キュービクス「膵がん血液検査」を研究|血液細胞とリアルタイムPCR装置のイラスト

株式会社キュービクス

キュービクス「膵がん血液検査」を研究|研究領域=採血で膵がんの・診断を補助/強み=mRNA測定を・腫瘍マーカーと併用/将来性=早期膵がんの・発見を目指す

企業紹介|株式会社キュービクスとは?

採血で膵がんの診断を補助する手段として、研究が進められてきた「膵がん血液検査」。株式会社キュービクスは、その実用化を進めてきた、金沢大学発のバイオ系ディープテック企業です。血液細胞のmRNAを測る、体外診断用医薬品(血液などの検体を体の外で調べる検査用の医薬品)「パンレグザ」を使った検査を受託しています。

キーワード「膵がん血液検査」

「膵がん血液検査」は、採血した血液を調べて膵がんの診断を補助する検査です。同社の検査は、膵がんで発現パターンが異なる血液細胞のmRNA(遺伝子の情報を写し取った分子)の量を測ります。腫瘍マーカー(がんがあると血液中で増えることがある物質)のCA19-9と組み合わせて判定します。

市場課題|膵がんは早期に見つけにくく、腫瘍マーカーも反応しにくい

現状の膵がん検査の課題|現状は、症状が少なく腫瘍マーカーも上がりにくい|膵がんは早期・発見が困難/早期は腫瘍マーカー・上昇が乏しい

膵がんは早期発見が困難

膵がんは、膵臓にできる、早い段階での発見が難しい病気です。小さいうちは症状が出にくく、有効な検診方法も確立されていないため、診断の時点で進行していることが少なくありません。国立がん研究センターの統計では、2009〜2011年に診断された膵がんの5年相対生存率(5年後に生存している割合の指標)は8.5%です。

早期は腫瘍マーカー上昇が乏しい

臨床で広く使われる腫瘍マーカーは、早期の膵がんでは数値が上がりにくい傾向があります。代表的なCA19-9も、早期の患者を見つける手がかりとしては不十分です。早期に診断される患者はごく一部とされ、根治が期待できる外科的切除の機会を逃しかねません。

他にも、膵がん以外でも起こる腹痛や黄疸から病気を見分ける難しさ、糖尿病や慢性膵炎といった危険因子を持つ人の見守り、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 腫瘍マーカーがんがあると血液中で増えることがある物質で、がんの存在を推定する目印に使われる。膵がんではCA19-9が代表的である。がんが小さい段階では数値が上がらないことが多く、早期発見の目印としては限界がある。

キュービクスの強み|「膵がん血液検査」を研究

キュービクスが「膵がん血液検査」を研究|現在は、血液細胞のmRNAで検査を提供|血液細胞の・mRNAを測定/腫瘍マーカーと・併用し感度向上

血液細胞のmRNAを測定

従来の腫瘍マーカーは、ステージⅠ・Ⅱの早期膵がんでは検出が難しいとされています。

同社の検査は、がん側の物質を測る腫瘍マーカーに、血液細胞の側の変化を加えて調べます。膵がんの患者とそうでない人では、血液細胞のmRNAの量の組み合わせ(遺伝子発現パターン)が異なるとの報告があり、この違いを捉える仕組みです。血液から取り出したRNAをDNAに写し取り(逆転写)、57個のプライマー(特定の遺伝子を増やす短いDNA)と混ぜてリアルタイムPCR(DNAを増やしながら量を測る方法)で測ります。腫瘍マーカーとは別の目印を血液から得られるため、早期の膵がんを見つける手がかりが広がります。

腫瘍マーカーと併用し感度向上

CA19-9を単独で使う検査は、ステージⅠ・Ⅱの早期膵がんでの感度(がんの人を陽性と判定できる割合)が35.7%にとどまります。

「パンレグザ」は、mRNAの発現パターンとCA19-9の測定値を組み合わせて判定する検査キットです。臨床性能試験では、両者が膵がんに対して互いに独立した目印であることが示されました。性質の異なる2つの目印を合わせることで、膵がん症例に対する感度は85.2%、非がん群に対する特異度(がんでない人を陰性と判定できる割合)は86.7%、ステージⅠ・Ⅱの膵がんに対する感度は78.6%でした。CA19-9を単独で使う検査に比べて、早期の膵がんを見つける手がかりが広がります。

FrontJournalの解説
  • 遺伝子発現パターンどの遺伝子がどのくらい働いているかの組み合わせを指す。働いている遺伝子ほど多くのmRNAがつくられるため、mRNAの量を測ると把握できる。体の状態が変わると組み合わせも変わり、病気の目印になる。

膵がん血液検査の未来|消化器がんの検査から、早期膵がんの発見へ

膵がん血液検査が変える未来|消化器がん検査から早期膵がんの発見へ|消化器がん4種を・血液で判定/金沢大学が早期・膵がんの検出を検証/疾病の早期診断へ・貢献を目指す

消化器がん4種を血液で判定

同社は複数の消化器がんを血液で判定する検査をすでに受託しています。2011年8月に始めた「消化器がんマイクロアレイ血液検査」は、血液由来のRNAから胃がん、大腸がん、膵がん、胆道がんの有無を判定する検査です。器具は、4万4,000種類の核酸を並べたDNAマイクロアレイ(多数の遺伝子の働きを一度に調べるガラス板)です。2023年1月時点で、全国1,500カ所の医療機関で利用され、受託は年間4,500件とされています。

金沢大学が早期膵がんを検証

金沢大学の研究グループは、早期の膵がんをどこまで見つけられるかを調べています。2026年7月発表の研究では、ステージ0〜Ⅰの早期膵がん患者10例のうち、血液の遺伝子発現パターンで9例を検出でき、CA19-9での検出は1例でした。一方、健常人104例のうち31例でも遺伝子発現パターンが異常値を示し、要因の解析が課題とされています。今後は、判定アルゴリズムの改良と腫瘍マーカーとの組み合わせを検証します。

疾病の早期診断への貢献を目指す

同社は、遺伝子発現解析の技術を基盤に、疾病の早期診断で社会に貢献する企業を目指しています。がん以外では、2022年4月に原発性脂質異常症(遺伝子の異常で血液中の脂質の値が異常になる病気)の遺伝子解析を始めました。関連する遺伝子のDNA配列を調べ、14の疾患のどれに当たるかを見極めて専門医のコメントを付けて報告する検査です。30の大学病院・専門病院から依頼が寄せられています(2023年1月時点)。

会社概要|金沢大学の研究から生まれたキュービクス

金沢大学発として2004年設立

株式会社キュービクスは、2004年8月に金沢大学発のバイオベンチャー企業として設立されました。「研究から臨床へ」を企業理念に掲げ、医師や研究者との共同研究を通して医学の実用化に取り組んできた会社です。2018年12月には石川県白山市へ社屋を移し、体外診断用医薬品を自社で製造できるクリーンルームを備えました。代表取締役社長は丹野博氏です。

産学官連携の表彰と大学認定

同社と、同社と連携した研究者は、産学官連携の成果として表彰を受けてきました。2014年9月には科学技術振興機構(JST)の大学発ベンチャー表彰で「日本ベンチャー学会会長賞」を受けています。2015年には、同社と連携して「血液の遺伝子発現解析による消化器がんスクリーニング技術」を開発した金沢大学の金子周一教授が、第13回産学官連携功労者表彰の「経済産業大臣賞」を受賞しました。2021年9月には、金沢大学から「金沢大学認定ベンチャー」の称号を第1号として授与されています。

遺伝子解析の受託と検査キット

同社の事業は、受託検査、研究向けの受託解析、検査キットの製造販売が柱です。研究者向けには、核酸の抽出、リアルタイムPCRやマイクロアレイによる遺伝子解析、NGS(次世代シーケンサー)による解析を受託しています。膵がんや消化器がんの血液検査に加え、アルコール分解酵素の遺伝子多型(個人ごとの遺伝子の違い)と問診票から食道がんや頭頸部がんの発症リスクを判定する「アルコリスク」も、同社が受託する検査の1つです。試薬キットでは、HBV(B型肝炎ウイルス)の定量測定キットも扱っています。

会社情報

会社名株式会社キュービクス(KUBIX Inc.)
所在地石川県白山市熱野町ハ8番地1
設立2004年8月
代表代表取締役社長 丹野博
資本金5,200万円
事業受託検査(消化器がんマイクロアレイ血液検査・膵がんmRNA血液検査・アルコリスク・原発性脂質異常症遺伝子解析)。遺伝子解析の受託(核酸の抽出・リアルタイムPCR・マイクロアレイ・NGS)。試薬キットの開発・製造・販売
技術領域遺伝子発現解析(血液細胞のmRNAによるがんの検出)。体外診断用医薬品「パンレグザ」(承認番号30400EZX00046000・2022年6月30日承認)
連携金沢大学
採択革新的ベンチャービジネスプランコンテスト 最優秀起業家賞(2007年)。アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー・ジャパン2012 特別賞(2012年)。JST 大学発ベンチャー表彰2014 日本ベンチャー学会会長賞(2014年)。経済産業省 感染症対策関連物資生産設備導入支援事業費補助金(2020年)。金沢大学認定ベンチャー 第1号(2021年)
URLhttps://www.kubix.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

がんを探すのに、がんそのものではなく、膵がん患者で変わる血液細胞の遺伝子の働きを見る。キュービクスの検査は、この視点の切り替えによって、症状の出にくい膵がんに採血という身近な方法で向き合おうとしています。検査の原理を知るほど、体が発しているかすかな信号を読み取る技術の面白さを感じました。

大学の研究室で見つかった知見を、国の承認を受けた検査キットとして医療機関に届けるまでには、長い年月が必要です。2011年に消化器がん血液検査の受託を始め、2018年には体外診断用医薬品を自社で製造できる設備を整えた点に、研究を臨床へつなぐ会社としての粘り強さが表れていると思います。製造の設備を持つことは、検査を安定して届けるための土台でもあります。

早期の膵がんを見つける研究が進み、採血をきっかけに早期の膵がんが見つかる場面が増える日を楽しみに待ちたいと思います。金沢大学から生まれたほかの企業は、金沢大学発・関連スタートアップ8選で紹介しています。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら

この企業について、
もっと深く知りたい方へ

パートナーシップ・お問い合わせはこちらから。