iBody|名古屋大学発の無細胞技術「Ecobody技術」でモノクローナル抗体を最短2日で取得するバイオ系ディープテック企業

iBody株式会社(アイボディ)

iBody「Ecobody技術」を研究|研究領域=無細胞技術で抗体を取得/強み=最短2日で取得困難な抗体も特定/将来性=自社発の抗体医薬品の創出を目指す

企業紹介|iBodyとは?

試験管内の反応だけでモノクローナル抗体を取得できる、名古屋大学発の無細胞抗体発現技術「Ecobody技術」。iBodyは、その社会実装を目指す、名古屋大学発のバイオ系ディープテック企業です。中野秀雄教授の研究成果をもとに2018年2月に設立され、従来の方法では取得が難しかったモノクローナル抗体を、短期間で効率的に取得する受託サービスを提供しています。

キーワード「Ecobody技術」

Ecobody技術は、ヒトや動物の一つひとつのB細胞(抗体を作る免疫細胞)をもとに、無細胞の試験管内で抗体を作り出す独自の手法です。従来の抗体作製で必要だった細胞の不死化や培養の工程を省き、試験管でそのまま反応させて抗体を作ります。条件が整えば、抗体の取得から評価までを最短2日間で完了できるとされています。

市場課題|狙った抗体を取得しにくい

現状の抗体医薬品開発の課題|需要は伸びるが、良質な抗体を得にくい/抗体医薬品と診断薬の需要が拡大/マウス抗体は識別力に限界

抗体医薬品の需要が拡大

がんや自己免疫疾患などの治療では、抗体を使った医薬品の利用が広がっています。抗体は、狙った分子(抗原)だけに結合する高い特異性を持つタンパク質です。需要が伸びるほど、標的に強く結合する良質な抗体を効率的に見つける技術の重要性は増していきます。

マウス抗体では限界

長年広く使われてきたマウスの細胞による抗体作製には、識別力の限界があります。マウス由来の抗体は、構造の近い分子わずかなアミノ酸変異を見分けにくく、狙った抗体を得られないことがあります。従来法で数カ月かけても目的の抗体が得られない場合、研究や製品化の計画が止まりかねません。

他にも、抗体の量産段階で性能が変わってしまう、動物を使った実験に時間と費用がかかる、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • モノクローナル抗体単一の種類の細胞に由来し、同じ標的分子だけに結合する抗体。医薬品や診断薬の主要な部品として使われ、狙った分子への高い特異性を持つ。

iBodyの強み|「Ecobody技術」を研究

iBodyが「Ecobody技術」を研究|現状は、培養と不死化に時間がかかる/無細胞技術で取得を高速化/シングルセル法で識別力を強化

無細胞技術で2日に短縮

従来の抗体作製は、動物細胞を培養して抗体を発現させる方法が主流で、増やし続けられるよう細胞を不死化する工程を挟むため、数週間から数カ月を要していました。

iBodyの中核にあるのは、名古屋大学発の無細胞抗体発現技術「Ecobody技術」です。ヒトや動物の一つひとつのB細胞を個別に評価するシングルセル法と、B細胞をもとに試験管内でタンパク質を合成する無細胞タンパク質発現技術を組み合わせています。培養や不死化の工程を挟まないため、増殖に弱いB細胞も脱落せず、体内にある抗体の多様性をそのまま反映できる方式です。条件が整えば、抗体の取得から評価までを最短2日間で終えられます。取得スピードが上がることで、研究開発の初期段階の時間を圧縮できます。

識別力の高い抗体を取得

一般的なマウス抗体は、構造が近い抗原どうしや、わずかなアミノ酸変異がある場合に、狙った標的だけを見分けることが難しいとされています。

iBodyが対応するのは、マウスより免疫の多様性が豊かとされるウサギや、ヒト、構造の小さいラクダ科動物由来の「VHH抗体」(軽鎖を持たない単純な構造の抗体)までの幅広い動物種です。シングルセル法で一つひとつの抗体を評価するため、低分子の抗原やわずかな変異を識別する抗体も取りこぼしにくくなります。識別が難しく従来法では長期間を要した抗体でも、短期間で発見できる見込みです。この技術により、これまで検出や治療の対象にしにくかった標的も、扱えるようになる可能性があります。

FrontJournalの解説
  • 無細胞タンパク質発現技術生きた細胞を使わず、試験管内の反応だけでタンパク質を作る技術。培養や不死化の工程を省け、抗体の取得を大幅に高速化できる。

未来|抗体医薬品の開発企業へ

Ecobody技術が変える未来|共同研究の実績を積み上げ中/マイルストン収入型の事業モデルへ/自社発の抗体医薬品創出を目指す

共同研究で新知見を創出

同社はすでに、抗体を必要とする研究機関や企業と、共同研究の形での協力を実現しています。神戸大学との共同研究では、新型コロナウイルスの複数の変異株に中和活性を示す「広域中和抗体」(変異があっても効果を保つ抗体)を取得し、国際学術誌で成果を発表済みです。研究開発の現場で技術の応用が進んでいることの表れといえます。

開発パートナーとして拡大

今後iBodyが力を入れるのは、受託サービスにとどまらず、開発の成果に応じた収益を得られる事業モデルへの転換です。現在の主な収益源は、抗体の取得作業そのものに対する受託費用です。今後は製薬企業や診断薬企業の開発パートナーとして、共同研究の枠組みで開発の進捗に応じた対価を得られるビジネスモデルを目指しています。そのためには、抗体を取得する基盤技術のさらなる磨き込みが欠かせないとしています。

自社発の抗体医薬品を目指す

受託技術の提供にとどまらず、自社発の抗体医薬品を生み出す企業になることが、iBodyの目指す姿です。がんや自己免疫疾患、感染症といった領域で、取得の難しかった抗体を治療薬の候補に育てる取り組みが進行中です。Ecobody技術で見つけた天然のヒト抗体は、体内ですでに働いている形状のまま得られるため、これまで十分な治療効果が得られなかった疾患への応用も期待されています。抗体を「見つける」だけでなく「薬にする」企業へと進化することを目指しています。

会社概要|iBody株式会社

名古屋大学の技術から創業

iBodyは、名古屋大学大学院生命農学研究科中野秀雄教授が持つ抗体技術の研究成果をもとに、2018年2月に設立されました。代表取締役CEOの天草陽氏は、大日本住友製薬と理化学研究所発ベンチャーを経て2020年3月に経営に加わっています。取締役CSO兼CTOの大内将司氏は、複数の海外大学で分子工学の研究に従事してきた人物です。

採択と連携で評価が拡大

同社は、外部からの評価や連携を通じて実績を積み重ねてきました。2021年に選定されたのが、有望なスタートアップを選ぶ制度「J-Startup Central」です。2023年1月には、体外診断用医薬品大手の株式会社タウンズと戦略的資本業務提携を結んでいます。2023年度には愛知県の「新あいち創造研究開発補助金」にも採択され、糖鎖抗原(糖の鎖を持つ抗原)を検出するウサギモノクローナル抗体の研究を進めています。

名古屋に研究拠点を集約

iBodyは2023年5月、名古屋医工連携インキュベータ(NALIC)に本社と研究機能を集約しました。米国カリフォルニア州パロアルトにもシリコンバレーオフィスを構え、海外の製薬・診断薬企業との接点を持ちます。九州大学や東京大学、Meiji Seikaファルマ、JCRファーマなど、アカデミアと製薬企業の両方を顧客に持つ体制を築いています。

会社情報

会社名iBody株式会社(アイボディ)
所在地愛知県名古屋市千種区千種2-22-8 名古屋医工連携インキュベータ(NALIC)内。米国パロアルトにシリコンバレーオフィスを設置
設立2018年2月
代表天草 陽(代表取締役CEO)/大内 将司(取締役CSO兼CTO)
技術領域Ecobody技術(無細胞抗体発現技術)、モノクローナル抗体探索、バイオテック、ヘルスケア
連携株式会社タウンズ(2023年に戦略的資本業務提携。体外診断用医薬品の開発)/神戸大学(広域中和抗体の共同研究)
採択J-Startup Central(2021年選定)/愛知県「新あいち創造研究開発補助金」(2023年度採択)
URLhttps://www.ibody.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

新薬の開発では、狙った標的に結合する良い抗体を見つけられるかどうかが、その後の成否を左右します。にもかかわらず、この最初の一歩には数カ月単位の時間がかかることが珍しくありませんでした。マウスを使った従来法では、複雑な抗原を見分けられず、探索そのものが行き詰まるケースもあったといいます。

iBodyが取り組むのは、抗体を「探す」工程そのものの設計を見直すことです。細胞を生かしたまま培養する発想を離れ、無細胞の試験管内反応に置き換えたことで、速さと網羅性を同時に実現しようとしています。名古屋大学の基礎研究から生まれた技術が、九州や神戸の大学、診断薬メーカーといった現場で実際に使われ始めている点も興味深いところです。

受託サービスの先に見据えるのは、自社発の抗体医薬品という、より大きな挑戦です。抗体を「見つける」技術から「薬にする」企業への歩みを、引き続き追っていきたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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