スキノス「発汗計測」を開発

株式会社スキノス

スキノス「発汗計測」を開発

企業紹介|株式会社スキノスとは?

皮膚から出る汗の量を、時間の経過に沿って連続して数値にする「発汗計測」。株式会社スキノスは、その社会実装を目指す、信州大学発のディープテック企業です。同社は、信州大学医学部と国立長野高専の研究者が開発した換気カプセル型発汗計の、開発・販売を手がけています。

キーワード「発汗計測」

「発汗計測」は、皮膚から出る汗の量を、連続して数値にする技術です。皮膚をカプセルで覆い、通した空気の湿度の変化から発汗量を求め、「発汗波」と呼ぶグラフで時間の経過に沿った変化を確認します。同社は、発汗量を高い精度で連続して測定できる発汗計を、研究機関向けを中心に提供しています。

市場課題|汗の量は連続して測りにくい

現状の発汗計測の課題

汗の量を知る手段が限られる

汗の量を測る方法は、汗の出た部位を調べる「定性的」な方法と、量を求める「定量的」な方法に大別され、選べる手段は限られます。汗は体温調節に欠かせない生理現象で、その量は暑さや精神的な刺激で変わります。発汗で体の水分が2%減っただけでも身体パフォーマンスが低下するとされ、量をつかめないと水分補給の時期を見誤りかねません。

従来の手法は連続測定が難しい

従来の手法では、発汗量を連続して測るのが難しい状況です。ミノール法は部位の特定にとどまり、ろ紙法(皮膚に当てたろ紙の重さの増加で量を測る方法)などは量を求められても不連続的な測定です。このままでは、時間とともに変わる発汗の経過をとらえにくくなります。

他にも、体重減少量やろ紙法では測定が不連続になり、発汗の経過を追えない、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • ミノール法ヨウ素とデンプンの反応で、汗に触れた部位が色づく方法である。汗の出た部位を調べる定性的な方法で、量は求められない。

スキノスの強み|「発汗計測」を開発

スキノスが「発汗計測」を開発

湿度の差から発汗量を求める

従来の体重減少量やろ紙法は、測定が不連続で、発汗の経過を追えませんでした。

同社が開発・販売する発汗計(換気カプセル型差分法発汗計)は、測定環境の空気を基準とするため、乾燥空気を必要としない方式です。皮膚を通る前の空気と、皮膚を経由した後の空気(汗の蒸散水分を含む)の湿度を二つの湿度センサで検出し、その差から発汗量を求めます。センサの出力は絶対湿度(乾燥空気1kgに対する水蒸気の質量割合)で、皮膚からの蒸散水分量を示す値に校正されています。乾燥空気や消耗品が不要で、装置の小型化も可能です。そのため、持ち運んで測れる機種も用意され、測定の場所を選びにくくなります。

応答の速い流量補償方式

従来型の発汗計は、立ち上がりが遅く、発汗の細かな変化をとらえにくい面がありました。

流量補償方式を採用した発汗計(SKN-2000)は、測る発汗量に応じた流量の空気で測定します。立ち上がり時間は従来型の約5分の1(1秒以下)になり、ダイナミックレンジ(測定できる範囲)は従来型の2倍に広がりました。従来型より変化に素早く追従し、短い時間の発汗の変化も記録できます。波形の潰れが少ないため、従来は捉えにくかった細かな反応も観測でき、運動による多量の温熱性発汗(暑さや運動で出る汗)の測定も可能です。

FrontJournalの解説
  • 流量補償方式測る発汗量に応じて、カプセルへ流す空気の量を調整する方式である。応答が速くなり、測定できる範囲も広がる。

発汗計測の未来|熱中対策への展開

スキノスの発汗計測が変える未来

規格化と製品の展開

2020年3月に、日本産業規格(JIS)の「B7923 換気カプセル形発汗量測定器」が制定され、求められる性能と評価方法が標準化されました。発汗計の性能と評価方法を、共通の基準で確認できるようになりました。製品の一例は、携帯型の「SMN-1000」(1チャンネル、A5サイズ)です。顧客には、大学や公的研究機関、大手企業の研究所が公式サイトに挙げられています。

受託測定と熱中対策デバイス

同社は、製品使用中の生体情報を測る生体計測受託サービスを提供しています。熱中対策デバイスの検証として、2022年8月下旬から9月に、都内の炎天下の現場で、管理者2名と作業員3名の発汗量を測定しました。この測定では、作業員の発汗量が管理者の2〜3倍程度になることもあり、活動内容でばらつきがありました。熱中対策デバイス「WLS-1000」は、発汗センサを備えたバンド型の機器として開発中で、医療機器ではありません。

水分補給を促す熱中対策を目指す

同社は、発汗センサに心拍数、皮膚温、活動量などの生体センサを組み合わせ、より高度な熱中対策を実現する方針です。米国産業衛生専門家会議は、1日の体重減少量が体重の1.5%を超えないよう推奨しています。発汗量の変化から水分喪失の程度をとらえ、給水が必要なタイミングでアラートを出す機能を備える設計です。適切な休憩や給水につなげ、熱中症リスクの低減に役立てる発汗計測の活用を目指しています。

会社概要|スキノスの事業内容・設立背景

2017年に設立

株式会社スキノスは、2017年4月に設立された信州大学発のスタートアップです。換気カプセル型発汗計の事業拡大を図るため「スキノスNAGANO」として設立され、2018年に現在の社名へ変更しました。同じ2018年に、【信州大学発ベンチャー】の称号を受けています。発汗計の開発は、1981年に信州大学医学部と国立長野高専を中心に始まりました。

1998年に信州大学と長野高専の教授が立ち上げたベンチャー企業が製造・販売を始め、2007年に事業は西澤電機計器製作所へ移管されました。社名は、皮膚(SKIN)と、開発者である大橋俊夫氏、坂口正雄氏のイニシャルに由来します。本社は長野県上田市です。

採択・連携

開発・販売を同社が、製造を西澤電機計器製作所が担う体制です。信州大学医学部、繊維学部との共同研究で、発汗や体温調節機構に関わる生体情報の解析技術を研究しています。2018年には、発汗計を用いた発汗検査が全身温熱発汗試験(D239-4)の一手法として保険収載(公的医療保険の対象になること)されました。2020年のJIS制定には、経済産業省の「新市場創造型標準化制度」を活用しています。

事業と製品

事業は、換気カプセル型発汗計を中心とした生体計測機器・研究機器の開発と販売、医療機器・福祉機器などの開発です。第二種医療機器製造販売業と高度管理医療機器等販売業の許可を取得しています。製品は、携帯型の「SMN-1000」などの発汗計と、生体計測受託サービスです。資本金は4,425万2,500円です。

会社情報

会社名株式会社スキノス
所在地長野県上田市踏入二丁目16番24号 信州大学オープンベンチャー・イノベーションセンター107号室
設立2017年4月
資本金4,425万2,500円
事業生体計測機器・研究機器の開発と販売/医療機器・福祉機器などの開発
技術領域換気カプセル型発汗計による発汗計測
連携信州大学、西澤電機計器製作所
URLhttps://www.skinos.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

汗の量を、連続して数値にする発想は、暑さ対策や製品評価の場面で、体の反応を客観的にとらえる手がかりになります。1981年に始まった研究が、JIS規格や製品化へつながっている点が特徴です。数値で比べられるため、研究や製品開発の場で、判断の根拠を共有しやすくなるといえます。

とくに注目したのは、発汗センサを備えたバンド型の熱中対策デバイスです。開発中であり、実用化はこれからです。炎天下の現場で働く人の水分補給を支える取り組みとして、今後の展開を見守りたいと考えます。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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