日本構造分析舎「橋梁の異常検知」を研究

株式会社日本構造分析舎

日本構造分析舎「橋梁の異常検知」を研究|研究領域=橋の振動を測り異常を見つける/強み=振動の変化を数値で評価/将来性=道路インフラへ対象が広がる

企業紹介|株式会社日本構造分析舎とは?

橋の振動データから、健全なときとの違いを見つける技術である「橋梁の異常検知」。株式会社日本構造分析舎は、その研究開発に取り組んできた、京都大学発の社会インフラ系ディープテック企業です。橋の変化を評価する異常検知サービス「SAFE」を、道路関連団体や建設コンサルタント、地方公共団体などへ提供しています。

キーワード「橋梁の異常検知」

「橋梁の異常検知」は、橋の振動などのセンサーデータに、健全なときと異なる変化が生じていないかを調べる技術です。特徴は、振動の変化を数値で表し、橋の状態を時期ごとに比べられる点にあります。橋の維持管理の現場で、状態の変化を数値のデータで確かめる手段になります。

市場課題|老朽化する橋の点検を続けにくい

現状の橋の点検の課題|現状は、目視の点検が中心で状態を数値で比べにくい/点検の担い手が確保しにくい/目視点検は数値で比べにくい

点検を担う技術者が確保しにくい

橋などの道路構造物の定期点検には専門的な技術者が必要ですが、確保が難しい状況です。点検は2014年に義務化され、5年に1度、近接目視(手の届く距離から見る方法)や打音検査(たたいた音で調べる検査)で行われます。日本の社会インフラは、2030年頃には建設後50年を超える割合が半数以上になるとされ、点検の対象は増える見込みです。

目視点検は数値で比べにくい

点検結果は、ひび割れや錆といった表面の変状を言葉で記録する観察が中心で、数値で比べにくい状態です。技術者の経験によるばらつきが、損傷の判定に生じることもあります。言葉の記録は数値として蓄積しにくく、AI(人工知能)の分析に生かしにくい状態です。

他にも、河川の橋脚まわりの洗掘(水の流れによる地盤の削れ)や部材内部の腐食など外観から分かりにくい箇所、補修工事までの間の変化、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 打音検査ハンマーなどで構造物の表面をたたき、返ってくる音の違いから内部のひび割れや浮きを調べる検査である。目視では見えない内部の状態を調べられる一方、結果は検査員の経験によって異なることがある。

日本構造分析舎の強み|「橋梁の異常検知」を研究

日本構造分析舎が「橋梁の異常検知」を研究|現在は、振動データによる評価を研究/通行を止めない検知を目指す/基準との違いを統計で判定

供用中の振動で検知を目指す

従来の振動による異常検知には、通行止めをして交通などの雑音(ノイズ)を減らした環境で振動を測る手法があり、監視のたびに通行止めをするのは現実的ではありません。

同社の「SAFE」(特徴量抽出による健全度評価法)は、橋の振動を一つの特徴量(さまざまな振動成分を合わせた指標)で表し、ばらつきも含めて扱う異常検知の方法です。加速度計などで得た、ノイズを多く含む供用中(通行を止めずに使われている状態)の振動データからも、健全なときと異なる変化を定量的に評価することを狙っています。監視のたびの通行止めという負担を抑え、橋の状態の変化を数値で確かめることを目指しています。

基準との違いを統計で判定

従来の手法は、振動数(1秒間の揺れの回数)など特定の振動成分の変化に着目しますが、供用中の振動データはノイズが多く、狙いの成分を必ず抽出できるとは限りません。

「SAFE」は、橋の動的応答(加速度などで記録した橋の揺れ)から特徴量を取り出し、一定期間蓄積したデータを基準データとする方式です。特徴量にはばらつきがあるため、統計的仮説検定(基準との違いが偶然のばらつきの範囲かを調べる方法)で、基準データから外れた変化があるかどうかを判定します。基準データとの違いが数値で示されるため、橋の状態の変化を、時期をまたいで同じ尺度で比べることができるようになります。

FrontJournalの解説
  • 特徴量観測したデータから、対象の状態を表す数値として取り出した指標である。振動データでは、複数の振動成分を合わせた値などが使われ、その値の変化から構造物の状態の変化を調べる。

橋梁の異常検知の未来|道路インフラの維持管理へ

橋梁の異常検知が変える未来|劣化の兆しを早く見つける方向へ/道路関連の評価業務を完了/標識柱やトンネルへ検討が広がる/劣化の兆しの早期発見を目指す

道路関連の評価業務を完了

日本構造分析舎は、道路関連団体から受注したコンクリート橋の異常検知評価業務を、2023年3月に完了しました。依頼元は、加速度計で計測したデータから橋の変化を判断する分析と評価の手法を必要としていました。橋梁モニタリングコンサルティングの業務も、道路関連団体から受注しています。「SAFE」を用いた評価業務は、その後も2025年6月から2026年6月にかけて、道路関連団体や建設コンサルタント、地方公共団体から受注しています。

標識柱やトンネルへ検討が広がる

検討の対象は橋にとどまらず、標識柱やトンネルの覆工コンクリート(トンネル内壁のコンクリート)にも広がっています。2026年6月には、道路関連団体から、トンネル覆工コンクリートのモニタリング検討業務を受注しました。振動モード解析(揺れ方を調べる解析)では、逆L型の標識柱の揺れ方を、3分間の振動計測から調べた事例があります。橋以外の構造物でも、状態の変化を数値で調べる取り組みが始まっています。

劣化の兆しの早期発見を目指す

日本構造分析舎は、日常的な計測から構造物の状態の変化を捉え、詳しく確認すべき構造物を見つけ出すことを目指しています。補修工事までに時間がかかる橋は、その間の損傷の進行を継続して確かめる必要がある場面です。橋梁モニタリングコンサルティングでは、センサーの設置から計測、運用まで、専門家のチームが助言しています。ミッションは、劣化損傷の診断を通じて、安全・安心な社会を実現することです。

会社概要|日本構造分析舎の事業内容・設立背景

京都大学の研究から事業化

株式会社日本構造分析舎は、京都大学の研究成果を事業化する受け皿として、2022年5月に設立されました。京都大学では、社会インフラの健全度診断の研究開発が2010年頃から続いています。社会実装を目指した京都大学の研究グループは、2020年度の京都大学インキュベーションプログラムに事業化を応募し、採択されました。採択後の2年間は、技術の信頼性の検証とシステム化、事業規模の検討を行う期間でした。代表取締役の髙瀬和男は、橋梁メーカーで鋼橋の製作に携わり、オムロンソーシアルソリューションズでセンサー機器の開発と営業に従事した後、京都大学での概念実証(PoC:技術が実社会で使えるかの確認)を経て起業しました。

公的支援と共同研究契約

事業は、公的な研究支援と建設会社との共同研究を通じて進められています。京都大学の研究グループは、JST(科学技術振興機構)の未来社会創造事業「顕在化する社会課題の解決」領域に応募し、2021年10月に採用されました。同社は、2023年2月に三菱UFJ技術育成財団の研究開発助成金に採択されています。建設会社とは、2023年5月、2025年4月、2026年4月に新技術開発に向けた共同研究契約を締結しました。

事業会社からの増資を実施

事業展開の加速を目的に、日本構造分析舎は2024年9月と10月に増資を受けました。2024年9月は大日本ダイヤコンサルタント、高田機工、宮地エンジニアリング、2024年10月は共和ゴムからの増資です。

会社情報

会社名株式会社日本構造分析舎(KyoCenseo Inc.)
所在地京都府京都市下京区中堂寺粟田町93 京都リサーチパーク4号館3階
設立2022年5月
代表代表取締役 髙瀬 和男。取締役 河邊 大剛、富田 直樹
資本金2,250万円
調達大日本ダイヤコンサルタント、高田機工、宮地エンジニアリング(2024年9月)。共和ゴム(2024年10月)
事業橋梁などの社会インフラ構造物の異常検知サービス「SAFE」。橋梁モニタリングコンサルティング。振動モード解析
技術領域橋梁モニタリング、振動解析、データ解析による異常検知。特徴量抽出による健全度評価法(SAFE)
連携京都大学大学院地球環境学堂 客員教授 杉浦 邦征。京都大学大学院工学研究科 教授 金 哲佑。建設会社との共同研究契約
採択京都大学インキュベーションプログラム(2020年度)。三菱UFJ技術育成財団 研究開発助成金(2023年2月)
URLhttps://kyocenseo.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

橋の点検は、目で見て記録する作業に、揺れのデータという数値の見方が加わることで、変化の追い方が広がります。日本構造分析舎は、その数値の見方を、基準データとの違いを統計で判定する仕組みとして整えてきました。橋の状態を共通の尺度で確かめられる点は、維持管理の実務にとって意味があります。

「SAFE」の意義は、計測するだけで終わらず、計測したデータをどのように状態評価につなげるかに踏み込んでいる点にあります。データを集めること自体を目的にせず、変化を捉えて詳しく調べる対象を絞り込むことを目指す点にあります。計測を手段として位置づける姿勢が、この技術の価値の核心です。

点検を担う技術者の確保が難しくなるなかでも、橋の変化を数値で追う手段が広がれば、詳しく調べるべき橋を見つけやすくなります。限られた担い手が、点検の力を必要な橋に集中できる環境は、橋の安全を保つうえで心強い変化です。橋を安全に使い続けられる暮らしの土台が、データの力で支えられていくことを期待します。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら

この企業について、
もっと深く知りたい方へ

パートナーシップ・お問い合わせはこちらから。