CO2TECH|塗ると二酸化炭素を発生させる「炭酸ペースト」を開発するヘルスケア系ディープテック企業

CO2TECH株式会社(シーオーツーテック)

CO2TECH「炭酸ペースト」を開発|研究領域=二酸化炭素を発生させる外用剤/強み=塗るだけで首にも使える/将来性=傷や痛みの治療で研究

企業紹介|CO2TECHとは?

皮膚に塗るだけで二酸化炭素を発生させる外用剤として、研究が進む「炭酸ペースト」。CO2TECHは、その社会実装を目指す、ヘルスケア系ディープテック企業です。炭酸ガス療法(皮膚から二酸化炭素を吸収させる治療法)に使う「炭酸ペースト」を、神戸大学医学部をはじめとする研究・治療の現場へ提供しています。

キーワード「炭酸ペースト」

「炭酸ペースト」は、二酸化炭素のもとになる原料を、水を含まない基剤(成分を練り込む土台)に混ぜた外用剤です。特徴は、皮膚に塗ると皮膚表面の水分と反応し、塗った部位で二酸化炭素を発生させられる点にあります。密閉用の袋もボンベも要らないため、首のように袋で覆いにくい部位にも塗布できます。

市場課題|炭酸ガス療法は手軽に続けにくい

現状の炭酸ガス療法の課題|現状は、高濃度にはボンベが要り、手軽に続けにくい/高濃度にはボンベが必要/首や顔への使用が困難

高濃度にはボンベ式の装置が必要

皮膚に高い濃度の二酸化炭素を届けるには、炭酸ガス(気体の二酸化炭素)のボンベを使う装置が必要です。炭酸泉や炭酸入浴剤のようにお湯へ溶かす方式では、溶けた二酸化炭素の濃度が常温・常圧で0.2%を超えず、炭酸入浴剤では0.01〜0.03%程度にとどまるためです。ボンベ式の装置は固定式のものが多く、ガスの補充や保守も欠かせないため、手軽には続けにくくなります。

ボンベ式は首や顔への使用が困難

ゲルを塗った部位に炭酸ガスを当てる治療システムは、首や顔への使用が困難です。部位をビニール袋で密閉し、袋の中をボンベのガスで満たす必要があるためです。腕や足のほかは密閉が難しく、治療できる部位が限られるといわれています。

他にも、炭酸ガスを皮下に注射する方法に伴う痛みや内出血、2剤を混ぜる炭酸ガスパックの落としにくさ、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 炭酸入浴剤炭酸塩と酸を1つの固形にまとめた入浴剤である。お湯に入れると両者が反応して二酸化炭素が発生し、お湯に溶ける。手軽に使える一方、通常の使用量では溶けた二酸化炭素の濃度が低くとどまる。

CO2TECHの強み|「炭酸ペースト」を開発

CO2TECHが「炭酸ペースト」を開発|現在は、水分で反応する外用剤を提供/皮膚の水分で炭酸ガスを発生/首にも塗って使える外用剤

皮膚の水分で炭酸ガスを発生

二酸化炭素の原料となる酸と炭酸塩(重曹など炭酸を含む塩)は水があるとすぐに反応するため、水を含むゲルに混ぜた外用剤は作りにくく、使う直前に2剤を混ぜる方式にとどまっていました。

CO2TECHの「炭酸ペースト」は、水を含まない基剤に、原料の炭酸水素ナトリウム(重曹)とリンゴ酸を混ぜた外用剤です。基剤の約8割は1,3-ブチレングリコール(保湿剤などに使われる液体)です。水が無いので、塗るまでは原料どうしが反応しません。皮膚に塗ると皮膚表面の水分と反応し、塗った部位で二酸化炭素が発生します。入浴や2剤の混合が要らなくなり、塗った部位の皮膚に、直接二酸化炭素を作用させられます。

ボンベ不要で首にも塗って使える

炭酸ガスを外から当てる方式では、皮膚の周りのガス濃度を保つため、部位を袋で密閉する必要がありました。

炭酸ペーストは塗った部位で二酸化炭素を発生させるため、密閉用の袋もボンベも使いません。健康な成人8人を対象にした、比較対象を置かない探索的な臨床試験では、首とふくらはぎに炭酸ペースト(販売名「ディレコート」)を20分間塗りました。MRI(磁気で体の内部を撮影する装置)の画像では、60秒後に首の部分の信号が強まり、血流の増加が示唆されました。軽い温かさのほかに、目立った有害事象は報告されていません。首の周りにもボンベを使わず塗布できるようになります。

FrontJournalの解説
  • 炭酸水素ナトリウム重曹とも呼ばれる白い粉末の化合物である。酸と水がそろうと反応し、二酸化炭素を発生する。食品のふくらし粉や入浴剤にも使われ、水が無ければ酸と混ぜても反応しにくい。

炭酸ペーストの未来|傷や痛みの治療への応用

外用の炭酸ペーストが変える未来|傷や痛みへ、研究で根拠を積み重ねる/ラットで傷の治癒促進を確認/偽薬より首の傷あとの痛みが低下/傷や病気の治療への活用を目指す

ラットで傷の治癒促進を確認

炭酸ペーストは、動物実験で傷の治りを早める効果が確認されています。ラットの背中に作った傷に毎日10分間塗った実験では、21日目の傷の治癒率が93.30%となり、塗らなかったラットの82.74%を上回りました。筋肉を傷つけたラットの実験では、傷あとの組織が過剰にできるのを抑え、筋肉の再生を早めることも示されています。人の傷に対する効果の確認は、今後の臨床研究の課題です。

偽薬より首の傷あとの痛みが低下

首の手術後に残る傷あとの痛みを対象にした臨床試験では、炭酸ペーストを塗った患者の痛みが偽薬(有効成分を含まない薬)より下がりました。対象は、首のリンパ節を取り除く手術から6か月〜3年たっても、首の傷あとの痛みが続く患者です。2021年に登録されたこの試験では、神戸大学医学部附属病院で患者20人に、CO2TECHが提供した炭酸ペーストか偽薬を1日1回10分、14日間塗りました。2024年3月に終了したこの20人の小規模な試験で、痛みの強さを示すVAS(線の長さで痛みを表す指標)の中央値は、炭酸ペーストの群で10mm、偽薬の群で0.5mm下がりました。

傷や病気の治療への活用を目指す

同社は、二酸化炭素の働きを、人や動物の傷や病気の治療、健康の維持に生かすことを目指しています。そのためには、病気や患者ごとの使い方と量、安全性や作用の仕組みを明らかにする研究が欠かせません。同社は、大学や医療機関での研究で根拠を積み重ねる方針です。持ち運べる外用剤として実用化すれば、ボンベを備えた施設でなくても、二酸化炭素を使った治療を選べるようになります。

会社概要|CO2TECH株式会社

経皮吸収技術の開発を事業に

CO2TECHは、二酸化炭素の経皮吸収(皮膚から体内へ取り込ませること)の技術開発を事業とする企業として、2020年9月に設立されました。本社は神戸市中央区にあります。代表取締役の田中雅也氏は、傷あとを残さない傷の治療法の開発を最終目標に、研究人生の大半をこの技術の開発に注いできました。ゲルを塗って炭酸ガスを吸収させる治療システムや、ボンベを使う装置の開発を経て、ボンベの要らない外用剤へと開発の方針を切り替えています。こうして生まれたのが炭酸ペーストです。

神戸大学医学部で研究が進む

炭酸ペーストの研究は、神戸大学医学部を中心に進められています。同大学では基礎研究と臨床試験が行われ、ラットの実験や健康な成人での試験の結果が、2021年以降に論文として発表されました。ラットの実験と首の手術後の臨床試験には、CO2TECHが供給した炭酸ペーストが使われています。

研究と治療の現場へ製品を提供

同社は、炭酸ペーストを大学や医療機関での研究・治療に向けて提供しており、一般には販売していません。誤った使い方や正しくない情報が広がり、研究に支障が出るのを防ぐためです。そのうえで、炭酸ペーストの性能を高め、より使いやすくする研究開発を続けています。

会社情報

会社名CO2TECH株式会社(シーオーツーテック/CO2TECH CO., LTD.)
所在地兵庫県神戸市中央区磯辺通1-1-20
設立2020年9月
代表田中 雅也(代表取締役)
事業二酸化炭素の経皮吸収技術の開発。外用剤「炭酸ペースト」(販売名ディレコート)の研究開発と、研究・治療の現場への提供(研究・治療用は一般販売なし)
技術領域炭酸ガス療法。皮膚表面の水分と反応して二酸化炭素を発生させる外用剤
連携神戸大学医学部(炭酸ペーストの基礎研究・臨床試験)
URLhttps://co2tech.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

二酸化炭素というと、地球温暖化の原因として減らす対象を思い浮かべがちです。一方で医療の分野では、炭酸泉のように、皮膚から吸収させて血流を増やす働きが古くから利用されてきました。CO2TECHは、その働きを外用剤の形で取り出そうとしています。

興味深いのは、水があるとすぐ反応してしまう原料を、あえて水を含まない基剤に閉じ込め、皮膚表面の水分を反応に使う発想です。ボンベや袋といった装置の制約を、製剤の工夫で取り除こうとする点に、この技術の核心があります。皮膚に貼ったパッチの汗から体の状態を推定するPITTANのように、皮膚を入口にした技術はヘルスケアの選択肢を広げています。

首の手術後の痛みで示された結果が、傷や病気の治療へどこまで広がるのか、今後の臨床研究に注目していきたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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