バイオセラピー開発研究センター「イチゴポリフェノール」を研究

株式会社バイオセラピー開発研究センター

バイオセラピー開発研究センター「イチゴポリフェノール」を研究

企業紹介|株式会社バイオセラピー開発研究センターとは?

水分と油分を橋渡しして、アイスを溶けにくくするイチゴ由来の成分「イチゴポリフェノール」。株式会社バイオセラピー開発研究センターは、その社会実装を目指す、金沢大学発のバイオ系ディープテック企業です。イチゴの果実から抽出したエキスや粉末を、食品や化粧品の原料として提供してきました。

キーワード「イチゴポリフェノール」

「イチゴポリフェノール」は、イチゴの果実から抽出した、ポリフェノール(植物に含まれる抗酸化性の成分)を含むエキスや粉末です。構造の異なる20種類以上のポリフェノールを含み、クリームなどの水分と油分を橋渡しして形を保つ働きがあります。食品や化粧品の原料として使われてきました。

市場課題|アイスは温度が上がると、形が崩れて食べにくくなる

現状のアイスの溶けやすさの課題

アイスは溶けて食べにくい

アイスクリームは、温度が上がると形が崩れて液状になり、食べにくくなります。牛乳やクリームの油脂分、空気の泡、氷の粒(氷晶)の3つが混ざった食品で、氷の粒が溶けて水になると泡がつぶれ、油脂分も溶けるためです。夏の屋外では、食べ終える前に手に垂れやすいことが困りごとです。

溶けにくさと食感が両立しにくい

溶けにくいアイスは従来から開発されていますが、化学合成物を使うものがあるほか、天然素材のものは食感が硬くなりやすいといわれています。溶けにくさを高めると食感が損なわれやすく、両立が課題でした。食感を保ったまま形を維持できる天然素材が、課題の解決には必要です。

他にも、ゆっくり食べても崩れにくいデザート、食が細くなった人でも口にしやすい栄養食、病院食に使える食べやすさ、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 氷晶水が凍ってできる微小な結晶である。アイスクリームでは、牛乳やクリームの水分が凍って氷晶になり、空気の泡や油脂と組み合わさって組織を作る。温度が上がると氷晶が溶けて水になり、組織が崩れる。

バイオセラピー開発研究センターの強み|「イチゴポリフェノール」を研究

バイオセラピー開発研究センターが「イチゴポリフェノール」を研究

ポリフェノールで形を保つ

通常のアイスは、氷の粒が溶けると離水(溶けた食品から水分が分離して染み出す現象)が起こり、形が崩れます。

同社は、イチゴから抽出したポリフェノールを、氷の粒ができる前のアイスの原料に加える製造法を開発しました。イチゴポリフェノールが水分と油脂分を橋渡しすると、水分と空気の細かな泡を油脂が膜状に取り囲む構造になります。この状態で凍らせると、温度が上がっても水は油脂に囲まれて染み出しにくく、アイスの形が保たれる原理です。牛乳に含まれるたんぱく質のカゼインも乳化の役割を担い、ポリフェノールと補い合って働くと考えられています。真夏の暑さでも30分は形を保てるとされ、手に垂れにくくなります。

天然のエキスで溶けにくいアイス

市販の食品では、水と油のように混ざりにくい成分をつなぐ乳化剤や、食品を固める凝固剤といった添加物が、形を保つ役割を担っています。

同社のイチゴポリフェノールは、イチゴの果実から抽出したエキスで、添加物を含まない天然素材です。構造の異なる20種類以上のポリフェノールを含み、緑茶のカテキンが基本構造の同じ何種類かの成分で構成されるのとは異なります。加えるエキスはごくわずかで足り、抹茶など味の異なるアイスでもイチゴの味は目立ちにくい点が特徴です。これを配合したアイスは、カップアイスほどの固さで、時間がたった後もプリンのようなとろりとした食感を楽しめます。硬くなりすぎない溶けにくいアイスを、さまざまな味で作ることができます。

FrontJournalの解説
  • 離水凍結した食品が溶けるとき、水分が分離して染み出す現象である。氷の粒が溶けて水になることで起こる。起こると形が崩れ、食感も損なわれる。

イチゴポリフェノールの未来|食品から、食べにくい人のための栄養食へ

イチゴポリフェノールが変える未来

溶けにくいアイスを商品化

同社は、イチゴポリフェノールを使った溶けにくいアイスクリームを商品化した実績があります。2017年には、金沢のひがし茶屋街の近くに、同社が企画・製造・販売するアイスショップ「金座和アイス」を開きました。同年末には、雪吊りや福梅などの形、くまモンなどをかたどった棒状のアイスが、バニラ、抹茶、イチゴの味で販売されていました。形を保てる性質を、形の多様さに生かした商品です。

2017年の病院食と卸販売計画

2017年時点で、同社は卸販売の拡大と、病院食としての採用を目指していました。病院食に向けては、カップ入りの溶けにくいアイスを商品化し、営業活動の最中でした。店舗を増やしながら卸販売にも力を入れる計画でした。金沢大学や他の大学との連携で、野菜や果物の新たな機能性成分(体に有用な働きを持つ成分)の研究と商品開発を続ける考えも示されていました。

衰弱した人向けの栄養食を目指す

同社の研究責任者である金沢大学の太田富久名誉教授は、2017年に、溶けにくい性質を、病気で衰弱した人や高齢者、幼児など、ゆっくりとしか食べられない人向けの栄養食に生かしたいと述べました。市販の食品に添加されている凝固剤や乳化剤にあたるものは、イチゴエキスで代替できるという考えです。たとえば病気が進んで食が細くなった人にも、食べやすい食品の開発が目標です。実現すれば、食事をとりにくい人にも、食べやすい形で栄養を届けられるようになります。

会社概要|金沢大学の研究から生まれたバイオセラピー開発研究センター

金沢大学の研究を事業化

同社は、金沢大学の研究成果を基に、2006年4月に金沢市で設立された企業です。創業者の豊田剛史氏は、金沢大学の太田富久氏の研究を基に競争力のある商品を開発できると考え、約1年をかけて太田氏を説得して設立しました。太田氏は、同社の研究責任者を務める金沢大学の名誉教授で、天然物化学(植物などの天然素材から有用な成分を取り出して調べる分野)を専門とします。公式サイトは、金沢大学の環境健康科学研究室との連携で、健康長寿に貢献する天然成分の研究開発を行うとしています。

採択・連携

2021年9月に金沢大学が初めて授与した「金沢大学認定ベンチャー」の称号を、同社は4社のうちの1社として得ています。この制度は、大学の特許などの使用を認められた企業を認定し、支援するものです。2009年度には、石川県産業創出支援機構(ISICO)の「革新的ベンチャービジネスプランコンテストいしかわ」で優秀起業家賞を受賞しました。経済産業省のGビズインフォには、2023年6月に承認された小規模事業者持続化補助金(一般型)の情報が登録されています。

食品素材の研究開発が柱

事業の中心は、バイオテクノロジーに基づく食品・医薬品素材の研究開発です。ほかに、食品や化粧品の機能性評価(体への働きを調べる試験)、機能性食品の開発、素材の有効性評価や講演活動、雑誌・書籍の出版も手がけています。公式サイトの取扱商品は、イチゴポリフェノール、金時草(石川県の加賀野菜)、金時草サラダ、金時草酢の物です。東日本大震災で被災した宮城県のイチゴ農家から声を掛けられ、規格外のイチゴを化粧品の原料にした実績もあります。

会社情報

会社名株式会社バイオセラピー開発研究センター
所在地石川県金沢市安江町3番29号3階
設立2006年4月27日
代表代表取締役 豊田剛史
資本金2,000万円(公式サイト掲載)
事業バイオテクノロジーに基づく食品・医薬品素材の研究開発。食品・医薬品素材の有効性評価及び講演活動。雑誌・書籍の出版。食品・化粧品の機能性評価事業。機能性食品開発事業(公式サイト掲載)
技術領域イチゴの果実から抽出したポリフェノール(イチゴポリフェノール)など、天然成分の研究開発
連携金沢大学(研究責任者:太田富久名誉教授)。金沢大学認定ベンチャー(2021年9月)
採択小規模事業者持続化補助金(一般型・2023年6月承認)
URLhttp://www.biotherapy.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

アイスは溶けるもの、という前提に、果実のポリフェノールの働きで取り組んだ点に、大学の研究らしい着眼を感じました。果実から抽出した成分が、水分と油脂分を橋渡しして形を保つという仕組みは、身近な食べ物の見え方を変えます。成分の働きの理解が、アイスの弱点を改善する出発点になった好例だと思います。

イチゴポリフェノールの価値は、アイスの形を保つことにとどまりません。2017年に太田名誉教授が示した、ゆっくりとしか食べられない人に栄養を届ける食品へ生かすという目標が実現すれば、食事の場面が変わるかもしれません。金沢で生まれた素材が、食べにくさを抱える人の食卓にも届くことを楽しみにしています。金沢大学から生まれたほかの企業は、金沢大学発・関連スタートアップ8選で紹介しています。

FrontJournal編集部

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年10月3日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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