ACSL|千葉大学発の「国産ドローン」を研究・開発するディープテック企業

株式会社ACSL(エーシーエスエル)

ACSL「国産ドローン」を研究|研究領域=点検や物流に使う産業用ドローン/強み=飛行制御を自社で開発/将来性=多数機の自律運航を研究

企業紹介|ACSLとは?

飛行を制御する頭脳にあたる仕組みまで国内の企業が開発した、産業用の「国産ドローン」。株式会社ACSLは、その社会実装を目指す、千葉大学発のロボティクス系ディープテック企業です。フライトコントローラを自社で開発し、インフラ点検や物流、防災に使う機体を製造・販売しています。

キーワード「国産ドローン」

国産ドローンは、機体と飛行制御の仕組みを国内の企業が開発したドローンです。同社は、飛行の頭脳にあたるフライトコントローラを、ソースコード(プログラムの処理を記述した文字列)から自社で開発しています。国産や信頼性の高い海外製の部品を採用し、撮影データや通信を暗号化する機体を製造しています。

市場課題|インフラ点検の負担が大きく、飛行データの流出も懸念

現状の点検とドローンの課題|現状は、作業の負担が重く、飛行データの流出も懸念/近接目視の点検は負担が大きい/飛行データの流出が懸念

近接目視の点検は負担が大きい

橋やトンネルの点検は、点検員が手の届く距離まで近づく近接目視が基本であり、作業の負担が大きくなりがちです。高い橋脚や橋の裏側、狭いトンネルの壁面を確かめるには、高所作業車や足場を用意しなければなりません。このままでは点検のたびに足場を組む手間と、高所での作業の危険が繰り返し生じます。

飛行データの流出が懸念

ドローンは飛行経路や撮影した画像を通信でやり取りするため、データの流出や機体の乗っ取りが懸念されています。インフラや防災の現場では、重要な施設の画像を扱う場面も少なくありません。こうした懸念から政府は2020年9月、政府機関が調達するドローンをセキュリティの担保されたものに限る方針を示しました。

他にも、災害時の被害状況の把握、山間部や離島への物資の輸送、物流の担い手の不足、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 近接目視点検員が構造物に手の届く距離まで近づき、ひび割れや腐食を自分の目で確かめる点検の方法。橋やトンネルでは5年に1回の定期点検で、この方法が基本とされている。

ACSLの強み|「国産ドローン」を研究

ACSLが「国産ドローン」を研究|現在は、飛行制御と暗号化で機体を提供/画像で位置を推定し自律飛行/暗号化でデータ流出を抑制

画像で位置を推定し自律飛行

一般的なドローンは、GNSS(人工衛星の電波で位置を割り出す仕組み)で自分の位置をつかむため、橋の下やトンネルの中では位置が定まりにくくなります。

同社の一部の機種は、Visual SLAM(ステレオカメラの画像から自分の位置を推定する技術)を備え、衛星の電波が届きにくいトンネルの中でも自律飛行が可能です。その飛行を支えるのは、同社がソースコードから開発するフライトコントローラ。制御は、機体をミッションへ導きトラブルを避ける「大脳」と、指示どおりにプロペラの回転数を整える「小脳」の2層構成です。強風では飛行速度を自動で抑え、荷物の積み下ろしで重さが変わっても飛び方を保ちます。点検員が高所に上らずに、ドローンで構造物に近づいて撮影できます。

暗号化でデータ流出を抑制

通信や保存の仕組みが利用者から見えにくい機体では、撮影データの扱いを管理しにくくなります。

同社の小型空撮ドローン「SOTEN」(蒼天)は、ISO15408(情報セキュリティ製品を評価する国際規格)に基づくセキュリティ対策を施した機体です。機体との通信と撮影データはAES-256(強度の高い暗号方式の一つ)で暗号化され、取得したデータは国内のクラウドで保護されます。部品には国産や信頼性の高い海外製のものを採用し、組み立ても国内で行う体制です。インフラや防災の現場で撮った画像を、外部への流出の危険を抑えたまま業務に使えるようになります。

FrontJournalの解説
  • Visual SLAMステレオカメラなどの画像から周囲の特徴を捉え、自分の位置の推定と周囲の地図の作成を同時に行う技術。衛星の電波が届かない屋内やトンネルの中でも、機体が自分の位置を把握できる。

未来|国産ドローンが物流と点検の無人化を広げる

国産のドローンが変える未来|有人地帯の上空から多数機の同時運航へ/レベル4飛行の配送を実現/1機種で配送と巡視に対応/多数機の自律運航を目指す

レベル4飛行の配送を実現

同社の機体「PF2-CAT3」は、国内初のレベル4飛行(有人地帯での補助者なしの目視外飛行)による配送に使われました。2023年3月、この機種は国内で初めて第一種型式認証(レベル4飛行に必要な、国が機種の設計や製造過程を審査する認証)を取得しています。同月、日本郵便はこの機体を使い、東京都奥多摩町で荷物を配送しました。山間部の配送にドローンが使える段階です。

1機種で配送と巡視に対応

長距離飛行マルチユースドローン「PF4」は、1機種で荷物の配送と巡視の両方に使える機体です。2025年10月に量産が始まり、物流仕様では5.5kgの荷物を積んで40kmを飛行できます。2026年2月から3月には、日本郵便が兵庫県豊岡市で、2機の「PF4」に配送と、災害を想定した巡視(上空からの見回り)を別々の経路で担わせる実証が計画され、同社が機体を提供しました。少人数で複数機を運航する体制に向けた試みです。

多数機の自律運航を目指す

同社は、多数のドローンがAIを用いて自ら航路を決めて飛ぶ技術の確立を目指しています。2025年10月からは、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「K Program」(経済安全保障重要技術育成プログラム)で、Preferred Networksとともにこの技術を研究しています。2026年9月には、航路を自動で生成する機能をデモで示せる段階に達しました。少ない人数で多くの機体を安全に運航できれば、点検や物流の現場で人手不足を補う手段が広がります。

会社概要|株式会社ACSL

千葉大学の研究から創業

同社の出発点は、千葉大学の教授だった野波健蔵氏が進めてきた、ドローンの自律制御の研究です。野波氏は2013年11月、千葉県で株式会社自律制御システム研究所を設立しました。2018年12月には東京証券取引所マザーズ市場(当時)へ上場し、千葉大学発ベンチャーとして初めての上場企業となりました。2021年6月に、現在の社名である株式会社ACSLへ商号を変更しています。

日本郵便との提携とNEDO採択

2021年6月には、日本郵便と資本業務提携を結びました。同社の機体は、日本郵便によるレベル4飛行の配送や多数機同時運航の実証に使われています。同社はNEDOの「安全安心なドローン基盤技術開発」事業に採択され、その成果をもとに小型空撮ドローン「SOTEN」を開発しました。中小企業庁の「事業再構築補助金」(令和2年度)にも採択されました。

産業用ドローンの製造販売

事業の柱は、産業用ドローンの製造販売と、自律制御技術を用いた無人化・IoT化のソリューションサービスの提供です。製品には、小型空撮ドローン「SOTEN」、長距離飛行マルチユースドローン「PF4」、インフラ点検専用機「PF2-AE Inspection」があります。自社のドローン専用のアプリケーション「TAKEOFF」も提供しています。

会社情報

会社名株式会社ACSL(ACSL Ltd.)。旧商号:株式会社自律制御システム研究所
所在地東京都江戸川区臨海町3-6-4 ヒューリック葛西臨海ビル2階
設立2013年11月
代表代表取締役Co-CEO 早川研介、代表取締役Co-CEO 寺山昇志
上場2018年12月 東京証券取引所マザーズ市場(当時)に上場
事業産業用ドローンの製造販売、および自律制御技術を用いた無人化・IoT化に係るソリューションサービスの提供。主な製品は小型空撮ドローン「SOTEN」(重量1.7kg〈標準カメラ・バッテリー含む〉、防塵防水IP43)、長距離飛行マルチユースドローン「PF4」、インフラ点検専用機「PF2-AE Inspection」、アプリケーション「TAKEOFF」
技術領域フライトコントローラの自社開発、自律制御、Visual SLAM による自己位置推定、ISO15408 に基づくセキュリティ対策
連携日本郵便株式会社(2021年6月 資本業務提携)。株式会社Preferred Networks(NEDO K Program の研究開発)
採択NEDO「安全安心なドローン基盤技術開発」。NEDO「経済安全保障重要技術育成プログラム(K Program)」(2025年10月〜)。中小企業庁「事業再構築補助金」(令和2年度)
URLhttps://www.acsl.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

ACSLは、ドローンの飛行を制御するフライトコントローラの自社開発から事業を始めた企業です。部品を組み合わせるだけでなく、制御の中身まで自社で手がけている点に同社の特徴があります。大学の研究室で積み重ねた制御の研究が、国内初のレベル4飛行の機体につながりました。

同社は配送と巡視を1機種で担う機体や、多数の機体を自律的に飛ばす研究へと歩みを進めています。千葉大学からはロボットや医療の分野でもスタートアップが生まれており、その顔ぶれをまとめた記事が千葉大学発スタートアップ10選です。水中で港湾を点検するUniversal Handsのように、点検の無人化は水中でも進んでいます。国産ドローンが現場の人手をどこまで補えるのか、今後の展開に注目していきます。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら

この企業について、
もっと深く知りたい方へ

パートナーシップ・お問い合わせはこちらから。