ソナス株式会社|無線で構造物の揺れを測る振動計測システムを開発する東京大学発ディープテック

ソナス株式会社

ソナス「構造物モニタリング」を開発|研究領域=無線で構造物の揺れを測る/強み=配線なしで多点を同時に測る/将来性=電力会社や建設会社へ広がる

企業紹介|ソナスとは?

ビルなどの構造物にセンサを取り付け、揺れを多点で同時に測る「構造物モニタリング」。ソナスは、その仕組みを無線で実現する、東京大学発のIoT系ディープテック企業です。独自の無線通信規格「UNISONet」を用い、配線工事が不要な振動計測システムを電力会社や建設会社へ提供しています。

キーワード「構造物モニタリング」

構造物モニタリングは、ビルや橋などの構造物にセンサを取り付け、揺れを継続して測る取り組みです。地震の際の揺れ方や、構造物の状態を知る手がかりになります。ソナスは、地震モニタリングや構造ヘルスモニタリング(構造物の状態を継続して調べること)向けに、この計測を無線で行う振動計測システムを開発しています。

市場課題|構造物の揺れの計測は工事と費用が重い

現状の構造物の揺れの計測の課題|現状は、有線の工事と費用が重い/有線方式は工期と費用が重い/無線化は通信の質が壁

有線方式は工期と費用が重い

有線方式は、ケーブルの敷設に工事が要り、ソナスの比較では、導入までに最長で半年かかり、1拠点あたりの費用は最大で数千万円に及びます。従来の方法は、センサと計測装置をケーブルでつなぐこの方式です。工期と費用が重いため、測りたい構造物のすべてに設置するのは簡単ではありません。

無線化は通信の質が壁になる

有線をやめて無線にすれば工事は減りますが、構造物の計測では通信の質が問われます。揺れを複数の点で比べるには、センサどうしの時刻同期(各センサの時計を合わせること)と、データの取りこぼしを防ぐことが欠かせません。さらに、超高層ビルのように階をまたぐ構造物では、多数のセンサを1つの網でつなぐ必要があります。

ソナスの発表では、他にも、超高層ビルの人手による点検に時間を要すること、大地震の際に技術者自身も被災することが予想されること、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 時刻同期複数のセンサの計測時刻を同じ基準にそろえること。揺れが各点にどう伝わるかを比べるために欠かせない条件である。

ソナスの強み|「構造物モニタリング」を開発

ソナスが「構造物モニタリング」を開発|現在は、無線で多点の振動計測を提供/無線で数日以内に導入/ビル1棟を一括で計測

無線で数日以内に導入

有線方式では、ケーブルの敷設工事と費用が導入の壁になります。

ソナスの無線振動計測システムは、センサ端末と親機を無線でつなぐため、通信のための配線工事が要りません。同社の比較では、導入期間は有線の最長で半年に対して数日以内、1拠点あたりの導入費用は最大で数千万円に対して数百万円までです。UNISONetは省電力で、電池でも長期間動かせる設計です。工期と費用の負担が小さくなるため、これまで工期や費用の面で見送られてきた構造物にも、計測を広げられるようになります。

ビル1棟を一括で計測できる

従来の無線の振動計測システムは、広範囲かつ多点の計測が難しく、転送速度の制約で振動波形データを集めにくい、とソナスは整理しています。

同社のUNISONetは、複数の端末が同じデータを同時に送る同時送信フラッディングを用いる規格です。同じタイミングで送られた同じデータの電波は、重なっても1つにまとまった波(合成波)として受信できるため、無線でも通信が安定します。親機から端末への下り通信で、届かなかったデータの再送を求める機能も備え、センサ端末間の時刻同期はμ秒(100万分の1秒)レベルです。端末が順に中継して遠くまで届けるマルチホップ方式で階をまたぎ、1ネットワークに数百台を収容でき、超高層ビルでも1棟全体を計測できます。

FrontJournalの解説
  • 同時送信フラッディング複数の端末が同じデータを同じタイミングで一斉に送る転送方式。干渉した電波が合成され、受信しやすい波になる。

未来・導入事例|超高層ビルから多様な現場へ

無線の構造物モニタリングが変える未来|超高層ビルから多様な現場へ導入が広がる/電力会社の超高層ビルへ導入/建設現場の防災・減災に活用/信頼される無線の確立を目指す

電力会社の超高層ビルへ導入

関西電力は、41階建ての本社ビルを含む7棟の拠点建物の地震モニタリングに、ソナスの無線振動計測システムを導入しました。2021年6月に、運用開始が発表されました。ソナスの発表では、従来の有線システムの更新にあたり、設置の手間とコストを抑えられる点が評価されたとのことです。ソナスの試算では、設置期間は数か月程度から1日に短縮され、機器のコストは約10分の1になります。

建設現場の防災・減災に活用

西松建設は、新たな防災・減災の手段として、ソナスの振動計測システム「Sonas x02」を導入しています。ソナスの事例紹介では、フロアをまたいでビル1棟を1ネットワークで計測できる点が評価されたとのことです。ソナスの傾斜監視システム(構造物の傾きを測る製品)では、清水建設が建築現場で掘削時の土砂の崩れを防ぐ壁(山留壁)の動きの計測に、首都高速道路が河川内工事での既設橋脚の計測管理に採用しています。構造物の揺れから傾きまで、無線で測る範囲が広がっています。

信頼される無線の確立を目指す

ソナスが掲げるミッションは、世界で最も信頼されるワイヤレスソリューションの確立です。ビジョンは「魅惑的技術で社会の礎を成す」で、社名もこの「礎を成す」に由来します。製品ラインナップには、振動計測や傾斜監視に加え、水位監視システムと、部材の変形を測るひずみ計測システムがあります。電力会社の拠点建物から建設現場まで、導入先は複数の分野にわたる点が特徴です。

会社概要|ソナス株式会社

東京大学で研究した3名が創業

ソナスは、東京大学で学び研究した3名が2015年11月に創業した企業です。経済産業省の大学発ベンチャー調査の一覧では、東京大学発に区分されています。本社は東京都文京区本郷に置いています。

代表取締役CEOの大原壮太郎氏は、東京大学大学院工学系研究科の修了後、ソニーで半導体の開発に約5年半従事し、東京大学先端科学技術研究センターを経て共同創業しました。共同創業者の神野響一氏は、東京大学で無線センサネットワークを研究し、同大学の技術補佐員を経て共同創業しています。鈴木誠氏は、無線センサネットワークの研究に10年以上取り組んだ後、共同創業しています。

公的採択と受賞を重ねる

同社は、公的な採択やコンテストでの評価を重ねてきました。2018年5月には総務省の戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)、同年9月には特許庁の知財アクセラレーションプログラム(IPAS)に採択されています。2019年2月にはEY Innovative Startup 2019に選出され、2020年6月にはDaikin Venture Summit 2020で優勝しました。同年11月には、JR東日本スタートアッププログラム2020で優秀賞を受けています。

資金調達と適用領域の広がり

ソナスのUNISONetは、2021年6月の発表で、適用領域が土木建築業界をはじめ、製造業や鉄道業にも広がっているとされています。資金調達は、同社の沿革に2017年10月、2018年10月、2021年4月の3回が記載されています。事業は、製品化のための開発期間を経て、2017年4月に始まりました。

会社情報

会社名ソナス株式会社(Sonas, Inc.)
所在地東京都文京区本郷5-24-2 グレースイマスビル6F
設立2015年11月
代表大原 壮太郎(代表取締役CEO)
資本金1億円
事業センシングに関するハードウェア、ソフトウェア、サービスの企画、設計、製造、販売。無線通信規格UNISONetを用いた振動計測システム、傾斜監視システム、水位監視システム、ひずみ計測システムなどの提供
技術領域構造物モニタリング、無線センサネットワーク、振動計測、傾斜監視、IoT
採択総務省SCOPE 採択(2018年5月)/特許庁IPAS 採択(2018年9月)/EY Innovative Startup 2019 選出(2019年2月)/Daikin Venture Summit 2020 優勝(2020年6月)/JR東日本スタートアッププログラム2020 優秀賞(2020年11月)
URLhttps://www.sonas.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

ビルの揺れは、普段は目に見えません。大きな地震のあとに、その揺れが話題になることがあります。その揺れを日常から記録し続ける仕組みが、配線の工事という壁で広がりにくかった点に、この分野の難しさがあります。この課題に、無線通信の技術から向き合う企業がソナスです。

ソナスが磨いてきたのは、無線でありながら、データを再送して集める仕組みと、μ秒レベルの時刻同期を備えた通信技術です。電力会社の超高層ビルから建設現場の傾斜計測まで、同じ技術が使われている点は印象的です。測る対象が増えれば、揺れの記録も積み重なっていきます。

社会基盤を静かに見守る技術が、無線の進化とともにどこまで広がるのか。同社の研究領域である無線の振動計測は、導入先の広がりに将来性がうかがえます。同社のこれからの歩みが注目されます。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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