エムバイオテック|千葉大学発の「マイコプラズマ抗体検査」を開発するバイオ系ディープテック企業

エムバイオテック株式会社

エムバイオテック「マイコプラズマ抗体検査」を開発

企業紹介|エムバイオテックとは?

血液中の抗体から、細菌マイコプラズマへの感染を調べる技術として使われる「マイコプラズマ抗体検査」。エムバイオテック株式会社は、その社会実装を目指す、千葉大学発のバイオ系ディープテック企業です。化学合成した抗原(免疫が異物と見分ける目印の分子)を使う「マイコプラズマ脂質抗原抗体検査」を、国内の指定医療機関へ提供しています。

キーワード「マイコプラズマ抗体検査」

「マイコプラズマ抗体検査」は、血液中の抗体を測り、細菌マイコプラズマへの感染を調べる検査です。特徴は、病原体そのものではなく、感染に対して体が作った抗体から感染の有無を把握できる点にあります。抗体の量は、発症から1週間程度で上がり始めるとされています。

市場課題|抗体検査で感染を見きわめにくい

現状の抗体検査の課題

抗体の種類を分けて測りにくい

PA法(粒子が抗体で固まる反応を使う検査)は、抗体の種類を分けずに測る抗体検査です。IgG型とIgM型(いずれも抗体の種類)の抗体をまとめて検出し、確実な診断には、時期をずらした2回の採血で抗体の量が4倍以上に増えたことを確かめます。1回の採血で判定するには抗体の量が一定の値を超えている必要があり、抗体が増える前の時期には確定が難しくなります。

菌由来の抗原は品質がぶれやすい

菌由来の抗原は、成分が不均一になりやすい材料です。従来の検査キットには培養した菌の細胞膜の成分などが用いられ、材料が不均一なために検査の精度にも限界があるとされています。ELISA法による検査自体は以前から確立されていますが、その感度は高くなかったとされています。

他にも、かぜと見分けにくい初期の症状や、マクロライド系抗菌薬(肺炎の治療に使う薬)が効きにくい耐性菌の増加、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 抗原病原体の表面などにあり、体の免疫が異物として見分ける目印となる分子である。抗体検査では、試薬の抗原に血液中の抗体が結びつく反応を使い、その病原体への感染の有無を調べる。

エムバイオテックの強み|「マイコプラズマ抗体検査」を開発

エムバイオテックが「マイコプラズマ抗体検査」を開発

抗体を種類ごとに測定

PA法の値はIgM型とIgG型の抗体をまとめた量で、どちらが増えたのかを区別しにくいという課題がありました。

エムバイオテックの「マイコプラズマ脂質抗原抗体検査」は、ELISA法(抗原を付けた容器で、結びついた抗体を色の濃さで測る方法)を使い、IgM・IgG・IgA(IgAも抗体の種類の一つ)の量を個別に測ります。容器に付ける抗原は、化学合成したマイコプラズマの脂質抗原です。対象は、肺炎の原因となるマイコプラズマ・ニューモニエと、マイコプラズマ・ファーメンタンスの2種類で、それぞれの感染の有無を調べることができます。

化学合成で抗原の品質を統一

菌由来の抗原を使う検査では、測定値がロット(同じ条件で一度に製造した製品のまとまり)ごとにぶれやすいという課題がありました。

同社は、マイコプラズマ・ニューモニエの細胞膜にある糖脂質抗原(糖と脂質が結合した、免疫の目印となる分子)を、化学合成で作っています。抗原の立体的な構造も、合成した分子を詳しく調べることで確かめられており、狙った形の分子を毎回そろえられる点が特徴です。化学合成した抗原は毎回同じ構造になるため、ロットによる差が出にくくなります。これにより、同社は検査結果の均一性と再現性を高い水準で保てるようになりました。

FrontJournalの解説
  • 糖脂質糖と脂質が結合した分子で、細胞膜の表面に多く存在する。細菌の種類ごとに構造が異なるため、免疫が病原体を見分ける目印となり、検査や予防の材料として研究されている。

マイコプラズマ抗体検査の未来|検査からワクチンの研究へ

合成抗原のマイコプラズマ抗体検査が変える未来

指定医療機関で検査を受けられる

同社の検査は、すでに国内の医療機関で受けられます。2012年には臨床検査会社のエスアールエルと提携し、自費診療として検査を始めました。現在は東京都や神奈川県、北海道、京都府、大阪府などの指定医療機関で受診できます。指定医療機関の一覧は、同社の公式サイトで公開されています。

検査試薬の量産を進める

欧州のパートナー企業とのELISAの診断システムの中規模量産は、すでに完了しています。現在は、ELISAの生産を担う事業パートナーを募集中です。合成抗原の量産に向けた検討も進めています。

ワクチンへの応用を目指す

同社が目指すのは、合成抗原を検査だけでなく予防にも生かすことです。化学合成した糖脂質抗原をリポソーム(脂質の膜でできた小さな粒子)に組み込み、マイコプラズマに似せた粒子をワクチンとして使う研究が進行中です。この技術は、共同開発やライセンス供与の協議の対象でもあります。

会社概要|エムバイオテック株式会社

マイコプラズマ研究を事業化

エムバイオテックは、マイコプラズマ感染症の研究成果を事業にするため、2005年1月に設立されました。代表取締役社長の松田和洋氏は医師で、この感染症の研究に長年取り組んできました。同社は、研究から生まれた合成抗原を、診断と予防、治療に生かすことを目指しています。2012年には、研究拠点「マイコプラズマ感染症研究センター」を千葉市に設けました。本社は東京都世田谷区にあります。

国の助成や支援事業に採択

同社は、国の研究開発助成や海外展開の支援事業に採択されてきました。2006年にはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成事業で、質量分析を使って患者の血清から脂質抗原を分析するシステムの開発に取り組みました。2024年にはJETRO(日本貿易振興機構)の「Global Startup Acceleration Program 2024」のDeep Techコースに採択されています。糖脂質抗原の合成研究では、千葉大学の研究者と共同で論文を発表しました。2018年には、中小企業基盤整備機構が主催する「新価値創造展2018」で新価値創造賞を受けています。

提携とライセンスで展開

同社は、製薬企業などとの提携やライセンス供与で技術を広げる方針を掲げています。検査では臨床検査会社と組み、ワクチンや抗体医薬では製薬企業などとの共同開発を目指しています。資金面では、株式投資型クラウドファンディング「FUNDINNO」で、投資家101人から2,466万円を調達しました。

会社情報

会社名エムバイオテック株式会社(M Bio Technology Inc.)
所在地東京都世田谷区深沢2丁目1番3-1103号(本社)
設立2005年1月5日
代表松田 和洋(代表取締役社長・医師)
資本金5,900万円(2022年12月末時点)
調達株式投資型クラウドファンディング「FUNDINNO」(新株予約権型・2,466万円・投資家101人)
事業マイコプラズマ感染症の診断薬・治療薬・ワクチンの開発。「マイコプラズマ脂質抗原抗体検査」(国内の指定医療機関で自費診療として受診可能)
技術領域マイコプラズマの糖脂質抗原の化学合成、ELISA法による抗体測定(IgM・IgG・IgA)、合成抗原を組み込んだ粒子によるワクチン
連携千葉大学(糖脂質抗原の合成研究)。エスアールエル(検査の提供・2012年)
採択NEDO 研究開発型ベンチャー技術開発助成事業(2006年)。新価値創造展2018 新価値創造賞(2018年)。JETRO Global Startup Acceleration Program 2024 Deep Techコース(2024年)
URLhttps://www.mbiotechnology.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

マイコプラズマは、最も小さな細菌の一つとされています。エムバイオテックは、その抗原を化学合成で作り、検査の物差しそのものをそろえることに取り組んできました。医師として研究を重ねてきた代表の経験が、その土台にあります。

興味深いのは、同じ合成抗原を検査からワクチンの研究にまで広げている点です。検査の材料をそろえる技術が、そのまま予防の材料づくりにもつながっています。材料の構造が毎回同じであることは、研究の結果を比べるうえでも大切な条件です。

化学合成という手法が、感染症の診断と予防をどこまで変えていくのか、引き続き注目していきたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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