MIG「脳健康VR測定」を開発

MIG株式会社(エムアイジー)

MIG「脳健康VR測定」を開発

企業紹介|MIG株式会社とは?

VR(仮想現実)ゴーグルで脳の空間認知の力を測り、アルツハイマー病の兆しを症状が出る前に見つけようとする「脳健康VR測定」。MIG株式会社は、その社会実装を目指す、医療系のディープテック企業です。測定と健康チェックをもとに、脳健康レポートを提供するプログラム「Brain100 studio」を展開しています。

キーワード「脳健康VR測定」

「脳健康VR測定」は、VRゴーグルをつけて仮想空間の中を移動し、自分の位置や向きをどれだけ正確につかめるかを測る検査です。この力は経路統合能(歩いた距離や向きを記憶して出発点へ戻る力)と呼ばれ、アルツハイマー病で最初に変化が起こる嗅内野(きゅうないや)の働きと関わります。同社は、この測定の研究と事業化を進めています。

市場課題|認知症の早期発見は難しい

現状の認知症早期発見の課題

症状前の変化に気づきにくい

アルツハイマー病(認知症の原因として最も多い病気)は、物忘れなどの症状が現れる20年以上前から、脳の中で、嗅内野という部位から変化が静かに始まっていることが知られています。変化に気づかないと、予防を始める時期が遅れるおそれがあります。そのため、症状が出る前に変化を知る手段が重要です。

既存の検査では見つけにくい

現在の診断法では、症状が現れる前にアルツハイマー病を検出することは難しいとされています。予防の活動は、最初期から始めると高い効果が期待できるといわれています。そのため、症状のない段階でも受けられる、新しい測定方法が求められている状況です。

他にも、40代でも最初期の変化が見られる人がいる(同社の紹介)、予防の開始が遅れやすい、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 嗅内野脳の中で、自分の位置や向きの把握に関わる部位である。アルツハイマー病では最初に神経細胞の変化が起こる部位といわれている。

MIGの強み|「脳健康VR測定」を開発

MIGが「脳健康VR測定」を開発

経路統合能で嗅内野を測る

従来の記憶力検査などでは、病変が嗅内野から海馬へ広がった後でないと異常が検出されないとされています。

同社は、VRゴーグルで目印のない仮想空間を進み、途中の地点を経由して出発点へ戻る力(経路統合能)を測っています。嗅内野にある格子細胞(位置の把握に関わる神経細胞)がこの力を支えるため、成績は嗅内野の変化の手がかりになるとの見方です。学習院大学などの研究チームは、マウスで嗅内野のたんぱく質のたまりと経路統合能の低下の関連を示し、ヒトでは成績の低い人の割合が嗅内野の神経原線維変化(異常なたんぱく質のたまり)の年代別の割合と一致したと報告しています。症状前でも確認できるようになる可能性があります。

VR成績が脳萎縮と関連

症状のない段階では、将来の脳の変化を見分ける手がかりが限られています。

藤田医科大学などの研究グループが認知機能の正常な71名を調べた研究があります。VRゴーグルで約10分の課題に取り組んだ結果、経路統合のエラーが大きいほど、1年後に海馬傍回(記憶に関わる脳の部位)の皮質(脳の表面の層)が薄くなる程度も大きい傾向でした。血液中のアルツハイマー病関連の指標の上昇とも関連が見られました。ただし観察研究で、診断に使える段階ではありません。精度が検証されれば、症状前の脳の変化を短時間で確かめることができるようになる可能性があります。

FrontJournalの解説
  • 経路統合能自分が動いた距離や方向を記憶し、出発点へ戻る力である。目印のない空間で、体の動きの感覚をもとに実現する。

認知症予防の未来|測定から医療機器・社会実装へ

認知症予防が変える未来

商業施設で測定を提供

2024年9月12日、イオンリテールのシニアケア事業「MySCUE(マイスキュー)」の店舗「イオンスタイル品川シーサイド」で、同社の脳健康VR測定の提供が始まりました。同社は、この測定を、短時間で体への負担が少なく、高齢の方でも補助の手間をかけずに受けられるシンプルな設計と紹介しています。測定は、VRゴーグルで仮想空間を移動する課題で、嗅内野の働きに着目したものです。MySCUEは、ケアに携わる人に役立つ情報・商品・サービスを提案する場とされています。

医療機器の承認を目指す

同社は2026年10月7日付で、医療機器を製造する事業者としての登録(医療機器製造業)を東京都から受けました。VR技術を使った脳健康測定プログラムを、医療機器として実用化するための事業化を進めています。登録は事業者としての手続きにあたり、製品の承認とは別に扱われます。医療機器としての承認は、これからの段階です。あわせて、医療機関への展開も進める方針です。

認知症ゼロ社会を目指す

同社は、症状が出る前に脳の状態を知り、予防に取り組める仕組みを広げようとしています。対象とするアルツハイマー病は、認知症の約7割を占めるといわれています。導入モデルをいくつか用意し、運営方針や体制を相談しながら社会実装を広げる方針です。測定と、予防アドバイスを含む脳健康レポートを通じて、認知症ゼロ社会を目指しています。

会社概要|MIGの事業内容・設立背景

2017年に創業

MIG株式会社は、2017年9月1日に創業した企業です。代表取締役会長の甲斐英隆氏は、母親を認知症で亡くした経験から、同年に起業を決意したと同社は紹介しています。共同創業者で取締役CSO(最高科学責任者)の高島明彦氏は、学習院大学の教授で、アルツハイマー病の研究に携わってきました。代表取締役社長は竹内孝明氏で、所在地は東京都渋谷区桜丘町です。

連携と受賞

同社は、2019年7月にキリンホールディングスと共同研究契約を結びました。2020年8月に学習院大学と研究を受託する契約、2021年9月に藤田学園(藤田医科大学)と共同で臨床研究を行う契約を結んでいます。2022年8月には、藤田医科大学を代表機関とする拠点が採択された、国の産学官連携プログラム「COI-NEXT」(運営は科学技術振興機構)の研究課題として、藤田学園とともにBrain100 studioの実証研究を始めると発表しました。2025年1月には、東京都の「Tokyo Social Innovation Tech Award 2024」で、脳健康VR測定が優秀賞に選ばれました。

事業と出資

事業は、VRゴーグルを用いた脳健康測定プログラム「Brain100 studio」の提供と、その研究開発です。2020年8月には、アクサ生命保険から出資を受けました。経済産業省の補助事業の助成金を2020年と2021年に受けたほか、2019年8月にはキリンホールディングスから共同研究費を受けています。資本金は192,704,950円です(2026年1月14日現在)。

会社情報

会社名MIG株式会社(エムアイジー)
所在地東京都渋谷区桜丘町29-24 秀和桜丘レジデンス516号
設立2017年9月1日
代表代表取締役社長 竹内孝明
資本金192,704,950円(2026年1月14日現在)
事業VRを用いた脳健康測定プログラム「Brain100 studio」の提供・研究開発
技術領域VRによる経路統合能の測定(嗅内野の機能に着目)
連携学習院大学、藤田医科大学、キリンホールディングス
URLhttps://www.medicalig.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

症状が出る前に脳の状態を知るという発想は、予防の考え方を前に進める取り組みです。MIGは、VRゴーグルで仮想空間を移動する短時間の測定を軸に、研究成果と店舗での提供を重ねてきた点が印象的です。母親を認知症で亡くした経験が起業の出発点にあることも、取り組みの背景として心に残ります。

とくに注目したのは、研究を担う大学と、測定を届ける商業施設の両方に取り組んでいる姿勢です。医療機器としての承認はこれからの段階ですが、気軽に受けられる早期発見の入口として、今後の展開を見守りたい取り組みといえます。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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