Nature Architects|「メタマテリアル設計」を研究

Nature Architects株式会社

Nature Architects「メタマテリアル設計」を研究|研究領域=素材でなく形で性能を出す/強み=ほしい性能から形を自動で決定/将来性=自動車から衣服まで用途が拡大

企業紹介|Nature Architects株式会社とは?

要求する性能から部品の形状を逆算する技術として、注目を集める「メタマテリアル設計」。Nature Architectsは、その「メタマテリアル設計」の社会実装を目指す、東京大学発のものづくり系ディープテック企業です。設計プラットフォーム「NA Design Platform」を用いた構造設計サービス等を、自動車や空調、航空宇宙のメーカーへ提供しています。

キーワード「メタマテリアル」

メタマテリアルは、材料そのものではなく微細な単位構造の並べ方によって、変形や振動、熱の伝わり方を制御する構造物です。特徴は、同じ金属でも折り目や空隙の並べ方を変えると、硬さやばねの性質が変わる点にあります。自動車の車体や空調機の部品では、材料を変えずに軽量化や振動の低減を図れます。

市場課題|複雑化する製品設計

現状の製品設計の課題|現状は、条件の衝突と形の直しで長引く/両立できず開発が長引く/計算で出た形は加工が難しい

両立できず開発が長引く

自動車や空調機の設計では、板を薄くすると軽くなる一方で強度が下がるように、軽量化と衝突安全を同時に満たせず開発が長引きます。設計案を作りCAEで検証して次へ反映する工程には、1案あたり2週間規模の時間を要するといわれています。検証できる案が限られ、開発は長期化しがちです。

計算で出た形は加工が難しい

計算で求めた最適な形状は、そのままでは加工が難しい形になります。広く使われる密度法によるトポロジー最適化は、密度から配置を決めるため形状が複雑になりやすく、寸法や配置の制約を反映しにくいからです。そのため設計者が結果を読み解き、加工できる形へ直す作業が要ります。

他にも、部品ごとに製造方法が異なることで増える部品点数、最適化の結果をCADへ変換する手間があります。さらに、量産の制約を計算へ取り込む難しさ、設計判断の属人化、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • CAEソフトウェアの上で製品の強度や振動、熱や流れを解析する技術。試作品を作る前に性能を見積もれるため、製造業の設計工程で広く使われる。
  • トポロジー最適化与えられた空間の中で材料をどこに配置すると性能が高くなるかを計算で求める手法。軽量化の設計に用いられ、複雑な形状が得られやすい。
  • CAD部品の形状を画面上で作図・設計するソフトウェア。ここで作った形状データが、そのまま製造の指示に使われる。

強み|要求性能から形状を逆算

Nature Architectsが「メタマテリアル設計」を開発|今後は、性能の指定で形状の生成が可能に/ソフトが構造案を高速に生成/ソフトが出す形は加工しやすい

ソフトが構造案を高速に生成

従来の設計は、案を1つずつ作って解析する手順のため、検討できる構造案の数が限られていました。

「NA Design Platform」は、要求する性能を入力すると、それを満たす構造を逆算して示すソフトウェア環境です。計算幾何学や数理最適化、機械学習を組み合わせ、製造の制約を満たす候補の形状を探索します。有望な構造は、性能と制約の関係とともにデータベースへ蓄積されるため、次の設計でも再利用が可能です。解析の精度と計算量を設計の段階で使い分けるため、初期の探索では多数の案を短時間で比較できます。

ソフトが出す形は加工しやすい

密度で材料の配置を表す手法では、部材の寸法を間接的にしか制御できませんでした。

同社が用いるMMC法(可動な部品を組み合わせて形を表す最適化手法)は、部材の形状を表すパラメータを設計変数として直接扱います。厚みの範囲や配置できる領域も、制約として計算へ組み込めます。結果はそのままCADへ移せるため、形状を描き直す後処理が不要です。この手法は熱の設計にも使えます。同社は電子機器の冷却で、流路の壁と伝熱用のフィンに役割を分けて順に最適化した成果を、2026年に学術誌「Structural and Multidisciplinary Optimization」で報告しています。

FrontJournalの解説
  • NA Design Platform同社が開発する設計ソフトウェア環境。要求する性能を入力すると、それを満たす形状の候補を生成し、解析と最適化までを一貫して扱う。
  • MMC法部材を移動や変形が可能な部品として表し、その形状パラメータを直接最適化する手法。寸法や配置の制約を計算へ組み込みやすい。
  • 数理最適化条件を満たす選択肢の中から、目的とする値が最も良くなる解を数学的に求める手法。構造設計では軽量化や剛性の向上に用いられる。
  • 設計変数最適化の計算で動かす対象となる量。厚みや長さなど、これをどう設定するかで得られる形状の扱いやすさが変わる。

メタマテリアル設計の未来|自動車から衣服まで

メタマテリアル設計が変える未来|自動車から衣服まで応用が広がる/車の部品で軽量化を確認/電池や衣服にも設計を応用/形を探す時間の短縮を目指す

車の部品で軽量化を確認

欧州の自動車開発では、この設計手法による軽量化の効果が解析で確かめられています。同社は2025年9月、ドイツの開発受託企業FEVと覚書を結びました。両社が最初に取り組んだのは、側面衝突に備える構造です。車体下部を補強する部材は、エネルギーの吸収量と乗員の安全性を保ったまま、従来の設計と比べて最大51%軽くなり、この結果は車両全体のモデルでも検証されています。

電池や衣服にも設計を応用

用途は自動車の車体にとどまらず、電池の部品や衣服へも広がっています。フタバ産業とは電池のセルの膨張と収縮に追従する側面冷却器を、リョービとは変形やばねの機能を形状で与えるダイカスト部品を、それぞれ開発しています。アパレルでは、折紙工学を用いた設計ソフトウェア「Crane」を応用し、A-POC ABLE ISSEY MIYAKEとともに蒸気で布が縮む性質を利用した衣服を実現。折り目の本数を場所ごとに変えると縮み方に差がつくため、一枚の布から狙った立体を成形できます。

形を探す時間の短縮を目指す

同社が目指すのは、形を探す時間を大きく縮めることです。同社は、逆算による生成と蓄積したデータの再利用で、1案あたり2週間規模を要した検証を1日に10案規模まで増やす進め方を掲げています。その土台が、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成事業で整えた電気自動車向けの設計環境です。重工業や航空宇宙を含む幅広い産業で、形状で機能を与える設計の普及を目指します。

FrontJournalの解説
  • 折紙工学紙を折る幾何学を工学へ応用する分野。折り目のパターンで立体の形や変形の仕方が決まるため、展開する構造や吸収材の設計に用いられる。
  • ダイカスト溶かした金属を金型へ高圧で流し込み、精度の高い部品を大量に作る鋳造方法。自動車部品の製造で広く使われる。

会社概要|設立背景と資金調達

東京大学の研究から創業

Nature Architects株式会社は、2017年5月に設立されました。創業の中心となったのは、東京大学大学院でメカニカル・メタマテリアルを研究してきた大嶋泰介氏です。2018年度には、のちに代表取締役となる須藤海氏が谷道鼓太朗氏とともにIPA(情報処理推進機構)の未踏事業で「Crane」を開発し、須藤氏はスーパークリエータに認定されました。2024年10月に須藤氏が代表取締役へ就任し、大嶋氏は顧問を務めています。

受賞と採択が事業を後押し

須藤氏と谷道氏は、「Crane」の開発により情報処理学会の「ソフトウエアジャパンアワード」(2023年度)を受けています。2023年4月には、経済産業省の「J-Startup」にも選定されました。2023年12月からはNEDOの助成事業で、電気自動車向け部材の設計環境の開発を進めています。

シリーズBまでの調達を完了

同社は2024年2月シリーズBの資金調達を完了しました。シリーズBは、製品やサービスの提供を本格的に広げる段階の資金調達です。公表されている沿革では、2018年12月のエンジェルラウンドで4800万円、2020年のシリーズAで4.2億円、直近で5億円を調達しています。

会社情報

会社名Nature Architects株式会社(Nature Architects inc.)
所在地東京都中央区日本橋人形町1-3-8
設立2017年5月
代表代表取締役 須藤 海(2024年10月就任)。創業者 大嶋 泰介は顧問。
調達2018年12月 エンジェル4800万円。2020年 シリーズA 4.2億円。2024年2月 シリーズB 5億円。
投資家シリーズA=ダイキン工業、三菱マテリアル等。シリーズB=トヨタ紡織等。
連携FEV GmbH(2025年9月に覚書)。フタバ産業(側面冷却器)。リョービ(ダイカスト)。A-POC ABLE ISSEY MIYAKE(衣服)。
技術領域メタマテリアル・折紙工学・トポロジー最適化を用いた構造設計。「NA Design Platform」「Crane」。変形・振動・熱流体。
採択NEDOディープテック・スタートアップ支援事業(2023〜2024年度、3億円)。「J-Startup」選定。東京都「SusHi Tech Global Startups」。
論文Structural and Multidisciplinary Optimization (2026)。ACM Trans. Computer-Human Interaction。
URLhttps://nature-architects.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

製品の形は、設計者の経験と試行錯誤から生まれます。Nature Architectsが取り組むのは、その順番を入れ替える試みです。欲しい性能を先に決め、形をソフトウェアが探す設計は、人の直観が届きにくい領域にも及びます。

興味深いのは、材料を変えずに形だけで機能を与える発想です。同じ金属や布でも、折り方しだいで軽さやばねが生まれます。形そのものを設計資源として扱う点に、この会社の価値があります。

折紙の幾何学から生まれた技術が、車体から衣服へ広がります。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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