シンアート「生物と化学の融合」を開発

株式会社シンアート

シンアート「生物と化学の融合」を開発

企業紹介|株式会社シンアートとは?

「バイオものづくり」の社会実装を目指す株式会社シンアートは、神戸大学発の素材・ヘルスケア系ディープテック企業です。マテリアルとヘルスケアの分野で、自社プロダクトの開発から共同開発、受託サービスまでを手がけています。本社は兵庫県神戸市にあります。

キーワード「バイオものづくり」

同社は、合成生物学と合成化学を組み合わせて、バイオものづくりに取り組んでいます。合成生物学は、生物の遺伝子を設計して機能を高める技術で、合成化学は、化学反応で目的の物質を組み立てる技術です。理念には「モノづくりの可能性を広げたい」を掲げています。

市場課題|新しい素材の開発は手法選びが難しい

現状の素材開発の課題

製造手法の選択が成否を分ける

物質の製造法は、生物の働きを使う手法と、化学反応を使う手法のどちらを選ぶかで、開発の成否や費用が変わります。微生物を改良して物質を製造させる手法と、反応の条件や原料を組み立てる手法とでは、得意とする工程が異なるためです。目的の物質に合わない手法を選ぶと、試行が増え、開発費用がかさみます。

新規化合物の性質を見通しにくい

素材や食品原料の候補になる新しい化合物は、機能や安全性、製造の可否を、開発の初期に見通しにくい対象です。見通しが立たないまま試作を重ねると、費用と時間がかさみます。そのため、候補を絞り込む段階で、化合物の性質を予測する手段が求められてきました。

他にも、高性能と環境への配慮を両立する素材の開発、先端の分析ツールを自社で備える負担、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 合成生物学生物の遺伝子などを設計し、微生物に新しい機能を持たせて、目的の物質を製造させる技術である。同社は、これを合成化学と組み合わせて活用している。

シンアートの強み|生物と化学を融合する設計

シンアートが「生物と化学の融合」を開発

生物と化学の融合を設計

同社の強みは、生物の働きを使う手法と化学反応を使う手法を組み合わせて、開発を設計することです。

同社の融合技術は、目的の物質について、成功の確度、開発費用、期間を分析する技術です。そのうえで、合成生物学的な手法と合成化学的な手法の配分を決めます。あわせて、反応の材料となる基質(微生物や酵素が反応で変化させる物質)を選び、最適な作業手順としてまとめる設計です。この設計により、生物と化学それぞれの得意なことを、一つの開発に取り入れた作業手順を組み立てることができます。手法を一方に絞らず、目的の物質ごとの事情に合わせて検討できます。

化合物の性質を事前に予測

新しい化合物は、実際に合成して試すまで、機能や安全性が分かりにくい場合があります。

同社の化合物設計技術は、顧客のニーズをもとに、新規の化合物の機能性、安全性、実現性を予測します。そのうえで、融合技術で実現が期待できる化合物を設計する工程です。競争力の源泉には、化合物設計技術、生産技術、独自のデータベースが挙げられます。研究開発の体制は、先端のツールや要素技術を外部の企業から調達し、自社の強みに資源を集める「リーン型」(必要最小限の体制)です。これにより、自社は応用研究に専念できます。

FrontJournalの解説
  • 基質酵素や微生物が働きかけ、化学反応で別の物質へ変化させる原料の物質である。どの基質を選ぶかによって、得られる物質の量や製造の難しさが変わる。

バイオものづくりの未来|素材とヘルスケアへの応用

生物と化学の融合が変える未来

食品由来成分の製造法開発

同社は、ヘルスケア分野で、ニュートラシューティカル(健康の維持や増進に役立つ食品由来の成分)の新しい製造法の開発を、2020年10月公表のプロジェクトとして掲げています。製造法は、微生物の改良と、反応の仕組みの組み立てを組み合わせて実現することを目指しています。事業の対象は、機能性食品素材や香料、医薬中間体(医薬品の原料となる化合物)などです。2024年4月には、帝人株式会社とウェルネス分野の新たな共同研究契約を結びました。

電子材料向けの基盤技術開発

半導体などの電子材料の原料となる新規のアミン化合物(樹脂などの原料になる有機化合物)について、同社は2020年10月公表のプロジェクトで、基盤技術の開発を掲げています。用途には、エポキシ樹脂の硬化物、ポリアミド、アラミド、ポリイミド、ポリウレタンなどが想定されています。この開発で掲げるのは、高性能とサステイナブル(持続可能)の両立です。2022年5月には、中西金属工業と、環境分野を対象とする製品開発の共同研究契約を、アミン化合物とは別に結びました。

素材開発の可能性拡大を目指す

理念「モノづくりの可能性を広げたい」のもと、同社は合成生物学と合成化学の相互利活用で、素材開発の可能性を広げることを目指しています。事業の形は、自社プロダクトの開発とライセンス販売、プロダクトの提案と受託型の共同開発、受託サービスの3つです。2026年4月には、Green Earth Institute株式会社とライセンス契約を結びました。

会社概要|シンアートの事業内容・設立背景

神戸大学発の企業

株式会社シンアートは、神戸大学発の企業として2019年3月13日に設立され、本社は神戸市灘区にあります。代表取締役の庄司信一郎氏は、2007年から帝人で新規機能素材の研究開発に携わり、2017年に神戸大学の学術研究員になりました。2021年に神戸大学大学院の博士課程を修了しました。アドバイザーには、神戸大学名誉教授の近藤昭彦氏、同大学院科学技術イノベーション研究科の石井純教授、事業アドバイザーの上村孝氏が名を連ねます。

採択と連携

2020年6月1日に、帝人株式会社と実施許諾契約(技術を使う権利を認める契約)を結びました。2024年3月にはマイルストン(契約で定めた達成目標)の達成を、2025年1月にはすべてのマイルストンの達成を公表しています。2023年4月には、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「官民による若手研究者発掘支援事業」の共同研究フェーズに、神戸大学との案件が採択されました。テーマは「ファインケミカル高生産微生物開発のための技術基盤構築」です。

拠点と資金調達

2021年4月に、神戸医療産業都市の研究施設内に神戸研究センターを開設しました。2022年1月には、兵庫県の無利子貸付制度である新事業創出支援貸付(資本性ローン)を受けています。資本性ローンは、返済条件が資本に近い性質を持つ融資です。使途は、ヘルスケア分野の新規プロジェクトの設備と研究開発です。

会社情報

会社名株式会社シンアート
所在地本社 兵庫県神戸市灘区六甲台町1-1。神戸研究センター 神戸市中央区港島南町6-3-7
設立2019年3月13日
代表代表取締役 庄司信一郎
資本金1,000万円
調達新事業創出支援貸付(資本性ローン)(2022年1月)
事業マテリアル・ヘルスケア分野の自社プロダクト開発、共同開発、受託サービス
技術領域合成生物学と合成化学の融合、化合物設計
連携神戸大学、帝人株式会社、中西金属工業、Green Earth Institute株式会社
採択NEDO「官民による若手研究者発掘支援事業」共同研究フェーズ(2023年)
URLhttps://synart.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

生物の手法と化学の手法のどちらを選ぶかが成否を左右する、という点に正面から向き合う取り組みです。シンアートは、合成生物学と合成化学を融合する設計を事業の軸に置いています。素材とヘルスケアの両分野で開発を進めている点が印象的です。

とくに注目したのは、神戸大学の研究から創業し、共同研究とライセンスの契約を重ねてきた点です。先端のツールを外部から調達して自社の資源を応用研究に集める体制も、開発の範囲を絞る工夫といえます。バイオものづくりの選択肢を広げる取り組みとして、今後の展開を見守りたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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