が必要と指摘されていました。病院側でも、院内でICT(情報通信技術)を管理する人材の確保や育成に大きな費用負担が生じる可能性があるといわれています。

他にも、AIの導入と維持にかかる費用や、データやAIをめぐる知的財産の扱い、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 教師データAIに学習させるための、データと正解の組を指す。医療画像なら、画像と、医師が示したその画像の所見が対になる。学習させるデータの質がAIの判定の質を左右するため、正解付けの品質の確保が重視されている。

Mediestの強み|「医療AI」を開発

Mediestが「医療AI」を開発|医師が正解を付け学習用に整備/医師とAI技術者が一貫して解析

医師が正解を付け学習用に整備

医療画像の正解付けは、専門医の負担が重いうえに、付け方の基準や質をそろえることも課題とされてきました。

Mediestの医療画像AI用アノテーションは、AIモデルの作成に必要な教師データを整備するサービスです。対象は、正解の付いていない医療画像や、正解の品質をそろえにくい画像です。受け持つ範囲は、医師による正解付けを中心に、教師データの設計や品質管理、学習データセット(AIの学習用にまとめたデータの一式)の整備にまで及びます。AIを開発する企業や研究者は、医師が正解を付けて品質を確かめた教師データで、AIを学習させることができます。

医師とAI技術者が一貫して解析

医療AIの開発では、領域ごとに必要な知識が異なり、データの解析に加えて現場の制約や評価指標(AIの良し悪しを測る基準)も踏まえる必要があります。

Mediestでは、循環器内科放射線科の専門医とAI技術者で構成するチームが、解析を担います。解析の主な内容は、研究データや臨床データ(診療で得られるデータ)の統計解析(データの傾向を数値で確かめる手法)、機械学習(データから規則を学ぶ計算の手法)や深層学習のモデルの設計と検証、そして結果の解釈の支援です。研究者は、課題設定から結果の解釈までを、医療を理解した一つのチームに任せることができます。

FrontJournalの解説
  • 深層学習機械学習の一種で、何層にも重ねたニューラルネットワーク(脳の神経回路をまねた計算モデル)に、データを繰り返し与えて特徴を学ばせる手法を指す。心電図の波形や医療画像の解析に用いられる。

医療AIの未来|記録の支援と早期発見、業界の革新へ

現場で使う医療AIが変える未来|端末内で動く書き起こしAI/疾患の高リスク者を早期に発見/業界全体の革新を目指す

端末内で動く書き起こしAI

Mediestは、医療現場の記録にも使えるAI書き起こしソフト「Sibilus」を提供しており、無料で使えるプランも用意しています。「Sibilus」は、音声データをクラウドへ送らず、パソコン内で書き起こしから議事録の作成まで処理するソフトです。患者とのやりとりのような個人情報も、外部のサービスを通さずに記録できます。病院の規定で、インターネット経由のツールを使いにくい場面を想定しています。

疾患の高リスク者を早期に発見

同社は、脳卒中や循環器疾患、要介護のリスクが高い人を早く見つけるAIシステムの開発に参画しています。この開発は、厚生労働省のSBIR(中小企業の研究開発を国が支える制度)のフェーズ3(実用化に向けた大規模な実証の段階)の基金事業として進み、リアルワールドデータ(診療や健診で集まるデータ)を活用します。同社はAIモデルの開発・実装に加え、他のシステムとの連携を担当。事業では、2028年3月までの実証の中で、見つけた高リスク者への予防介入(発症の前に生活指導などで手を打つこと)を社会で実装できるかを検証します。

業界全体の革新を目指す

同社は、デジタル技術で医療業界全体の革新を進めることを目指しています。医療は、AIによる診断支援(医師の診断をAIが補助すること)や治療法の開発が進む分野です。同社が掲げるのは、医療データを次の判断に生かすことです。医師とAI技術者の視点を組み合わせた支援は、研究・開発・事業化の初期段階から実装までに及びます。

会社概要|Mediestの事業内容・設立背景

神戸大学構内で2021年に設立

株式会社Mediestは、2021年7月6日に、神戸大学構内で設立されました。代表取締役の西森誠氏は循環器内科の専門医で、神戸大学大学院医学研究科の分子疫学(分子の指標で病気の要因を調べる学問)分野の助教です。西森氏は、心電図と胸部レントゲン写真を深層学習で組み合わせ、頻脈(脈が異常に速くなる状態)の原因となる副伝導路(心臓内の余分な電気の通り道)の位置を予測するAIの研究にも携わってきました。CTO(最高技術責任者)の松尾秀俊氏は放射線科の専門医で、医療画像の深層学習を研究しています。

神戸大学の認定と都事業の選抜

同社は、2021年11月9日に、神戸大学認定ベンチャー(大学が認めた大学発ベンチャー)となりました。2021年度には、東京都の創薬ベンチャー育成プログラム「Blockbuster TOKYO」に、日本学術サポート(現・GMO学術サポート&テクノロジー)との合同チームとして選ばれ、うつ病の診断と治療に向けた脳機能画像(脳の働きを写した画像)の深層学習解析に取り組みました。主な取引先は、神戸大学や国立循環器病研究センター、TOPPANなどです。

受託型の解析と開発が事業の軸

同社の事業は、医療データの受託解析やAI活用のコンサルティング、医療画像AI用アノテーション、ソフトウェア開発といった受託型のサービスが軸です。コンサルティングでは、テーマの整理データ準備の方針PoC(小規模に試して実現性を確かめる検証)の計画策定から相談を受けます。社内では、医師やエンジニア、デザイナー、アノテーター(正解付けの作業者)といった専門人材が連携しています。

会社情報

会社名株式会社Mediest(メディエスト)
所在地兵庫県神戸市中央区楠町7丁目5-2(神戸大学構内)
設立2021年7月6日
代表代表取締役:西森誠(循環器内科専門医。神戸大学大学院医学研究科 分子疫学分野 助教)。CTO:松尾秀俊(放射線科専門医)
資本金100万円
事業医療データの受託解析。AI活用コンサルティング。医療画像AI用アノテーション。医療AI・ヘルスケアソフトウェア開発。AI書き起こしソフトウェア「Sibilus」(Freeプランあり)。AIシフト作成ソフト「ShiftAid」(デモ版)
技術領域統計解析と、機械学習・深層学習モデルの設計と検証。医師による正解付けと教師データの品質管理
連携主な取引先:神戸大学。国立循環器病研究センター。GMO学術サポート&テクノロジー。TOPPAN。ICI株式会社。株式会社医針盤
採択神戸大学認定ベンチャー(2021年11月)。東京都「Blockbuster TOKYO」2021年度 選抜(日本学術サポートとの合同チーム。同社は2023年にGMO学術サポート&テクノロジーへ商号変更)。厚生労働省 中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3基金事業)のコンソーシアムに参画(大規模技術実証期間:2024年1月〜2028年3月)
URLhttps://mediest.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

医療AIの精度は、計算の手法だけでなく、医師が付ける正解の質と、何を解くかという問いの立て方に大きく左右されます。Mediestでは、その両方を医師とAI技術者が連携して担っています。循環器内科と放射線科の専門医がそろう点は、医療の文脈を踏まえた開発の土台です。

注目したいのは、解析だけでなく、課題設定から検証までを一つのチームで担っている点です。研究で集めた医療データを生かし、診療や予防の現場で使える道具を形にする道筋が見えます。国の事業に参画して取り組む早期発見のAIは、それを社会で確かめる機会になります。

医療データが次の判断に生きる場面が、研究室の外へ広がっていくことを期待しています。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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