仙台スマートマシーンズ|東北大学発の「振動発電」で電池交換の要らないセンサを目指すディープテック企業

仙台スマートマシーンズ株式会社

仙台スマートマシーンズ「振動発電」を研究|研究領域=機械の揺れを電気に変える/強み=小型の発電デバイスでセンサを動かす/将来性=道路や設備の監視に広げる

企業紹介|仙台スマートマシーンズとは?

機械や車両の揺れを電気に変え、センサを電池なしで動かす技術として研究が進む「振動発電」。仙台スマートマシーンズ株式会社は、その社会実装を目指す、東北大学発のエネルギー系ディープテック企業です。窒化アルミニウムを主成分とする圧電薄膜を使った小型の発電デバイスと、その電力で動く無線センサモジュールを開発しています。

キーワード「振動発電」

振動発電は、機械や建物の揺れといった周囲の振動のエネルギーを電気に変える発電方式です。代表的な方式では、圧電材料(力を加えて変形させると電圧が生じる材料)を振動で伸び縮みさせ、電気を取り出します。得られる電力は小さく、センサや無線通信機器を動かす自立電源として使われます。

市場課題|無線センサ電源の確保と発電素子の大きさに課題

現状のセンサ電源と発電素子の課題|現状は、電池交換と素子の大きさで監視を広げにくい/センサの電池交換が負担に/高出力の発電素子は大型化

センサの電池交換が負担に

IoT(モノのインターネット)の広がりで、設備や構造物を見守る無線センサネットワークの普及が見込まれています。無線センサの多くは電池で動き、電池の寿命には限りがあるため、いずれ交換が必要です。センサの数が膨大になるほど、電池交換の費用と時間が増し、監視を続けにくくなります。

高出力の発電素子は大型化

振動発電の素子は、出力を高めようとすると本体が大きくなりやすいのが実情です。素子が大きいと、狭い場所や小さなセンサに電源を組み込みにくくなります。このままでは、電源を確保しにくい場所ほど、監視が行き届きにくくなります。

激しい揺れでは、発電素子が壊れる恐れもあります。他にも、圧電材料として広く使われるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に含まれる鉛の使用制限、センサや無線通信機器の消費電力、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 無線センサネットワーク多数のセンサを無線でつなぎ、測った温度や振動などのデータを離れた場所へ集める仕組み。配線が要らない一方、一つひとつのセンサに電源を用意する必要がある。

仙台スマートマシーンズの強み|「振動発電」を研究

仙台スマートマシーンズが「振動発電」を研究|現在は、振動で動く無線センサを提供/振動の電力で動く無線センサ/窒化アルミ系の薄膜で小型化

振動の電力で動く無線センサ

電池で動く無線センサは電池が切れるたびに交換が要り、配線で電力を送る方式は設置できる場所が限られます。

同社は、振動型エナジーハーベスタ(周囲の振動を電気に変える小型の発電デバイス)と、その電力で動く無線センサモジュールを開発しています。モジュールは発電した交流を直流に変えてセンサを動かし、加速度センサで測った振動のデータをBLE(近距離無線通信の規格の一つ)で送る構成です。振動する部分は、一般的に使われるシリコン基板ではなくステンレス基板の上に作り、衝撃に強くしています。機械の揺れそのものが電源となるため、電池交換や配線が要らなくなり、揺れの激しい車両や工場でも設備の監視を続けやすくなります。

窒化アルミ系の薄膜で小型化

広く使われるPZTは比誘電率(材料が電荷を蓄える度合い)が高く、小型の振動発電には向きにくいとされる材料です。

同社は、鉛を含まない窒化アルミニウムにマグネシウムとハフニウムを加えた圧電薄膜「MgHfAl-N」を使います。二つの元素を加えると、窒化アルミニウムだけの薄膜より、振動から電気を取り出す性能が高まります。窒化アルミニウムは半導体の製造工程と相性がよく、発電部をセンサや無線回路と一体にしやすい材料です。同社の製品サンプルは20mm角・厚さ7mmで、1G(重力加速度の1倍)の振動から約10mW(交流のピーク間の値)を発電し、狭い場所にもセンサを設置しやすくなります。

FrontJournalの解説
  • エナジーハーベスタ光や熱、振動など周囲にある小さなエネルギーを集め、電気に変える装置の総称。電池や電源配線の代わりに、センサや無線機器へ電力を供給する用途で開発が進む。

未来|振動発電が電池交換の要らない設備監視を広げる

振動発電が変える設備監視の未来|設備や道路の監視を電池なしで広げる/ポンプの振動で状態を送信/走行中に路面の凹凸を把握/電池の要らない設備監視を目指す

ポンプの振動で状態を送信

同社は、生産設備のポンプに取り付ける自立型のセンサシステムを開発しました。真空設備に使うドライポンプの振動で発電し、その電力で無線センサモジュールを動かす実験も公開しています。真空ポンプに取り付けた例では、揺れを周波数(1秒あたりの揺れの回数)ごとの成分に分けたデータを、1分おきにBLEで送信しました。揺れ方の変化を離れた場所で確かめられるため、設備の状態を見守りやすくなります。

走行中に路面の凹凸を把握

高速道路の路面の凹凸を走りながら把握するシステムも、同社が開発を進める用途です。自動車のばね下(サスペンションより車輪側の部分)に発電デバイスと無線加速度センサを取り付け、走行中の振動データを管理センターへ送ります。集めたデータを解析し、補修が必要な場所を地図上に示す仕組みも開発中です。道路の保守に必要な情報を、日常の走行から集められるようになります。

電池の要らない設備監視を目指す

同社が目指すのは、振動のある場所で電池なしに設備の状態を見守れる仕組みです。展開先として、大型プラントの損傷の検知や、地震を受けた建物の損傷の診断、自動運転車のタイヤに組み込むセンサを挙げています。人や動物の動きのような弱い振動からも電力を取り出せるよう、圧電薄膜の品質を高める検討も進行中です。電池交換の手間が無くなれば、これまでセンサを置きにくかった場所まで監視が広がり、設備の不具合を早く見つけやすくなります。

会社概要|仙台スマートマシーンズ株式会社

東北大学の研究をもとに設立

仙台スマートマシーンズは、東北大学の桑野研究室で開発された圧電薄膜の技術をもとに、2016年5月に設立されました。代表取締役の桑野博喜氏は、東北大学未来科学技術共同研究センターの教授として、この研究を率いた人物です。同社は、振動を使う発電デバイスとセンサモジュールの開発と販売を通じ、安全で効率のよい社会インフラの構築を目指しています。

共同開発・出資と受賞

2021年2月、東北大学の桑野教授のグループと同社は、周囲の振動を電気に変える小型の発電デバイスを共同で開発したと発表しました。このとき発表したデバイスは、0.01Gの弱い振動で1mW以上、容積1cc・1Gの条件では10mW以上を発電します。同じ構造を使い、1秒に1回以下のゆっくりした揺れを測るセンサも開発しました。2021年2月の発表の時点で、同社は東北大学ベンチャーパートナーズや株式会社菊池製作所などから出資を受けていました。代表の桑野氏は、2021年9月に「ディープテックグランプリ」で「THK賞」を、2023年11月に「第26回七十七ニュービジネス助成金」を受けています。

発電素子とセンサを製造販売

同社の事業は、自動車や鉄道車両のように振動の激しい場所へ設置できるIoT機器の開発、製造、販売です。橋や高架道路、トンネルの劣化を把握する構造物検査モジュールと、集めたデータを解析するシステムの開発も手がけます。現在は、振動型エナジーハーベスタの製品サンプルと、それを組み込んだ自立型の無線センサモジュールを製造し、販売しています。

会社情報

会社名仙台スマートマシーンズ株式会社(Sendai Smart Machines Co., Ltd.)
所在地宮城県仙台市青葉区堤通雨宮町10-7-403
設立2016年5月
代表代表取締役 桑野博喜
事業自動車・鉄道車両など振動の激しい場所に設置できるIoT機器の開発・製造・販売。構造物検査モジュールの開発・製造・販売。データを活用する解析とシステムの開発。製品は振動型エナジーハーベスタ(製品サンプル。20mm角・厚さ7mm、1Gの振動で約10mW〈交流のピーク間の値〉)と、自立型無線センサモジュール(加速度センサ・BLE搭載)
技術領域MEMS圧電薄膜、窒化アルミニウム系圧電薄膜「MgHfAl-N」、ステンレス基板の振動構造
連携東北大学(桑野研究室の技術をもとに設立。2021年に振動発電デバイスを共同で発表)。東北大学ベンチャーパートナーズ、株式会社菊池製作所などから出資(2021年2月時点)
URLhttp://www.ssmcoltd.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

センサを増やすほど電池交換の手間も増えるという問題は、IoTを広げるうえで避けて通れません。設備の数だけ電池を替えて回る作業は、センサが増えるほど現実的ではなくなります。仙台スマートマシーンズは、この電源の問題を、機械が出す揺れそのものを電気に変えることで解こうとしている会社です。

興味深いのは、発電デバイスだけでなく、それで動く無線センサモジュールまで自社で組み上げている点です。インフラ点検の分野では、ドローンやロボットによる省人化も進行中です。見回る側の省人化に、設備に置いたままのセンサが自ら発電する仕組みが加われば、点検のあり方は変わっていくと考えられます。同社の今後の歩みに注目していきます。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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