2026.10.18 │ 東京大学ら │ 元発表:2026.10.15

東大ら、AI結晶設計に電子情報を加え、狙った性質の物質の生成率を約4倍に

ニュース紹介

「「電子のふるまい」を手がかりにAIが新物質を設計~狙った性質を持つ結晶の生成成功率を最大約4倍に~」

東京大学大学院工学系研究科の奥田伊武来氏・高原泉氏と同大学生産技術研究所の溝口照康教授らの研究グループは、狙った性質を持つ材料をAIで設計する「逆設計」の精度を高めた。米Microsoft Researchが2025年1月に発表した結晶生成モデル「MatterGen」を拡張し、結晶構造と同時に、各原子の電荷(Bader電荷)と原子ごとの電子のエネルギー分布(原子分解DOS)を生成する「MatterGen-e−」を開発した。バンドギャップと生成エネルギーを同時に指定する最も厳しい条件では、目的の性質を持つ物質が得られる割合が既存モデルの0.9%から3.5%に向上し、約4倍になった。

出典:東京大学・科学技術振興機構(JST) 2026年10月15日 発表(掲載誌:npj Computational Materials/オンライン掲載 2026年10月15日/DOI: 10.1038/s41524-026-02322-4)
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20261015/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

逆設計は、バンドギャップなどの望む性質を先に指定し、それを満たす材料の構造をAIに生成させる手法です。半導体、触媒、蓄電池など、電子状態が性能を左右する材料の探索を速める手段として研究が進んでいます。

従来のモデルは、性質を指定すると不安定だったり化学的に不自然だったりする構造が増える課題がありました。研究グループは、AIが原子の種類と配置しか見ていないことが原因と考えました。

①結晶構造と同時に、原子ごとの電子の情報を生成する

プレスリリースによると、拡張モデルは結晶構造に加えて、各原子の電荷と、原子ごとの電子のエネルギー分布を同時に生成します。これにより、生成された構造に電子情報が付随し、第一原理計算の前に有望な候補を絞り込めるとしています。

②成功率は0.9%から3.5%へ、電子情報の中身が効いていた

最も厳しい条件で目的の性質を持つ物質が得られる割合は、既存モデルの0.9%から3.5%に向上し、約4倍になりました。新規性、熱力学的安定性、化学的妥当性も同時に改善したと説明しています。電子情報を意図的に壊した対照実験では性能が上がらず、効果は変数の数ではなく電子状態の物理的な内容によるとされています。

編集部からひとこと

今回の成果は、物理的に意味のある量を生成の過程に組み込むと、AIによる材料の逆設計の精度が上がることを示したものです。成功率は0.9%から3.5%への改善で、絶対値はまだ小さく、実際の材料開発での使い方や実用化の時期は発表では触れられていません。電子状態を手がかりにした設計が、半導体や触媒、蓄電池などの材料探索にどう広がるかが今後の注目点です。

FrontJournal編集部

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