IZANA|名古屋大学発の「超高感度磁気センサ」を開発するエレクトロニクス系ディープテック企業

株式会社IZANA(イザナ)

IZANA「超高感度磁気センサ」を開発|研究領域=微弱な磁場を捉える電子部品/強み=室温で動く手のひら大に/将来性=工場の異物検知から海中の点検へ

企業紹介|IZANAとは?

工場の異物検査から海底の点検まで、目に見えない対象を捉える技術として注目を集める「超高感度磁気センサ」。IZANA(イザナ)は、その社会実装を目指す、名古屋大学発のエレクトロニクス系ディープテック企業です。冷却不要で室温で動く手のひらサイズのセンサを開発し、製造業や海洋インフラ、防衛の分野に向けて製造・販売しています。

キーワード「超高感度磁気センサ」

「超高感度磁気センサ」は、地球の磁場よりはるかに弱い磁場の変化を捉え、電気信号に変える電子部品です。スマートフォンにも方位を知るための磁気センサが入っていますが、超高感度品はピコテスラ(1兆分の1テスラ)単位の微弱な磁場まで測れます。金属の異物や海底の構造物など、光や電波では見えにくい対象の検出に使われます。

市場課題|高感度な磁気計測は使える場所が限られる

現状の超高感度磁気センサの課題|現状は、冷却と雑音の影響で使える場所が限られる/高感度磁気計測は大型装置頼み/感度を上げると雑音も拾う

高感度磁気計測は大型装置頼み

微弱な磁場を測る従来の超高感度磁気センサは、冷却が必要なため、装置が冷蔵庫ほどの大きさになります。冷却に使う液体ヘリウムの補充などで、維持費が月に数百万円単位かかる場合もあります。そのうえ外部の磁場を遮る磁気シールドの中でしか測れず、工場や屋外への設置は困難です。

感度を上げると雑音も拾う

工場の異物検査では、磁気センサの感度を上げるほど、モーターなどが出す磁気の雑音まで拾ってしまう点が課題です。原料に混ざる小さく薄い金属片は、主流のX線や渦電流(金属の中に生じる渦状の電流)を使う検査では見つけにくいとされています。磁気センサで捉えようとしても感度と使いやすさを両立しにくく、異物の見逃しによる製品の自主回収が懸念されます。

他にも、海中や地下で衛星測位(GNSS)が使えず位置を把握しにくいこと、海底の磁気計測に複数の船舶を要することといった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 磁気シールド外部から入り込む磁場を遮るための部屋や容器である。磁場を通しやすい金属で囲み、地磁気や周囲の機器が出す磁場を内部に届きにくくする。微弱な磁場を測る装置の多くは、この中に置いて使う。

IZANAの強み|「超高感度磁気センサ」を開発

IZANAが「超高感度磁気センサ」を開発|現在は、自社での製造・販売で製品を提供/室温で動く手のひら大センサ/雑音を除き工場でも計測

室温で動く手のひら大センサ

従来の超高感度磁気センサは、微弱な磁場を捉えるために冷却と磁気シールドを必要とし、装置が大型になっていました。

IZANAのセンサは、約30年にわたり研究されてきた「MIセンサ」(磁気インピーダンスセンサ)を基本にしています。MIセンサは、磁性体の細い線に高周波の電流を流すと、周りの磁場に応じて電流の流れにくさが大きく変わる現象を利用します。同社は測定の原理から改良し、冷却も磁気シールドも使わずに、ピコテスラ単位の磁場を室温で測れるようにしました。センサ部と駆動回路、電源を合わせても手のひらに収まるため、工場の製造ラインなど、これまで置けなかった場所にも設置できるようになります。

雑音を除き工場でも計測

感度を上げた磁気センサは、測りたい信号と一緒に周囲の雑音も拾い、測れる磁場の範囲も狭くなるという弱点がありました。

IZANAのセンサは、外部の磁気の雑音を打ち消す「磁気ノイズキャンセリング機能」を備え、モーターなどが動く環境でも必要な信号だけを取り出せます。さらに、測れる磁場の幅(ダイナミックレンジ)は分解能の1,000万倍以上で、微弱な磁場から大きな磁場までを同じセンサで測定可能です。X線や渦電流の検査で見落としやすい小さく薄い金属片も検知できるため、製造業の企業は異物による製品の自主回収のリスクを減らせます。

FrontJournalの解説
  • MIセンサ磁気インピーダンス効果を利用した磁気センサである。磁性体の細線に高周波の電流を流すと、外部の磁場に応じて交流に対する抵抗(インピーダンス)が大きく変わるため、その変化から磁場の強さを求める。

超高感度磁気センサの未来|工場から海中の点検へ

小型の超高感度磁気センサが変える未来|工場から海中へ、磁気計測の現場が広がる/工場の異物検知で稼働/医薬品向けに共同開発/衛星に頼らない航法を目指す

工場の異物検知で稼働

IZANAのセンサは、すでに工場の中で異物検知に使われています。中程度の感度を持つ「ミドルタイプ」は2025年8月頃から工場で稼働し、測った磁場のデータを日々クラウドに蓄積しています。民間企業や省庁との開発プロジェクトでも、顧客の要望に合わせて設計したセンサを製品として納めてきました。製造業の企業は、目に見えない微小な金属異物を、製造ラインの途中で見つけられるようになります。

医薬品向けに共同開発

同社は次の段階として、医薬品の製造工程で使う異物検知の開発を、愛知県内の医薬品製造機器の商社と共同で進めてきました。医薬品に求められる感度は特に高く、使うのは同社の製品のうち最も感度の高い「ハイエンド品」です。異物が混ざった薬は自主回収の対象になり、製造する企業の負担は大きくなります。混入を工程の中で見つけられるようになれば、患者に届く薬の安全性が高まります。

衛星に頼らない航法を目指す

同社が目指すのは、磁気センサによって海中や地下でも位置と状態を把握できるようにすることです。海中では電波も光も通りにくく、衛星測位が使えません。そこで同社は、地磁気の分布を地図のように参照し、電波を発さずに自分の位置を推定する「磁気ナビゲーション」の開発に取り組んでいます。小型の水中ドローンで海底ケーブルを点検できるようになれば、複数の船舶を使ってきた点検の人手と費用が減り、海洋インフラをより少ない負担で守れるようになります。

会社概要|株式会社IZANA

博士課程の2人が名古屋で起業

IZANAは、名古屋大学大学院工学研究科の博士課程に在籍する2人が、2024年8月に設立した名古屋大学発のスタートアップです。創業者は、代表取締役社長の大前緩奈氏と取締役CTOの井立聖二氏です。2人は卓越大学院プログラム「未来エレクトロニクス創製加速DII協働大学院プログラム」で出会い、磁気センサの研究を通じて意気投合しました。井立氏の指導教員だった内山剛氏が技術顧問を務め、技術開発に助言しています。

NEDO事業に2年連続で採択

同社は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の起業家支援事業「NEP」に、2024年度の「躍進コース500」、2025年度の「NEP躍進コース3000」と2年続けて採択されています。2025年度の対象は、水中ドローン向けの磁気センサとシステムの開発です。2025年8月の成果発表会「NEP Pitch -2024躍進ファイナル-」では、躍進500部門で「優秀賞」を受けました。2025年度には、愛知県のディープテック支援事業「Aichi Deeptech Launchpad」のアクセラレーションプログラムにも採択されています。起業の直前には、学生向けの「Tongaliビジネスプランコンテスト2024」で最優秀賞を獲得しました。

経営と開発を2人で分担

同社は、大前氏が営業や経理、事業計画の立案を担い、井立氏が磁気センサの技術開発に専念する体制です。本社は名古屋市中村区の名古屋駅近くにあります。創業から2年で社員は22歳から65歳まで幅広い年齢に広がり、現在も技術者や研究者の採用を続けています。

会社情報

会社名株式会社IZANA(IZANA Co., Ltd.)
所在地愛知県名古屋市中村区名駅3丁目4番10号 アルティメイト名駅1st 2階
設立2024年8月6日
代表大前 緩奈(代表取締役社長)
資本金500万円
事業超高感度磁気センシングシステムの研究開発・製造・販売。工場向けの異物検知。海洋インフラ・防衛分野向けの磁気センシング
技術領域MIセンサ(磁気インピーダンスセンサ)を基本とする超高感度磁気センサ、磁気ノイズキャンセリング、磁気ナビゲーション
採択NEDO「NEP躍進コース500」(2024年度・2025年8月の成果発表会で躍進500部門の優秀賞)。NEDO「NEP躍進コース3000」(2025年度)。愛知県「Aichi Deeptech Launchpad」アクセラレーションプログラム(2025年度)。Tongaliビジネスプランコンテスト2024 最優秀賞
URLhttps://izana-tech.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

磁気センサはスマートフォンの地図アプリやノートパソコンの開閉の検知にも使われる、身近な電子部品です。ところが感度を極めると、冷却装置と磁気シールドが欠かせない大がかりな装置になり、研究施設の外へは持ち出しにくいものでした。IZANAが取り組むのは、その感度を保ったまま、センサを現場へ持ち出せる大きさにすることです。

興味深いのは、同じセンサが工場の異物検知と海中の航法という、まったく異なる現場に向かっている点です。室温で動く磁気センサでは、脳や心臓の磁場の計測に取り組むスピンセンシングファクトリーのような企業も現れています。海中では、FullDepthのように水中ドローンの活用も進んでいます。

大航海時代を切り開いた羅針盤も、磁気を使う技術でした。名古屋で生まれたセンサが、海の中の新しい羅針盤になれるのか、引き続き注目していきたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら

この企業について、
もっと深く知りたい方へ

パートナーシップ・お問い合わせはこちらから。