2026.10.16 │ 分子科学研究所ら │ 元発表:2026.10.15

分子科学研究所ら、平面分子を閉じ込めるかご型分子「π-Armor」を開発

ニュース紹介

「形の合う平面分子を閉じ込める「分子の鎧」を開発」

自然科学研究機構 分子科学研究所・総合研究大学院大学の瀬川泰知准教授らの研究グループは、湾曲した2枚のπ共役分子を3カ所で向かい合わせに連結し、内部に空洞を持つ「かご型分子」を設計・合成した。側面の3つの開口部から取り込んだπ共役分子を2枚のパネルの間に挟み込み、開口部を通り抜けられない大きな分子は、かご型分子が組み上がる過程で内部に取り込まれ、加熱・減圧しても外に出ない「カルセプレックス」を形成した。

出典:自然科学研究機構 分子科学研究所・総合研究大学院大学・科学技術振興機構(JST) 2026年10月15日 共同発表(掲載誌:Journal of the American Chemical Society/オンライン掲載 2026年10月13日(現地時間)/DOI: 10.1021/jacs.6c17351)
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20261015-2/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

炭素原子が平面状に連なったπ共役分子は、電子が広がった構造を持ち、有機半導体や発光材料などの分子材料の基本単位として使われています。こうした分子を別の分子の空洞に取り込む「分子カプセル」は、不安定な分子の保護や、機能を持つ分子の集積に役立つと考えられています。

ただし、平面状のπ共役分子は、これまで永続的に閉じ込めることが難しいとされてきました。今回の研究は、分子の電子的な性質に頼らず、分子同士の形の相性、つまり形状相補性によって平面分子を閉じ込める設計を示したものです。

①2枚の湾曲したパネルを連結した、側面に開口部のあるかご型分子

研究グループは、湾曲した2枚のπ共役分子を3カ所で向かい合わせに連結し、内部に空洞を持つかご型分子を設計・合成しました。側面には3つの開口部があり、開口部を通り抜けられる分子は可逆的に出入りします。

プレスリリースによると、取り込まれた分子の形が空洞に合うほど、強く結合します。2枚のπ共役パネルが内部の分子を鎧のように挟み込むことから、研究グループはこの分子を「π-Armor(π共役分子の鎧)」と名付けました。

②大きな分子は組み上がる過程で取り込まれ、外に出ない

開口部を通り抜けられない大きな分子は、かご型分子が組み上がる過程で内部に取り込まれ、加熱・減圧しても外に出ないカルセプレックスを形成しました。

研究グループは、永続的に閉じ込めることが難しかった平面状のπ共役分子を、電子的な性質に左右されず形状相補性によって閉じ込めた点に独自性があるとしています。今後は、さまざまな機能を持つ分子カプセルの開発や不安定な分子の保護など、分子材料の設計への応用が期待されると説明しています。

編集部からひとこと

今回の成果は、分子の電子的な性質ではなく形の相性で平面分子を閉じ込める、分子設計の新しい考え方を示した基礎研究です。取り込める分子の範囲や、実際の材料・デバイスでの使い方、実用化の時期については、発表では触れられていません。形に合わせて分子を選び、保護する手法として、分子材料の設計にどう生かされるかが今後の注目点です。

FrontJournal編集部

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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