ADDVEMO「ヒト脳血管モデル」を開発

株式会社ADDVEMO(アドビーモ)

ADDVEMO「ヒト脳血管モデル」を開発|研究領域=ヒトの細胞で・脳の血管を再現/強み=ロボット量産を・同社が説明/将来性=脳疾患の創薬・研究へ広がる

企業紹介|株式会社ADDVEMOとは?

新薬の候補が脳へ届くかを、ヒトの細胞で調べる技術「ヒト脳血管モデル」。株式会社ADDVEMOは、その事業化を目指す、山口大学発のライフサイエンス系ディープテック企業です。脳血管モデルのキット「cuBe kit」は、2026年3月時点でベータ版を共同研究先へ提供していると同社が説明しています。

キーワード「ヒト脳血管モデル」

「ヒト脳血管モデル」は、脳の血管の壁が血液中の物質を選別する仕組み「血液脳関門」を、ヒトの細胞で再現した実験系です。特徴は、ヒト由来の血管内皮細胞と脳の細胞を層状に配置し、細胞どうしが直接触れ合う状態を保てる点にあります。製薬企業の創薬研究で、薬の候補となる化合物の選別に使えます。

市場課題|脳の創薬に残る、成功率と評価数の壁

現状の脳の創薬の課題|現状は、成功率が低く候補も探しにくい|脳の創薬は・成功率が低い/効率的に・候補を探しにくい

脳の創薬は成功率が低い

脳の病気の治療薬は、創薬のなかでも成功しにくい分野です。薬が脳へ入る前に、血液脳関門が立ちはだかるためです。成功率が上がらないままでは、脳の病気の新薬が患者に届くまでの時間が長引きかねません。

効率的に候補を探しにくい

脳の創薬では、動物の細胞を使った実験で良い結果が出ても、ヒトに投与すると効果が薄いことが多いと、同社は説明しています。動物とヒトの種差の壁を越えられず、効率的にヒット化合物(効果の手がかりとなる化合物)を見つけにくいためです。種差により精度の低い数十万の候補化合物を用いて、動物実験を繰り返すしかなく、手間と費用がかかるという課題があります。

他にも、薬の成分の多くが脳の血管を通りにくい性質、脳の病気の病態をヒトの細胞で再現する難しさ、動物の細胞で得た結果をヒトへ当てはめる際の予測のずれ、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 血液脳関門血液中の物質が脳の組織へ入る量を制限する、脳の血管の仕組みである。内皮細胞が隙間なく並び、周囲の細胞が支える。薬の成分の多くは通りにくく、脳の創薬の壁とされる。

ADDVEMOの強み|「ヒト脳血管モデル」を開発

ADDVEMOが「ヒト脳血管モデル」を開発|これまでに、ベータ版の提供を実現|ヒト由来の細胞で・脳血管を再現/ロボット量産を・同社が説明

ヒト由来の細胞で脳血管を再現

従来の血液脳関門モデルは、主にげっ歯類やサルの細胞を使うため、ヒトの血管とは細胞の性質が異なる方式でした。

同社の「cuBe kit」は、ヒト由来の細胞で血液脳関門を再現するモデルです。内皮細胞(血管の内側を形成する細胞)、ペリサイト(血管を取り巻く細胞)、アストロサイト(神経細胞を支える細胞)を、1つのインサート(培養用の膜つき容器)の上に層状に配置し、細胞どうしが直接触れ合う状態を保つ構造です。ヒトの細胞で血管の壁を再現するため、動物の細胞との違いによる予測のずれを抑えられると期待されています。その結果、薬の候補が血液脳関門を通過するかを、研究の早い段階から確認しやすくなります。

ロボット量産を同社が説明

従来の方法では、数十万の候補化合物を使った動物実験を繰り返す必要があり、手間と費用がかかっていました。

同社は、cuBe kitのロボットによる量産性を、世界初の成果と述べています。ヒト外挿性の高い細胞株の産業化にも、日本で初めて成功したとされています。cuBe kitは、動物実験を経ずにヒトの細胞で素早く、再現性高く、結果を数値で比較できる点が強みです。従来の血液脳関門モデルが主にげっ歯類やサルの細胞を使うのに対し、cuBe kitはヒト由来の細胞株を共培養する方式です。研究現場は、薬の候補の評価結果を数値で比較できるようになります。

FrontJournalの解説
  • ペリサイト血管の壁を取り巻く細胞で、周皮細胞とも呼ばれる。内皮細胞に接して血管の安定性や物質の通りやすさの調節に関わり、脳では血液脳関門の維持を支える細胞とされる。

ヒト脳血管モデルの未来|脳疾患の創薬への広がり

ヒト脳血管モデルが変える未来|脳疾患の創薬研究を広げる|視神経脊髄炎の・研究に活用/ベータ版提供と・受託研究の実績/脳疾患の・自社創薬を目指す

視神経脊髄炎の研究に活用

同社は公式サイトで、cuBe kitの使用実例として、山口大学と中外製薬の共同研究を紹介しています。この共同研究では、in vitro(培養細胞を用いた実験系)の血液脳関門モデルを用いて、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD、視神経や脊髄に炎症が起きる自己免疫疾患)で血液脳関門が破綻する仕組みを調べました。同社は、山口大学の研究室で開発したヒトの細胞を使った血液脳関門モデルのキット化(上市化)を進めています。

ベータ版提供と受託研究の実績

2026年3月に東京で開かれた山口県のスタートアップイベント「Y!Pitch」での発表内容です。cuBe kitは、共同研究先へベータ版(試験用の先行提供版)を提供している段階です。公式サイトによると、cuBe kitを用いた共同・受託研究は、山口大学時代を含めて20件以上にのぼります。

脳疾患の自社創薬を目指す

認知症など脳疾患向けの自社創薬も、同社が目指す事業です。キット事業とは別に、脳血管を血管側から刺激し、ペリサイトとアストロサイトが持つ神経保護作用(神経細胞を守る働き)を利用する治療薬の開発に取り組んでいます。この方式では、すでに複数のヒット化合物(効果の手がかりとなる化合物)が見つかった段階です。脳へ薬を通す難しさに左右されない治療薬が実用化すれば、脳疾患の治療の選択肢が増えます。

会社概要|ADDVEMOの事業内容・設立背景

山口大学の研究から設立

ADDVEMOは、2024年10月7日に山口県宇部市で設立されました。創業の中心となったのは、山口大学の竹下幸男教授と富永直臣助教です。同社は、ヒト脳血管モデルの作成と大量生産化の成果を事業として展開することを目的としています。

共同代表は、竹下幸男と田島明です。社名は、ACCELERATING DRUG DISCOVERY BY VESSEL MODELに由来します。BYを除き、各語の頭の文字(VESSELとMODELは先頭2文字)をつないだ名称です。

共同研究と公的支援

同社は、多くの企業・大学との共同研究を通じて、脳血管モデルの開発を進めてきました。公的機関では、科学技術振興機構(JST、研究開発を支援する国の機関)の大学発新産業創出プログラム(START)のビジネスモデル検証支援に2022年度に採択された事業で、研究代表者は竹下教授です。2026年10月には、パシフィコ横浜で開かれたBio Japanに、山口県のブースで山口大学と共同で出展しました。

キット販売と創薬の事業構成

同社の事業は、cuBe kitの提供販売事業、創薬開発事業、受託研究事業等です。公式サイトの会社概要には、医療品開発事業も挙げられています。これらの事業は、山口大学での研究成果を土台にしています。

会社情報

会社名株式会社ADDVEMO(アドビーモ)
所在地山口県宇部市相生町5番10号
設立2024年10月7日
代表共同代表 竹下 幸男。共同代表 田島 明
資本金1,750万円
事業cuBe kitの提供販売事業。創薬開発事業。受託研究事業。医療品開発事業
技術領域ヒト脳血管モデル(血液脳関門モデル)。創薬スクリーニング
連携山口大学(山口大学発のベンチャー)。共同研究先の企業・大学
採択科学技術振興機構(JST)大学発新産業創出プログラム(START)ビジネスモデル検証支援に2022年度に採択(研究代表者は竹下教授)
URLhttps://addvemo.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

新薬の開発では、薬が脳へ届くかどうかの見極めが、成否を左右します。ヒトの細胞で血液脳関門を再現できれば、動物の細胞では見えにくい差を、早い段階で確かめられる可能性があります。cuBe kitは、その見極めをヒトの細胞で行うための道具です。

ADDVEMOの特徴は、ヒトの細胞で脳の創薬を評価する方法を構築し、キットとして提供する点にあります。同社がロボットによる量産性を世界初の成果と述べている点は、その方法を多くの研究現場へ届ける土台といえます。そのうえで、認知症など脳疾患向けの自社創薬へ踏み出している点も、同社の特徴です。

脳の病気の治療薬は、多くの患者や家族が待つ存在です。認知症に関する基礎研究をもとに脳の健康に取り組む大阪公立大学発のセレブロファーマなど、脳の病気に取り組む企業とともに、治療薬が一日も早く患者のもとへ届く日を期待しています。山口大学発の技術が創薬の現場でどう使われていくのか、今後も注目していきます。

FrontJournal編集部

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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