Neusignal「アルツハイマー型認知症の経口薬」を開発

Neusignal Therapeutics株式会社(ニューシグナルセラピューティクス)

Neusignal「アルツハイマー型認知症の経口薬」を開発

企業紹介|Neusignal Therapeuticsとは?

症状と進行の両方に働く薬を目指す、アルツハイマー型認知症の経口薬「NTX-083」。Neusignal Therapeutics株式会社は、その社会実装を目指す、東北大学発の創薬系ディープテック企業です。同社は、2025年2月に「NTX-083」を初めてヒトへ投与し、2026年中に米国で患者さんを対象とする試験の開始を予定しています。

キーワード「アルツハイマー型認知症の経口薬」

アルツハイマー型認知症の経口薬は、口から服用する薬です。同社が目指すのは、認知機能障害(中核症状)やうつ・不安・攻撃性(周辺症状)の改善と、病気の進行への働きかけを併せ持つ薬です。同社は、KATPチャネル(カリウムの通り道)を標的とする低分子の薬「NTX-083」の開発を進めています。

市場課題|疾患修飾薬は点滴で投与する

現状の認知症治療の課題

点滴投与の負担が大きい

アルツハイマー型認知症の疾患修飾薬(病気の進行そのものに働きかける薬)のレカネマブやドナネマブは、点滴で投与する薬です。レカネマブとドナネマブは、脳にたまるアミロイドβ(たんぱく質の一種)に働く薬です。通院して点滴を受ける必要があり、投与の負担が小さい治療法が求められています。

薬ごとに役割が分かれる

ドネペジルやメマンチンは認知機能の改善に用いられ、レカネマブやドナネマブは疾患修飾薬と位置づけられます。このように、症状に働く薬と進行に働く薬は、別々の薬です。そのため、1つの薬で症状と進行の両方に働く治療法が求められています。

他にも、通院による点滴、適応患者の選定、アミロイド検査の負担、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 疾患修飾薬病気の原因に働きかけ、進行そのものを遅らせることを狙う薬である。アルツハイマー型認知症では、レカネマブやドナネマブがこれにあたる。

Neusignal Therapeuticsの強み|「アルツハイマー型認知症の経口薬」を開発

Neusignalが「アルツハイマー型認知症の経口薬」を開発

経口で投与できる薬

レカネマブなどの疾患修飾薬は点滴で投与するため、通院して投与を受ける必要があります。

同社が開発する「NTX-083」は、口から服用できる低分子(分子量の小さな化合物)の薬です。創業科学者は東北大学准教授の森口茂樹博士で、KATPチャネルは認知機能や精神機能に重要な役割を果たすと考えられています。「NTX-083」は、このKATPチャネルの働きを選択的に阻害する薬です。アルツハイマー型認知症のモデルマウス(病気を再現した実験用のマウス)では、認知機能障害の改善が確認されています。服用で済めば、点滴に比べて、治療を受ける側の負担が小さくなる可能性があります。

症状と進行の両方を狙う

ドネペジルなどは認知機能の改善、レカネマブなどは疾患修飾と、薬ごとに役割が分かれた状態です。

同社は、中核症状(認知機能障害)と周辺症状(うつ・不安・攻撃性)の改善、疾患修飾作用を併せ持つ経口薬が、同社の目指す姿です。「NTX-083」は、モデルマウスで、これらの改善と疾患修飾作用が確認されました。非臨床の概念実証(薬の効果の見込みを動物などで確かめる段階)を得ています。ヒトでの効果は、今後の試験で確かめる段階です。1つの薬で症状と進行を同時に狙えれば、治療の選択肢が広がる可能性があります。

FrontJournalの解説
  • KATPチャネル細胞のエネルギー状態に応じて開閉し、カリウムイオンの通り道となる、細胞膜にあるたんぱく質の一種である。

アルツハイマー型認知症治療の未来|米国の患者対象試験へ

経口薬が変える認知症治療の未来

健康成人で初のヒト投与

2025年2月、東京大学医学部附属病院で、健康な成人を対象とする医師主導治験(医師が主体となって行う治験)が実施され、「NTX-083」は初めてヒトに投与されました。単回投与の試験は、2025年9月に観察を終えています。反復投与の試験は、2025年11月に企業治験の第I相試験(主に安全性を確かめる段階)で最初の被験者に投与し、2026年3月に観察を終えました。反復投与の試験では、特筆すべき副作用は報告されていません。

米国で患者対象の試験へ

2026年6月の発表では、2026年中に米国でアルツハイマー型認知症の患者さんを対象とする第Ib相試験を始める予定とされています。第Ib相試験は、患者さんで安全性などを確かめる段階です。この試験は、健康成人を対象とした2つの試験に続く段階です。原薬(薬の有効成分)のプロセス開発とGMP製造(医薬品の品質を保つ基準に沿った製造)、IND(米国で治験を始めるための申請)関連資料の作成支援は、AGC(素材メーカー)が実施しました。

症状と進行に働く薬を目指す

同社は、中核症状と周辺症状の改善、疾患修飾作用を併せ持つ経口薬の実現を目指しています。創薬の起点は、東北大学の森口准教授らの研究シーズです。AMED(日本医療研究開発機構)の中間評価では、ステージゲート(事業を次の段階へ進める審査)を通過しています。標的が症状と進行に作用する仕組み(作用機序)の解明が、今後の課題とされています。

会社概要|Neusignal Therapeuticsの事業内容・設立背景

2022年に東北大学発で設立

Neusignal Therapeutics株式会社は、2022年4月1日に設立された東北大学発の創薬企業で、略称は「NTX」です。創業科学者は東北大学准教授の森口茂樹博士で、代表取締役は有本達氏です。本社は東京都中央区日本橋本町にあり、資本金は1億円となっています。

採択と受賞

2023年12月、AMEDの「創薬ベンチャーエコシステム強化事業」(第3回)に採択されました。採択課題は、「KATPチャネル阻害作用を有する低分子アルツハイマー型認知症治療薬NTX-083の開発」です。同月には、Forbes JAPANの「2024年注目の日本発スタートアップ100選」にも選ばれています。2024年9月には、ICC サミット KYOTO 2024の「リアルテック・カタパルト」で最優秀賞を受けました。

資金調達の経緯

2025年1月31日に発表したシリーズAでは、総額22億5,000万円を調達しました。このうち11億円はAMEDの補助金です。2026年6月30日には、シリーズBで総額約53.2億円の調達を発表しました。第三者割当とAMED補助金によるもので、Angel BridgeとDCIパートナーズがコリード投資家(調達ラウンドを共同で主導する投資家)です。

会社情報

会社名Neusignal Therapeutics株式会社(ニューシグナルセラピューティクス)
所在地東京都中央区日本橋本町3丁目11-5
設立2022年4月1日
代表代表取締役 有本達
資本金1億円
事業アルツハイマー型認知症の経口薬「NTX-083」の開発
技術領域KATPチャネルを標的とする低分子創薬
連携東北大学、東京大学医学部附属病院、AGC
URLhttps://neusignal-tx.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

点滴の疾患修飾薬が登場した現在、「NTX-083」は、口から服用でき、症状と進行の両方に働く薬を目指しています。点滴とは別の投与方法を探る取り組みです。健康成人を対象とする2つの試験を終え、次は米国で患者さんを対象とする試験に進む段階にあります。経口薬として実用化できるかは、患者さんでの試験の結果にかかっています。

とくに注目したのは、東北大学での基礎研究から、医師主導治験、企業治験、原薬の製造までを段階的に進めている点です。患者さんでの有効性はこれから確かめる段階ですが、経口という投与方法がどこまで生かされるか、今後の試験結果を見守りたいところです。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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