ALISys|東北大学発の「地雷探知機」で地中の地雷を画像化するディープテック企業

株式会社ALISys(アリシス)

ALISys「地雷探知機」を開発|研究領域=地中の地雷を掘る前に探す装置/強み=地雷の形を画像で見分ける/将来性=地すべり監視を自治体へ広げる

企業紹介|ALISysとは?

地中に埋まった地雷を、掘り起こす前に見つけ出す装置として、紛争後の土地を取り戻す作業に使われる「地雷探知機」。ALISysは、その開発と製造に取り組む、東北大学発のエレクトロニクス系ディープテック企業です。手持ち型の地雷検知センサ「ALIS」(エーリス)を、カンボジアをはじめとする地雷被害国の除去の現場へ提供しています。

キーワード「地雷探知機」

地雷探知機は、地中に埋まった地雷の位置を、地面を掘る前に知らせる装置です。除去の現場で広く使われる金属探知機は、地中の金属に反応して音で知らせます。「ALIS」はこれに地中レーダー(電波の反射で地中の様子を探る装置)を組み合わせ、反応した物が地雷か金属片かを画像から見分けられるようにしています。

市場課題|地雷の除去は金属片の掘削に時間を要する

現状の地雷除去の課題|現状は、金属片まで掘り出すため、除去が長引く/地雷と不発弾の除去が長期化/金属片と地雷の区別が難しい

地雷と不発弾の除去が長期化

地雷や不発弾が残る土地では、それらの除去を終えるまでに長い年月が必要です。ロシアの侵攻を受けたウクライナでは、国土のおよそ30%が地雷や不発弾に汚染されている可能性があり、除去には少なくとも10年を要するといわれています。除去が終わるまでは農地や住宅地として安全に利用しにくく、住民の暮らしの再建が遅れる恐れがあります。

金属片と地雷の区別が難しい

地雷の除去で広く使われてきた金属探知機は、地雷と金属片を見分けにくい装置です。地中の金属すべてに反応するため、紛争地で掘り出される金属は、地雷1個に対して金属片がおよそ1000個といわれています。反応のたびに慎重な掘削が必要になり、作業時間の大半が地雷ではない金属片の掘り出しに費やされかねません。

他にも、街中や民家に置かれる地雷に似た爆発物の増加、ぬいぐるみに仕掛けられる爆弾の存在、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 金属探知機コイルに電流を流して磁場をつくり、近くの金属によって生じる磁場の変化を検知する装置。金属があるかどうかは分かるが、埋まった物の形や種類までは区別しにくい。

ALISysの強み|「地雷探知機」を開発

ALISysが「地雷探知機」を開発|現在は、地雷と金属片を見分ける装置を提供/2種のセンサで掘削を削減/地中の形を3次元で画像化

2種のセンサで掘削を削減

金属探知機だけの探査では、反応した地点をすべて掘って確かめるため、探査の範囲が広いほど除去に長い時間を要します。

「ALIS」は、金属探知機と地中レーダーを1台にまとめたデュアルセンサです。金属探知機が反応した地点で地中レーダーが電波を送り、土と性質の異なる物の境目で跳ね返る電波から、対人地雷のプラスチック容器の形を画像にします。カンボジアの地雷原での評価試験では、金属を検知した15,621か所のうち約77%の12,081か所を、地雷ではない金属片と正しく判断し、この試験で地雷の見逃しはありませんでした。金属片の地点では掘って確かめる作業を簡略化でき、除去の期間が短くなり、土地の返還が早まります。

地中の形を3次元で画像化

地中レーダーの反射信号は、そのままでは物の形として読み取りにくく、土の中の不要な反射も混ざります。

「ALIS」の特徴は、作業員が手で動かすセンサの位置を追跡する仕組みです。記録した位置と反射信号を組み合わせてマイグレーション(反射信号を元の位置に集めて像を結ぶ信号処理)を行い、地中の構造を3次元で再構成します。この処理で不要な反射が取り除かれるため、地雷の円い形が画像にはっきりと現れ、手元のタブレット端末にカラーで表示されます。作業員は掘る前に画面で地雷かどうかを確かめられ、音の反応だけに頼らない判断が可能です。

FrontJournalの解説
  • 地中レーダー地面に向けて電波を送り、地中の物体や地層の境目で反射して戻る電波を受け取って、地下の様子を調べる装置。金属だけでなくプラスチックなどの物体も捉えられる。

未来|電波の計測技術が地雷除去と防災を変える

電波の計測技術が変える未来|地雷除去と地すべり監視に技術を展開/カンボジアの地雷原で稼働/ウクライナ向けに研修と協議/自治体の防災へ普及を目指す

カンボジアの地雷原で稼働

「ALIS」は、すでにカンボジアの地雷原で除去作業に使われています。東北大学の研究として2009年にCMAC(カンボジア地雷対策センター)の地雷原で稼働を始め、この評価試験では82個の対人地雷を検知・除去しました。この試験で除去を終えた254,867平方メートルの土地は、地元の農家に農地として返還されています。2026年3月にはCMACへ30台を追加で納入し、除去の現場での利用が広がっています。

ウクライナ向けに研修と協議

「ALIS」は、ウクライナの地雷除去への活用が期待されています。2023年1月には、JICA(国際協力機構)がウクライナ非常事態庁の職員8人をカンボジアに招き、「ALIS」を使った研修を行いました。研修に参加した同庁の職員からは、従来の金属探知機より効率よく地雷を検知できる点に期待が寄せられています。2026年2月には、同社がレーダーの応用技術を協議するため、ウクライナの現地パートナーを訪問しました。

自治体の防災へ普及を目指す

同社が目指すのは、GB-SARによる地表の監視を、自治体の防災やインフラの維持管理へ広げることです。同社のGB-SAR(地上設置型合成開口レーダー)は、地すべりや火山の地表の動きを、安全な距離から監視する装置です。最大4km先までの領域を、目印を置かずに計測でき、0.5mm単位の変化を捉えます。土砂崩れの予兆を早くつかめるようになれば、自治体は住民の避難を早めに呼びかけられるようになります。

会社概要|株式会社ALISys

東北大学の研究から創業

ALISysは、東北大学東北アジア研究センターの佐藤源之教授(現・名誉教授)の研究をもとに、2019年に設立されました。佐藤氏は、地表を監視するGB-SARの研究を1997年から、地雷を検知する「ALIS」の研究を2002年から続けてきました。「ALIS」はアフガニスタンやクロアチア、カンボジアでの試験を経て、2018年には民間企業とともに製品化に向けたハードウェアを完成させています。社名は、Advanced Land Imaging Systemの略です。

国際協力の現場で活用

同社の地雷探知機は、日本の国際協力とともに各国へ広がっています。JICAの地雷・不発弾対策の活動で「ALIS」が使われ、2026年5月には、日本政府の無償資金協力による「統合的地雷除去および被害者支援プロジェクト」について、カンボジアのCMACで開かれた式典でも紹介されました。2025年には、国連工業開発機関(UNIDO)の支援による事業化調査の一環として、同社がAIサービスの試行を外部に委託する公募も実施しています。代表の佐藤氏は同年、IEEEの地球科学・リモートセンシング学会から業績賞を受けました。

2種のレーダーを事業化

同社の事業は、地雷探知機「ALIS」とGB-SARの開発・製造・販売・運用が柱です。あわせて、地表や地中を可視化するレーダーについてのコンサルティングも手がけています。本社は仙台市青葉区の東北大学連携ビジネスインキュベータに置き、市内に柏木事業所と泉事業所を構えています。

会社情報

会社名株式会社ALISys(ALISys,Co.,Ltd)
所在地宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-40 東北大学連携ビジネスインキュベータ(T-Biz)401号室。柏木事業所・泉事業所(仙台市)
設立2019年
代表佐藤 源之(代表取締役・技術総括)。東北大学名誉教授
資本金500万円
事業携帯型地雷検知センサ「ALIS」の開発・製造・販売・運用(重量3,100g〈バッテリー含む〉、レーダー周波数800MHz〜2.6GHz、1回の充電で6時間動作)。地上設置型合成開口レーダー(GB-SAR)の開発・製造・販売・運用。地表・地中可視化レーダーのコンサルティング
技術領域地中レーダー(GPR)、金属探知機との複合センサ、合成開口レーダー
連携東北大学(創業技術の研究元)。株式会社東北テクノアーチ(技術移転)。CMAC(カンボジア地雷対策センター)
採択IEEE地球科学・リモートセンシング学会 業績賞(2025年・佐藤 源之)
URLhttps://alisys.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

地雷の除去は、紛争が終わったあとも長く続く仕事です。現場で鳴る金属探知機の音の多くは、地雷ではない金属片によるものです。ALISysは、それを掘る前に見分けるために、地中を画像で確かめる仕組みを大学の研究から製品へと育ててきました。

興味深いのは、同じ電波の計測技術が、地雷の検知だけでなく、地すべりの監視にも生かされている点です。地中の地雷を映す仕組みも、地表のわずかな動きを捉える仕組みも、電波の反射を読み解く点で共通しています。東北大学からは、東北大学発スタートアップ10選で紹介したように、研究の成果を製品に育てる企業が多く生まれています。

地中と地表を電波で見通す技術が、地雷被害国の復興と地すべりの監視にどこまで広がっていくのか、引き続き注目していきたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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