リナイス「非変性プロテオグリカン」を研究|サケの未利用部位から機能性成分を取り出す様子を描いたイラスト

株式会社リナイス

リナイス「非変性プロテオグリカン」を研究|研究領域=サケの未利用部位から・非変性のまま抽出/強み=全工程を非加熱で・構造を保つ/将来性=新素材と地域へ・用途が広がる

企業紹介|株式会社リナイスとは?

水産加工で残る部位を、付加価値の高い原料に変える技術として、注目を集める「非変性プロテオグリカン」。株式会社リナイスは、その社会実装を目指す、バイオ・ヘルスケア系ディープテック企業です。健康食品原料「SCPコンプレックス-LS」や化粧品原料「プロテオグリカンAQA-LS」等を、食品や化粧品のメーカーへ提供しています。

キーワード「非変性プロテオグリカン」

「非変性プロテオグリカン」は、加熱や薬品の処理で構造を崩さずに取り出した、糖とタンパク質が結びついた成分です。特徴は、製造の全工程を非加熱で進め、分子量を保ったまま回収できる点にあります。人の体内では肌や関節の軟骨に多く含まれる成分で、サプリメントや化粧品の原料に使われています。

市場課題|サケの頭部は廃棄され、有用な成分も処理で変性しやすい

現状のサケ頭部の課題|現状は、頭部が廃棄され取り出す工程でも成分が変性|サケの頭部は・廃棄物として処理/熱や薬品で・構造が変わりやすい

サケ頭部の廃棄が負担になる

北海道の水産加工では、サケの頭部の多くが水産系廃棄物として処理され、産地の負担になってきました。サケは北海道を代表する水産資源ですが、身を取ったあとの頭部は用途が限られ、処理の費用と手間がかかります。未利用のまま扱う量が増えるほど、価値を引き出せないまま処理の費用だけがかさみます。

熱や薬品の処理で成分が変質

軟骨の機能性成分の弱点は、取り出す工程で構造が変わりやすいことです。プロテオグリカンやコラーゲンは、加熱や酸・アルカリによる処理を受けると、立体構造がほどける変性が起こります。加水分解(水分子が結合を切り離す反応)は、分子そのものを切断する反応です。変性した成分は体内での働き方も変わるとされ、価値を保つには穏やかな条件で取り出す必要があります。

他にも、産地ごとに異なる鮮度の管理、漁期に集中する原料の受け入れ体制、部位ごとに量が違う成分をむらなく取り出す難しさ、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 変性タンパク質などの分子が熱や酸・アルカリの作用で立体的な構造を崩し、もとの性質を失う現象である。糖が結びついた成分では結合が切れて分子が小さくなることもあり、水を抱える力が変わる。

リナイスの強み|「非変性プロテオグリカン」を開発

リナイスが「非変性プロテオグリカン」を開発|今後は、非加熱で構造を保つことが可能に|頭部の未利用部位を・原料に活用/全工程を非加熱で・変性を防ぐ

頭部の未利用部位を原料に活用

水産加工で残るサケの頭部は、軟骨や皮、エラが混ざった状態で運び込まれます。部位ごとに含まれる成分が違うため、まとめて扱うと目的の成分を取り出しにくくなります。

同社は、サケの頭部を部位ごとに分け、それぞれから別の成分を取り出しています。岩内工場で道内各地の水産工場から届いた頭部から鼻軟骨を摘出し、長万部工場へ送って急速冷凍したうえで抽出・濃縮・乾燥まで行います。コラーゲンやエラスチン(皮膚や血管の弾力を担うタンパク質)の原料になるのは、鼻軟骨以外の皮やエラです。処理に費用がかかっていた部位が売れる原料に変わり、頭部を送り出す水産加工事業者は、廃棄の負担を減らしながら新しい収入を得られます。

非加熱の工程で変性を防ぐ

加熱や薬品の量を増やせば抽出は速く進みますが、そのぶん成分の立体構造は崩れやすくなります。

同社の製法は、抽出から乾燥までの全工程を非加熱で通し、成分をもとの構造のまま取り出します。原料は摘出後すぐに急速冷凍し、酸やアルカリによる化学処理も加水分解も行いません。取り出すのは、非変性プロテオグリカンと非変性のII型(軟骨の主成分)・XI型(II型の線維を調整する少量成分)コラーゲンです。鼻軟骨の摘出から乾燥までを自社の工場でつなぐため、工程の条件を一括管理できます。構造がもとのまま残るため、使う側は配合量を抑えた設計ができ、サプリメントを飲みやすい大きさにまとめられます。

FrontJournalの解説
  • XI型軟骨に含まれるコラーゲンの型の一つで、主成分であるII型より量が少ない。II型の線維が太くなりすぎないように調節し、軟骨の構造を保つ役割を担うとされる。

非変性プロテオグリカンの未来|食品から化粧品、地域産業へ応用が広がる

非変性プロテオグリカンが変える未来|素材の広がりが、地域の資源の循環へ|サプリメントや・化粧品に採用/エラや皮からも・新しい素材を抽出/地域の資源を・循環させる

サプリメントや化粧品に採用

同社の素材は、すでにサプリメントや化粧品の原料として使われています。健康食品向けは「SCPコンプレックス-LS」、飲料向けは「プロテオグリカン-LS」、化粧品向けは「プロテオグリカンAQA-LS」です。近年は原料の供給にとどまらず、健康食品や化粧品の受託製造も手がけています。自社ブランドのスキンケアシリーズ「MAVIS」も開発し、自社のECサイト(自社運営の通販サイト)で販売しています。

未利用部位から新素材を拡充

新しい素材は、鼻軟骨以外の部位からも生まれています。サケのエラを原料にした「サーモンエラスチン-LS」は、粉末と液体の形で供給される食品原料です。皮を原料にした「アテロ化マリンコラーゲン-LS」(アテロ化=コラーゲンの端を取り除いて扱いやすくする加工)など、部位ごとの特性に合わせた素材も用意しています。福井県立大学との共同研究で分かったのは、サケ鼻軟骨のコラーゲンのうち約2割がXI型であることです。

地域資源の循環を目指す

同社は、サケの未利用資源を地域のなかで循環させることを目指しています。2023年度に原材料として受け入れた軟骨70トンは、アップサイクル(廃棄されてきたものに新たな価値を付けて再生すること)の実績です。工場を置く岩内町と長万部町では、冷凍倉庫会社や運送会社との取引が生まれ、地域の雇用につながっています。今後はサケのふ化放流事業への関与や、養殖事業者からの調達網の構築を通じて、海洋資源の保全にも取り組む方針です。

会社概要|株式会社リナイスの事業内容・設立背景

2011年に札幌で設立

株式会社リナイスは、2011年1月札幌市で設立されました。代表取締役は中野英春氏と鳴海正樹氏で、設立時から共同で務めています。事業内容は、食品原料と化粧品原料の製造、および健康食品と化粧品の企画・受託製造です。2022年11月には本社兼研究開発室を、北海道大学フード&メディカルイノベーション国際拠点へ移しました。企業理念に「持続可能な美と健康を追求し、自然と科学と地域社会を繋ぐ」を掲げています。

品質認証と受賞を重ねる

2017年3月に北海道食品機能性表示制度「ヘルシーDo」の認定を受けました。2019年2月には長万部工場が原材料GMP(適正製造規範)の認定を取得し、2019年7月にユダヤ教のコーシャ、2020年9月にイスラム教のハラルの認証を得ています。2020年10月に北海道発明協会の「北海道経済産業局長賞」、2024年度に「北海道新技術・新製品開発賞」ものづくり部門の優秀賞を受けました。研究では、北海道大学、福井県立大学、東海大学、北海道立総合研究機構などと連携しています。

原料供給と受託製造で展開

事業の柱は、原料の供給と受託製造です。2025年3月時点の資本金は3,600万円、従業員は28名です。2024年6月期の売上高は4億900万円でした。2025年7月には北洋銀行と、環境や社会への効果を評価して融資する「ポジティブインパクトファイナンス」の契約を結んでいます。原材料の調達は関連会社の株式会社LNSサプライが担っています。

会社情報

会社名株式会社リナイス(LINISE Co., Ltd.)
所在地〒001-0021 北海道札幌市北区北21条西11丁目 北海道大学フード&メディカルイノベーション国際拠点405。岩内工場:北海道岩内郡岩内町高台298-1。長万部工場:北海道山越郡長万部町旭浜159-9
設立2011年1月
代表代表取締役:中野 英春。代表取締役:鳴海 正樹
資本金3,600万円(2025年3月時点)
従業員28名(2025年3月時点)
事業食品原料・化粧品原料の製造、健康食品・化粧品の企画・受託製造。主な製品は健康食品原料「SCPコンプレックス-LS」、飲料用食品原料「プロテオグリカン-LS」、化粧品原料「プロテオグリカンAQA-LS」、「サーモンエラスチン-LS」、「アテロ化マリンコラーゲン-LS」。自社ブランドのスキンケアシリーズ「MAVIS」。売上高4億900万円(2024年6月期)
技術領域北海道産天然サケの鼻軟骨・皮・エラから、全工程を非加熱で非変性プロテオグリカンと非変性コラーゲンを抽出・精製する製法。岩内工場で鼻軟骨を摘出し、長万部工場で急速冷凍・抽出・濃縮・乾燥を行う一貫生産
連携北海道大学(2023年度から産学・地域協働推進機構を窓口とする共同研究契約)。福井県立大学。東海大学。北海道立総合研究機構。関連会社:株式会社LNSサプライ(原材料調達)
採択北海道食品機能性表示制度「ヘルシーDo」認定(2017年3月)。原材料GMP認定(2019年2月・長万部工場)。コーシャ認証(2019年7月)。ハラル認証(2020年9月)。北海道発明協会「北海道経済産業局長賞」(2020年10月)。北海道新技術・新製品開発賞 ものづくり部門 優秀賞(2024年度)。北洋銀行ポジティブインパクトファイナンス契約(2025年7月)
URLhttps://linise.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

捨てられてきた部位に、熱を加えないまま価値を見いだす。この発想の順序に感心しました。原料を良くするのではなく、原料を壊さないことに技術を注いでいます。

面白いのは、工場の配置そのものが技術の一部になっている点です。岩内で摘出し、長万部で急速冷凍してから抽出する。単なる素材メーカーではなく、鮮度を設計する会社だと受け取ると、二つの工場を離して置く意味が見えてきます。

北海道の海から生まれた素材が、どこまで用途を広げるのかを見守りたいと思います。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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