リーフ・ラボ|植物工場専用のレタスを「高速育種」で研究する千葉大学発の企業

株式会社リーフ・ラボ

リーフ・ラボ「高速育種」を研究

企業紹介|リーフ・ラボとは?

植物工場に適した野菜の品種を、短期間で開発する育種の方法「高速育種」。株式会社リーフ・ラボは、その社会実装を目指す、千葉大学発のアグリ系ディープテック企業です。人工光型植物工場(LEDなどの人工の光だけで作物を育てる施設)の技術を育種に応用し、植物工場専用のレタス品種の開発と種子の販売を手がけています。

キーワード「高速育種」

「高速育種」は、光や温度などの栽培環境を人工的に制御し、交配と選抜のサイクルを短くして新しい品種を早く作り出す育種の方法です。屋外の畑では季節に合わせて栽培するため、世代を重ねるたびに時間がかかります。植物工場の中で育種を進めれば、季節に左右されずに交配と選抜を繰り返せます。

市場課題|植物工場は生理障害と品種選びでコストを下げにくい

現状の植物工場の課題

光を強めると葉の縁が傷む

人工光型植物工場でレタスの成長を速めるため光を強めると、チップバーンと呼ばれる生理障害が起きやすくなります。葉の縁が傷んだ株はトリミング(傷んだ部分を切り取る作業)が要り、人件費や歩留まり(製品にできる収穫量の割合)に影響します。そのため多くの工場は光を弱めて成長を抑え、生産コストを下げにくいのが現状です。

工場に合う品種を選びにくい

植物工場は工場ごとに栽培システムや環境が異なり、既存品種から最適なものを選びにくいとされています。交配と選抜を何世代も繰り返す従来の交雑育種(異なる品種を掛け合わせて選ぶ方法)では、新品種の開発に長い期間とコストがかかります。そのため、工場ごとの専用品種の開発は難しいとされてきました。

他にも、農業従事者の減少による生産体制の維持の難しさ、異常気象による露地野菜の収量の不安定さ、資材やエネルギーの高騰、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • チップバーンレタスなどの葉の縁が褐色に傷む生理障害である。成長が速いと、葉の先端までカルシウムが十分に届かなくなって起こる。植物工場で収量を上げる際の大きな妨げとされる。

リーフ・ラボの強み|「高速育種」を研究

リーフ・ラボが「高速育種」を研究

傷みにくい品種で光を強めて栽培

従来の品種は、光を強めて光合成を活発にするとチップバーンが起きやすいため、成長を抑えた栽培が前提でした。

同社が高速育種の技術で開発した「チップレスシリーズ」は、チップバーンが極めて起きにくい性質を持つレタスの品種です。チップバーンを心配せずに光を強め、照明の時間を延ばせるため、光合成を活発にして、株を短期間で大きく育てられます。収穫する株は250〜300gまで大型化でき、傷んだ葉を切り取るトリミングもほぼ不要です。その結果、同じ栽培棚の面積から得られる収量が増え、トリミングにかかる人件費も抑えられるため、植物工場の生産コストを低減できます。

工場ごとの専用品種を短期開発

従来の交雑育種は、季節に合わせて交配と選抜を繰り返すため、1つの品種を仕上げるまでに長い期間がかかりました。

同社は、人工光型植物工場の技術と精密環境制御技術を育種に応用した「高速育種システム」を持っています。光や温度などを細かく制御した施設では、季節に左右されず通年で同じ栽培環境を再現できるため、交配と選抜を1年を通して繰り返せます。さらに、この仕組みを生かして、栽培環境の異なる個々の工場に合った品種を開発する「テイラーメイド育種」も可能です。その結果、新品種の開発にかかる期間とコストを縮減し、工場ごとに合った品種で生産性を高められるようになります。

FrontJournalの解説
  • テイラーメイド育種利用者ごとの栽培条件に合わせて、専用の品種を開発する育種の考え方である。植物工場は光や温度、栽培システムが工場ごとに異なり、既存の品種から最適なものを見つけにくい。

植物工場の未来|専用品種で野菜の安定生産と低コスト化へ

植物工場の高速育種が変える未来

専用品種の種子を販売

チップレスシリーズのフリルレタス「ウィキリーフW」は、2022年3月に販売が始まった同社の品種です。2025年8月には、種苗法に基づく品種登録を受けました。同社は種子の提供に加えて、品種の性能を引き出すための研修や、工場の設備と栽培管理を最適化するコンサルティングも手がけています。事業者は品種と栽培方法をあわせて導入し、経営収支の改善につなげられます。

中性子線育種と共同研究

同社は2025年8月、クォンタムフラワーズ&フーズ(中性子線を使う品種改良の企業)と、植物工場向けレタス品種の高速育種に向けた共同研究を始めました。中性子線で種子などに多様な変異を起こすクォンタムフラワーズ&フーズの技術は、非GMO(遺伝子組換えに当たらない)の育種技術です。この技術とリーフ・ラボの高速育種を組み合わせ、2025年度に第一段階の育種と選抜を行い、商用化を視野に評価を進めるとしています。両社は、植物工場に特化した高機能なレタス品種を短期間で生み出すことを目的としています。

葉菜類への展開を目指す

同社が目指すのは、レタスに続いて、植物工場でニーズの高い葉菜類へ専用品種の開発を広げることです。これは、クォンタムフラワーズ&フーズとの共同研究の今後の展開として示されたものです。共同研究では、育種から選抜、導入・栽培支援までを一括で提供する新しい育種モデルの構築も掲げています。異常気象や農業従事者の減少で露地栽培の安定供給が難しくなる中、植物工場で野菜を安定して低コストで生産できる道が広がると期待されます。

会社概要|株式会社リーフ・ラボ

千葉大学の研究から設立

リーフ・ラボは、2020年5月に設立された千葉大学発のベンチャー企業です。千葉大学や、NPO法人植物工場研究会が長年にわたり蓄積してきた知見とノウハウを基盤にしています。同年7月には千葉大学と共同研究契約を結び、キャンパス内で研究を始めました。

設立時の代表取締役は山口利隆氏で、2020年7月に丸尾達氏が代表取締役に就任しました。丸尾氏は、公益財団法人園芸植物育種研究所の理事長・所長も務めています。研究拠点は、千葉県柏市の千葉大学環境健康フィールド科学センター内に置いています。

地域の助成と共同研究

同社は2021年2月、公益財団法人「ひまわりベンチャー育成基金」の助成金と家賃補助金の交付先に採択されました。同年8月には、千葉銀行の「ちばぎん研究開発助成制度2021」に、植物工場向けのレタスの品種育成方法に関する共同研究テーマが採択されています。2024年2月には、ベンチャークラブちばの「第40回ビジネスプラン発表会」で優秀賞を受けました。2025年8月からは、クォンタムフラワーズ&フーズとレタス品種の共同研究を進めています。

種子の販売と栽培支援

同社の事業の柱は、植物工場専用のレタス品種の種子の販売です。個々の人工光型植物工場に適した品種の選抜・提供や、工場ごとの専用品種の開発も手がけています。季節によって環境が変わる太陽光型植物工場に向けても、適した品種を選抜して提供しています。資本金は9,712万5,000円です。

会社情報

会社名株式会社リーフ・ラボ(LeafLab Co.,Ltd.)
所在地本社:千葉県柏市若柴178番地4 KOIL6階。研究拠点:千葉県柏市柏の葉6-2-1 千葉大学環境健康フィールド科学センター内
設立2020年5月1日
代表丸尾 達(代表取締役)。山口 利隆(常勤取締役)
資本金9,712万5,000円
事業植物工場専用品種の開発・種子の販売。テイラーメイド育種。植物工場向けの研修・コンサルティング。主な製品:チップレスシリーズ「ウィキリーフW」「ウィキリーフM」(フリルレタス)
技術領域人工光型植物工場技術と精密環境制御技術を活用した高速育種システム。品種登録:ウィキリーフW(登録番号31239・2025年8月28日)
連携千葉大学(千葉大学発ベンチャー・共同研究)。株式会社クォンタムフラワーズ&フーズ(共同研究・2025年8月)
採択ひまわりベンチャー育成基金(2021年2月)。ちばぎん研究開発助成制度2021(2021年8月)。第40回ビジネスプラン発表会 優秀賞(2024年2月)
URLhttps://leaflab.tech/

編集後記|FrontJournal編集部より

植物工場は、天候に左右されずに野菜を生産できる施設です。一方で、工場ごとの環境に合わせた専用品種を作ることは、これまで難しいとされてきました。リーフ・ラボは、その品種の側から植物工場の生産性に向き合っています。

興味深いのは、植物工場そのものを育種の場として使い、工場で育てやすい品種を工場の中で選び出している点です。葉の光合成速度を測る装置を開発するマサインタナショナルのように、植物の成長を支える技術の担い手は広がっています。千葉県の大学発企業は、千葉大学発スタートアップ10選でも紹介しています。

千葉大学の研究から生まれた育種の技術が、植物工場の野菜をより身近で手ごろなものにしていく歩みに、引き続き注目していきたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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