Medswell「薬剤師教育アプリ」を開発|薬剤師が画面上で臨床現場の判断を練習するイラスト

株式会社Medswell(メズウェル)

Medswell「薬剤師教育アプリ」を開発|研究領域=臨床現場を再現し・判断を練習できる/強み=解答の手順まで・評価して学べる/将来性=勉強会やVRで・学びの場が広がる

企業紹介|株式会社Medswellとは?

臨床現場の判断を、画面上で繰り返し練習できる薬剤師向けの教育アプリ「KimBen Pharma」。株式会社Medswellは、その社会実装を目指す、岡山大学発の医療系ディープテック企業です。処方せんへの対応を問う問題などをWebアプリで提供し、VR版や災害時の医薬品在庫管理アプリ「MedStock」も開発しています。

キーワード「薬剤師教育アプリ」

「薬剤師教育アプリ」は、処方せんへの対応や患者からの問い合わせといった臨床現場の場面を再現し、薬剤師が判断を練習できるアプリです。専門教育は主に学会などで提供されてきましたが、同社の「KimBen Pharma」は場所と時間を問わず学べる形にしています。解答に至るまでの手順も評価するため、正しい判断の進め方を学べます。

市場課題|薬剤師の学びは地域や経験で差が出やすい

現状の薬剤師教育の課題|現状は、地域や経験の差で学びの機会が偏る|地方では最新の・医療に触れにくい/ベテランの判断は・伝わりにくい

学びの機会が地域で偏る

薬剤師が都市部に集まる地域偏在は、学びの機会の差とも関わる課題とされています。地方で学ぶ薬剤師や薬学生が最新の医療に触れる機会を得にくいと、地元で働く意欲やキャリアの展望を持ちにくくなります。この状況が続くと、都市部への集中がさらに進みかねません。

経験の差が判断に表れる

薬剤師の判断は現場の経験に支えられるため、ベテランの視点は資料や講義だけでは新人に伝わりにくい状態です。岡山大学病院薬剤部の新人研修では、薬剤師が確認するポイントや確認に要する時間に、経験年数による有意な差があることが分かっています。この差を座学で埋めるのは難しく、新人が先輩の判断過程を知る機会は限られます。

他にも、災害現場での医薬品の在庫管理、薬剤耐性(AMR)対策を担う感染症分野の薬剤師の育成、新人薬剤師の研修機会、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 薬剤耐性(AMR)細菌などが薬に対する抵抗力を獲得し、抗菌薬が効きにくくなる現象である。治療に使える薬が減り、感染症の治療が難しくなる。

Medswellの強み|「薬剤師教育アプリ」を開発

Medswellが「薬剤師教育アプリ」を開発|現在は、Webアプリで学べる場を提供|場所を問わず・学べるアプリ/判断の過程まで・評価し学べる

場所を問わず学べるWebアプリ

専門教育はこれまで主に学会などの場で提供されており、学べる場所と時間が開催に左右されます。

同社の「KimBen Pharma」は、臨床現場を再現したシミュレーション形式(実際の場面を模した練習方式)のWebアプリです。端末へのインストールは不要で、インターネット環境があれば、場所と時間を問わず使える仕様です。全国の感染症専門薬剤師が作成した模擬症例(実際の症例を想定した練習問題)に加え、作問者による解説動画や基礎知識を学ぶ動画も用意されています。地方の薬剤師や薬学生も、都市部と同じ症例で学習できます。

判断の過程まで評価し学べる

資料や講義では、ベテランが何を確認してどう判断したかという過程が見えにくく、結果だけが伝わりがちです。

同社のアプリは、処方せんへの対応や、患者・多職種(医師や看護師など)からの問い合わせへの対応を出題し、解答に至るまでの手順も含めて評価します。実際の業務の流れに沿って、処方せんの確認から問い合わせへの回答まで、順を追って進める形式です。さまざまな領域の専門家が監修した問題は100問以上あり、施設の特性に応じたオリジナル問題も作成できます。新人でも、自施設に近い状況で判断の手順を学べるようになります。

FrontJournalの解説
  • 多職種医師、看護師、薬剤師など、異なる専門職が連携して患者の医療に当たる体制、またはその職種を指す。薬剤師は処方の確認などで、他の職種と情報をやり取りする。

薬剤師教育アプリの未来|勉強会から災害時の備えまで

薬剤師教育アプリが変える未来|勉強会・VRから医療事故のない世界へ|オンライン勉強会で・学びが広がる/VR版で新人が・判断を練習/医療事故のない・世界を目指す

オンライン勉強会で学びが広がる

「KimBen Pharma」は、オンライン勉強会「BRIDGE project」で使われています。2024年5月14日に岡山大学病院薬剤部が開始し、約30人が参加しました。アカウント発行数は、2025年3月6日時点で1,799件に達しています。2025年5月に京都薬科大学と岡山大学病院薬剤部が始めた薬剤耐性対策の教育プロジェクトでも活用され、開始直後から100人以上が利用を開始しました。

VR版で新人が判断を練習

「KimBen Pharma VR」は、同社がサワイグループホールディングスと株式会社白獅子と共同で開発した、薬剤師向けのVR(仮想現実)教材です。患者宅を模した空間で、お薬カレンダーやスマートフォンのPHR(個人の健康記録)、吸入デバイス(吸入薬を使うための器具)などから情報を集めて判断します。2024年5月には岡山大学病院薬剤部の新人研修で13人の若手薬剤師が使い、判断ごとにフィードバックを受けました。2024年7月時点では、病棟を再現した空間の作成も進められていました。

医療事故のない世界を目指す

同社が目指すのは、薬による医療事故のない世界の実現です。そのために複数のアプリを開発しており、災害時の医薬品管理向けにはiPad向けアプリ「MedStock」があります。「MedStock」は、GS1コード(商品を識別する国際標準のコード)を使って医薬品を入庫し、出庫と在庫一覧も管理できるアプリです。この取り組みが進めば、災害時に医師が在庫を把握しやすくなり、現地に必要な薬があるのに処方されない食い違いを避けやすくなります。

会社概要|2023年設立の岡山大学発企業Medswell

薬剤師が創業した大学発企業

株式会社Medswellは、2023年4月28日に設立されました。創業者の木村郁哉は、大学教員と病院薬剤師の経験を持つ、岡山大学病院薬剤部の薬剤師です。岡山大学から「岡山大学発ベンチャー」の称号を付与されています。事業は医療従事者向けのソフトウェア開発で、所在地は岡山大学病院の鹿田会館(BIZEN)です。

受賞歴と学会発表

同社は2023年に、「NEDO-PSIショートピッチコンテスト」でNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)賞、「岡山テックプランター」でHOXIN賞、「NEDO-NEP」で審査特別賞を受けました。2023年11月25日には、岡山イノベーションコンテストで「MedStock」を紹介し、ビジネスプランの部で大賞を受けています。2024年11月には就実大学薬学部、福岡大学薬学部、岡山大学病院薬剤部の協力で「MedStock」の評価演習が行われ、2025年3月6日には第30回日本災害医学会総会・学術集会で成果を発表しました。

体験版と施設向けの提供

「KimBen Pharma」には体験版があり、無料で試せます。施設ごとの問題作成にも対応しており、施設の特性に合わせた教育に使える仕様です。「BRIDGE project」の開催は、2025年7月から2026年1月まで、約2か月ごとに案内されています。

会社情報

会社名株式会社Medswell(メズウェル)
所在地岡山県岡山市北区鹿田町2丁目5番1号 岡山大学病院 鹿田会館(BIZEN)SK206
設立2023年4月28日
代表木村郁哉
資本金100万円
事業医療従事者向けソフトウェア開発。教育シミュレーター「KimBen Pharma」、VR教材「KimBen Pharma VR」、災害時の医薬品在庫管理アプリ「MedStock」
連携岡山大学病院薬剤部、京都薬科大学(薬剤耐性対策の教育プロジェクト)、サワイグループホールディングス、株式会社白獅子(VR教材の共同開発)
採択岡山大学発ベンチャー称号。NEDO-PSIショートピッチコンテスト NEDO賞、岡山テックプランター HOXIN賞、NEDO-NEP 審査特別賞(いずれも2023年)。岡山イノベーションコンテスト2023 ビジネスプランの部 大賞
URLhttps://medswell.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

薬剤師の判断は、現場での経験に支えられています。KimBen Pharmaは、その経験を画面の中の症例に置き換え、何度でも練習できる形にしたアプリです。解答に至る手順まで評価する設計に、結果だけでなく判断の過程を学ばせる教育の考え方が表れていると感じました。

Medswellは、勉強会、VR、災害時の在庫管理と、薬剤師の現場に近い場面へ領域を広げている会社です。災害時の医薬品管理でも、大学の薬学部や病院での評価演習を重ねており、現場で検証する姿勢がうかがえます。岡山大学を含む複数の大学発の株式会社ビークルは、薬を狙った細胞へ届けるバイオナノカプセルの技術に取り組んでいます。薬を届ける技術と、薬を扱う人を育てる技術が、大学の研究から生まれている点も印象的です。

臨床現場で積まれた判断が、画面を通じて地方の薬剤師や薬学生にも届く。医療事故のない世界へ向けた岡山発の取り組みの広がりを、楽しみに待ちたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年10月3日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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