メトロウェザー「ドップラー・ライダー」を開発

メトロウェザー株式会社

メトロウェザー「ドップラー・ライダー」を開発

企業紹介|メトロウェザー株式会社とは?

上空や遠方の風を、立体的にリアルタイムで測る装置として、船舶への搭載実証が進む「ドップラー・ライダー」。メトロウェザー株式会社は、その社会実装を目指す、京都大学発のセンシング系ディープテック企業です。赤外線レーザーで風向と風速を3次元でとらえる「Wind Guardian」を開発・販売し、風の観測データを提供しています。

キーワード「ドップラー・ライダー」

「ドップラー・ライダー」は、レーザー光を大気中の微細な塵に当て、返ってきた光の周波数の変化から風向と風速を測る装置です。装置の位置から動かずに、遠く離れた場所の風を3次元でとらえられます。船舶の航行など、風が安全に関わる場面での活用に向けて、実証が進んでいます。

市場課題|ドローンの安全運航は、上空の風の把握に課題がある

現状の風の観測の課題

低空の突風が飛行の安全を脅かす

ドローンや空飛ぶクルマの運航では、地上付近の突風や乱気流が安全を左右します。地上付近の風は乱れが多く、大小さまざまな乱流が生じ、機体の安全運航にとって大きな脅威です。風の動きを見通せなければ、飛行ルートの判断が難しくなります。

上空や海上の風は測りにくい

ドローンが飛ぶ高度100m程度の上空や海上の風は、測定が難しい状況でした。従来の風速計は、風杯(風を受けて回るカップ)でその場の風速を測る1点観測で、他社製の大型ドップラー・ライダーには、重量が約2トン、大きさが約2m四方のものがあり、機動的な観測には向きにくい大きさです。上空や海上の風の広がりを面でつかめなければ、安全な飛行経路の選択が限られます。

他にも、地方空港でのウインドシア(地上付近で風向きが急に変わる現象)の把握、洋上の風況の観測、都市でのゲリラ豪雨の予兆の把握、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 乱流流体の速度や向きが、時間的にも空間的にも不規則に変動する流れを指す。風では、建物や地形の影響で、突風や急な風向きの変化となって現れる。

メトロウェザーの強み|「ドップラー・ライダー」を開発

メトロウェザーが「ドップラー・ライダー」を開発

風を3次元でリアルタイム可視化

風速計は設置した地点の風を測る方式で、離れた場所や上空の風の分布までは把握しにくい観測です。

「ドップラー・ライダー」は、赤外線レーザーを大気中の微細な塵(エアロゾル)に当て、返ってきた光の周波数のずれ(ドップラー効果)から風向と風速を求める装置です。大気の条件によりますが、装置を中心に最大で半径約15kmの範囲を、最小10mの間隔で3次元にとらえます。風速の分解能(区別できる最小の差)は0.1m/sです。ライダー(LiDAR)は、光で距離や動きを測る技術の総称です。一台で広い範囲の風を連続して測れるため、風が乱れる場所と時間を踏まえて、飛行ルートや航路を判断できるようになります。

小型化で設置場所を広げる

他社製の大型ドップラー・ライダーは大きく重いため、機動的な観測には向きにくい装置です。

現行機の観測距離は、大気条件により変わりますが、最大で半径約15kmです。重量は、2025年2月時点で180kgでした。長年培ってきたリモートセンシング技術(離れた場所から対象を測る技術)と信号処理技術(雑音の多い信号から必要な信号を取り出す技術)を組み合わせ、安価で低出力の部品でも高い性能を保てるようにして、他社製の大型機と同等の水準を満たしながら小型化しました。装置を載せる場所の選択肢が増えるため、船舶への搭載や複数台の設置で、必要な場所の風を測りやすくなります。

FrontJournalの解説
  • ドップラー効果波を出す物体と観測者が相対的に動くとき、観測される波の周波数が変化する現象を指す。救急車のサイレンの音程が、近づくときと遠ざかるときで変わるのが身近な例である。

ドップラー・ライダーの未来|海と空の安全運航への応用

リモートセンシングが変える未来

船舶から遠方の風況を観測

2024年3月、商船三井さんふらわあのRORO船(車両ごと貨物を積み込める船)「むさし丸」に装置を載せ、東京と福岡を結ぶ航路で実証が始まりました。航行中の大型船舶への搭載は世界初です。船から十数キロ先の風況を3次元でリアルタイムに観測し、衛星通信「Starlink」で陸上へデータを送ります。目的は、船の燃費削減と安全運航への貢献です。

量産に向けた精度検証を進める

量産に向けて、精度の検証と部品の国産化に取り組んでいます。古河電気工業とは2025年2月に資本業務提携(出資と業務上の協力を組み合わせた提携)を結び、フォトニクス技術(光を操る技術)を用いた中核部品の開発で、装置の国産化を目指します。大阪府柏原市では、JTOWER(通信設備を共用化する会社)の通信鉄塔を使い、「柏原精度検証センター」が開設されました。両社によると、2025年3月時点でドップラー・ライダーの精度検証センターとして世界最大規模、国内初です。

物体検知の実用化を目指す

風の観測の技術を応用し、不審なドローンなどを探知する「物体検知ライダー」を開発しています。レーダーで捕捉しにくい低空の不規則な飛行も、レーザーで探知する技術です。赤外線レーザーは目視できず、指向性(光が一方向に集まって進む性質)も高いため、探知される側から逆探知されにくい特長があります。2026年9月時点で要素技術の有効性が確認されており、防衛装備品や重要インフラの防護に向けた実用化を目指しています。

会社概要|メトロウェザーの事業内容・設立背景

京都大学の研究を基に創業

同社は、京都大学発のディープテックスタートアップとして、2015年5月に設立されました。共同創業者の古本淳一氏は、京都大学生存圏研究所で13年間、助教を務めた経歴を持ちます。東邦昭氏は同研究所の博士研究員として、大気レーダーを用いた乱気流の検出と予測の技術開発などを手がけました。現在は古本氏が代表取締役社長、東氏が取締役副社長兼CTO(最高技術責任者)を務めます。

NEDO採択と事業会社との連携

NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「ディープテック・スタートアップ支援基金」では、2024年3月に、小型低価格ドップラーライダーと量産に向けた精度検証手法の開発が採択されました。2023年6月には、同機構の「経済安全保障重要技術育成プログラム」にも採択されています。事業会社とは、船舶の実証で商船三井、部品の国産化で古河電気工業、防衛向けの開発と量産で東京計器と連携しています。

累計調達額は35.6億円

累計調達額は、2026年9月時点で35.6億円です。2022年4月のシリーズA(事業の拡大期に行う資金調達ラウンド)で約7億円を調達し、その後の追加調達を含め、シリーズAの累計は約12億円になりました。2025年7月のプレシリーズB(シリーズBの前段の調達)では8.5億円を調達しています。2026年9月には、インキュベイトファンドと三菱重工業を引受先に、シリーズBの1stクローズ(最初の払い込み)で15億円を調達しました。シリーズB全体では総額25億円の調達を目指しています。

会社情報

会社名メトロウェザー株式会社
所在地本社:京都府宇治市広野町茶屋裏18-1 タニヤマ大久保ビル1F / 東京本社:東京都千代田区二番町9丁目3番 THE BASE麹町W-319
設立2015年5月
調達累計調達額は35.6億円(2026年9月時点)。2026年9月にシリーズBの1stクローズで15億円
事業リモートセンシング技術を応用した大気計測装置の開発・製作・販売。気象観測および予測データの提供
技術領域赤外線レーザーを用いて風況を3次元でリアルタイムに測るドップラー・ライダー「Wind Guardian」
連携商船三井(船舶での風況観測)。古河電気工業(資本業務提携・部品の国産化)。東京計器(資本業務提携・防衛向けの開発)。JTOWER(精度検証センター)
採択NEDO「ディープテック・スタートアップ支援基金」(2024年3月)/ NEDO「経済安全保障重要技術育成プログラム」(2023年6月)
URLhttps://www.metroweather.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

目に見えない風を、数値と映像で見えるようにする。メトロウェザーの取り組みは、空と海の安全を支える土台になる技術だと考えます。ドローンの機体側は、産業用ドローンを製造・販売するACSLの企業紹介でも読めます。

装置を小型にして、船にも鉄塔にも載せられる点が、現場へ広がる力になりそうです。実証で得た風のデータが積み重なるほど、安全運航の判断に使える場面は広がると考えます。ドローンの利用が日常になる社会で、風の情報は欠かせない基盤になると考えます。

風の観測から物体の検知へ、応用の幅が広がっています。空の安全を守る技術が、暮らしの安心につながる日を楽しみにしています。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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